作成日

19 May 2009

その他の要件

Flex Builder 3(Flex 3.2 SDK)

ChartSample.zip

前編では、大日本印刷のCRM ソリューションへの取り組みを紹介し、AIR を活用した「分析データ閲覧システム」が開発された背景とその機能を解説しました。
後編では、マーケティングにおけるデータの分析の中でのFlex チャートコンポーネントの利用について、解説をしていきます。

データベース・マーケティング

CRM の中で注目されている考え方の一つにDBM(データベース・マーケティング)があります。マーケティングといえば商店街の抽選券やスタンプカードなどに代表されるように紙媒体を使ったアナログな手法が主流でした。このような手法では、顧客の購買データが店舗側に残らないため、せっかくのマーケティング情報を管理する手段がありませんでした。

現在では、オンラインPOS 端末やクレジット端末などインフラが普及し、マーケティング情報を効率的に管理できる環境が整ってきました。顧客の購買データは設置端末を通りデータベースに履歴となって蓄積されます。会員カードやポイントカードの情報と合わせれば、どの商品がどこの店舗でどんなお客さんに購入されたか、その商品の特性や顧客の特性を得ることができます。その特性を元に顧客の行動パターンや趣味・嗜好を導き出すことで、効率的な販売計画を立てたり、効果的なプロモーション活動が行えるようになります。このように蓄積されたデータを分析し、マーケティングに活用することをDBM といいます。

AIR を活用した「分析データ閲覧システム」では蓄積されたデータをFlex のチャートコンポーネントを用いて分析しています。次の章からは、具体例を用いて、DBM におけるFlex チャートコンポーネントの使われ方を解説します。

マーケティングデータの分析手法

例として取り扱うデータは、複数の専門店が入った大型ショッピングモールのデータです。このショッピングモールではポイントシステムを導入し、顧客にポイントカードを発行しています。ポイントカードから得られる情報には、売上金額や客単価、取引数などの数値に関するデータと、顧客の年代、性別、居住県、などの顧客の属性を表すデータがあります。

数値に関するデータ 属性に関するデータ
売り上げ金額 デシルランク
平均客単価 居住県
取引数 顧客区分
来店客数 顧客年代
延べ来店客数 性別
粗利額 性別年代別
平均客粗利額 FMランク
交換ポイント数 店舗
付与ポイント数 離反区分

それでは、実際のチャートを見ていきましょう。

時系列推移分析

売上金額や、粗利額などの数値のデータを時間軸上にプロットし、その推移をみる手法です。各項目の値や、特徴のある期間、各項目間の関係などが把握しやすくなります。時系列の変化をみることで、傾向をつかみます。

主な活用シーン

  • 売上分析
  • 顧客購買行動分析
  • チラシ、DM・e-mail の効果測定

使用しているFlex チャートコンポーネントは、ColumnChart です。ColumnChartでは、通常横軸にカテゴリ軸(CategoryAxis)を使用しますが、横軸を時間軸(DateTimeAxis)にすると、時系列の推移をうまく表現できます。前編で紹介させていただきましたAIRを活用した分析データ閲覧システムでは、チャートの前面にマウスイベントをキャッチするコンポーネントを追加し、スクロールの動作で時間軸を移動できるようにしました。

属性別構成比分析(円グラフ)

データを特定の項目に分類した時、その項目の割合をパーセンテージで表わします。円で全体を表すことで、ある項目内・分野内での構成比が把握しやすくなります。

主な活用シーン

  • 販促対象ターゲッティング

使用しているFlex チャートコンポーネントはPieChart です。とてもポピュラーなチャートですが、実はFlex のPieChart には意外な落とし穴があります。日本で円グラフといえば開始位置は時計の12時からの時計回りが一般的ですが、PieChart のデフォルトは、3時の位置からの反時計回りになっています。開始位置は、プロパティ(startAngle)を変更すれば対応できますが、回転方向はカスタマイズが必要です。今後のアップデートで回転方向の指定ができるようになることを期待します。

属性別の比較(棒グラフ・横棒グラフ)

カテゴリ項目ごとの値(量・度数・比率)を、棒の長さで表します。各項目の値の大きさや、特徴のある項目、各項目間の関係などが把握できます。 さらに項目ごとのその内訳を見る事ができます。

主な活用シーン

  • 顧客購買行動分析

使用しているFlex チャートコンポーネントはColumnChart です。棒を横にしたい場合は、BarChartを使います。データの表示形式には、項目を横に並べたクラスタタイプ(clusterd)の他、積み上げタイプ(stacked)、帯チャートタイプ(100%)、オーバーレイ(overlaid)があります。

同じデータを別のタイプで見てみましょう。タイプの変更は、BarChart のtype プロパティを変更するだけです。

タイプを帯チャートタイプ(100%)にしてみました。帯チャートタイプでは、データをパーセント換算した値で表現します。データによっては、見せ方を変えることでよりわかりやすく特徴を捉えることができます。

ランキング分析

ランキングチャートでは、カテゴリ別の値を昇順・降順にソートし、単純な量の比較します。分析手法としては単純ですが、全体の傾向をわかりやすく捉えることができ、基礎的な分析にとても有効です。

主な活用シーン

  • 売上ランキング
  • 売れ筋商品のランキング

使用しているFlex チャートコンポーネントは先ほどと同じ、ColumnChart またはBarChart です。データ(dataProvider の値)をソートすれば、ランキング表示になります。

パレート図

項目ごとの値(棒)とその累計曲線(折れ線)を組み合わせたグラフで顧客分析などでよく使われます。全体に対しての項目の比率が分かり、どのグループが重要なのかが分かります。

主な活用シーン

  • 商品クラスタリング
  • 優良顧客特定

パレート図はデフォルトのコンポーネントではありませんが、棒チャート、折れ線チャートの組み合わせで簡単に作ることができます。

散布図/バブルチャート

X 軸とY 軸の関係性を見ます。X 軸(横軸)の値が大きくなるにつれ、Y 軸(縦軸)の値が大きくなる(または小さくなる)ような分布であれば、2つの項目の関係性が強いと言えます。X 軸、Y 軸に、ボリューム(円の大きさで表現)を加えたものをバブルチャートといい、3 項目の関係性を見ることができます。

主な活用シーン

  • エリアマーケティング
  • 売れ筋商品分析

後編のまとめ

「分析データ閲覧システム」の開発ではFlex の標準コンポーネントの範囲内で特に重要なチャートを選びました。レーダーチャートや箱髭図などを用いる場合は、カスタマイズ開発が必要なものもありますが、標準のコンポーネントだけでもさまざまなグラフ表現が可能になることがお分かりいただけたかと思います。
「分析データ閲覧システム」の分析チャートは今後も追加予定です。

最後に

前後編にわたってDNP のソリューションの一つであるCRM 業務支援における、AIR を活用した「分析データ閲覧システム」について紹介致しました。

このように最近では、業務アプリケーション開発においても、エンドユーザーの使い勝手や柔軟性が、要求仕様に盛り込まれる事は珍しく無くなってきました。加えて大量のデータをスピーディかつグラフィカルに可視化したいなど、CRM ソリューションならではの高度な要求も存在します。「分析データ閲覧システム」では、AIR とFlex を採用することで、他のデスクトップアプリケーション開発に比べて短い開発期間で要望を実現できました。DNP では、今回のCRM ツールで得たノウハウを生かし、他のソリューションで利用されているシステムのRIA 化や、得意先受託案件へのAIR の提案等、多面的なビジネス展開に取り組んで参ります。

(説明に使用したデータは、サンプルデータです。)