タイムライン派アニメーター視点で、Flash CS5の新機能を紹介します。つまり、タイムライン上に動きが目に見える状態でアニメーションを制作していく場合(ActionScriptを使用しない、クラシックなFlashアニメ制作です!)において、最新のFlash CS5にはどんなメリットがあるでしょうか。Flash CS5は、Flash CS4ほど濃いアップグレードではありませんので、ワークフローが変わるとか、作業が100倍楽になるといったことはないでしょう。しかし、地味ながら見逃せない改善や機能強化がおこなわれています。
「保存して最適化」は、作業していくうちに肥大化したFLAから、不要となった部分を削除してスリムにしてくれる保存法です。CS4ではショートカットがないので、いちいちファイルメニューから選んでいましたが(図1)、CS5ではファイルメニューからこのコマンドが消えています。この「保存して最適化」がなくなったのです。なんと、通常の保存をするだけで常に最適化されるんですよ!アニメに大幅な変更を加えたり、ライブラリから未使用アイテムを削除した後に「保存して最適化」していたのは“過去のこと”になりました。ただ保存するだけでいいなんて素敵じゃないですか。え、やっと普通になっただけですか?
これまで「広告」だけだったカテゴリに「アニメーション」が追加されています(図2)。といっても、それらはアニメーションのサンプルみたいなものです。4:3や16:9などのよく使うものは、画角ごとに何パターンかテンプレートにしておいた方が実用的ですよ(図3)。
パターン描画ツールはCS4から備わった機能です。このうち、つる模様、格子模様、対象ブラシの3つはCS4からあるエフェクトです(図4)。特定の領域をインスタンスで塗り潰す場合に使います。ただし、塗り潰せる範囲はシンボル内であっても最大でステージサイズです。ステージからはみ出す領域を塗り潰す時は、一時的にステージサイズを大きくします。
格子模様についてはパワーアップされました。最大4つまでのシンボルをタイルとして設定できるようになり、それらをランダムな順に塗り潰すことができます(図5)。また、互い違いに塗り潰したり、ステージの境界上も領域に含めたりすることもできます(図6)。コピペをせっせと繰り返してする作業が、1クリックでできるので爽快です!
パターン描画ツールには、新しく追加された描画エフェクトがいくつかあります。3Dブラシは最大4つまでのシンボルで、遠近感のあるストロークを描くことができます(図7)。これは凄いです! 群衆もあっと言う間にできてしまいます(図8)。手作業だったらおっそろしく手間がかかることが、あっと言う間ですよ。ステージの上方ほど遠く(小さく)なります。描き始めは奥からでも手前からでもOKです。
パターンブラシは、ブラシストロークを20種類の線画パターンで描くことができます。ストロークを描く方向によってパターンの向きを変えられます。Illustratorのブラシストロークに似ていますが、あくまでシェイプですので、後でストロークを調整したり、別パターンに変更することはできません。また、Shiftキーを押しながらでもまっすぐには描けません。一発勝負的な度胸が試されるエフェクトです。
ビルディングブラシ、フラワーブラシ、ツリーブラシは、それぞれ4種類の高層ビル、4種類の花、20種類の木がプリセットされていて、誰でもドラッグするだけで摩天楼や花園や森林が簡単に描けてしまうのです。これらの絵は緻密なシェイプのグループで構成されているので、絵として複雑になりがちです。そこで、ある程度描き上がる毎にグループ解除し、シンボル化しておいた方が便利です(図9)。ただ、このツールで簡単に描きながら「苦労して描いた」ことにしたいのですが、パターン描画ツールだと見破られてしまうので、プロの絵描きとしてはツールの恩恵に甘んじることは控えておきます。
稲妻ブラシを使えば、誰でもリアルな稲妻が描けます。稲妻は、ビルや花や木のようには一般的ではないので、すごくニッチなエフェクトです。方向こそ制御できるものの、フォルムはランダムなので、気に入った稲妻が描けたらシンボル化しておくといいです。フレームアニメーションにしてくれるオプションもありますが、稲妻のアニメーションとしては適切ではないのでオススメしません。
