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「Directorはなくてはならないツール」小阪淳氏にDirectorの魅力を聞く

「Directorはなくてはならないツール」小阪淳氏にDirectorの魅力を聞く

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カンヌ国際広告祭のCyber Lions部門で銅賞の受賞歴をもつ小阪淳氏は、積極的にDirectorで作品を作り続けているデザイナーであり、一級建築士です。今回は沖縄のワンダーミュージアムに展示中の作品をベースに、Directorとの出会いや作品作りに対する思い、今後の要望について伺いました。


デザイナー、一級建築士の小阪淳氏(右)、アドビ 太田禎一

Directorで作りました 

――まずはこの作品の説明をお願いします。
 

小阪氏
もともとは沖縄のワンダーミュージアムという科学館のために作った子供のための科学啓蒙的なコンテンツなんですよ。生態系を表した作品です。3種類の生物が発生し、それぞれが食べ、排出し、分解し、生産します。沖縄のものとは別バージョンでコントローラで生き物をコントロールできるものも作りました。最初は消費者となって、食べ物を探してうろつくわけですがうんちをすると、今度はうんちになってしまう。うんちは動けないので視点を変えるだけで、ただひたすら分解者を待ってる。分解者がやってきて分解されると、うんちは今度は分解者に取り込まれて分解者になるんです。 エコシステムは炭素がループしてるんです。炭素側の視点って面白いなと思って作ってみました。


肌色が多いと消費者である生物が大量に発生する


画面を説明する小阪氏(右)

これはカメラで色を拾って、色の変化に応じて生き物が生まれるんです。色の三原色のRGBってありますよね。 Rは赤だから、火のイメージなんで消費者を表してます。Gは緑なんで生産者を表してて、Bは水を表してるので分解者。水を媒体にして動くんで、水と解釈してます。この3つの要素を成分比率でそれぞれ生き物に割り当ててるんですね。バランスがいいと安定します。その生物がポロっと何かを落とす。それがうんち (笑)

科学館ではカメラ画像の代わりに積み木を使います。RGBの色の積み木を入れる引き出しが用意されていて、中に積み木を入れて閉めると、向こうの世界でバーチャルの引き出しがひゅっと開くんです。そして動物がぽこっと生まれるという仕組みです。RGBの数のバランスと、複雑さ状態で形状が決まっています。

――引き出しがリアルとバーチャルをつないでいるんですね。
 

小阪氏
そうです。これはメインはDirectorで作って、インターフェイスの部分はエンジニアの方と一緒に考えました。今はノートPCで動かしているのでそんなに速くないんですけど、これでも100体くらいは出せるんですよ。

――大体一つのモデルが何ポリゴンくらいなんですか?
 

小阪氏
100くらいじゃないですかね。全体的には10000ポリゴンかな。こういう作品を見せても、誰もDirectorで作ったとは思ってくれないんですよね (苦笑)。Directorでそんなことができるなんて誰も思わないんです。だからそういう意味ではすごくもったいない感じがするんですね。これだけできるのに、そういう認識されてないっていうのはね。

最近Flashを使ってる方々が一生懸命3Dをし出すとか、外部装置とのインターフェイス作ったりしてるじゃないですか。その辺りってすべてDirectorで以前からやってきたことじゃないですか。それは知らないでやってるのか、知ってやっぱりFlashでやりたいってやってるのか、よくわかんないんです。

デジタルとリアルを行き交うことでモチベーションが上がる

小阪氏
もともと建築を勉強していたんですが、ちょうど大学院あたりでインターネットが一般に普及してきました。みんなが意見を交換しようと思ったら、それまではどこか場があって、集まらないとできなかったじゃないですか。しかしインターネットならメーリングリストでできてしまう。建築が持っていた役割を、インターネットが担うようになってきたわけです。それで、今まで僕らは建築としてソリューションを出していたものが、これからは違う形でソリューションを出せるんだということにみんな一斉に気づいたんですよ。そこでそういうデジタルテクノロジーみたいなものにグッと興味がわきました。

僕はもともと1箇所に通うということがなかなかできない性格の人間だったので、自分ひとりでモノを作って食えるんだったらなんでもよかったんです(笑)  だから、イラストだったら仕事がもらえるかもしれないと思い、営業をかけてみました。ただ建築なんであまりイラストは描いてない。図面ばかりなんですね。それでも出版社に持って行ったら、これは面白いと言ってくれて。イラストじゃなくて、図面もってこられたわけですよ (笑) すごく面白い編集者の方にあたったおかげで、非常におもしろがってくれて、それからとんとん拍子で仕事が来るようになったんですね。そこからさらにあるきっかけで、朝日新聞で風刺画をずっと描かせていただいてました。

――どんな風刺画だったんですか?
 

