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企業変革の第三の波、エクスペリエンス ビジネスの時代とは(Adobe Summit 2016 キーノート講演1)

2016年04月12日

 
【POINT】
  • 消費者は商品やサービスを自らの判断で選択するだけでなく、エクスペリエンスを最重視している
  • 「エクスペリエンスビジネス」で求められるのは、顧客を喜ばせ、驚かせること。その前提要件は4つある
  • エクスペリエンスがビジネスの新たな主戦場となった今、消費者はこの波に乗れない企業から去っていく。企業は自ら変革しなければならない

 


「すべてのビジネスにおいて、企業は顧客を中心に置かなければいけない」。アドビ システムズCEOのシャンタヌ ナラヤン氏は、「Adobe Summit 2016」初日のキーノートでこう語った。ナラヤン氏が強調するのは、いまやあらゆるビジネスの中心に消費者がいる、ということだ。消費者は与えられたものをただ受け入れる存在ではなく、自らの判断で選択する。そして商品やサービスの価値だけでなく、そこから得られるエクスペリエンスを最重視しているのだ。

 
アドビCEO シャンタヌ ナラヤン
 

厳しい競争にさらされる企業にとって、エクスペリエンスは経営資源を優先投入すべき領域になっている。デジタル化の進展により、「いまや航空券、ホテル、レストラン、バスケットボールのチケットの予約が数回のスワイプのうちにできるようになった。そこでエクスペリエンスは、人々が抱くどんなインテント(意図)に対しても、興味を引き、パーソナルで『台本通り』にもたらされ、完璧で美しくなくてはいけない」とナラヤン氏は言う。それはチャンスでもある。企業の望むことを実現できるテクノロジーは既にある。「デジタルエクスペリエンスを通じて世界を変えるときだ」と同氏。

 

「企業経営を支えるテクノロジーの波は、1960年代の生産管理や会計などの企業資源計画(ERP)、すなわち『バックオフィス』から始まった」と指摘するのはデジタルマーケティング担当エグゼクティブバイスプレジデント兼GMのブラッド レンチャー氏だ。2010年代のいま、バックオフィスは競争の源泉ではなく、欠くことのできない企業基盤になっている。次に訪れたのが「顧客関係管理(CRM)などの『フロントオフィス』という第二の波だ」。これによって企業内全般にテクノロジーが浸透した。

 
ブラッド レンチャー
 
この後に続く第三の波こそ「エクスペリエンス ビジネス」だ。サービス業の波の到来を予測した、アルビン トフラーの「第三の波」を想起させる。この第三の波による変革は、企業内から企業が接する顧客へと向かう。そして「人々はまだ望むものを手に入れていない。『エクスペリエンスビジネス』で求められるのは、顧客を喜ばせ、驚かせることだ」とレンチャー氏は説明している。
 
エクスペリエンス ビジネスの前提要件として、人々が望むエクスペリエンスの4要素をレンチャー氏は挙げた。
 
Know me, Respect me(私を知り尊敬してほしい)
Speak to me in one voice(わかりやすい、たったひとつメッセージを伝えてほしい)
Make technology transparent(テクノロジーを意識させないでほしい)
Delight me every turn(いつでも喜ばせてほしい)
 
何でも自由に情報を得られる今、消費者は力を手に入れた。「消費者は自分の求めているものを『台本通り』に、すなわち予期的に得たがっている。と同時に、プライバシーを十分尊重してほしいと考えている。さらに、情報がさまざまなチャネルから無秩序に届くのではなく、ひとつに統合され、自分のコンテクスト(文脈)に沿った、レリバンシー(関連性)の高いメッセージが届くことを求めている」。
 
