今日まで発展してきた医学を支えてきた背景には、新しい分野の医学研究と総合的な医学教育の存在が欠かせない、と言っていいだろう。日々進歩し続ける医療研究の現場ではコンピュータの導入が急速に進み、CTスキャンやレントゲン写真などもデジタル化されている。
東京慈恵会医科大学もその例外ではなく、「病気を診ずして病人を診よ」を基本理念に、臨床医学の研究と医学生の教育が行われ、付属病院では地域医療との連携を推進し、最新の医療設備を備えた高度な診療が行われている。

東京慈恵会医科大学 医学情報センター写真室の業務は、大学での授業用教材として使われる医療写真と、学会で発表するときの資料や研究論文用写真の作成が主である。撮影から写真作成を担当するとともに、教授や学生にPCを使った写真の取り込み、Adobe® Photoshop®を利用しての写真加工、使用目的に合わせた出力方法などについて指導している。写真の用途が多岐にわたるため、それぞれ個別にアドバイスもしているそうだ。
「写真室のスタッフは3人で、撮影から編集、出力といった資料の作成を専門としています。ここ2、3年のことですが、デジタル画像が急速に増えてきました。それまでは医学情報センターでは医療写真を撮るのが主な仕事でしたが、研究者や先生方にコンピュータの操作や、教材用に作成する画像の補整方法を教えたりすることが多くなっています。具体的にはPhotoshopで個々の写真に合わせて補正の濃度の調整を違和感なく行う方法や、スライドを作成する方法などです。今ではほとんどの研究者がPhotoshopを利用していますよ」と、主任の小松一祐氏。自身でも研究者に向けたスライド作成のノウハウ本を執筆し、医療領域での写真活用の発展を目的とする日本医学写真学会の理事も務める。
手術室に設置されているビデオからの静止画の取り込み、電気泳動という検査の標本の撮影、レントゲンフィルム、CT、MRI、顕微鏡画像など、医学情報センターの写真室で作成されるスライド数は、年間4万5千枚にも上る。その3分の2がデジタルデータとして扱われようになった。医療用器材のデジタル化、Photoshopなどのデジタル写真を扱うソフトウェアの登場が、その促進に貢献しているようだ。
また、学会での発表も35mmスライド写真を使ったプレゼンテーションから、Microsoft Power Pointによるオンライン・プレゼンテーションに移行していることも医療写真のデジタル化に拍車をかけている。

デジタル顕微鏡の映像はプラグイン経由で
Photoshopに直接取り込むことができる
「医学情報センターではPhotoshopが登場する前からMacintoshを導入し、Excelでの表計算やIllustratorによる図の作成に利用していたので、Photoshop 1.0が発売されるとすぐに購入しました。教材用に写真を使う場合には、手術前・手術後の写真を並べて、その違いがわかりやすいようにレベル補正などを使って加工します。また、作成した写真は学会で使われるスライドやポスターなどの用途に使われます。デジタル化された写真は、環境や機器によって色味が変わることがありますが、Photoshopを使えば写真を元の色に近づけることができます」。
また、病理部櫻井氏は「病理部では顕微鏡から直接Photoshopのプラグインで何百倍にも拡大した組織の写真を取り込んでいるのですが、顕微鏡で見た組織の染色とPCに取り込んだ画面上で見た色が違う場合があるので、元の色に近くなるように補正しています」と実際の現場でのPhotoshopの活用例を挙げてくれた。
色の再現性の問題はPCによって違うため、厳密に色を合わせることは難しいが、元のデータ上の数値は変わらない。そこで、写真画像をRGBで表示し、チャンネルパレットから赤いチャンネルだけを表示して、数値として検出することにより比較材料として使うことも可能だという。

不鮮明な顕微鏡映像も、Photoshopのレベル補正を使ってヒストグラムを調整することにより映像が鮮明になる。また調整レイヤーを使うことで、元の写真はそのままで一度かけた補正も後から変更することができる

RGBモードでカラー表示している画像では色情報により判断される

カラー画像をPhotoshopのチャンネルパレットを使って、RGBそれぞれのチャンネルのみを表示させることで色表示だけでは分からなかった数値による解析が可能になる