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ANAのマーケティングキャンペーンに見る、データアナリティクスを意思決定に活かす方法(Data Driven Forum 2016 レポート)

2016年08月25日

【POINT】
  • デジタル環境で優れた顧客体験を提供するには、データアナリティクスに基づく意思決定が不可欠である
  • データアナリティクスを基に意思決定を行うデータドリブンマーケティングのPDCAサイクルでは、包括的なマーケティングプラットフォームの役割が大きい
  • データドリブンマーケティングは、データに基づく仮説検証を繰り返しながら、顧客との理想的な関係を構築するアプローチである

リアルでもデジタルでも一貫性のある顧客体験を提供することは、デジタルマーケティングに取り組む組織の大きな課題である。全日本空輸(以降、ANA)株式会社マーケティング室マーケットコミュニケーション部デジタルマーケティングチームアシスタントマネージャーの永山裕氏は、Adobe Marketing Cloud Data Driven Forum 2016 の事例講演に登壇し、「おもてなし」という表現で、同社の持つ多様なデータを活用しながら、デジタル顧客体験をどのように設計し、顧客インサイトを基にしたマーケティングキャンペーンを実践したのか、その方法を紹介した。
 
 

デジタル環境での「おもてなし」はリアルと違うのか?

 
「一人ひとりのお客様にANAに乗ってよかった。またANAに乗りたい」と思ってもらえるようなサービス提供を、ANAの現場は心がけている(永山氏)。ANAは、英SKYTRAXが運営する航空会社ランキングにおいて、4年連続で最高評価の「5スター」を獲得しており、自社のサービス品質に自信を持つ。そこで、リアルの世界でもデジタルの世界でも同じような高品質の顧客体験を提供したいと考えた。
ANAが考えるデジタル世界でのおもてなしとは、「Right Person, Right Timing, Right Channel, Right Contents」を実践することである(永山氏)。
 

Right Person(どのような顧客か):

例えば、ANAカードを持っているか否か、日本在住か海外在住か、ANAに乗ったことがあるか否か、といった属性データで顧客像を判別することができる。属性データは顧客理解に役立つ。

 

Right Timing(どのタイミングで声をかけるか):

航空券をもう購入していて、明日空港に行く人に、航空券購入のオファーをしても意味がない。顧客の日常をカスタマージャーニーとして捉えた上で、顧客がANAとの接点を持つところから、旅を振り返るまでのどの段階にあるかを、Webの行動履歴を分析して顧客のタイミングを理解する。

 

Right Channel(どのような言葉遣いにするか):

最近ではスマートフォンからのアクセスが増えているため、モバイルデバイスは重視しているが、PCも依然として重要。顧客がデバイスを使う状況を理解して、メッセージ配信のデバイスを決める。

 

Right Contents(どの提案を訴求するべきか):

顧客が旅程を検索したとすると、その顧客がどこに行きたいかがわかる。顧客が何を望んでいるかをデータから判断し、どのようなメッセージを届けるかを決める。

 
リアルと違いデジタルでは、顧客の実際の顔を見ることはできないし、声を直接聞くこともできない。それでも、「リアルでもデジタルでもお客様へのおもてなしは変わらない。手段が違うだけ」と永山氏。このように断言できるのは、4要素それぞれでデータアナリティクスの結果を積極的に活用しているからだ。
 
 

データドリブンマーケティングのPDCAサイクルはどのようなものか?

 
ANAはデータドリブンマーケティングを「Segment」「Targeting」「Action」「Measure」の4つのフェーズから成るPDCAサイクルと考える。このPDCAサイクルを包括的に支えるマーケティングプラットフォームが、Adobe Marketing Cloudである。ANAのAdobe Marketing Cloud活用は、PDCAの最初のフェーズと最後のフェーズで、データアナリティクスを重視している点が特徴である。アナリティクスを担うAdobe Analyticsはマーケターの意思決定で欠かすことのできない存在だ。
 
最初の「Segment」フェーズでは、Adobe Analyticsでデータを解析し、顧客をよく理解する。
 
続く「Targeting」フェーズは、ターゲットセグメントを抽出する。web上での顧客の行動データに加えて社内データも組み合わせれば、実施効果の高いターゲットを明確にできる。ANAでは、複数のデータソースを統合するため、DMPとしてAdobe Audience Managerを活用している。
 
