アドビ システムズが主催する、Adobe Developer Connection(ADC)と連動した開発者向けイベント「ADC MEETUP」。第4回目は、「Social Gaming」をテーマとして2月28日に開催された。

急成長するソーシャルゲームという舞台で、Flashクリエイターは何ができるのか。

Flashテクノロジーを進化させるアドビ、ゲームとユーザを繋げるソーシャルプラットフォームを提供する株式会社ディー・エヌ・エーとグリー株式会社、そしてゲームを生み出すクリエイター(Bascule、中野亘、株式会社スクウェア・エニックス、尾野政樹、Rovio Entertainment Ltd.)、この3者が集まりそれぞれの立場からFlashクリエイターに向けて最新動向とノウハウを講演した。

実施されたセッションは7つ。本シリーズでは、このイベントの内容をセッションごとに紹介する。

 


セッション1では、アドビ システムズの轟啓介氏とAndy Hall氏により、ソーシャルゲーム市場の動向とFlashランタイムの戦略について講演が行われた。

1 Flashクリエイターがソーシャルゲームに興味を持つべき理由

それは「ソーシャルゲーム市場の大きさとその成長性」に他ならない。Hall氏は日本市場の情報として 三菱UFJモルガン・スタンレー証券の発表を紹介した。それによると、日本国内のソーシャルゲーム市場は2013年に課金ユーザ数が約600万人に拡大し、約3,000億円の市場規模になると予測している。

では、ソーシャルゲーム市場で何が起きているのか。Hall氏は、ひとまず日本市場の情報については他のセッションに任せ、ここではアメリカ市場でのトレンドを以下の3つの視点で紹介した。(→ビデオ時間 04:20)

  • Disruption(混乱)
  • 市場規模の成長性
  • ソーシャルネットワークの重要性

【Disruption(混乱)】
「Disruption」はソーシャルゲームの話題の際によく使われる言葉で、成功していたビジネスモデル(コンテンツ)に陰りが見えはじめ、新たなビジネスモデル(コンテンツ)が登場し爆発する、そうした不安定な状態を指すのだという。

例えばアメリカでは、「ゲーマー」の定義が大きく変化している。2008年から2011年の3年間でゲームユーザ数が約2.5倍(5,600万人→1.35億人)に増加し、アメリカの人口の約4割に達した。その増加数に寄与しているのが、なんと、家族の「お母さん」だ。カジュアルゲームが、昼間の暇つぶしのテレビに取って変わったのだという。

ただ、カジュアルゲームが「お母さん向け」だということではない。未開拓だったお母さん層向けにカジュアルゲームを開発し、それが成功し爆発的に増加したのだ。そして今、そのトレンドがピークを迎えており、今後、他の層をターゲットとしたコンテンツが登場する、つまり次なるDisruptionが起きるだろうとHall氏は述べた。

【市場規模の成長性】
ゲームと一口にいっても、アメリカでは「ソーシャル」「モバイル」「オンライン無料会員制(F2P)」「オンライン有料会員制」「コンソール」「PCソフト」の6種類に分けて考えられている。日本だと、GREEやMobageのイメージからソーシャルとモバイルは一体として捉えがちだが、アメリカだとソーシャル(主にFacebook)のゲームのモバイル化があまり進んでいないため、ソーシャルとモバイルは完全に分けて捉えているそうだ。

Hall氏によれば、アドビはこの中でも「ソーシャル」「モバイル」「オンライン無料会員制(F2P)」の3分野を推進していくという。それは、これら3分野の年複利成長率(一定期間にわたる投資に対する収益率)が大きいという予測を踏まえての戦略だ。

【ソーシャルネットワークの重要性】

ソーシャルゲームというからには、やはりSNSへの依存度が高くなってしまう。アメリカのソーシャルゲームNo.1企業「Zynga」の2011年の収入は約900億円だが、その9割以上はFacebook経由で得ている。Zyngaとしては独自の課金システムを導入したいところだが、その目処は立っていないという。

