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世界を変えるストーリーを語ろう~人の心に届くストーリーとは(Adobe Summit 2016 キーノート講演2)

2016年04月14日

 
【POINT】
  • ストーリーを人の心に届けるには、居心地の良い場所から飛び出し、自らの殻を破って冒険する勇気を持つ必要がある
  • 「ストーリー」は、データを有効に使うことで説得力を増す
  • ブランドの内側を見せることで、顧客との距離を縮め、親密感を生み出せる

 


誰もが自由に情報を得られるデジタル時代の消費者に、企業が最重視しなければならないのが顧客体験、すなわちエクスペリエンスだ。ではいかにしてエクスペリエンスを生み出せるのだろうか。その答えは、マーケター一人ひとりの「ストーリーテリング」にある…そう印象付けたAdobe Summit 2016の2日目キーノート講演では、様々なストーリーテラーが登場し、独自のストーリーが披露された。マーケティング活動のあらゆる側面をデータで測定して改善を図る「データドリブン型マーケティング」の理念を、アドビは普及させてきた。一方、人の心に届く「体験」を生み出すのは「ストーリー」であり、ストーリーを表現する「コンテンツ」である。データを武器としてコンテンツをまとめ、心を揺さぶるストーリーを紡ぎだすことこそが今求められている、とアドビのストラテジーVPであるジョン メラーは訴えた。
 
「今この会場に、一万人が参加しています。10,000人というデータから、今日誕生日の人が、27人はいるという計算になります。27人のみなさん、お誕生日おめでとう!」
 
会場にいた3月23日が誕生日の人は、思いがけない「ハッピーバースデー」メッセージを、どんな「体験」として受け止めただろうか。メラーVPはさらに、多くの人の心に届く「ストーリー」を語るには、時には居心地の良い場所から飛び出し、自らの殻を破って冒険する勇気も必要であると述べる。一万人もの前で話をするのは、実はものすごく緊張するというメラーVPは、イベントゲストのエンターテイナー、ドニー オズモンドに励まされてマイクを握り、ディズニー映画「ムーラン」でオズモンドが歌った「I’ll make a man out of you」の一節を披露した。まさに「自分の殻を破る」デモだ。
 
ジョン メラー、ドニー オズモンド
 
アドビのVP自らが、大胆に新しい体験に挑戦する姿勢を示したのち、玩具メーカー最大手マテル(Mattel)のリチャード ディクソンCEO、サーカスを芸術に高めたシルク ドゥ ソレイユのアルマ デリックスCMO、アカデミー賞受賞俳優であり人道的活動でも知られるジョージ クルーニー氏などが登壇、それぞれがマーケターのクリエイティビティに訴えかけるストーリーを語った。
 
 

「事業の基盤となるコアブランドは、常に時代を反映した進化を続けなければならない」(リチャード ディクソン、マテル COO)

 
マテル COO リチャード ディクソン
 
マテルはバービー人形で有名なアメリカの玩具メーカーだ。アメリカを代表する多くのイノベーティブ企業の創業エピソードと同じく、「ガレージから始まった」というマテルは、紙人形をヒントにバービー人形を開発、大ヒット。その後も知育玩具のフィッシャープライスはじめ、レガシーブランドの数々を世に送り出した。テレビの黎明期60年代には早速テレビCMを取り入れ、その後もディズニーとの提携など、イノベーティブかつ時流に乗る戦略で押しも押されぬ玩具ナンバーワンに成長。アメリカ人なら誰でも子供時代にマテルブランドの玩具で遊んだ思い出があり、アメリカ文化の一部を成すブランドとなった。
 
勝ち組の道を進んできたマテルだが、その後多様化する玩具業界の競合に押され、停滞期に入る。バービーなどヒットブランドにしがみつく守りの体勢からなかなか抜けられなかったマテルは、「心地よい場所から抜け出す」冒険に踏み切る。「新しいバービー」の開発だ。極端に痩せ型の元祖バービーは、こどもに不健康なボディイメージを理想として植え付けると、バービー人形を問題視する親は少なくない。また、金髪碧眼のバービーはさまざまな人種が暮らすアメリカを正しく反映していない。こうした消費者の疑問に応え、マテルはさまざまな体型や人種を反映した20種類以上の新しいバービーたちを開発。
 
