矢沢永吉公式サイト YAZAWANOWHERE vol.1
「矢沢永吉公式サイト - YAZAWANOWHERE vol.1」は、アートディレクターに佐藤 可士和氏、クリエーターに西田 幸司氏を迎え、Web をメディアとして捉えた『矢沢永吉』の新しい魅力を見せるサイトです。Flash で作成された画面は星の嵐の中に矢沢永吉が存在する演出で構成され、マウスの動きに反応して矢沢永吉が動き、シャウトする「Web サイトでのロック」を表現した全く新しいエンターテインメント コンテンツです。
チャレンジ
- Flash を採用することで、矢沢永吉公式サイトに新しい風を吹き込み、Web サイトというステージでロックを展開する。
ソリューション
- Macromedia Flash MX Professional 2004
利点
- 既存のファンだけではなく、矢沢永吉を深く知らない若年層にも Web サイトを通して矢沢永吉のスピリットをつたえる
- 既存の公式サイトの枠から飛び出した新しい発想のエンターテインメント コンテンツの実現
- Web を矢沢永吉の新しいメディアとして捉え、世界の最前線で活躍する三人のコラボレーションが実現
プロジェクトの詳細
「矢沢永吉公式サイト - YAZAWANOWHERE vol.1」は、アートディレクターに佐藤可士和氏、クリエーターに西田 幸司氏を迎え、矢沢永吉が「いま」そして「ここで」彼らと出会い、Web というステージでロックを奏で、シャウトし、新たな矢沢永吉の魅力を存分に体感できるサイトです。




矢沢永吉公式サイトのリニューアルにあたり、既存のイメージを取り払って新しい風を入れたいとの考えがあったようです。プロデューサーの木内氏は、当時を振り返って次のように語ります。
「矢沢永吉公式サイトのリニューアル企画は、以前から出ていました。しかし、『矢沢永吉』のイメージが大きすぎて、斬新なイメージを打ち出すのは一筋縄ではいかない。そこで、これまでの場をかき混ぜて新たな風を吹き込むために、アートディレクターとして佐藤 可士和氏に白羽の矢が立ちました。そして、お二人の強力な組み合わせ、その両雄が作り出す雰囲気に負けずに場をひっくり返して勝負できるほど強力なクリエーターとして西田氏に声をかけさせていただきました。」(プロデューサー 木内氏)

クリエイティブ戦略 企画書の一部

クリエイティブ戦略 企画書の一部
「これまでの場をかき混ぜて新たな風を吹き込む」とする依頼を受けた際の第一印象、そして、シンプルな色彩による「星」アイコンの発想の過程について、佐藤 可士和氏はこう語ります。
「矢沢永吉と Web、一見結びつかないような、いちばん遠いところにいるようなイメージかと思っていました。そのかけ離れた感じのする出逢いで、何かとても新しいことが生まれるような予感がしたのです。矢沢永吉を表現するアイコンをずっと考えていたのですが、最初に考えたのも、最後に行き着いたのもが『星』でした。矢沢永吉はスターだから。矢沢さんのシズル~強くて、派手で、ポップで、ロックで、艶やかで、色気があって…~を表現するために、赤から濃紺のグラデーションの星の集合体でロゴをデザインしました。」(佐藤 可士和氏)
木内氏からの依頼に快諾した西田氏を含め、佐藤氏の事務所で関係者が一堂に会したのは2005年の2月。木内氏から公式サイトのリニューアルに向けてのコンセプトが語られます。
すでに Flash クリエーターとして「Webby Award」を受賞するなど、多方面で活躍していた西田氏も当時のことをこう振り返ります。
「2004年12月に矢沢 永吉公式サイトのリニューアルの件で、木内氏よりメールをいただきました。普段からメールで仕事が舞い込んでくるのですが、今回は面識のない私に、誰もが知る『矢沢永吉』の仕事ということで、半信半疑になるほど驚きを隠せませんでした。」(西田 幸司氏)
「このサイトのコンセプト『YAZAWANOWHERE』は、単に『矢沢永吉はこんなことをやってます』を伝えるものではありません。『いま、ここで』、矢沢永吉がトップアーティストに出会い、ぶつかりあって創った新しいコンテンツを見せたいのです。そして、矢沢永吉を知っているが CD は買ったことがないという若い人へのプロモーションも含め、 CD でも Web でも矢沢の表現は純粋なロックなんだ、という事実を知っていただきたかったのです。そのためには、プロモーションビデオに負けない密度の Web コンテンツを目指しました。」(木内氏)
ロックを表現するツールとして Flash を採用した理由を木内氏は熱く語ります。
「とにかく『ロック』にこだわりたかったのです。サーバー側で動くような大掛かりでややこしいものでは、『ロック』の衝動を伝えられない。少年が安いギターを手にロックをはじめるように、誰にでも手軽に簡単に手に入れられる技術を使って Web でロックをやりたいと思っていました。また、今回のサイトリニューアルでは新たな風を吹き込むため、予測のつかないもの、そして何か異質なものを感じさせるものを求めていました。その点でFlashはまさに私の希望を満たしてくれるもの、言ってみれば『Flash をロックにおけるエレキギター』と捉え、リニューアルするサイトの中心技術として選択したのです。」(木内氏)
コンセプトを元に、コンテンツの制作へと進んでいきます。既にサイトのロゴ作成や矢沢永吉の写真撮影を進めていた佐藤氏は西田氏に次のような方向性を提示します。
「ロゴである星のエネルギーの中に矢沢永吉が存在する事、赤、青、黄といったシンプルな色彩を使って画面 を構成し、メリハリを出すこと、勢いや色気やポップさを出しながらも随所にロックンロールが見え隠れするなど指示がありました。動き自体は自由にさせていただき、可士和さんと画面全体の引き締めや展開を相談しながら作って行きました。実際に作成した画面では、星の中に矢沢永吉がいるイメージで、マウスの 動きに反応して矢沢永吉と星が動くよう制御しました。Flash により、静止画でありながら、奥行きやダイナミックなイメージを演出することができました。素材となる写真は上半身のものが多かったですが、画像を動かす時に下半身が写っていないことを感じさせないように工夫しました。」(西田 幸司氏)

