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筆者について

マイケル・ゴフ(Michael Gough)

Macromedia社のCCO(最高制作責任者)を務めたマイケル・ゴフ(Michael Gough)は、現在アドビでマイク・サンダーメイヤー(Mike Sundermeyer)と共に、ユーザエクスペリエンスとユーザデザインの開発・改善を指揮統括しています。 デジタル環境における快適なユーザ体験の提唱者として、長年にわたりデジタルエンベロープの推進に力を入れてきました。Nike社のブランドデザイン担当バイスプレジデント、Quokka Sports社のCCO、Construct社の制作ディレクターを歴任した経験を持ちます。

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モーショングラフィックスとデジタルメディア

どんな体験を提供できるかが進化の鍵をにぎる

モーショングラフィックス - それは、いたるところに浸透しています。屋外広告、バスターミナル、コンピュータのスクリーン。現代におけるビジュアルコミュニケーションの方法の中で、モーショングラフィックスは主役の座を占めています。そして、それにはしかるべき理由があります。人間は本来的に、モーショングラフィックスに対して魅力を感じるものなのです。それは、動くものに注意を向けることが、我々人間にとって自然なことだからです。ただ、モーショングラフィックスに関して特徴的なのは、それがデジタルテクノロジによって初めて表現や使用が可能になるという点です。

考えてみると、いま我々が賞賛の目を向けるデザイン作品のほとんどは、複数のフレームをコンポジットしたものであれ、モーションブラーを使用したものや、単に映像をキャプチャしたものであれ、何らかの動きをデザイン要素に取り入れたものです。そういったものを見れば、モーショングラフィックスが感覚を刺激するということは、すぐに分かるでしょう。興味を引かれ、インスピレーションを刺激されるのです。 モーショングラフィックスは、新しさ、エネルギーといった、量的には計り難い何かを纏っています。そして他のどんなデザイン要素よりも、我々がいま生きている時代を如実に映し出すのも、またモーショングラフィックスなのです。

デザインとは、ビジョンやアイデアの明確な表現であり、それに対する反応を引き出すものでもあります。デザインを見て購買意欲を刺激される人もいるでしょうし、記憶が呼び覚まされたり、新しい記憶として脳裏に焼きつくという人も多いでしょう。他の人々にとっても、デザインとはつまり、そもそも何かを創り出すプロセスに他なりません。

過去10年を振り返ると、デジタルテクノロジの出現により、デザイナーはモーショングラフィックスを操って表現する手段を手に入れ、デザイン制作の方法は進化と拡大を遂げてきました。 モーショングラフィックスやリッチコンテンツをどのように活かして、魅力的でダイナミックなWebサイトを制作し、インタラクティブなセルフサービスを利用できるポータルを提供し、写真を共有できるようにするか。その方法次第で、クオリティの高いデジタル体験をユーザに提供できるという期待が高まっています。そしてまた、それが新たな何かを可能にしていくのです。

Web創世記
しかし、魅力的なデジタルコンテンツを制作するということは、なかなか容易ではありません。 Webが一般的になった当初、ただオンラインで何かをしたいという理由だけで、誰もがWebサイトを開いた時期がありました。当時は制作の指針となるルールも、サイトの質や趣旨を取り締まる法律もありませんでした。内容が良くても悪くても、そんなことはどうでもいいという状況で、ただこの新しいメディアに参加するということだけが目的だったのです。

そのような状況でも、思い通りにWeb制作ができず、フラストレーションが溜まるという人が大勢いました。この新たなメディアはモーショングラフィックスに強いという触れ込みでしたが(GIFアニメーションのことを考えてみてください)、その配信ができませんでした。印刷向けのデザイン技術も、この新しいデジタルメディアに持ち込むには、何とも頼りないものでした。それに、HTMLは静的なフォーマットです。

それがやがて、オンラインでも動きのあるコンテンツを目にするようになってきました。Macromedia Flashのようなテクノロジ、そしてAdobe PhotoshopやAfter Effectsといったツールの登場で、モーショングラフィックスを使いたいという欲求を満たせるようになったのです。AdobeとMacromediaによって、多くの人が魅力的なデジタルコンテンツを制作できるようになっただけではありません。そのコンテンツを、共通ルールに従って制作できるようにもなりました。もう誰もFlashを無駄に使って「イントロをスキップ」画面を作ったりせず、もっと有意義なコンテンツを制作するためにFlashを活用するようになりました。そして、そういったコンテンツの多くには、モーショングラフィックスが使用されるようになったのです。

