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花王のグローバル基盤構築事例から学ぶ、パートナーと協働する4つのコツ

2016年12月06日

【POINT】
  • 花王は、デジタルマーケティングの新たなゴールに向けた第一歩として、環境変化に適応できる顧客体験の基盤整備から着手した
  • 「マルチデバイス対応」「マルチベンダー制作体制」「グローバル展開」という難しい要件を満たすため、テストプロジェクトで課題抽出、対策立案を行った
  • 新たなサイト運営のやり方を、パートナーを含めグループ全体に展開するためには、サイト制作と更新に関わる担当者が気持ちよく仕事のやり方に馴染めるような支援が不可欠

一つの製品カテゴリーに対して複数の商品ブランドを展開するマルチブランド戦略を採用する企業では、多くの場合ブランドごとにwebサイトを運営している。国内市場だけでも多数の商品サイトを展開していると、ページ制作から運用までの一連のプロセスを維持していくのは難しい課題だ。加えて、「経済グローバル化の進展」「モバイルユーザーの増加」というデジタルでの顧客体験を左右するトレンドにも、企業は対応しなくてはならない。ビジネス要件が高度かつ複雑になる環境において、グローバル市場に向けマルチブランドサイトをすばやく展開していくために、デジタルマーケティング基盤となるwebサイトのあるべき姿をどう捉えればよいのだろうか。
 
 

花王が「サイト運営の見直し」からデジタルマーケティング基盤構築を始めた理由

 
その課題を乗り越えるために、2014年に舵を切った花王株式会社(以下花王)の事例を見てみよう。
 
2016年現在、花王は、家庭用品と化粧品を合わせ年間で1,000以上の商品を展開している。運営するグローバルサイトの数は250以上、保有するデジタルアセット(コンテンツなど有用なデータファイル)も50万超の規模になる。これほどまでに巨大なサイト運営を行うかたわら、新しい商品のリリースに合わせて関連するキャンペーンも展開している。各サイトを最適化するために、コスト面でもスピード面でも効率的にサイトの制作/更新を行わなければならない。
花王株式会社 デジタルマーケティングセンター コミュニケーション技術室 マネージャーの田中剛氏は、花王のデジタルマーケティング環境のあるべき姿に向け、プロジェクトのゴールを「2020年のマルチチャネルパーソナライズドコミュニケーションの実現」と設定。その最初の一歩として、2014年にAdobe Experience Managerの導入を決定したと話す。
 
田中氏によれば、2014年当時の花王のwebサイトでは、PCユーザーのアクセスがモバイルユーザーのものよりも多かった。しかし、社内では近い将来、必ずモバイルユーザーのアクセスがPCユーザーを上回ると予見していたという。「モバイルファースト」のトレンドに対応したwebサイトにするには、これまでのようにPCサイト優先で制作するのではなく、webサイトのあり方をマルチデバイス対応に転換することが求められた。Adobe Experience Managerは「環境変化に適応するための基盤」として、将来的には他のAdobe Marketing Cloudソリューションも導入することを視野に入れて選定したと、田中氏は振り返る。
 
 

周到な事前準備により、デジタルマーケティング基盤をグループ展開

 
デジタルマーケティング基盤となるwebサイト移行を進めるにあたって、花王では次の点に留意してプロジェクトを進めたという。
 

マルチデバイス対応

モバイルユーザーは、普段から様々なモバイルアプリを使いこなしており、モバイルフレンドリーなサイトを当然と考えている。しかし企業にとって、多様なデバイスやブラウザーでのデザイン確認や動作検証を要するマルチデバイス対応は、負担としてのしかかる。PCのみの時代と比べ、レスポンシブwebデザインを始め、ページ制作担当者が対応しなければならない要素は増えるばかりである、と田中氏は指摘。Adobe Experience Manager導入は、コーディング不要の制作環境構築を意図してのものでもあった。
 

マルチベンダー制作体制

花王のwebサイト運営には、多数の外部web制作会社が関与している。Adobe Experience ManagerのようなCMS(コンテンツマネージメントシステム)を導入すると、花王だけでなく、外部の制作会社も仕事のやり方を大きく変える必要があることが予想された。そのためAdobe Experience Manager導入にあたっては、多くのブランドへ展開する際の課題抽出とその対策を見極めるため、一定の時間が必要であったと田中氏は振り返る。
こうした検証を目的としたプロジェクトとして、テストケースとなったのが「SOFINA(ソフィーナ)」のブランドサイトだった。プロジェクトは成功し、その知見を活かして「アジエンス」「メリーズ」「クイックル」など、順次様々なブランドサイトに展開を進めている。
 

