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2009年6月18日、東京・大崎のゲートシティホールにおいて「Flashコンテンツをゲームプラットフォームへ展開する技術、ビジネス」と題したセミナーが開催されました。このセミナーでは、Flashのコンテンツをコンシューマー・ゲーム機で表示させるサードパーティーエンジン「Scaleform」の技術、そしてそれを利用した事例として、任天堂Wii向けのエデュケーション系ゲーム「あいうえ・おーちゃん」について、制作の舞台裏が紹介されました。
まずはじめに、アドビ システムズ 株式会社の西村真里子より、Adobe Flashプラットフォーム、およびAdobe Flash CS4 Professionalの新機能をご紹介しました。
近ごろ、Flashプラットフォームにおいてさまざまなツールが登場しています。そこでまず、Flash CatalystとFlash Builderについて、その位置づけを整理。Flash Catalystは、デザイナーが使用するツールで、PhotoshopやIllustrator等のアプリケーションユーザーインターフェイスへ、コードを書かずに変換するもの。そしてFlash Builderは、Flexフレームワークを使ったアプリケーションの開発時に使用する、デベロッパーのためのツールです。
続いて、今回の来場者の全員がFlash Professionalユーザー、そして約半分が「CS3ユーザー」とのことで、Adobe Flash CS4 Professionalの新機能の紹介です。新しいオブジェクトベースのアニメーション制作方法、モーションエディター、モーションエディターを使った3Dアニメーション制作、そしてそのアニメーションをモーションプリセットに取り込む……といった流れをデモンストレーション。そして After Effectsから書き出したXFLファイルをFlashに取り込むワークフローもご紹介しました。
第2部ではいよいよ、Flashコンテンツのゲームプラットフォーム上への展開を可能にする「Scaleform GFx」の紹介です。講師を務めるのは、Scaleform 日本マーケット担当の阿部剛寿氏です。
Scaleform GFxは、ワールドワイドで400以上のゲームに採用されているミドルウェアで、Flashで制作されたコンテンツを効率よくゲームプラットフォーム上で表示させるためのサードパーティ・ソリューションです。Adobe Flash CS3/CS4で作成したコンテンツを、Xbox360やPS3、PSP、Wii、PS2で表示させることができます。
阿部氏はまず、デモムービーを見せながら、Scaleform GFxを使うことで、ゲーム上でどのような表現が可能になるのか、その例を紹介しました。具体的には、フロントエンドのメニュー、HUD(メーターやゲージ)といったものを、Flashでグラフィカルに作ることが可能です。また、ゲーム内の3DのオブジェクトにFlashのムービーを貼付けることもできます。例えば、格闘ゲームのキャラクター選択画面のようなものも、Flashで作成し、Scaleform GFxを介して表示させることが可能です。
Scaleform GFxは、Flashのベクターグラフィックスを三角ポリゴンに変換し、ゲーム機のGPUを使って再生します。「ハードウェアのCPUに低負荷で、軽量かつ高い効率で描画させることができる」と阿部氏は話します。
ゲームを進行させながらリッチなUIを表示させても、ゲーム自体を重くすることなく、非常に楽にHUDやメニューを出すことができます。また、Scaleform GFx独自のアンチエイリアスや、ベクターフォントのテキストレンダリングといった機能も持っています。
オーサリングツールとしては、Adobe Creative Suite 4が使用可能です。とくにデザイナーに対するメリットとして、阿部氏は「信頼できるワールドワイドなサポート、大きなコミュニティ、クリエイターの多さ、ナレッジの多さ」を挙げます。「PhotoshopやIllustratorなど使い慣れたツールが活かせること」も、Flashが使えることのメリットと言えるでしょう。ActionScriptに関しては「ActionScript 2.0に対応しています。3.0についても対応する予定ですが、時期はまだ未定です」と阿部氏は話します。