こうした状況の中で、最近アメリカのソーシャルゲーム界隈では、次のことが課題となっているとHall氏は挙げる。


  • 課金しやすいカジュアルコンテンツを開発し、定着させる。
  • そうしたコンテンツを移動しながら遊べるように、モバイルゲームとして普及させる
  • ユーザが利用しやすい課金システムを導入し、課金に慣れさせる。

では、日本市場にもこれらが当てはまるかというと、Hall氏は次のように日本の優位性を語る。

「日本ではiモード時代からこうした課題があったわけで、すでに技術やノウハウを持っている、いわばソーシャルゲームの先進国です。だから、海外のトレンドから学ぶことをせずとも、世界を舞台で戦えると思っています」

大きくかつ成長する市場があり、そこで活躍する技術とノウハウを持っている。ビジネスチャンスがあるのに参加しないのはもったいないというわけだ。

2 ソーシャルゲームを開発する上でのFlashの優位性

では、ソーシャルゲームの開発現場でFlashはどの程度利用されているかというと、すでに幅広く活用されている。轟氏が調べたところによると、Facebookゲームの人気ゲームランキング上位20作品のうち95%が、mixiゲームの総合ランキング上位20作品のうち90%が、Flashゲームだったという。(→ビデオ時間 10:20)

Flashがここまで採用される理由として轟氏は、「リーチ(Flash Playerの普及率)」「パフォーマンス」「開発環境」「表現力」「機能」「スキル」の6つの優位性を挙げ、アドビとしてはさらに磨きをかけていくという。

例えば、Flash Player 11で搭載されたStage3D。これにより、従来に比べて圧倒的に高いパフォーマンスを実現し、デスクトップブラウザー上でもコンソールゲーム並の表現が可能となっている。Stage3Dは3Dコンテンツだけでなく、カジュアルゲームのような2Dコンテンツにも活用できる。実際、セッション7で紹介されるAngry Birds Facebook版は、Stage3Dを利用して開発されている。

そして、Flashでは1つのコードをベースに様々なOSやデバイスへ展開が容易に実現できる点を轟氏はアピールする。モバイル版Flash Playerの開発については中止が発表されたが、AIR on Mobileを通して様々なデバイスへリーチすることが可能だ。しかも、AIR 3.0ではネイティブ拡張(Native Extensions)が追加され、デバイス固有の機能も扱えるようになった。つまり、デベロッパー自身がAIRの機能を拡張することができ、これまでにないFlashゲームを開発することができるのだ。

※ネイティブ拡張の詳細については、「ADC:Adobe AIRデベロッパーセンター」をご覧ください。

3 Flashの優位性はさらに磨きがかかっていく

今後のFlashランタイムの展開において、ソーシャルゲーム開発へどのようなメリットがもたらされるのか。まずは近日リリースが予定されているFlash Player 11.2とAdobe AIR 3.2の新機能が紹介された。(→ビデオ時間 15:00)

この中で特に注目して欲しいと轟氏が挙げたのが「モバイル環境のStage3D」だ。Stage3Dのパフォーマンスについては、様々なFlashクリエイターが実験サンプルをネット上に公開しており、みなさんも体験しているだろう。そのStage3Dがモバイル環境でも利用できるようになり、しかもネイティブライブラリよりもパフォーマンスが良いというのだ。実際に、iPad2上でベンチマーク計測ツール「BunnyMark」を使い、そのパフォーマンスが披露された。

また、先日アメリカのADCにおいてFlash Playerのロードマップが発表され、搭載予定の機能も一部明らかになっている(参考:上条晃弘氏によるまとめ「Flash Player の 2012 年以降のロードマップ公開」)

その中から、Flash Player内部の動作を詳細に把握できるツール「Monocle」について、Hall氏がデモを行った。ブラウザーでFlashコンテンツを開いた状態で、このツールを起動すると、画面上部のタイムラインにパフォーマンスデータがリアルタイムに表示され、ActionScriptのどの部分にどれくらいの時間がかかっているのか、画面のどのエリアで再描画が行われているのかなどの情報を細かく調べることができるようだ。

最後に轟氏のメッセージで講演を締めくくった。
「まだ詳細は言えませんが、アドビではランタイムとツールという両面で色々と開発を行っています。引き続き、Flashテクノロジーに注目してください」

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