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完全自動運転も可能になるのか!? 未来の自動車体験とは(Adobe Summit 2016 レポート)

2016年04月28日

クルマを運転する、または、クルマに乗るという体験が、いま大きく変わりつつある。消費者ひとりひとりのニーズに即した「体験」の重要性に注目が集まる中、先日開催されたAdobe Summit 2016では、近未来のコネクテッドカーがもたらす自動車体験の変容について3人のパネリストが熱く語り、多くの聴衆を集めた。
 
コネクテッドカー パネルディスカッション
(写真左)スー・アルドリッチ(Patricia Seybold Group コンサルタント)
(写真左から2番目)ジョン・ビービー(GM デジタル広告&分析ディレクター)
(写真左から3番目)ニール・アンガーライダー(「Fast Company」テクノロジー&イノベーション ライター)
(写真右)司会のロニ・スターク(アドビ ストラテジー&プロダクトマーケティング)
 

モバイルと自動車の融合

 
自動車社会のアメリカ。必要に迫られて運転しているが、できれば運転なんかしたくない、という人は多い。パネリストのアルドリッチ氏も、そんな一人だ。「行き先までどうやって行くか車が考えてくれて、渋滞は自動的に迂回してくれて、どこに駐車するかも車が全部決めてくれたら、こんなにいいことはない」。リアルタイムで情報をアップデートするナビゲーション システムや、ロケーションベースのサービスにより、彼女が望む自動車体験は、ある程度までは現実のものとなっている。
 
スマホ画面と車載スクリーンのシームレスな連携など、自動車メーカーでは、スマホと車載システムの統合を続けており、「運転中に今すぐ知りたい情報をボタンひとつで取得でき、自動車もスマホも同じ仕事をするようになっている」とGMのビービー氏は語る。ただし、「スマホはポケットの中にあり、人間がスマホのコンテナになるわけだが、自動車はその逆。どんな人間が乗っているか知っているインテリジェントな自動車には、スマホとは異なる機会がある」とアルドリッチ氏。
 
自動車に特有なコンテキストを考えると、たとえば、最寄りのガソリンスタンドがどこにあるか、どのスタンドが一番安いかといった外的な情報と、自動車自体の情報、つまり「ガソリンの残量」などのデータをマッチングすれば、「給油が必要になるとクルマが勝手にガソリンスタンドを探してくれる」といった体験が可能になるだろう。
 
 

実は20年前に始まっているクルマのIoT

 
自動車の「モバイル端末化」は、ナビゲーションやメディアプレーヤーなど、インフォテイメント(情報と娯楽の融合)方面からの統合が近年急速に進んだ感があるが、実は自動車のIoT対応の歴史は古い。GMのOnStarテレマティクスサービスは1997年モデルから開始されている。このテレマティクスは、市場に展開された自動車をネットワークに接続し、端末としての車が発信するデータを中央でモニタリングし、さまざまなサービスを提供すること。たとえば、エアバッグの作動を検知したら、すぐに事故対策サポートが始動するようなサービスや、車両盗難が多い米国では、車体のトラッキングにも活用されている。
 
ただ、これまでの自動車メーカーのテレマティクス サービスは、経済的余裕のある層にアピールする高級オプションというイメージだった。現在、IoTで可能になる自動車まわりのテクノロジーは、より広い層への訴求力を拡大しつつある。配車サービスのウーバーなどは、その代表的なものだろう。自動車共有システム(カーシェアリング)、共同所有(シェアドオーナーシップ)といった、車との新しい関わり方にもIoTが大きな役割を果たしている。アンガーライダー氏は、フリート(業務用車両)の管理ネットワークでは、車両同士が位置情報を交換しあい緻密な中央制御が可能になることに言及、一般消費者向けにも応用できることを示唆している。
 
 

マシンラーニング(機械学習)を活用したパーソナライゼーション

 
ドライバーの「体験」を高める上でカギとなる技術として、運転(行動)パターン認識につながる機械学習が挙げられる。聴衆のひとりは、「私が毎朝同じスターバックスに寄ることをマイカーが学習して、いつものラテを注文しようか?と聞いてくれたら嬉しい」と言う。こうした個人的なコンテキストを熟知した車なら、当然マーケティングへの活用も可能になるだろう。
 
