関西でのAdobe FlexやAdobe AIRを使用したRIA開発事例の紹介や、関西のFlexやAIR関連コミュニティによるセッションを行い、関西におけるRIA開発促進、情報共有を図ることを目的とするセミナー、「まいど!関西RIAセミナー 2009」が、日本最大のFlexユーザーコミュニティ、FxUGの主催により2009年2月28日(土)、TKP大阪梅田ビジネスセンターで開催されました。
FlexやAIRは実際にどのような仕事で使われているのか、その仕事でなぜFlexやAIRが選ばれたのかなど、実際の制作者から生の声で聞くことのできる貴重な機会となりました。
会場となったTKP大阪梅田ビジネスセンターの会議室。最後列からでもスライドの文字がはっきり見えます。
セミナーには130名を超える参加申し込みがあり、会場は立ち見が出るほどの盛況ぶり。
まずはアドビの轟による、アドビの最新RIAロードマップについての説明です。
アドビのこれからのRIA戦略を、FlashPlayerの話、オープンソースプロジェクトの話、'Gumbo' + Adobe Flash Catalystの話の3つの軸から解説。
その中でも'Gumbo' + Flash Catalystの話は特に注目度が高かったように思います。'Gumbo'は次のバージョンのFlexのコードネーム、Flash Catalystは現在開発中のデザイナのRIA開発ツールです。この2つを連携させることによって、プログラマとデザイナの協業を今までよりずっと楽にすることができます。
少ない時間の中で、Flash Catalystで簡単なインタラクションページを作るデモが行われましたが、Adobe Photoshop CS4のPSDファイル読み込みからアニメーション付きのページ遷移まで本当にあっという間にできてしまいました。
特にPSD読み込みに関しては、こんなに簡単に扱いやすい形でPSDデータを読み込めるのだったら、それだけでもFlash Catalyst使ってみたい!と思わせる魅力がありました。


次はAIRアプリケーション「Adobe Developer BOX」の開発チームによるセッション。AIRアプリケーション開発時に注意しなければいけないユーザーインターフェイスの操作性やパフォーマンスの性能改善のテクニックを「Adobe Developer BOX」の事例を交えながら紹介いただきました。
ウィンドウ枠にとらわれない自由な形状の採用や、細部のアニメーション効果のこだわりなど、使いやすさだけではなく、ユーザーにリッチな体験をしてもらうために追求している部分を詳しく話していただきました。
ユーザーに読み込み時間を意識させない適時レンダリングの方法や、バックグラウンドで処理する方法などのTIPSの解説も。
「Adobe Developer BOX」はソースコードや使用しているライブラリがすべて公開されており、現在進行形で開発日記も連載中なので、今からRIA開発を始める人は必見です。


次はAIRアプリケーションの年賀状作成ソフト「プリントマジック」を開発されたアルファブレンド公手氏のお話。
類似のアプリケーションソフトがたくさんある中で、「プリントマジック」のインターフェースデザインはかなり美しい部類に入るのではないでしょうか。
Adobe Developer BOXと同様、ユーザビリティとデザインにはこだわりを持って作られており、デザインを担当された末次グラフィックスの末次氏によると、今後機能が拡張されることを念頭に、どんなものでも合うテイストを採用しつつ、シンプルさと使いやすさを心がけてデザインされたのこと。
またデザインパーツは微調整する中でサイズの大きさを自由に変えれるよう全てベクトルデータで作成されたそうです。これはベクトルデータと親和性の高いFlexの利点かもしれません。
アプリケーション開発にFlex/AIRを選んだ理由は「一度AIRをやってみたかった」というのが一番大きなものだったみたいなのですが、それ以外にもFlex/AIRのマルチプラットフォームな特性は、制作過程で大きな利点と感じられたようで、Linuxユーザーからのリリース後の反応が予想外に大きかったことは、嬉しい驚きだったとのお話しでした。


デザインもシンプルで美しいプリントマジック
次は最新RIA技術を用いて住友信託銀行様営業店舗の窓口システムを開発された住信情報サービス株式会社羽白氏と、株式会社N&J金融ソリューションズ杉山氏のお話。
銀行の窓口システムという大規模開発を、実際にFlexで作られた方の話ということで、注目のセッションとなりました。
この窓口システムはもともとはWebベースで作られていたものらしいのですが、ブラウザだとどうしてもバージョンでの振るまいの違いなどブラウザ依存の問題やセキュリティ制限の問題があり、操作性の向上の狙いもあってRIAで作り直すことが採用されたそうです。新しいシステムは一年以上かけて制作されたものとあって、その中であった濃い苦労話が聞くことができました。パフォーマンス向上の方法など、プログラマの人にとっては非常に参考になりそうな技術的なノウハウまで詳しく解説されました。
最後は「Flexで大規模開発できるのか?ということですが、大規模開発できました」という印象的な言葉で締められました。