小阪氏
新聞って、文字や写真、グラフ、漫画などがありますよね。新聞なので、文字は基本的になるべく真実に近いこと書こうとしますし、写真も現場か実物を写そうとします。つまり、嘘をついちゃいけないという前提があるわけです。一方風刺画は、ある意味嘘、誇張が入ってます。ですから、紙面に嘘の写真を置こうと思ったんですね。見る人は一応写真は本物という認識ありますよね。でも見たらおかしな風景が存在してるというようなものです。新聞に載ったときどういう風に見えるかという前提に考えて風刺画を描いてました。

で、最初に掲載したのは小泉元総理が立候補する前の、首相候補がしばらくいなかった頃のものです。総理ってすごいみんななりたい憧れの職業のはずなのに、候補がいないって不思議だなと思って、「国会議事堂の上に総理の求人広告を出した」という設定で、なるべく写真っぽい表現で、外国人がみたら「日本はこんなことになってるよー!」と驚くみたいな感じのリアルなテイストを目指してました。

――最初からデジタルだったわけではないですよね。
 

小阪氏
風刺画はPhotoshopで作りましたが、最初は違います。大学院を出た頃というのは、イラストの仕事がメインでしたが、それこそ最初の頃はアクリル絵の具で描いてたんです。それがデジタルというものがごく普通の道具として捉えられるようになったんで、今まで絵の具だったものがどんどんデジタルに移行していったような状況ですね。

先ほども触れましたが、僕はいわゆるデジタルコンテンツといわれる実体のないものと、実体のあるもの、触れるものを両方触っていたいと思うんです。自分の中で両方に関わることでバランスを保っているみたいなところがあるんですよね。最近Photoshopや Painterなどのツールでイラスト描かれる方って、全く絵の具を使わずにいたりするじゃないですか。ひょっとしたらそのうち絵の具なんて使ったことないなんて子供たちも出てくるんだろうなと思うわけです。

そこでいわゆるデジタルの弊害で「実世界を知らない子供が増えている」とかそういう話はあるんですけども、逆に、デジタルでできるということを超えた物が実体としてあるという事実、例えば、絵の具のシミュレーションとかあるじゃないですか。でもそれが本当の絵の具だったら、そこに砂混ぜて塗ってみるとかできますよね。それをコンピュータでやろうと思うと逆に大変じゃないですか。

そんな風に、デジタルがあるおかげで、デジタルにできないことをやろうというモチベーションがグッと上がるんですね。それが実体のある世界と実体のない世界を行き交うメリットなんだと思うんです。例えば3Dでゲームの開発してる人たちなんかが、バッタをつくるということでバッタを一生懸命見てるのね。でも、どんなにがんばってもバッタを超えられない!目の前にあるバッタの情報量を超えられないわけです。当たり前なんですけど、そういうのに愕然とすることで自然の豊かさを知るということが可能なんじゃないかなと思ったりするんですよ。それこそデジタルの限界を知ってるのも大事だし、デジタルのメリットを実感してるっていうのもすごい両方大事だと思うんですよね。自分がちゃんと実感できているかどうかというのはなかなか自問自答しつつ日々送ってる感じですけどね。

――その精神が作品に活かされてくるわけですね。
 

アクリル画からMacintoshへ

――最初にイラスト、設計図から始まったとおっしゃっていたんですが、それがデジタル化したのは何から?
 

小阪氏
最初はパソコン買えなかったんですね。まだMacintosh(以下、Mac)のII fxが150万とか、全部そろえたら 400万とかするような世界だったじゃないですか。だから最初の頃はアクリル画で、エアブラシとかで描いてたんです。本を読んだらMacはコピー&ペーストができるとかって書いてあるんですよ! で、またすごくカッコイイ絵ができるんですよ。だからとても悔しくなって、自分で薄紙に書いて、切って、「コピーアンドペースト!」「アンドゥ!」とかいいながら遊んでみたり。「手Mac」って言ってたんですけども(笑) 

II fxが生産終了した状態の頃で50万円くらいかな。それを買ったんですよ。周辺機器も何もない状態で、RAMも8MBとかそういう時代だった。Adobeの製品で最初に買ったのはPhotoshopです。2.5だったかな?