このような複雑な要件に対応するには、多様なニーズに素早く対応するためのテクノロジーが欠かせない。しかもエクスペリエンスの裏側にあるテクノロジーは、その動きを消費者に見せつけてはいけない。むしろ、不可視(トランスペアレント)な空気のようなものであるべきだ。「そこにテクノロジーが介在していることすら気づかない」存在であるべき、とレンチャー氏は述べた。マーケターがクールだと考えるようなプロセスに、消費者はまったく関心はなく、自分にもたらされた「結果」だけを見てその良し悪しを判断する。そして人々は常に喜ばせてほしいのだ。
 
数限りない情報接触の機会を得た消費者の期待は、留まることがない。特にモバイルはその傾向に拍車をかけている。彼らは少しでも不快なエクスペリエンスを得ると、消費行動を取りやめ、すぐさま違うことに関心を移すのだ。詳しくはアドビの消費者行動調査を見て欲しい。
 
では、企業はどうやってこのトレンドを乗りこなすのか。レンチャー氏は、ムーアの法則として知られるコンピューティングパワーが18カ月間ごとに2倍になるような世界では、企業は常にマーケティングのあり方を変化させなければならない、と力説する。レンチャー氏はデジタルトランスフォーメーション(デジタル変革)を遂げている企業の好例として、マクドナルトとRBSを挙げた。
 
 

マクドナルド:アプリでオンライン ツー オフライン(O2O)

 
マクドナルドCMO デボラ ワール
 
「マクドナルドは18カ月前に顧客エクスペリエンスの改良に対して資源を注ぎこむようになった」とCMOのデボラ
ワール氏は述べた。その中でももっとも力を注ぐのが、一人ひとりに着目し、デジタルからリアル店舗に顧客を呼びこむO2O(オンラインツーオフライン)だ。
 
全米で1日に2600万人が来店するというマクドナルドのビジネスモデルでは、顧客の来店サイクルが短くなることが好ましい。このため、再来店までのジャーニーを短くすることを目指したという。
 
1000万ドルでモバイルアプリを開発し、新商品、季節商品などのアナウンスメントを行うなど「デジタルでサプライズを与え続ける」ようにしている。「0.5秒に1回ソーシャルで言及される」ほど人々の話題に上がる状況を、顧客が来店するきっかけにするため、レスポンスするようにした。その結果レスポンス率は10%を超えている。そしてさまざまな顧客接点のエクスペリエンスを素晴らしいものにするため、エクスペリエンスをテクノロジーによって管理し、コグニティブ(機械学習的)な最適化を繰り返しているという。
 
 

RBS:デジタル化を怖れてはいけない

 
RBS ジャイルス リチャードソン
 

ロイヤルバンク オブ スコットランド(RBS)は、伝統的な金融業の企業風土だったが、デジタルトランスフォーメーションを推し進めるために「スーパースターDJプログラム」というプロジェクトを立ち上げた。データ分析やテストと最適化を繰り返すように組織の仕組みを整えて動機付けすることで、エクスペリエンスを向上させた。顧客へ届けるメッセージをデバイスごとに最適化するためには、機械学習を利用した。「プログラムの開始以降、社内の人材を育て、『オプティマイゼーション(最適化)
スペシャリスト』の数は2014年から1年で50人に増えた」とRBSアナリシスヘッドのジャイルス リチャードソン氏は話した。2回だったエクスペリエンスのテスト回数は400まで伸ている。すべては消費者にとっての利便性を追求するが故だ。「私たちのような銀行でも、変化を恐れてはいけない」。

 

バックオフィスからフロントオフィスと企業内に広まった変革の波は、今や企業と顧客の接点へと移った。消費者が主導権を持つ現代においては、優れたエクスペリエンスを生み出せるかどうかがビジネスの新たな主戦場となる。消費者はこの波に乗れない企業から去っていく。企業はエクスペリエンス ビジネスへと自ら変革していくことを恐れてはならない。そして消費者一人ひとりに最適なエクスペリエンスを提供するうえで、テクノロジーの果たす役割は大きい。

 

 

 

日本企業に求められる“Digital Transformation”(デジタル変革)とは?

 

 

 


 

 

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