カラフルな星が煌めくオープニング

星が集まりロゴを構成していく

マウスの動きに反応して画面が展開される

マウスの動きに反応して画面が展開される
試行錯誤を重ね、画面構成や動きなど完成に近づき、サウンドを入れれば作品となる一歩手前までたどり着きます。ついに、矢沢永吉さんへのプレゼンテーションの時が訪れます。そのときの様子を西田氏は振り返ります。
「矢沢さんはマウスを手に取り実際に操作しながら、動きを見るとうれしそうに『これは面白い!音を入れよう』と、喜んでくれました。さらに『自分のようなアナログ人間が、このようなデジタルの中で使われていると、その対比が面白い。』とも言っていただき、音を入れる作業にゴーサインが出たのです。」
このサイトが本気であることを示すように、サイトで使う音声は既存のリミックスではなく、ULU、KATSUHIRO CHIBA といったエレクトロ系の気鋭ミュージシャンとの楽曲制作、矢沢永吉のボーカルも新録しました。収録した音をサイトに取り込む場面では、Flash のスペシャリストである西田氏と、プロデューサーとしてサウンドに妥協できない木内氏とのぶつかり合いもあったようです。サウンドへの注文は、期待の裏返しとも受け取れます。実際に木内氏は Web でロックをやるには Flash しかないと、Flash に大きな期待を寄せていました。木内氏はそのときを振り返って次のように話してくれました。
「ノートパソコンでも聞きやすい周波数特性にするといった特殊な与件もありましたが、、プロの耳からすると Flash で圧縮した音声に微妙な『ズレ』を感じることがありました。仮に、私が Flash を熟知していれば、『Flash ではここまでしかできない』とあきらめていたかもしれません。しかし、私はそうではなかったので『なぜできないのか』と思うこともあり、半ばケンカごしで西田さんに詰め寄っていたこともあります。しかし『CPU パワーに依存するコンテンツの限界』を知らないことが不幸中の幸いで、納得のいくまで音量の微調整などを繰り返し、結果的には最高の音ができたと思います。」
「矢沢永吉公式サイト - YAZAWANOWHERE vol.1」を見ると、ダイナミックなシャウトと動きが展開されており、流行の緻密な作りこみがされた Flash アプリケーションとは異質なものを感じさせますが、この点についても木内氏は次のように語ります。
「確かに、『YAZAWANOWHERE』は細かい動きというより、大きなオブジェクトをゴロゴロと動かすイメージで、Flash の使い方も異質に見えるでしょう。しかし、これがひとつの狙いでもあります。Web 創成期の感触がフラッシュバックするような異質なもの。それと出会ったときに感じる新鮮さ、戸惑い、心の揺れ(ROCK'N' ROLL)。そのようなものを感じてもらえれば成功です。『YAZAWANOWHERE』を見た若い人も、新たな矢沢永吉の魅力に触れ、空白のキャンバスのような自由さを感じているのではないでしょうか。新しい風を吹き込んだ今回の企画は大成功といえます。」
Flash の表現力は、西田氏の手によって、日本のミュージックシーンをリードするアーティストの魅力を存分に伝えるエンターテインメント コンテンツとしてそのポテンシャルを十二分に発揮しています。
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