実際にデジタル化したのは「SFマガジン」という雑誌の表紙のお仕事ですね。でも当時データ入稿ってまだ存在しなかったんですよ。多分一部ではやってたんでしょうが、普通の出版社ではやってなくてね。だから最初の頃は、デジタルで描いてもどうしようもないんですよ(笑) 紙も解像度とかなかなか難しいじゃないですか。その頃にちょうど日本HPが7万か8万くらいの廉価版のカラープリンタを出したんですね。それを買って、粗いレゾリューションなんですけど、印刷して入稿してました。本になると粗々なんですけど、それは味ということにして(笑)

――コンピュータはいきなりMacだったんですか?
 

小阪氏
もともと数学が好きな方だったんですよ。だからプログラムは好きで、中学生のときにシャープのMZ-80というクリーンコンピュータを買って、ちょっとBASICとか触ってたんです。そんなにすごくはやってないですよ。それこそほんのかじる程度。

――でもすでにそういう下地があったんですね。
 

小阪氏
でも本当に大したことないです。ちょこっと触ったくらい。仕事とは全く別でした。

Directorと出会い、Havokに衝撃を受ける

――なぜDirectorと関わり始めたのか教えてください。
 

小阪氏
実はDirectorを最初に買ったきっかけってまるで覚えてないんですよ。ver.4を買ってるんですが、もしかしたら何か仕事のきっかけだったのかもしれないですけど、はっきり覚えていない。多分展示会かなにかの、映像でインタラクションをつけるとかそんな話だったかもしれません。ちょろっと使ってお蔵入りというか、その後しばらく使ってなかったんですね。

本のデザインとかだったら、イラスト以外にもグラフィックの部分ってありますよね。基本的に僕、グラフィックの勉強とか全然したことないですけど、初めてイラストの仕事をいただいたときに「デザインどうしましょうか」といわれて、「じゃぁ僕やります」って言って、その足で版下の作り方なんかの本を買って……そういうノリでいつもやってまして(苦笑) Directorのときも、おそらくノリで「やります」ってことになったんじゃないかな。ギャラとソフト代でプラスマイナスゼロみたいな世界でやってたと思うんですよ。そうなると、そういう仕事がこないと使わないじゃないですか。で、しばらく使ってなかったんですね。でもね、Javaが出た辺りからちょっとプログラム熱がまた再燃したんですね。

――Directorを再び使い始めたのはJavaがきっかけですか?
 

小阪氏
Javaがきっかけですね。多分JavaとDirectorを使ったグラフィックの処理とかそういうものだったと思います。Directorも結構プログラムできるじゃん!といって、DirectorとかJavaでちょっと簡単なちっちゃなプログラムを組んだりとかしていました。僕はプログラム専門でやってる作家ではないんで、費やせる時間が限られるわけじゃないですか。でもDirectorってそういう意味ではいろいろ敷居を低くしてくれてるソフトだと思いました。

――お仕事としてニーズがあったんですか?
 

小阪氏
最初はやはり仕事につながってました。Directorもそうだし、Javaもそうなんですが、Webですね。HTMLなんですね。HTMLで表紙を作りたいといったときに使ってました。

――Webサイトを作るって話ですか? ということは小阪さんはWebデザイナーでもあった!?
 

小阪氏
そうそう。企業からお仕事として請けてWebサイトを作ってたんです。Webデザイナー歴結構長いですね(笑)

――意外でした!
 

小阪氏
HTMLって表現としては割とスタティックじゃないですか。普及しはじめた96年あたりのWebページは本当にシンプルで、クリックして次のページに飛ぶだけみたいだった。それがJavaの登場によって動かせるようになり、すごくダイナミックになったじゃないですか。それで動くんだったら動かしたいみたいな感じだったんです。仕事にもなるしプログラミングしちゃおうかと。そうやってインタラクティブなもの、Javaとかプログラミングで視覚的なものを動かすというのにハマっていく感じですかね。ちょうどFlashもチョットずつでてきたんで、その辺りを何ができるのかと探りながらいろいろと試していました。