グローバル展開

今回のプロジェクトは国内だけでなく海外も対象だ。国内web制作会社との仕事だけでなく、海外のブランド担当者や制作会社との仕事のやり方を学ぶ必要があった。花王の場合、アジアについては展開済みだったが、欧州との仕事は、テストケースとなったドイツとオランダ市場向けヘアケアブランド「Guhl」が初めてであったという。さらに、他言語展開のテストケースとして「カネボウ」のサイトを対象に、Adobe Experience Managerのマルチサイト管理機能を検証した。
グローバル企業にとっては、多言語への対応のしやすさも、マルチデバイス対応と並んで顧客体験に影響を及ぼす重要な要素である。
 
 

効率的なサイト制作環境をもたらした、4つの施策

 
テストケースをもとにプロジェクトで得た知見から、花王はどのような施策を展開したのだろうか。田中氏は時間的制約があるなか、システム的な施策に加え、web制作会社が効率的に作業を進められるよう、4つの施策を展開したと語る。
 

web制作会社向け共通基盤の構築

webページは、白紙に自由にコンポーネントを配置すれば自然に完成するという類のものではない。また制作会社には、花王におけるサイト全体のデザイン方針に合わせてもらう必要もある。制作効率を高めるためには、「制作会社向けUIを設計して、提供することが必要であった」と田中氏は説明。こうして生まれたのが、花王のwebサイト制作専用のコンポーネント/テンプレート/サイトパターン/デザインルールを集めた仕組みで、それはユーモアも交えてKANAI(Kao Adjustable Natural Authoring Interfaceの略、開発者の名前にも由来)と名付けられた。「チームの一体感を高めるためにも、名前を付けた方がよい」と田中氏。
 

新ガイドラインの作成と配布

従来から田中氏自身が作成したガイドラインを配布していたが、花王はAdobe Experience Manager導入を機に約10年ぶりのガイドライン全面改訂を行った。その際、現状を踏まえた規定にするだけでなく、花王の理念や方針も盛り込むようにした。社外向けには敢えてシリアルナンバー入りの紙バージョンを配布し、プロジェクトメンバーとしての連帯感が醸成されるように配慮したという。
 

サイト制作マニュアルの作成と更新

サイト制作で参照するマニュアルはAdobe Experience Managerでコンテンツを作成し、関係者に提供しているという。紙ではなくデジタルを選んだ理由は更新頻度。サイト制作における製品の使い方だけではなく、コンポーネントや新機能の追加、変更に関する通知など、月1回ぐらいの頻度で更新しているという。
 

トレーニングの実施

2016年4月から制作担当者向けにトレーニングを実施している。午前がガイドラインの内容説明と配布会、午後がAdobe Experience Managerの講習会という1日をかけて行うプログラムだ。稼働のかかるトレーニングを敬遠する企業もあるが、実施した方が後の展開が確実に楽になると田中氏は言う。また、業務フローを説明するために動画コンテンツを提供したという点も興味深い。文書ではなく動画なら、外部の制作担当者は制作イメージを把握しやすいし、経営層への説明にも重宝する。加えて、デジタルマーケティングに対する「花王の取り組み」を伝えるメッセージビデオを提供することで、ゴール達成に向けて一丸となれるよう、意識の共有も図っているという。
 
 

展開成功の鍵はパートナーに対しての手厚い支援

 
花王におけるデジタル基盤導入の取り組みは、「マルチチャネルでパーソナライズしたコミュニケーションを顧客に提供する」というゴールを明確にした上での布石である点が特徴だ。スモールスタートで成功しても、全体への展開に失敗すると、一部の人だけが使う仕組みになりかねない。花王が、外部制作会社や海外拠点での対応も含め、関係者全員が気持ちよく新しい仕事のやり方に馴染んでいけるよう、周到な準備ときめ細かな配慮で支援している点は、他のグローバル企業も参考にできるだろう。
 

多様なブランドサイトの効率化を実現した花王の事例資料をご紹介します。
同社はモバイルファーストへのシフトとサイト構築を効率化するため、Adobe Experience Managerを導入。世界で250以上に上るサイトの制作、更新を省力化し、2割のコスト削減に成功しました
 
顧客の期待に応えるためには、社内外の様々な関係やサイトのあり方を整理し、パラダイムを変える必要があります。多様なブランドを持つ花王が進めている、グローバルなwebプラットフォームとデジタルコミュニケーションの変革の取り組みを通じて、企業サイトの未来を考えます
 

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