Flashで作ったものがゲーム内でどのように見えるかはGrant Skinner開発「Scaleform CLIK」ツールを用い、リアルタイムにシミュレーションしながら作業ができます。「Scaleform AMP」を用いて、メモリ使用状況を確認することも可能です。その他にも、Flashコンテンツをゲームに活用するための強力なツールやUIコンポーネント、プラグイン集が揃っているScaleform GFxは、デザイナーにとっても、ゲームプログラマーにとっても魅力的なソリューションと言えるでしょう。
休憩を挟んだ後の第3部では、株式会社ホームメディアから発売されたWiiウェア『あいうえ・おーちゃん』がScaleform GFxを用いて開発された事例について、リトルスタジオインク株式会社 取締役、株式会社ホームメディア代表取締役 町田保氏が講演しました。
リトルスタジオインクは、「ひらけ!ポンキッキ」の映像スタッフが基になって立ち上げた会社で、子ども向けのコンテンツ制作に関しては膨大な経験と資産を有しています。株式会社ホームメディアはその関連会社で、『あいうえ・おーちゃん』のパブリッシャー(発売元)となっています。
『あいうえ・おーちゃん』は、幼児がテレビに向かって楽しみながら学ぶことができる、知育ソフトです。「テレビの画面で楽しめるものを効率よく短期間でWii向けに作るにはどうしたら良いか……Flashしかなかった」と、町田氏は話します。Flash 3の時代から、パソコン向けに知育コンテンツを制作してきたリトルスタジオインクにとっては当然のことでした。
しかし、WiiではFlashが動きません。そこで出会ったのがScaleformです。CEDEC 2008で「ゲームのインターフェイスがFlashで作れる」と聞いて話を聞いたという町田氏。自分たちが作ってきたコンテンツが、なるべく手間がかからないかたちでWiiに使えるということで「ブレークスルーだと感じた」と振り返ります。
ゲームエンジンは高価であるという理由で、Mainプログラム(C++)を自前で開発。その上でScaleformが動くことで、FlashコンテンツをWiiウェアに展開することを実現しました。
『あいうえ・おーちゃん』のオーサリングには、もちろんFlashが使われています。FlashでオーサリングしSWF形式でパブリッシュし、それをScaleform GFxのためのファイルに書き出し、最適化しています(開発当時はScaleformの旧バージョンを使用)。
FlashコンテンツをWii向けに最適化するポイントのひとつは、メモリ消費を減らすこと。町田氏は、PCのFlash Player上で再生するSWFファイルとWii用のファイルとを比較し、同じ内容のコンテンツでも、Wiiウェアのほうではメモリ消費が抑えられている例を紹介しました。『あいうえ・おーちゃん』にはミニゲームがたくさん収められているのですが、画像が多いミニゲームでは、実行時メモリが1MB近く削減できているものもあります。「PCの場合はあまり気にしなくても良いが、ゲームでは数MBを削る争い」と話す町田氏。Scaleform GFxによる最適化は、メモリ消費を抑える上でとても有効であることがわかりました。
また、町田氏からは、Wiiウェアのデベロッパーになる条件についても紹介されました。日本の事情については守秘義務の関係で明かされませんでしたが、北米を例にお話をしていただきました。デベロッパーになるためには、条件があり、主に「ゲームの開発能力を証明する」「セキュリティを確保する」「守秘義務契約」「開発コスト」「ゲームパブリッシャーと契約すること」といった条件が紹介されました。今回の事例で言えば、ホームメディアがパブリシャーで、リトルスタジオインクがデベロッパーとなります。
最後に全体を通しての質疑応答が行われました。来場者の多くがFlash制作者ということもあり、そのような制作者が「どうすればゲーム業界に関わることができるのか?」といった声が挙りました。Scaleformの阿部氏は、Flash制作者がゲーム開発に関わる方法として、ゲーム会社に就職するのが近道だが、それではごく一部にしか関われない可能性があるという現実を踏まえ「パブリッシャーに企画を持ち込むのが良いのでは」と話しました。
サードパーティエンジンScaleform GFxを利用して、Flashコンテンツがゲームプラットフォームですでに活用されている――ということが、今回のセミナーで実事例を通して来場者Flashユーザーにお伝えしました。アニメーションはもちろん、WebやRIA等の世界でFlashを扱ってきたクリエイターやプログラマーには、Flashを用いてビジュアルを表現したり、ユーザーインターフェイスを設計したり、世界観を実現するためのノウハウを数多く持っているはずです。そういったノウハウが、ゲーム制作に活かせることは間違いないでしょう。