「全人教育」を掲げる玉川大学は、21世紀にふさわしいさまざまな教育活動を展開している。e-Learningにも積極的に取り組み、Adobe® Acrobat® Connect Professional(旧Macromedia Breeze)を活用して、教員の出張先であるイタリアやアメリカなど海外からでも臨場感溢れる遠隔講義を実現。休講による教育サービスの低下を防止すると同時に、教育活動の自由を拡大した。

加速度的に変化する社会にあって、少子高齢化の進行や社会人教育ニーズの増大、グローバル化に対応した教員の海外出張や学生の交換留学の増加などを背景に、大学教育のあり方が問われている。特に教育の高度化・高密度化、社会のグローバル化に対応するには、「誰もが、どこからでも、いつでも」知識を享受できる遠隔教育を採用するなど、授業形態の多様化が急務となる。そこで、玉川大学では、大学支援組織であるeエデュケーションセンターを中心に、ICT(Information Communication Technology)を駆使するLearning Management System(LMS)やAdobe Acrobat Connect Professionalを導入するなど、遠隔教育にも積極的に取り組んでいる。
大学全体の教育の情報化を推進している、eエデュケーションセンター 副センター長を務める学術研究所の橋本順一 講師は、こうした変化への対応について次のように話す。
「2001年設置の経営学部では、e-Learningによって、学生全員が授業時間以外にも教材に触れることができる環境を整えました。しかし、学部レベルでの推進では他学部の学生はその恩恵を受けることができません。そこで、2004年には全学的なe-Learning環境を整えました。多くの授業で活用するためには、一人でも多くの先生が利用できなければなりません。そこで、なるべく使いやすいe-Learningシステムとして、Blackboard@Tamagawa(大学e-エデュケーションシステム)を構築したのです。その結果、大学全授業の44%がe-Learningを利用するまでになっています(2006年春セメスター実績)」
これは従来の対面授業に遠隔教育の利点を加え、教育を高度化するためのシステムであり、ネットワーク時代にふさわしい教育形態を実現するインフラが整備されたことになる。
その後、玉川大学では、海外からのリアルタイム遠隔講義の可能性を探るため、いくつかの遠隔講義システムを使って検証を行った。
「2005年春、アメリカ出張の先生に随行して、旧来のWeb会議システムによる遠隔講義をサポートしました。このときのシステムは、設定や操作も簡単ではなかったからです。遠隔講義はできたものの、ブロードバンド回線でないと映像品質がよくない、専門知識のない先生一人ではトラブル対応が困難など、遠隔講義における課題点が見えてきました。そこでもっと手軽に使えるシステムはないか検討したのです」(橋本 講師)
真っ先に候補として挙げられたのが、eエデュケーションセンターが、3年前からそのユニークな機能に注目していたAdobe Acrobat Connect Professionalだった。他のソフトと比較検討した結果、「機材やソフトウェアに詳しくない教員でも操作が容易、通信回線のスムーズな切り替えが可能、クライアントPCへの専用ソフトウェアのインストール不要、コンテンツのFlash化などの付加価値が高い」(橋本 講師)という点が評価され、Adobe Acrobat Connect Professionalが採用された。
「2005年10月、Adobe Acrobat Connect Professionalを試用した海外留学の学生と国内とのコラボレーションをした経験から、これなら海外からの遠隔講義にも十分使える」(橋本 講師)ことがわかり、すぐにAdobe Acrobat Connect Professionalによる遠隔講義が実施される。
「私が担当している経営シミュレーションの講義が、アメリカのe-Learning動向調査と重なってしまいましたので、Adobe Acrobat Connect Professionalを使ってホテルのブロードバンド回線経由で学生30数人に遠隔講義を行いました。今まで演習を繰り返してきて、その日で最終結果が出る講義だったこともあり、皆、熱心に取り組みました」(橋本 講師)
予定通りできないことも想定して、出発前に「プランA:ハイスピードで対応」〜「プランD:全くの自習」までを用意して臨んだ講義だったが、結果はAdobe Acrobat Connect Professionalであれば海外からの遠隔講義が十分可能ということが実証された。
Adobe Acrobat Connect Professionalならナローバンドでも遠隔講義を実現する
国際教育センター長を兼ねる文学部の小田眞幸 教授は、役職上海外出張が多いため、休講対策が大きな課題だったという。
「2004年、国際教育センター長代理になり、年6〜7回は海外出張に行くことになりました。最近は教育サービスの面から、簡単に休講できないのが実情です。そこで、海外から遠隔講義を行うことにしました。ただ、海外出張には一人で行きますので、せいぜいノートPCやWebカメラしか持っていけません。また、実際に現地に行かないと通信環境も確認できませんので、システムに詳しくなくとも容易に扱えるものでなければ使えません」
eエデュケーションセンターからAdobe Acrobat Connect Professionalの評判を聞いた小田 教授は、2006年5月、イタリアで開催されるマルチモダル学会に参加した際に遠隔講義を実行することにした。
「事前にホテルにブロードバンド環境を何度も確認しましたが、実際には普通の電話回線(ナローバンド)でした。ですから、Adobe Acrobat Connect Professionalを急遽ナローバンドに設定して、朝4時半に起きて1時間のマルチモダルに関する遠隔講義を行ったのです。まさにマルチモダル学会の開催地で臨場感があり、40分間安定した講義を行うことができました」(小田 教授)
ちなみにマルチモダル・コミュニケーションとは、発声(speaking)、動作(gesture)、視線(looking)など複数のモードを協調させたり、同時に使うことによって、質の高い効果的な意思疎通(情報伝達)を実現する方法である。
「マルチモダルでは五感を使います。今までのコミュニケーションは言語が先で画像が後でしたが、画像を先に見せてしまえば理解も早くなります」と語る小田 教授のAdobe Acrobat Connect Professionalによる遠隔講義は、マルチモダルの可能性をゼミ生に実感させることができたようだ。
Adobe Acrobat Connect Professionalによる海外からの遠隔講義は、教員のグローバルな活動を支える休講対策としてはもちろん、受講した学生にも好感を持って受け入れられた。
「演習の最後に行ったアンケート結果から、受講生にとって海外からの遠隔講義がとても印象に強く残っていることがわかりました」(橋本 講師)
「Adobe Acrobat Connect Professionalは通信速度に応じて画像品質を選択できるので、通常の電話回線の速度でも十分なコミュニケーションを行うことができました。画像はスムーズではありませんが、学生は高画質よりも画像と音声が同期していればいいようです。双方向でのやりとりも違和感なく、イタリアにいることを忘れるほどでした。教師の姿が見えているのが授業であり、教師の姿が見えないのが自習ですから、学生にとってAdobe Acrobat Connect Professionalによる遠隔講義は普通の授業と変わらないことがわかりました。休講するより確実にプラスです」(小田 教授)
こうした遠隔講義の成功を踏まえて、Adobe Acrobat Connect Professionalに対する期待はますます大きくなっていく。
「今後は、教員の遠隔講義だけでなく、海外にいる交換教員や交換学生との意見交換、さらに大学が提供する教育サービスの一つとして、幅広くAdobe Acrobat Connect Professionalを活用したいと思います」(橋本 講師)
「直近では、ロンドン大学とAdobe Acrobat Connect Professionalを使った面接を試行する予定です。最初は顔合わせ程度だと思いますが、来年度はロンドン大学の面接官と留学予定の学生との面接を前向きに検討しています」(小田 教授)
大学全入時代の学生確保が課題となっている今、マルチモダル・コミュニケーションをサポートするAdobe Acrobat Connect Professionalは玉川大学の教育サービス向上の推進力として期待されている。