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MAX Japan 2007 レポート


基調講演

基調講演

華々しく開幕したAdobe MAX JAPAN 2007。基調講演が行われた会場は、千人を超える聴衆者で埋め尽くされた。

Adobe MAX Japan 2007の注目すべき基調講演は、アドビ システムズ 株式会社代表取締役社長 ギャレット イルグにより本イベントのテーマである「Connect、Discover、Inspire」についての説明から始まった。「アドビはモバイルを含め今後展開されるクロスプラットフォームの流れの中で、開発者やクリエイターと情報や知識を共有し、RIAやユーザ体験についての課題を一緒に乗り越えていきたいと考えている」としたうえで「新しいコミュニケーションの変革を日本で起こしていきたい」と高らかに宣言した。

続いて米国アドビ システムズ社 プラットフォーム事業部担当シニア バイスプレジデント兼チーフ ソフトウェア アーキテクトであるケビン リンチが登壇し、「素晴らしいユーザ体験を提供するためには、まずコンテンツこそが王(King)であり、コンテンツの魅了にフォーカスすることが重要。ユーザが期待する情報へのアクセスをいかに簡素化できるようにするのか、さらにGUIに意味のある動きを持たせることが重要になってきます」と、新しい次元のユーザ体験を提供する方法論について説いた。

米国アドビシステムズ ケビン リンチ

米国アドビシステムズ ケビン リンチ


現在のユーザ体験に欠かせない動画については、すでにWeb上のビデオの70%がFlashで配信され、再生環境の98%にはすでにFlash Playerがインストールされている点を強調。Flash PlayerがH.264へ対応することで、PCのフルスクリーンにも耐えうる720pレベルの高画質動画を配信できると話した。さらに高度なテキスト処理と3Dレンダリングをサポートした次期Flash Playerの「Astro」、そして新しいメディア再生アプリケーションである「Adobe Media Player」を紹介。とくにAdobe Media Playerは、RSSでフィードされる情報を元に動画再生を行ったり、オフラインでも使用できるなど、動画コンテンツにおけるユーザ体験を大きく広げるメディアプレーヤーであることをアピール。コンテンツプロバイダーにとっても、動画の再生中にオーバーレイして広告を表示することができるため、より自然な形で広告収益を確保できることを示した。

AIRがもたらす新次元のリッチインターネットアプリケーション

次にRIA(Rich Internet Applications)の分野においても、アドビは積極的にサービスを提供していくとしたうえで、Webブラウザ上で動作するワープロソフト「Buzzword」を紹介。これは従来のワープロとは一線を画す、Web 2.0時代のワープロだ。作業状態や作業履歴をオンラインで共有し、複数人での共同作業が行える機能は、文字列のレイアウト処理もすべてActionScript 3.0で実装されている。また、これだけの性能をもつRIAならデスクトップアプリケーション化できたら良いのではないかとしたうえで、AIRアプリケーション化されたBuzzwordを披露。ブラウザ上では行えなかったドラッグ&ドロップによるPCへのデータ保存や、ローカルにあるWord書類を一括でアップロードするといった連携がAIR版では可能となっていた。これらはすべてAIRと.NETにより実現されていて、Adobe Creative Suite 3 Master CollectionとFlex Builderのみで開発されている。

ここでAIRチームのマイク ダウニーが登壇し、AIRによるアプリケーション開発の利点を語った。RIAをそのままデスクトップに展開でき、OSやブラウザに関係なく、オフライン状態であっても動作。さらにドラッグ&ドロップ、PDF、そしてユーザからのフィードバックにより実現したSQLiteデータベースなどの豊富な機能を実装したアプリケーションを、普段から使い慣れているツールやコードを使って開発できるのは、アプリケーション開発においての大きな利点だった。

米国アドビシステムズ マイク ダウニー

米国アドビシステムズ マイク ダウニー


ここでAIRアプリケーションの一例が紹介された。Salesforce.comが開発したJavaScript&HTMLベース営業支援ツールでは、ネットに繋がっていない状態でローカルマシンにあるvCard形式の名刺データをドラッグして読み込み、その後ネットに繋がるとサーバ上の顧客情報が自動的に書き換えられるデモも披露されました。すでにあったWeb用のコードをAIR化するのに要したのは、開発者1人で2~3日だけだったと、AIRアプリケーション作成の容易さを強調。AIR 1.0はほぼ完成状態にあり、正式リリースももう間もなくで、完成を前により多くのユーザからのフィードバックを求めていると結んだ。

