作成日

17 August 2008

はじめに

みなさんは、ドラッグストアやショッピングモールでポイントカードを利用したことがありますか。ポイントカードを持つと貯まったポイントで商品が買えたり、メンバーだけのキャンペーン情報が届いたりといった顧客側の特典があります。一方、企業側では蓄積されたポイント情報や買い物の履歴から優良顧客を抽出したり、販促計画を練ったりというようにマーケティング情報として活用しています。このように情報システムを活用し、企業が顧客と関係を築くことをCRM(Customer Relationship Management)といいます。

今回ご紹介するのはAIR/Flex を使ったCRM のための分析ツールです。蓄積されたデータを多様な視点で分析することを目的としています。

今から、このCRM ソリューション開発の事例の紹介をしていきます。

DNP のCRM ソリューションへの取り組み

大日本印刷(DNP)では、折込チラシ、カタログ、DM などの印刷商材によりお客様企業とセールスプロモーション分野でかかわってまいりました。近年、このような商材を提供するだけではなく、お客様企業のマーケティング活動をより効率的かつ効果的に活用できるように、データの収集→管理→分析→活用をサポートしたCRM ソリューション事業を展開しています。

従来のCRM ソリューションでは、マーケティング専門部隊が蓄積されたデータを元にその都度お客様に合わせた分析や提案を行っていました。しかしこれでは、レポート作成に手間がかかってしまい、分析の依頼を受けてからレポートの閲覧まで数日かかるという問題がありました。

データの集計、分析、レポート作成に時間がかかる。

そこで、ユーザ自身が操作し、もっと自由な切り口で分析するための環境の提供が必要になりました。

従来の分析フローにRIA による分析ツール導入することで時差のない、自由な分析が可能に。

AIR を活用した分析データ閲覧システム

今回開発した分析ツールが従来のツールと大きく異なるのは、これまでのツールが「レポートを作る」ことに重きを置いているのに対して、本ツールが「発見する」ことに重きを置いていることです。

表計算を始めとする既存ツールでもグラフの表の作成や分析機能を持ったツールはありますが、これまでのツールでは、情報を変更する度に、カラムを選択し直し、いくつもの設定パネルを経由するといった具合に、手間のかかる作業が発生していました。このことはユーザの思考を妨げ、さまざまな視点で分析をすることの障害になっていました。仮に手間をかけて多くのデータを作成したとしても、その中から本当に欲しい情報を発見するのは非常に難しいことでした。

本ツールではRIA の特性を活かし、複雑なユーザ操作を隠蔽化し容易にすることで、ユーザの思考を妨げない分析ツールの提供が可能になりました。また、多様なグラフ表現にアニメーションを加えることで、これまでデータの裏に隠れ見えていなかった変化にも「気づき」を得ることができるようになりました。

システム構成について

本システムは、お客様企業に提供する分析ビューアをAIR で、お客様企業の登録やアカウントの管理をするための管理サイトをFlex で開発しました。また、サーバサイドのロジックはJava で開発されています。分析ビューアと管理サイトでAIR とFlex といった2つのテクノロジーを使い分けていますが、これは分析ビューアではデスクトップアプリのしての利便性や機能性を、管理サイトではWeb アプリとしての管理のし易さとセキュリティの確保を活かした結果です。

データストレージ面では、サーバサイドのマスターDB としてPostgreSQL を、クライアントサイドではAIR の標準DB であるSQLite を使用しています。ユーザはログイン後サーバにアクセスし、アカウントごとにカスタマイズされたデータを取得します。一度サーバからデータを取得すれば、以降はローカルデータとして使えるので、サーバに負荷をかけることなく分析が行えます。ローカルにDB を持つことによって、ユーザ毎に管理された情報を効率よく提供することが可能になりました。本システムではログイン時の認証にサーバサイドが必要になりますが、オフライン下での使い方も考えられます。

データは内部に「データ部( 数値)+ ラベル情報」といった汎用的な構造を持っています。これにより、ラベル情報( データ) を入れ替えるだけでマーケティング以外の分野のデータを取り扱うことも可能です。今後は、購買分析、販促支援のほか、アクセス解析、成績管理などあらゆるデータの分析に展開していくことを視野に入れています。

提供する主な機能

<分析メニュー>

時系列分析

時系列分析は、データの推移を時系列で見る基本的な分析手法です。本ツールでは、時系列の推移を見る際に、頻繁に使用される属性別の構成比やランキングチャートを連動させることで、指定の期間の変動を直感的に把握できるようになりました。集計単位の切り替えや、ドリルダウンの操作も容易に行えます。

自由分析

 

自由分析では、ユーザが見たいデータを様々な角度から自由に分析することができます。ユーザはチャートを分析シート上に自由にレイアウトします。配置したシートはコピーし、期間をずらして比較することもできます。今回のリリースでは、棒グラフ、折れ線グラフ、円グラフ、時系列チャートの基本チャートの他、散布図や、パレート図など、合計8 個のチャートを用しました。これらはすべてFlex の標準コンポーネントです。これらのチャートを複数組み合わせることで、CRM で使用される基本的な分析は概ねカバーできました。

※個々のチャートの解説は後編の記事で行います。

<操作方法とその他の機能>

データの変更

本ツールでは、別ウィンドウを開いてプロパティを変えるような操作は極力廃止する方向で考え、ドラッグ& ドロップやグラブなど直感的な操作にインターフェイスを改良しました。ユーザは見たい項目を直接グラフ上にドロップすることで、対象となる軸の変更を行います。

分析結果の管理

 

分析した結果はリストに保存し、後で復元することができます。また分析結果をローカルに保存して、レポート作成の素材集としたり、分析イメージや、データをチャートから直接PowerPoint やExcel に貼付けることができます。これらの作業がサーバサイドを介さずに行えるのは、AIR アプリケーションの特徴のひとつです。

データのインポート、エクスポート

分析結果やレイアウトをエクスポートし、他のユーザと共有することができます。またこれをテンプレートとして活用することで、複数店舗間で統一フォーマットのレポートを作成できます。

前編のまとめ

本システムでは分析ツールであるという特性から、高い操作性と豊かな表現力が必要とされました。数あるRIA の技術の中でも、Flex/AIR を採用した理由はその表現力と高い生産性でした。これらは特に業務系アプリケーションにおいてその威力を発揮します。Flex/AIR には、デーグリッドやチャートコンポーネントなど業務アプリには欠かせない機能の多くが標準で用意されているからです。
後編は具体例を交えつつ、実際に使用したFlex チャートコンポーネントについて解説をしていきます。

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