表現手段はどれかに固定するんじゃなくて、いろんなものを使いながら、そのときそのときに応じて使い分ける、みたいな感じでしたが、Directorの強みみたいなものをWebの中ではなかなか見いだせなかったんです。それが、8.5がでて、Havok(ハボック)の登場にショックをうけたんです。

――Havokというのは物理演算のシミュレーションができるあのHavokですよね
 

小阪氏
そう! 実に生々しく跳ねたりぶつかったりするそのHavokにものすごい衝撃うけたんですよ! すごいですよね! それで8.5でね「うわーすっげぇなこいつは!!」って感動して、仕事は抜きにして、どんなことができるのかと自分であれこれ試しはじめて「これは画期的だ」と確信したんです。

コンピュータのテクノロジーって、いわゆるバーチャルリアリティとかって、3Dコンテンツいっぱいありますけど、エンドユーザが作ろうと思ってもなかなか手が出ないじゃないですか。それって、ものすごくおかしな気がしてたんですよ。で、Directorでいきなりすごいもんが出たと。これは進化していくとどうなるんだろう!? と思ってたら、次のバージョンでHavokなくなってたじゃないですか! びっくりしましたよ僕は! Havokが最初からインプリメントされてなかったじゃないですか。

――ライセンスの問題で、ない時期がありました。
 

小阪氏
そうですよね! これはまずいでしょAdobeさん!と思いましたよ(苦笑)

――「これ以外用はないのに!」みたいな感じですね(笑)
 

Havok(Havok Xtra)とは、アイルランドのHavok社が提供する、ゲーム開発用の物理シミュレーションミドルウェアの一部機能をDirectorのXtra(拡張機能)として移植したもの。2001年5月リリースのDirector 8.5、2003年3月リリースのDirector MX(ver. 9)にバンドルされ、ブラウザベースのShockwaveゲームであってもリアリスティックで高速な、フルポリゴンの物理シミュレーションを可能にした。その後のリリースDirector MX 2004(ver. 10)ではライセンスの関係上バンドルが中止される。その後AdobeはHavokの代替物理エンジンとしてAGEIA社のPhysX(2008年NVIDIA社が買収)を選択、Director 11のリリース時にバンドルして提供を開始する。PhysXは(1)Windows、Mac両対応であり(2)どちらもアクティブに開発が進んでおり(3)Havokよりも高性能である、ことが理由で採択されている。今後Directorゲーム開発ではPhysXのみが物理エンジンとして正式サポートされるが、使い方はHavokに非常に似ている。

Directorの良さはHavokを含む3Dのポテンシャル

――小阪さん的にはDirectorの良さというのは、Havokや3Dですか?
 

小阪氏
Havokを含めた3D全体のポテンシャルがいいですね。最初Havokしか分からなかったんですけど、試していくうちに3Dそのもののポテンシャルがすごいなと思いはじめました。当時から他にもいくつかWeb3D系のアプリはいろいろありましたが、Directorが一歩抜きんでてました。

――小阪さんご自身は特に何か3Dをやってらしたわけではないですよね。例えば3Dやろうって思ったときに「はいもうできた!」というわけにはいかないですよね。そこに至るまでにクリアすべきものがいろいろあると思うんです。どういう流れがあったんですか?
 

小阪氏
そうですね。絵を描くのに素材としてモデリングしたりしてたんですけど、大した話ではないんですね。僕の場合、あるコンテンツがきっかけで3Dにたどり着いた感じです。科学館に納めるコンテンツをプログラマの方と一緒にやってたんですね。C言語でコーディングされていて、僕はディレクションとデザインが担当でした。自分の手で作ってみたいという気持ちはあったんですけど、C言語でいきなりというのはかなり難しいし、なかなか手が出なくて。

そこで、「僕はこんな風にやりたいんです」ってプログラマに対してDirectorをプレゼンテーションツールとして使えないかと思ったんです。やってみたら、できちゃったんですよ(笑) 完成品ができちゃった!