Flexを中心とした、デザイナーとエンジニアの協調環境の整備

次にFlexについてテッド パトリックが登壇し、現在オープンソースとして開発中のFlex 3についての新機能を紹介。リファクタリングへの対応、メモリとパフォーマンスをプロファイリングすることによる内部動作の視認性向上、変数、メソッド、プロパティを複数のクラスをまたいで検索することができるようになるなど、より生産性の強化が図られている。

米国アドビシステムズ テッド パトリック

米国アドビシステムズ テッド パトリック


また、現在開発中のアプリケーションとして、Flexと密接に連携できるデザイナー向けのGUI作成ツール「Thermo」を、マーク アンダースとスティーブン ハインツが紹介。「Thermo」はデザイナーが一切の開発コードを記述することなく、PSDファイルなどの素材を元にリストやメニューといったUIデザインやアニメーション効果の作成を行えば、それがMXML形式で保存され、Flex開発者に渡すことでデザイナーとエンジニアの間でスムーズな協業作業が行えるという「RIAデザイン用ツール」だ。

NTTドコモが推進する、携帯電話のリッチコンテンツ化

アドビからのプレゼンテーションが一通り終わったところで、株式会社NTTドコモ執行役員 マルチメディアサービス部長夏野剛氏が壇上に招かれ、Flash LiteならびにPDF機能を搭載した携帯端末の展開と、コンテンツ分野における堅調さをアピールした。まずFlash Liteについては、過去5年間で約8,000万台にも及ぶFlash対応端末を販売。これを受けて既にドコモのポータルサイトはすべてFlash対応となっており、全ユーザの90%以上がFlashを使って閲覧しているとのこと。さらに、優れたデザインやファッション性、直感的に扱えるユーザインタフェイスを可能にするFlashは、携帯コンテンツに変革をもたらしており、コンテンツ分野におけるドコモの収益性に高く貢献していると語る。

PDF対応端末についても2005年の901iSシリーズよりPDFビューアーを搭載しており、すでに2,500万台以上の販売数を誇る。今後の液晶画面の高精細化も相まって、さまざまな情報を携帯に入れて持ち歩くことが一般的になるのではないかという見通しを示した。

最後にアドビのFlashCast技術で実現しているiチャネルを紹介。わずか2年で1,300万契約を超えており、コンテンツビジネスの中でも大きな収益を上げていると言う。また、コンテンツプロバイダーへ向けては、おこのみチャネルのサービスを紹介。ぜひ利用してほしいとアピールした。

株式会社NTTドコモ 夏野剛氏

株式会社NTTドコモ 夏野剛氏


最後にギャレット イルグが登壇。本イベントを通して様々な交流を図り、より有意義なものにして欲しいと結んで基調講演は終了。そして充実した2日間に及ぶAdobe MAX Japan 2007のスタートとなった。

ギャレット イルグ

ギャレット イルグ



アドビ システムズが考える未来に向けたテクノロジーの可能性と日本市場に対しての展望

RIAのバックエンドに革命を起こすアドビ

Adobe MAX Japan 2007、2日目の基調講演は、アドビのサーバテクノロジーをテーマに行われた。ケビン リンチの紹介で登壇した米国アドビ システムズのテッド パトリックは「RIAのバックエンドでは何が起きているのでしょうか。(RIAを使うユーザは)知らないところでのプロセスが、ユーザ体験を損なってしまうことがあります。そうならないためには、バックエンドにもしっかりとした価値を提供しなくてはなりません」と話し、そのバックエンドを担う製品である「LiveCycle ES」を紹介した。

Adobe Flex テクニカル エバンジェリスト、テッド パトリック

Adobe Flex テクニカル エバンジェリスト、テッド パトリック

テッド パトリックがLiveCycle ESの事例として紹介したのは、MFG.com。時間帯も通貨も違う、さまざまな地域でビジネスを展開するMFG.comが、LiveCycle ESをバックエンドとするシステムを用い、サプライヤーに対する見積依頼を行い、その価値でCADデータからPDFへの自動的な変換や、やり取りされるドキュメントの知的財産保護などを、ワンストップで行っている様子を紹介。

LiveCycle ESには、RIAのデータアクセスをよりリッチにするLiveCycle Data Services, PDFフォームとFlexアプリケーションの連携開発を容易にするFrom Guide機能、ビジネスプロセスの自動化を実現するLiveCycle Process Managementと利用者へのポータル環境を提供するWork Space機能、さらに情報セキュリティを実現するLiveCycle Rights Managementなど、用途に合わせて組み合わせることができる機能やソリューションコンポーネント群が含まれており、ソリューションの要件にあわせた対応が可能だ。