新世代のバービー
 
新世代バービー誕生の話題は、ソーシャルメディアでも5億件以上のエンゲージメントを生成、YahooトピックやTIME誌にも特集され、マテルは今までとは全く異なるバービーブランドを確立する「ストーリー」を紡ぎ出すことに成功した。
 
 

「ブランドの内側を見てもらうことで、観客とのつながりを深めている」(アルマ デリックス、シルク ドゥ ソレイユCMO)

 
シルク ドゥ ソレイユCMO アルマ デリックス
 
シルク ドゥ ソレイユは、伝統的なサーカスの概念を打ち破るエンターテイメント集団。圧倒的なパフォーマンスと芸術的な舞台演出で、世界中から多くの観衆を引きつけている。「体験」そのものが商品のシルク ドゥ ソレイユでは、マーケティングのエンゲージメントで、ライブ公演以上の「体験」を提供するのは不可能だ。ラスベガスの街中に興行宣伝の看板を立てようと、ネットに広告動画を展開しようと、スタンダードなやり方では、舞台の感動は伝えられない。それでは、ブランドとして、どんなストーリーテリングを行っているのか。
 
アルマ デリックスCMOによると、観客との距離を縮める「親密な」コミュニケーションをとり、シルクの魅力を伝えるようにしているという。ミュージシャン、ダンサー、衣装、セットデザイナー、メークアップアーティストなど、カンパニーを支えるメンバーたちのそれぞれの仕事に焦点を当てた「ストーリー」を紹介し、ブランドの内側を見せることで、より親近感が得られるような取り組みが行われている。また、一般人が実際にバックステージを見学し舞台ディレクターと話したり、ダンスのレッスンを体験したりできるようなプログラムも提供している。
 
シルク ドゥ ソレイユの公演は、フラッシュさえ使用しなければ、写真撮影OK。ソーシャルメディアでのシェアもぜひどうぞ!という姿勢だ。伝統的な舞台芸術とは一線を画すオーディエンスとのつながり方を実践している。
 
 

「自分の立場で何ができるだろうかと考えている」ジョージ クルーニー(俳優)

 
ハリウッドの大スターのライブトークよりもパワフルな「体験」を創生するのは、実際難しいかもしれない。キーノート講演最後のゲストスピーカーとして登場したジョージ クルーニーは、アドビEVP&CMOのアン ルネスが繰り出す質問にユーモアたっぷりに答え、サービス精神旺盛にセレブ交友関係の裏話なども交えながら、会場を沸かせた。大観衆を楽々と「エンゲージ」するストーリーテリングの巧みさとカリスマ性に刺激されたマーケターも多いだろう。
 
ジョージ クルーニーは、映画人としての仕事のほかに、グローバルな人道的活動に貢献していることでも知られている。女性の地位向上など、社会運動が盛り上がっていた60年代から70年代にアメリカのケンタッキーで育ったジョージ クルーニーは、社会的議論への参加を義務と捉えており、「(困っている)隣人、たとえそれが会ったことのない人たちでも、彼らに注意を向け、自分にできることはないかと考えることは、ごく普通のこと」と語る。
 
講演の中でジョージ クルーニーは「映画の成功を左右するツイッターの力」に触れた。テクノロジー嫌いの気があるらしい彼にとっても、ソーシャルメディアはパワフルなストーリー媒体だ。参加者の多くが、「自分が撮ったジョージ クルーニーの写真」を、ソーシャルメディアで共有したことは想像に難くない。途方もなく大きなスケールでストーリーを拡散できるパワーを持つジョージ クルーニーという「メディア」が、人道的活動をストーリーのテーマに選んでいるという事実は、我々にとって僥倖というべきだろう。
 
登壇者の「ストーリー」は、会場に集った1万人のマーケターたちの心に確実に届き、それは彼らにとってかけがえのない「体験」を生んだ。マーケターたちは、説得力のある「ストーリー」を創造することが、世界を動かすために何より大切であることを、改めて感じたに違いない。
 

 

 

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