次は「買ったものリスト 豪華版」ショッピングサイトを作られた株式会社MonotaRO古畑氏のお話。
AIRではなく、Flexで作られたWebサイト上のRIAコンテンツです。Flexのデモサイトを目にしたことからサイトのリニューアルをFlexで行うことを決められたそうです。
BtoBのショッピングサイトであるMonotaro.comは、繰り返し商品を購入してくれるお客さまがターゲット。そのお客さまが何度もサイトで買い物をする中でストレスを感じないように、とにかく簡単に購入できるようにすることがリニューアルの目的だったそうです。
Flexを使うことによって、ドラッグ&ドロップで商品をカートに入れられるような直感的な仕組みや、シームレスなページ繊維、商品の購入サイクルを自然に理解させる時系列ユーザーインターフェースなどが実現され、リニューアル後の評判は上々だそうです。


ビジネスセッションの最後は、京都の大文字送り火をライブ中継するWebコンテンツを制作されている株式会社ソフトデバイス宮南氏のお話です。
大文字の送り火中継は自分の撮った送り火の写真をリアルタイムでWebサイト上にアップして公開することのできるRIAコンテンツ。
できるだけ多くの人に見てもらえるよう、Flexで作成されたFlash版以外にもJavascript版、携帯電話版が用意されています。
Flexを採用した大きな理由は、Google Maps APIを使用したGPS情報を使って、写真をアップする人がどのあたりにいるかを自動で判別させたかったからだそうです。
Google Maps APIを使用する場合の工夫や注意点などが詳しく解説されました。その他デザイナがFlexの使用で苦労したことなど、実際の作り手ならではのお話をしていただきました。


以上でビジネスセッションは終了。この後のコミュニティセッションの間に30分の休憩が取られたのですが、なんと食べ物と飲み物(ビールも!)付きでした。
セミナー後の懇親会だと帰ってしまう人も多いので、セミナーの間にこういうちょっとした交流の時間があるといろんな人と話ができるのでいいですね。
休憩時間はとても30分では終わらず、後半のコミュニティセッションは予定の開始時間を大幅にオーバーしてスタートです。
コミュニティセッションのひとつめはFxUGから、デザイナとプログラマが仲良く分業できることをテーマに開発されたFlexのフレームワークyui-frameworksについて、フレームワークの開発者である有川氏と、taiga.jpの廣畑氏による発表でした。
yui-frameworks は命名規約をきちんと守ることで、デザイナはデザイナの領域だけの作業を、プログラマはプログラマの領域だけの作業をしていても、コンテンツにプログラムを乗せることが可能になるフレームワークです。
プログラマとデザイナの協業は、今日一日を通してほとんど全てのセッションで触れられたトピックでした。デフォルトのコンポーネントでも見た目の良いインターフェースを作ることができるFlexをアプリケーション開発に選ぶ開発者は、デザインに対する意識の高い人たちが多いのかもしれません。だとするとyui-frameworksはデザインもプログラムも大事にしたい多くのFlexプログラマにとって必須のフレームワークとなるのではないでしょうか。
有川氏の説明中にところどころ廣畑氏が質問をはさむ形式で、二人の掛け合いが漫才のようなノリになっており、最後までわかりやすく飽きさせない発表になっていました。


最後はteracoというFlashのコミュニティから、さくーしゃ氏とhoehoe氏にFlashの面白技術を紹介する発表をしていただきました。
まずひとり目のさくーしゃ氏は、FLARToolKitというライブラリを使ったAR(AIRではなく)技術のデモを。
ARとは拡張現実(Argument Reality)の略で、最近話題になったiphoneのセカイカメラや、漫画ドラゴンボールのスカウターのように、コンピュータを使うことで拡張された現実を体験することが出来る技術のことです。
もともとC言語で書かれたARToolKitという、特定の形の画像(マーカー)をカメラに写すと、映像の中にあたかも現実に存在するように3Dを表示することができるライブラリがあって、さくーしゃ氏はそれをFlash上で実現できるように移植したのだそうです。FLARToolKitについての詳細はさくーしゃ氏のブログから見ることができます。

ふたり目はhoehoe氏による、Flashと何かを連携する技術の紹介。
MIDI機器とFlashを連携させて、パソコンに繋いだ鍵盤を押すとFlashから音が出たり、ロボットとPCを連動させて、Flashからラジコンのようにロボットを操作したり、ヘッドトラッキングシステムを使用して自分の頭の動きと全く同じように、Flash上に表示された3Dキャラクターの頭を動かしてみたり。
Flashでそんなことができるのかという驚きの技術のデモを次々と見せてくれました。こちらもすべての技術の詳細をhoehoe氏のブログから見ることができます。

以上で「まいど!関西RIAセミナー 2009」、全部で8つのセッションは終わりです。Flex/AIRを実業務でバリバリ使っているエキスパートたちのバリエーションに富んだ話をたくさん聞くことができました。
最後はアドビグッズの人形やポスターなどの抽選会があったのですが、とにかく数が多くてほとんどの人がプレゼントをもらって帰ることができ、最後まで至れり尽くせりの楽しいセミナーでした。