――ハードルの越え方がスゴイですよね。
 

小阪氏
自分のコンテンツを人に見せると「もうCで書いたら? Cで書いた方が楽でしょ」ってよく言われるんですよね。けれど、Directorというのは、多分C言語よりも取っつきやすいんですよね。ネットにたくさんサンプルがあって、それをDirectorにインストールすれば中身がすぐ見えて、ちょっと書き換えればすぐレスポンスあるじゃないですか。自分のやりたいことに近いソースを探して来て、それを改変するというスタイルを繰り返していったら、やりたいことができちゃったんです。

一方でネックもありますよ。例えば、動き回るようなオブジェクト100体くらい作ってみたら、オブジェクトを作る度に0.5秒くらい止まったりする。原因がわかんないんですね。思っても見なかったボトルネックがぼこっと出て来たりするんですが、問題が回避できるのかどうかすら分からない。その辺りは結構ヘビーですけどね。

それでもDirectorは、今まで敷居の高かったプログラムという表現手法をすごく敷居を低くしてくれるっていう意味においては大きい存在だなと思いますね。

始めるなら、いかにしてモチベーションを持ち続けるかが大事

――小阪さんが経験されたような「できちゃったよ!」を、これからDirectorを始める方にも追体験していただきたいのですが、何かコツはありますか。
 

小阪氏
最初モチベーションどうやって持つかということだと思うんですね。僕の場合Havokショックがあった。使いたくて仕方なくて、最初はご紹介したコンテンツでもHavok作ってやってたんですよ。二足歩行させてボテッとコケて、みたいに。

――あえてHavokの効果をいれたわけですね(笑)
 

小阪氏
そうそう!(笑) で、棒を100本並べて、トルクかけてぼわーっと回してみたりとかしながらどこまで負荷をかけられるかっていうのを試してみたりしました。100体動かしたら無理だなとわかって諦めたんですけど、そのときにどうやれば生っぽく見えるかとか、物理演算しなくてもそれっぽく見せられるかとか、どうやればいいかとかというのを考えたり勉強できたんですね。そういう意味では8.5のポテンシャルが高かったということが、僕の中でモチベーションを上げるきっかけになったと思います。

――ちなみにこれって、マニュアル読んだだけで大丈夫ですか?
 

小阪氏
残念ながら無理ですね(笑) 日本語の書籍も読みましたが、3Dについては触りだけだったので、僕は洋書を2冊買って読み倒しました。ソース付きのサンプルが公開されていたそうですが、気づきませんでした。


小阪氏が購入したという書籍

Directorを習得するなら、やはりHavokからがいいと思う

――小阪さんはFlashもDirectorも両方経験されています。小阪さんなりの使い分けとはどんな視点からでしょうか。
 

小阪氏
基本的に、キオスクっていうのかな。ローカルで見せる場合はDirectorで何ができるかっていうのを基本に考えてますね。

――その理由っていうのはやっぱり限界が少ないからですか?
 

小阪氏
3Dも視野にあるし、Xtra(エクストラ)により機能の拡張性が非常に高いっていうこともありますね。もうそれだけでもFlashよりも全然メリットがあるんです。だから逆にWeb前提になるとすなわちFlash前提になっちゃうんですけども、ローカルで動かすんだったらほとんど Directorでいいじゃないかと思ってますね。ただ同じことやるのにDirectorとFlashを比べたわけではないので、僕の知らないメリットデメリットって多分あると思うんですけど。

――プログラム大好きな小阪さんとしては、LINGOってどうですか。
 

小阪氏
表現としてはちょっと古くさい感じはしますよね。でも全然抵抗はない。目的を達成するために必要十分なことはできる。特にそれで困ったことはないですね。

――Directorの習得っていうのは、3Dも含めて、別に考えたほうがいいのでしょうか? 3DのものをDirectorで動かすというのを、もし何も知らない人がやるとしたらむずかしいでしょうか。
 

小阪氏
いや、それこそHavokいきなりっていうのがベストですよ!

――それはどうしてですか? すぐ結果につながってテンション維持できるから?
 

小阪氏
そう。それがやっぱりすごいんですよ。例えば、パチンコゲームとかくらいだったら、Havok使ってちょっとがんばったら1日くらいで作れるじゃないですか。それはすごいことだと思いますよ。

――FlashでActionSctipt1も2もできる人だったら、なんの問題もないという感じですか
 

小阪氏
若干文法の違いなどはあるんですけど、そんな高い敷居ではないと思うんですよね。

ツールに使われたっていい。決めつけず、変化を楽しむことが大事

――いろんなものに手を出すことに実は意味があって、お互いに補完しあって、いい結果を生んでる。それが小阪流のアプローチ方法なんですね。
 

小阪氏
結果論ですね(笑) まず、何がしたいかっていうのをイメージするんです。それは決して純然たる思いだけで作れるわけではなくて、あんな作品があったとか、人の作品に感動して、オレだったらこう作るという考えだったりとか、あるいはツールそのものに大きな刺激や影響を受けたりすると思う。例えば Havokがある。「あ、これでなんか作りたい!」と、モチベーションを、アプリケーション自身が与えてくれるっていうのがすごく多いと思うんですね。