ビービー氏はまた、車の機械学習で集積されるデータの自動車保険への応用など、新しい可能性にも言及している。個々の車体から集めるデータで、運転の癖を分析することができるため、「制限速度を必ず守っているというデータがあれば、保険料のディスカウントを適用できるだろう。安全運転へのインセンティブにもなる」。
 
「ただし、個人の運転の傾向に関するデータはプライバシーであり、オプトイン・オプトアウトを徹底するなど、取り扱いに配慮が必要だ」とビービー氏。「たとえば、ちょっと人には言えないある店に頻繁に通っているというデータを、車が学習したとする。誰かを乗せているときに、たまたまその店の近くを通りかかり、車内で関連情報が提示されてしまったら、バツが悪いだろう(笑)」
 
 

ビッグデータとコネクテッド ハイウェイ

 
自動車の機械学習が生成する膨大なデータ(ビッグデータ)はまた、車が走行する道路インフラからの情報をドライバー体験に還元することができる。日本とは桁違いに国土が広いアメリカでは、整備状況が悪い道路も多数存在する。よくある問題のひとつとして、「ポットホール」がある。水分でアスファルトが劣化し、道路に穴があく現象だ。雪がとけ始める春先によく発生し、パンクの原因にもなる。しかし、多くの走行データから、どこにポットホールが多いかという情報が得られれば、春先のドライバーにとっては、ありがたい体験となるだろう。
 
自動車に搭載されたセンサーからは、路面状況のほかにも、渋滞、工事、気象状況など、さまざまな情報がリアルタイムデータ交換でわかるようになり、ドライブ体験を変える「コネクテッド ハイウェイ」が生まれる。アルドリッチ氏が望む「交通渋滞を勝手に回避してくれる車」も可能になるはずだ。
 
 

スマート化する自動車の安全性と自動運転

 
スマホと自動車の境界が曖昧になると、懸念されるのが安全性の問題だ。「スマホに広告を出すのと、時速60マイルで走行中の車に広告を出すのとは、全く意味合いが異なる」とアンガーライダー氏。運転中のドライバーに対するコミュニケーションでは、音声によるインターフェイスが重要になる。また、音声だけでなく、車線離脱を検出したらハンドルを振動させる「ハプティックハンドル」など触覚を使用する技術、ウェアラブルで運転者の身体的な状況をモニタリングし疲労度を検出するなど、安全運転のための新しい技術も、ドライブ体験の変容を生み出しているという。
 
個人の運転パターンに関するデータや、コネクテッド ハイウェイからのインフラデータを活用して至れり尽くせりの「体験」を提供できるコネクテッドカーは、究極的には自動運転の未来につながっている。
 
 

完全自動化と人的制御の間にある無限の可能性

 
「私の孫が大人になる頃には、かつて人間が車を運転することが許されていたなんて信じられない、という時代になるのでは」と、可能な限り運転したくない派のアルドリッチ氏。自分が運転するより機械にまかせたほうがよほど安全ではないか、という発想には、頷ける部分がある。人間が運転しなければ、バスの運転手が居眠りするかも?とう心配も不要なら、アグレッシブなドライバーに後ろから煽られて嫌な思いをすることもない。
 
一方で、聴衆からは、「(実験的な)自動運転車に乗ったことがあるが、あんなに恐ろしい体験はなかった」という声も上がった。実際、自動運転=怖い、という反応のほうが、まだ一般的なのではないだろうか。また、ビービー氏は「自分で車を運転するという代え難い体験をあきらめるわけにいかない」と、クルマ好きの気持ちを代弁。パネリストたちは、自動運転と人間による運転の中間をとる形で、自動車の進化が進んでいくだろうと締めくくった。
 
どんな自動車体験が理想か、という問いには、十人十色の答えがあるだろう。完全自動運転と人間による運転の中間で、体験を「パーソナライズ」するテクノロジーには、無限の可能性が広がっている。
 

 

 

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