アクセシビリティ

ADOBE CREATIVE SUITE 3 Web Edition TOUR レポート


Flash から考える、広告のつくりかた

電通インタラクティブ・コミュニケーション局テクニカルディレクター 中村洋基氏によるセッションです。普段は主にFlashによるバナー広告を中心に作成されているそうですが、ロンドン国際広告賞グランプリ、カンヌ国際広告賞金賞など50以上の広告受賞歴を誇り、D&AD審査員やロンドン国際広告賞審査員もつとめる中村氏。次の佐野氏のセッションの前ということもあり、まずは「初級編」として過去の中村氏の作品紹介からセッションは始まりました。

「技術より、アイデアを。」これは中村氏が作品制作の際に常々考えていることだそうです。「まずはそれを感じてもらいたい」ということで、以下のような自身の作品紹介が行われました。

T3 Knock

縦長のバナーの中にトイレがあり、中に誰かが入っている。マウスカーソルを近づけるとカーソルの形が手に変わりノックできる。ノックすると中の人から叩き返されてしまうのだが、何度かやっているとやがてその音に合わせるかのように「ターミネーター」のテーマ曲が流れ出し、扉が開くと「ターミネーター3」のDVDが現れてくる。そして「I'm back」の声とともに再び扉は閉じる。曲中の金属音と扉の鍵が開く音が同期している凝りようで、思わず会場は笑い声に包まれました。

A small car carries big

ダイハツの軽自動車タントのフローティング広告。なにげないニュースサイトのブラウザ上部にあるバナー内に車が現れ、中央位置に止まるとなんだか後部のトランク部分がムズムズ動いています。思わずクリックするとブラウザ内にある他の文字やサイトの画像ロゴまでもがすべてトランクの中に吸い込まれていきます。真っ白になった画面の中に「こんなに積める!?」とコピーが表示。車の扉が開きその「?」の文字だけが車に乗り込むように吸い込まれ、車は走り去っていくのでした。

Driver's Eye

バナー内に運転者の目線で道路を走っている動画が流れていて、表示されているハンドルを左右に動かすと動画もそれにあわせて左右に動きます。ハンドルを左右に動かすことに夢中になっていると、画面右側にある縦長のバナーの隅にある携帯電話から着信音が聞こえてきます。「なんだろう」とその携帯電話をクリックすると、大きな衝突音とともにブラウザ全体がクラッシュ! 運転中の携帯電話の使用を注意喚起する公共広告機構のバナーでした。

Wrap it

株式会社クレハのフローティング広告です。ニュースサイトのバナーに食品包装ラップが表示されています。ドラッグするとニュースサイトの文字の上にラップをかけることができます。すると画面が暗転して「数年後…」の文字が現れてきます。画面が戻るとブラウザの表示は「ファイルが見つかりません。HTTPエラー404。」のエラー表示が…しかし、ラップされた部分だけはニュースサイトの情報が残ったままです。

決められた広告枠を上手に活かしながら、如何にユーザーにクリックを誘導させ、面白いと思わせるか。そこにはまずアイデアがあり、技術的には初級編で十分勝負できる。そう中村氏は謙遜も含めて仰っているのだと思われましたが、そこにはアイデアで勝負すれば見る側だけでなく広告掲載主も広告スペース提供者も、さらには海外の人達だって納得させられる。そういう自信が感じられ、同じFlashを使用している私達に勇気を与えてもらえたような気がしました。

その他、あらかじめ1年分の動画ムービーを作成し、それを毎日1本配信しているクレライフ、ゲームをクリアすると高級時計がもらえてしまう crazy genius、地図情報と一致させた地表の画像データをFlash8の「ディスプレイスメントマップ」 を使って変形させ、あたかも地球上を実際に飛んでいるように見せる The Blue Bird Journey等の現在公開されている中村氏が担当されたサイトも紹介してくれました。

一通りのデモを終えたところで中村氏は、「技術より、アイデアを。だから、技術を知ろう。」と結びました。製作に携わっている人たちは、技術発で考えがち。伝えたいことがまずあり、それを表現する道具としての技術を磨いていく必要がある。そこには、技術に振り回されない、けれども技術力があり、それでいて見たことがないものを作ることができる。そんな人がクリエーターとして必要とされている。数々のアイデアに溢れた衝撃的な作品を目の当たりにした後ということもあり、大変深い言葉として心に刻まずにはいられませんでした。

残りの時間は、中村氏による Flash CS3の新機能についての補足紹介となりました。
Flash CS3より、ペンツールがIllustrator風に扱えるようになったこと。モーショントゥイーンをActionScriptのコードとして書き出せるようになったため、アニメーションの情報をスクリプトとして再利用できるようになったこと。コンポーネントをダブルクリックすると、使用されているグラフィックが整理された形ですべてステージ上に表示されるので、自身でカスタマイズが行いやすくなったこと。それぞれ時間の関係で触れられなかった新機能について、中村氏自ら実演を交えて紹介してくれました。

また、ActionScript 3.0 によって従来の計算速度が約10倍速くなったことから、どのようなコンテンツが可能になったかについて紹介してくれました。まず、無償で配布されているpapervision3DというFlashのクラスファイルを使用した三次元表現です。コードの中の数行の書き換えを行うだけでFlash上で入力されたテキストがマウス操作にあわせて3次元で動かすことができるようになったり、たった1行のコードを書き換えるだけでプレーンな四角形からキューブ、円に変更を行うことが可能という容易さです。これにはただただ驚かされました。

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これまで作ったコンテンツもActionScript 3.0 に書き換えることで大きく処理の改善が見込めるのではないかとのこと。ここで、ActionScript 3.0を使用した実例として、ユーザーから投稿された膨大な数の写真やムービーを素材としてモザイクアートの動画にしてしまう「KDDI - EYE Project」という衝撃的なサイトを紹介されました。ActionScript 3.0 によって、すでに隔世の感を抱かずにはいられないサイトでした。

ここでお時間となり、ActionScript3.0による処理の改善についての詳細は「上級編」の博報堂佐野勝彦氏のセッションへ引き継がれることになりました。