Director 11.5で「Havok」の代わりにバンドルされている物理シミュレーションエンジン「PhysX」については、残念ながらまだ詳しく紹介している書籍がありません。そこで役に立つのが以下のサイトです:

<

そうやって与えられたモチベーションや、作りたいものというのが、何をどうやれば実現できるのか、その方法を探るときに、できれば自由でいたいじゃないですか。そのときにFlashだけしかないと思い込んでいたら結構制約あるけれど、自由に考えていればDirectorやC言語と広がっていくかもしれない。もう自分の、やむにやまれぬ表現の衝動を解消するためにはもうC言語を学ぶことなんて大したことじゃないじゃん!なんてことになるんじゃないかと思うんですよね。

その思いのほうが大事で、それを持続し、高めていく。そのきっかけをツールが与えてくれる可能性が非常にデカイわけです。それこそPhotoshopっていうのが、デザインに与えた影響ってめちゃくちゃデカイじゃないですか。ものすごいことだと思うんですよ。鉛筆とかの存在くらい、ってそこまでいうとどうかと思いますが(笑) ほんとにすごいことだと思うんですよ。あれ?なんでこんなに褒めてるんだろう!(大笑)

――小阪さんにDirectorを褒めていただく場なので(笑)
 

小阪氏
以前Photoshopが出たとき、「あ。これはPhotoshopのあのフィルタね」といって、Photoshopに使われるのはダメみたいな空気になったと思うんですね。デザイナーさんは特に「オレはそんなにツールに使われてるんじゃねーんだ」みたいなことを考えたかもしれない。でもね、最近思うのは、結構バレバレというかわかってるんだけど、すごいと思わされる作品があるんですよ。これあのツールとあのツールの組み合わせ…でもすごい!っていうのが結構あるんです。それって結構実はポテンシャルのある、潜在的な力をもっている作品なんじゃないかな、と思ったりするんですね。だからある意味、ソフトに使われてみるというのもいいかもしれない。

――要するに思い込みにとらわれないほうがいいってことですよね。
 

小阪氏
そうですね。これを使ったらこう思われちゃうとかではなくて、自分の審美眼だけで突き進んじゃえばいいんじゃないかなと思うんですね。

――目的を達成するために、目的があって、自分がいて、この間のルートは自由でいいじゃないってことですよね。
 

小阪氏
ただね。目的が変わってもいいんですよ。ターゲットを決めていたけれど、やってたら途中でいろんなもの発見して、その間成長するわけじゃないですか。いろんなものを見て、気がついたら違う着地点だったとかね。そういう柔軟性もすごく大事だと思うんですね。

――楽しんじゃうってことですね!
 

小阪氏
そうそう! 自分が変化することを楽しんじゃう。そういう場が、アプリケーション使うってことだったり、何かをトライ&エラーをするっていうことだと思うんですよね。プログラムは特にそれが大きくて、大体思った通りに動かないんですよ(笑) その動かなかったものが面白かったりするんですよね。それこそ物理的なシミュレーションやってみたら、全然変な動きしたと。実は全然間違ってたんだけど、結果面白いことになった。そこでもういっぺん自分でバグを作って面白い作品ができたという経験がありました。それはFlashだったんですが、スプリングを数珠つなぎにしていったんですよ。普通だったらそれを物理演算でやっていったら、重力で下に落ちるはずだった。でも、プログラムミスで、間違えた設定にしてしまった。そしたらクルクル勝手に回り出したんですね。

そんな動き、実世界では絶対あり得ないんですよ。坂道あがっていくようなもので、エッシャーの絵みたいになってる。登っても登っても登り切れない階段の絵みたいなものをFlashの中で作っちゃったんです。これは面白いと思いました。

そういう今まで思って見なかったことができやすい。プログラムってなかなか思ったようにできないことが多いんで、そういう棚ぼたを与えてくれる環境ってすごい大事だと思うんですね。あんまりね、そんな人間はクリエイションしてないかもしれない(苦笑) それこそこれが面白いと思って、それをちゃんとものにしちゃう力の法が大事だと思う。

