アドビ システムズが主催する、Adobe Developer Connection(ADC)連動した開発者向けイベント「ADC MEETUP」。第4回目は、「Social Gaming」をテーマとして2月28日に開催された。

株式会社スクウェア・エニックスでは、同社のコンソールゲームのリソースとアドビのStage3D技術を使い、コンソールゲーム並のクオリティを持つWebゲームの研究開発に取り組んでいる。セッション6では、スクウェア・エニックスの月岡伸博氏とその開発に携わっているsipo.jpの尾野政樹氏により、これまでの研究開発の成果について講演が行われた。

1 リッチなWebゲームを目指す理由

まずは月岡氏が登壇し、研究開発の背景について説明が行われた。
ゲーム市場をみると、マシンスペックの整備やインストール作業が必要となるPCゲーム市場が伸び悩んでいる一方で、手軽に遊べるWebゲーム市場はSNSの普及などによりユーザ数が増え拡大している。また、日本ではWebゲームというとカジュアルな2Dゲームという印象が強いが、海外ではコンソールクオリティ並のWebゲームが増えてきている。

そうした状況を踏まえ、月岡氏は「今後日本でもリッチなWebゲームに対するニーズが高まる可能性がある」と考え、スクウェア・エニックスの強みであるハイクオリティなグラフィックのブラウザー上での再現性や、そのクオリティでゲームプレイする動作の担保について研究することになったという。

その研究において、注目したのがアドビのStage3Dだ。月岡氏は、Stage3Dの利点として「普及率の高さ」「3D表示性能の高さ」「マルチデバイス展開」の3つを挙げる。

2 人気ゲームタイトルのリソースを使った検証サンプル

次に、ブラウザー上でのリッチなグラフィックの再現性を検証する際に用いたサンプルが紹介された。サンプルでは「ファイナルファンタジーXII」(PlayStation2)と「FFCCクリスタルベアラー」(Wii)のモンスターやフィールドマップの3Dモデルを使用しており、下記要素を意識して制作したとのこと。

  • 目標30FPS
  • ロード時間をなるべく短くする
  • モデルに対する陰影
  • 影はなるべくリアルにする
  • 背景の空気感

なお、デモはInternet Explorer 8(MacBook Pro6,2のBootCampを使用)上で行われた。(→ビデオ時間 06:00)

上記サンプルの開発には3DライブラリとしてAlternativa3Dを利用しており、Alternativa社と協力しながら研究開発を行っているとのこと。

3 コンソール並のクオリティを支えている技術

ブラウザー上でのデモであったが、コンソール機で行われているかと思うほど、綺麗かつ滑らかに動いていた。その裏側ではどのような技術が用いられているのだろうか。続いて、スクウェア・エニックスから依頼され、研究開発に協力しているFlashプログラマーの尾野政樹氏が登壇し、技術面での検証結果を紹介した。研究は、池田泰延氏酒井直一氏小川穣氏の3人が加わり、尾野氏を筆頭に進められた。

3Dデータの形式については、互換性の高さやアニメーションを内包できるなどの利点から「Collada(.dae)」が採用された。しかし、Flashに読み込んで表示するとなると、「方言がある(3Dモデルソフトデータによって書き出し内容が異なる、3Dライブラリによってデータの解釈が異なる)」「XML形式なので容量が重くなりがちで、解析にも時間がかかる」「テクスチャなどが複数のファイルになってしまう」などの問題点があり、そのままだと実用的ではなかったという。(→ビデオ時間 12:20)

そこで尾野氏らは、この問題を解決するために独自形式ファイルを介在させることにした。

その結果、特にアニメーションファイルのサイズやその展開時間が劇的に改善されている。

続いて、今回の検証サンプルで取り入れた3D表現として、mipmap/fog/反射/スペキュラ/バンプマップ/丸影チェインのサンプルが紹介された。尾野氏は、さらにAGAL (Adobe Graphics Assembly Language)によるチューニングや、ゲーム会社のノウハウを組み合わせることで、「ブラウザー上でも、最終的にはPlayStation2レベルの表現力が可能だろう」だと述べた。(→ビデオ時間 20:00)

また、尾野氏らはモバイル機器での検証も行っている。モバイルであっても、テクスチャレベルを落とすことで動作するという。テクスチャレベルを落とすといっても、ゲーム会社で培われたスキルを用いれば、見た目の劣化を防ぐことができる。実際、モバイルデバイスでのデモが行われたが、見た目も遜色なく、動作も軽快であった。(→ビデオ時間 22:40)

尾野氏は最後に、これからのゲーム開発について次のように語った。

「PC(ブラウザー)/モバイル/コンソールの間にある垣根は低くなっていて、これら全てを視野に入れた新しいエンターテイメントが生まれつつあると思います。そこで重要となるのは、異業種間が協力し、互いに補間し合うことです。しかし、それでもわからない問題が発生することもありえます。それを乗り越えていけるのは、お互いがフラットに話し合える環境だと思います。制作者の心理距離というのが、とても大切になってくるのではないでしょうか」(尾野氏)

4 ハイクオリティを維持したままプレイ可能

ハイクオリティなグラフィックをブラウザー上でも再現することはできた。では、それをゲームとして成立させることができるのだろうか。月岡氏によれば、「プレイヤー1人、NPC4人ぐらいまでなら、30FPSで遊べる」とのこと。実際、前回のMEETUPでも披露された「BARTS」の最新版のデモが行われたが、まるでコンソール機でプレイしているかのようであった。(→ビデオ時間 26:40)

複数のノートPCで行ったパーフォマンス測定結果も紹介され、GPUであれば全てのマシンにおいて30FPSでの動作となっていた。BARTSのリリースについて月岡氏は言及しなかった。ただ、Flash Player 11.2ではGPUドライバの制限が緩和されて、より多くのユーザ環境でStage3Dを利用できるようになるだけに、BARTSをプレイできる日もそう遠くない、と期待したい。

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