次の「Action」フェーズでは、ターゲットセグメントに対してパーソナライズしたコミュニケーションを行う。Adobe TargetAdobe Campaignは、ターゲットセグメントに適したコンテンツの内容と配信先を、仮説/検証を繰り返しながら最適なものに調整し、コンバージョン向上に寄与する。
 
そして、永山氏が特に強調していたのが、PDCAサイクルを回すための「Measure」フェーズの重要性である。実施したキャンペーンの結果がどうだったのか、良かったことだけではなく悪かったことも含めて正確に評価し、次のキャンペーンに活かさないとといけない。その意味で、Adobe Analyticsを用いてのキャンペーンの評価検証は、PDCAサイクルの要と言えるのだ。
 
 

データドリブンマーケティングのキャンペーン展開で、経験から何を学習したか?

 
ANAはどのようにデータドリブンマーケティングを実践しているのか。
永山氏は、2015年10月から12月にかけて実施したANAゴールドカード発行キャンペーンを例に、データドリブンでキャンペーンを実施する方法について説明した。前述したPDCAサイクルに沿ってキャンペーンの経緯を見ていきたい。
 

Segment:

対象セグメントを決めるこのフェーズで、ANAはデータアナリティクスを徹底的に活用した。そもそもクレジットカードを作る人はどんな人か、ゴールドカードホルダーはどんな人かを特定するため、webの行動履歴だけではなく、ANAマイレージクラブ(以下AMC)の会員ステータスを始めとする顧客データも併せて用いたとのこと。その結果、「クレジットカードをまだ持っていない人や、AMCカードを持っていない人が、ゴールドカードを作るという客観的事実を発見した」と永山氏は語る。
 

Targeting:

この結果をもとに、ターゲットを発見する際にもANAはデータを使った。ゴールドカードの場合、前提条件として30歳以上でないと与信が通らない。そこで、「年齢」を始め、「性別」「Web接触(ログインしているか否か)」「ANA搭乗(実績/予定)」「AMC会員」「ANAクレジットカード」「プレミアムメンバー」「SFCクレジットカード」といった様々な切り口の属性データを用いて、キャンペーン対象者を抽出した。
 

Action:

「キャンペーンを知ってもらうところから、カードを申込むまでの顧客ジャーニーを考えてアクションを設計した」と永山氏は語る。キャンペーンの存在を認知してもらうことも大事だが、同じ働きかけを続けると、飽きられて無視されることもある。また、広告を見てすぐカード申込みに至るとは限らない。途中で離脱した場合に備え、コミュニケーションが曖昧になったり、チグハグになったりしないよう配慮が求められた。さらに、このキャンペーンでは、データを基に16種類のバナー広告を準備した。用意した複数のコンテンツへの反応を見れば、ある顧客がそのコンテンツを本当に望んでいるか、好ましい配信先かがわかる。正しければ顧客ジャーニーの次のステップに進めるし、間違っていれば別のコンテンツや配信先を試せばよい。
 

Measure:

「キャンペーン期間中は、うまくいっているかを定期的に確認した」と永山氏。このゴールドカードのキャンペーンは、実施期間が数ヶ月と比較的長く、初盤/中盤/終盤でターゲットの反応が変化するため、やるべきことも変化させる必要があった。そこで週1回の会議の席で、前週の進捗と結果を確認し、今週どうするべきかを考えた。同じことをやり続けるのではなく、顧客の行動を察知して変化を付けるためにデータを活用し、効果測定をキャンペーンの最後だけでなく期間中も定期的に行った点は参考になる。
 
 

求められるアプローチは、効率的な繰り返し

 
ANAが実際に展開したキャンペーンの流れを振り返ると、PDCAサイクルにおいてマーケターは常にデータにもとづく意思決定を繰り返していることに気付く。また、PDCAサイクルと一口に言っても、大きなサイクルを構成しているのは、小さな仮説検証のサイクルの繰り返しであることもわかる。永山氏は、「やればやるほど、やらなければならないことが見えてきた」と語る。
安易に人的リソースを費やすのではなく、効率的に行う仕組みを定着させないと問題解決にならない。データドリブンマーケティングは、最初から正解を求めるのではなく、やってみて軌道修正をしながら正解に近づいていくアプローチであることを、ANAの取組みは示している。

 

 

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