――そのチャンスを捉えられるかどうかで、失敗だとは思わないと。
 

小阪氏
そう。思ってないことを与えてくれる。それこそPhotoshopなんかも、この写真とこの写真重ねたらどうだろうってトライ&エラーがやたらできるじゃないですか。道具自体がなんか思いもかけなかったような物をもたらしてくれる場合があると。そういうのも使い手としては大事なことなんですよね。 Directorにはその可能性が十分あると思っています。

これからのDirectorに望むこと

小阪氏
ちょっと苦言を呈するようですが、8.5以降のアップグレードというのが、実に微妙な感じだと思うんですよ。先日ちらっと12の話を耳にしてちょっとわくわくしてるんですけどね(笑) わくわくしてていいんですか!?

――してていいですよ!
 

小阪氏
言い切っちゃった(笑) 11が出たときかな。「11出たー! 開発してるー!」って嬉しかったんですよ。いつなくなるのかいつなくなるのか、これだけ Director勉強したのに、使えなくなるかもしれないと思って心配しました。11が出たときに、さらに12と13がなんか載ってるロードマップを聞いて、ちょっと興奮しましたもん(笑) 「まだDirectorやってていいんだ!」みたいなね。

――そこはアドビ側から「安心して使ってね!」とアナウンスしなければいけないですよね。大きな反省点です。
 

Adobe Directorのバージョン11以降のロードマップは、2007年11月にサンフランシスコで開催されたAdobe MAXセッションにおいて、Director 11のスニークプレビューとともに発表された。その時点では「11も12も開発を予定している」旨が発表されたが、その後は具体的な時期や機能についての対外発表はない。ここでは、「時期は明らかにできないがDirector 12は現在鋭意開発中」であるとだけ述べさせていただく。

小阪氏
ひとつ覚えて、そこの中で広がりがあるってことはすごいメリットですよね。使い手としては。この言語1コ覚えたらろんなことできますよっていう。定番ソフトとしての強みみたいなところですね。

――今後どういうものがDirectorに載るとうれしいですか?
 

小阪氏
Direct Xの最新版で表現がどんどん増えていくじゃないですか。そういうのをフォローしていってもらえるとうれしいですね。Director使ってる人とかでも、場合によってはDirectorの3Dっておもちゃみたいに思ってる人って結構いらっしゃると思うんです。あんなにポテンシャルあるって知られてない気がするんですよね。ものすごく使えるって分かっていらっしゃらない。「これが可能な環境はもう8年前からあったんですよ!」と声を大にして言いたいな。 あとは軟体シミュレーションやファーでしょうか。ファーが生えたらきっとすごいですよ(笑)

今最新の3Dゲームの表現力のすごい作品と、 Directorで作るものってやはり落差あると思うんですよ。僕なんかが作るときは、なるべく落差を感じないようにデザインするとか、できるだけミニマムにもっていくとかするわけじゃないですか。これがスタイルだと言って(笑) あえてそうやってなるべく意識させないわけですが、でもそれがやはりイヤなんですよ。ここを埋め合わせていっていただけると僕としてはすごくうれしいかな。

――一応その方向で行ってます(笑)
 

小阪氏
すごく楽しみですね! あとは物理シミュレーション以外にも、最先端の表現が取り込まれたら、僕がうけたHavokショックのような衝撃を、次の人たちが感じることもあると思うんですよ。Directorなら、シンプルに作りたいものを作れますという環境を提供できる。非常に敷居の低い開発環境を用意できるとなると、もうめちゃくちゃ理想的ですね。

Flash使ってCM作る例も見られますが、そもそもそんなつもりでFlashは開発されてないのに、Flash表現がCMにまで到達しちゃったというところがある。作り手が思ってもみなかった展開の仕方の一例ですよね。Directorが将来的にそういうポテンシャルを持つことは十分可能だと思うんです。なくてはならないはずのツールなんですよ。ある意味、もっともコンピュータに近いところにいられる環境だと思うんですよ。僕にとっては。

――まさにDirector愛ですね。
 

そう。愛! かなり長い歴史のあるソフトなんですよ。途中でいくつも競合製品が登場しても、結局定番ソフトとして生き残ってきた。それは意味があることです。だから今後に期待しています。
 

――どうもありがとうございました。
 



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