炎ブラシは、炎を描くエフェクトではありません。炎のように、ランダムで不定形なグランジ状のストロークが描けます。描き始めのカラーが指定できるので、炎よりはもっと他の使い途がありそうです。
アニメーションのエフェクトとしては炎と煙、そしてパーティクルがあります。いずれも1コマ打ちのスムーズなアニメーションが、指定したフレーム数で生成できます。炎と煙は「終了部分のアニメーションの追加」にすると、いい感じのアニメーションで消えてくれます。特に煙の消え方は文句なしです。炎の方はメラメラ燃える感じで、上方のフォルムに難がありますが、いかにもセルアニメ的です。これでループアニメを作ってみます。
1コマ打ちの30フレームでループする炎を手描きしたら結構大変ですが、このエフェクトなら1~2分で完成します。ただ、炎のフォルムや動きが気に入らないとなれば、がんばって手描きすることになります。
パーティクルシステムは2つまでのシンボルを粒子として散らすエフェクトです 図11 。アニメーションシンボルなら、個々に動いている状態で散らすことができます。例えば、小さな紙切れがヒラヒラとループするムービークリップを割り当てれば、紙吹雪になります。グラフィックのアニメシンボルを割り当てる場合は、ライブラリであらかじめシンボルのプロパティを変更しておく必要があります。
恐ろしく手間がかかることをツールがしてくれるのは嬉しいですが、簡単なことしかしてくれないツールの手は借りるまでもないですね。
IK(インバース・キネマティック)はFlash CS4から使用できるようになりました。ActionScript 3.0のドキュメントであれば、シェイプにボーンを埋め込むか、インスタンスをボーンで連結し、ボーンを動かすことで連動したアニメーションが作れます。Flash CS5では、このIKも強化されています。なんと物理演算を利用したスプリング機能が実装されたそうですよ。要するに、自然なバネの動きのアニメーションを自動的に作ってくれます。
実はアニメーションでも様々な物理現象を描くのですが、物理演算に基づいているわけではありません。見て感じた動きをアニメ的に再現しています。むしろ物理法則を強調したり、それに反したりする動きの方がアニメーション的だったりするわけです。では、スプリングを使ったサンプルを作成してみましょう。
地蔵は石でできていますから、ぐにゃぐにゃと柔らかい動きはしません。しかし、アニメーションの世界は別です。まず、地蔵のシェイプにボーンを埋め込んでアーマチュアを追加します。ボーンツールでシェイプ上を下からドラッグします。そのボーンの先端からさらにドラッグして2つめのボーンを作ります(図12)。
2つのボーンから成るアーマチュアは、レイヤーのアウトラインカラーで表示されます。タイムラインにはアーマチュアのポーズレイヤーが作られます。ポーズレイヤーの10フレーム目でF6を押してキーフレームを挿入します(図13)。
このフレームが最終ポーズとなります。5フレーム目で2つ目のボーンをドラッグしてシェイプを曲げます(図14)。これで地蔵がぐにゃりと曲がって元に戻るアニメーションができました。シェイプトゥイーンだとこうはいきません。さすがIK。ステージ上のIKシェイプを選択してシンボルに変換すれば、IKアニメーションごとトゥイーンで動かせます。ここまでが従来のIKです。
シンボル化したIKアニメーションの編集に入ります。ポーズレイヤーのスパンをクリックして、IKアーマチュアのプロパティでスプリングを有効にします(図15)。IK シェイプの2つめのボーンを選択し、ボーンのプロパティでスプリングの強さを30、減衰を99にします(図16)。強さは硬さのことだと思ってください。数値が0だとスプリング無効、1が最も柔らかく、100が最も硬くなります。減衰はブレーキだと思えばいいでしょう。数値が大きいほどブレーキがよく効きます。数値が小さいとなかなか止まらず、0だとそのまま動きっぱなしになります。
以下が、完成した「やわらか地蔵」です。