このような基盤ができたことで、デザイナーやWeb開発者、そしてホームユーザまでもが、何を伝えるかということに重点を置くようになり、それを実現するにはどんなテクノロジが必要かという技術面にはあまり注意を払わなくなりました。Flashは広く普及し、エンドユーザが体験するコンテンツは、一から完全デジタルの魅力的なコンテンツへと変わっていったのです。

デジタルの世界が遂に命を吹き込まれ、動き出しました。 そして、この新しいメディアの可能性に、さらに期待がかけられるようになったのです。

コンテンツが動き出す
最近では、Flash Videoのような新技術が登場したこともあり、この期待はますます高まっています。 ビデオはもはや、デジタル世界の劣等生としてビデオデッキの中に取り残されてはいません。ビデオにはデータやグラフィック、サウンドを融合することができます。ダイナミックでインタラクティブな機能を追加し、そのビデオの表現に合わせてオリジナリティを高めることができます。そしてインターネットに接続しているほとんどの人に向けて、モーショングラフィックスを活かした真にリッチなコンテンツを提供できるのです。

一方、デバイス自体も飛躍的に進化しています。ワイヤレス技術が普及するにつれ、モバイルを活用する人が増えています。コンテンツが動き出しただけでなく、我々も動き出したのです。高機能な携帯電話やモバイル機器を、従来のデスクトップPCのように使う人も増えました。こうした機器を使用することで、従来のPCと同程度、あるいはそれよりも快適なオンライン環境を手にできるという期待感も膨らんでいます。ハンドヘルド機器は、電子書籍を読んだり、スポーツの試合結果をチェックしたり、株式売買などにも利用され始めています。人間工学的に見ると、ハンドヘルド機器はPCよりも親密度の高いパーソナルな用途に利用されると言えます。また、ユーザの立場からすると、ニーズや期待に応えてくれるものが今すぐ欲しい、しかもその「方法」に対する懸念よりも、期待するコンテンツに対する関心の方がはるかに高いのです。これは素晴しいことです。

今日、驚くほど様々なことが、インタラクティブに行えるようになっています。 そうした中、モーショングラフィックスの進化とデジタルメディアの普及がこれほど見事に呼応していることで、実用分野でもクリエイティブな用途でも、新たな可能性が開かれようとしています。

新たなる挑戦
現時点で可能なことを考えてみると、デジタルテクノロジを簡単に使って自己表現をしたり、イメージ通りのモーショングラフィックスを作成するなど、実に様々なことが実現できます。では、今からほんの数年後には、いったい何ができるようになっているのでしょう。 モーショングラフィックスをベースとしたデジタルコンテンツをオンライン環境で利用するという方法で、全てのことができるようになっているのではないでしょうか。 エンターテイメントから情報のやり取りまで、そして学習や商取引から接続やコミュニケーションの方法まで、すべてがデジタル環境に統合され、いまだかつてない効果的な方法でコンテンツを活用できるようになっているでしょう。

これは、商業的な見地からも非常に重要なことです。より表現力に優れたコンテンツに対しては、消費者は進んで高い料金を払うということが、すでに明らかになっています。つまり、制作する側としては、自分たちの思い描くものを制作し、オンラインで表現するチャンスがあるということです。我々は今でもペイパービューの番組を有料で見ることがあります。ノートブックPCやモバイルデバイスで見られるコンテンツにも、料金を払っていいのではないでしょうか。

重要なのは、これまで我々は自分たちが実現したいことをテクノロジが可能にしてくれるよう期待し、テクノロジは驚くべき短期間で、それが実現できるまでに進化したということです。我々が今なすべきことは、モーショングラフィックスと真に有用なアプリケーションに重点を置きながら、我々の情熱と創造性、そしてテクノロジをさらに多方面に拡大することです。その中でテクノロジは、我々が思い描くビジョンを完成作品に反映させる手段であり続ける必要があります。そうすることで徐々に、完成した作品は、単に商品やサービスを代弁する手段、あるいは他のメディアから表現を移植する手段という域を超えるようになるでしょう。我々が高い期待をかけ続けることによって、作品はやがて、デジタルテクノロジに何が実現できるか、そしてモーショングラフィックスに何が実現できるかを、真に表現するものへと進化していくことでしょう。