LiveCycle ESの紹介の後は、ケビン リンチが再び登壇し、Flexを用いコラボレーションアプリを製作する「CoCoMo」、音声データをRIAに統合する「Pacifica」、ドキュメント共有のためのフリーストレージサービスである「SHARE」、そしてイメージデータを管理し目的に合わせたフォーマットと解像度での提供を簡単に行えるScene 7 Imagengといった、開発中のサービス群を紹介。

国内のRIA事例を紹介

続いて、サイバーエージェント、ヤフー、楽天という日本を代表するインターネット企業である3社が登壇し、自社のRIAへの取り組みについて語った。最初に登壇したのは、株式会社サイバーエージェント 新規開発局局長の長瀬慶重氏と、同社新規開発局 RIAテクニカルディレクターの矢内幸広氏。

長瀬氏は「ITリテラシーの低いユーザに対しても価値を直感的に理解させることができるかどうか」が、真のユーザエクスペリエンスを実現するための鍵であると言う。「ユーザにいかに価値を提供するかを、すべての開発者とクリエイターが、メディアの開発の冒頭から考える必要がある」と、長瀬氏。

そして実際に同社が取り組んだ事例を、矢内氏のデモを交えつつ紹介。サイバーエージェントが提供する「アメーバブログ」で使用するための絵文字をユーザが作成し共有できる「みんなの絵文字」、アバターを着せ変えることでユーザ自身のファッション性を表現できる女性のためのコミュニティサービス「プーペガール (poupeegirl)」、格闘技イベント「K-1 WORLD MAX 2007」のプロモーションの一環として行われた、Web上のタイピングバトル「K-1 WORLD MAX 2007 TYPING BUTTLE」などが紹介された。

さらに矢内氏は、机の上で写真を広げるように、楽しく写真の整理を行うためのAIRアプリケーションを披露。「サービスとサービスをつなぐブリッヂ的なところを目指している」と話し、Adobe AIRの方向性のひとつを示した。

株式会社サイバーエージェント 新規開発局 長瀬慶重 氏、株式会社サイバーエージェント 新規開発局 矢内幸広 氏

株式会社サイバーエージェント 新規開発局 長瀬慶重 氏
株式会社サイバーエージェント 新規開発局 矢内幸広 氏

女性のためのコミュニティサービス「プーペガール」

女性のためのコミュニティサービス「プーペガール」


続いて登壇したのは、ヤフー株式会社の大蘿敦司氏。大蘿氏は、Yahoo! JAPANのトップページを2008年1月1日にリニューアルするのに合わせ、広告スペースを拡大すること、そして現状の「Flash 6縛り」を撤廃することを検討中であることを紹介した。

また、Yahoo! JAPANの中でも多くのユーザが利用するYahoo!メールについては、日本独自の取り組みとしてFlex 2&Flash Player 9ベースで試験開発中であることを公表。 新しいYahoo!メールについて大蘿氏は「もともとは米国で進めているAjaxベースのシステムのローカライズをを進めていましたが、レスポンスの問題を抱えていました。そこで試しにFlashで作ってみたところ、レスポンスが高くて使いやすい。いつローンチできるかはわからないが、順次テストを行っていきたい」と。また、その開発面では「Flex 2が開発スピードの向上に役立つ」とも話した。

ヤフー株式会社 マーケティング本部長 大蘿淳司 氏

ヤフー株式会社 マーケティング本部長 大蘿淳司 氏


続いて、楽天株式会社からは取締役常務執行役員・安武弘晃氏が登壇。安武氏は、同社のショッピングモール「楽天市場」で爆発的な売り上げを誇るショップのサイトを見せながら「売れている商品は必ずしもクールなものではない」と紹介し会場の笑いを誘いつつ、「商売の情熱×適切な情報×リッチなインタフェイスの可能性」というテーマについて話した。

例えば、ユーザが楽天市場の商品を検索して(楽天市場内での)「お気に入り」に入れるという作業を行う際に、HTMLベースのコンテンツでは作業性に限界があることを示し、それらの操作を直感的に、ドラッグ&ドロップを用いてスムーズに行うことができるAIRアプリケーションのサンプルをデモした。

楽天株式会社 取締役常務執行役員 安武弘晃 氏

楽天株式会社 取締役常務執行役員 安武弘晃 氏

ショッピングモール「楽天市場」

ショッピングモール「楽天市場」


2008年のロードマップ

最後に再びケビン リンチが壇上に上がり、アドビ製品のロードマップを紹介。MAXにおいても多くの新しい発表があったほか、2008年はAIR 1.0や次期Flash Playerである「Astro」をはじめとするいくつものプロダクトのリリースが予定されていると言った。このロードマップに対する期待感に包まれながら、2日目のキーノートが終了した。