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自然派化粧品ブランド「ロクシタン」: 門外漢のデジタルマーケティング部長が、顧客行動を科学した結果

2017年03月23日

ロクシタンジャポン株式会社は、南仏プロヴァンスのライフスタイルを提案するコスメティックブランド「ロクシタン」を、日本国内で展開する企業だ。同社はデジタルマーケティングに力を注ぎ、ECと店舗が相乗効果を上げる仕組みで大きな成果を挙げた。その成果の裏には、どのような取り組みがあったのだろうか。同社デジタルマーケティング部長の吉屋氏の話をもとに、成功のポイントを探った。
 

 

「業界未経験」を強みに、プロジェクトをリード

 
吉屋 智章氏は、現在ロクシタンジャポンでデジタルマーケティング部長を務める。コスメティック業界は、同氏にとって初めての経験。この業界で未経験者の採用は珍しいケースだが、現場営業とブランディング/マーケティング経験、およびデジタルマーケティングの経験を併せ持つ人材として、高い専門能力を買われての入社だった。
 

 

ロクシタンのブランドミッション
 
■ロクシタンのブランドミッション
 
IT業界の長かった吉屋氏にとって、カルチャーショックはあったという。「入社後に職場で靴をスリッパに履き替えていていたら、“ブランドのイメージを大切に”と苦言を呈されたこともあります」と笑うが、すぐに順応し、優れたチームを束ねて成果を重ねてきた。
門外漢だからこそできたことも多い。データをフル活用して顧客を深掘りし、「やりたいこと」と「やるべきこと」を客観的に考察。さらに、「周囲の協力を得なければならないこと」には科学的な事実を示すことで、プロジェクトを前進させてきた。
 
 

あらゆる顧客情報を一元化することで、社内で議論するための“データにもとづいた共通言語”を築いた

 
ロクシタンにおけるデジタルマーケティングの範囲は、ECおよびコールセンターの運営と、CRMシステムを含むデジタル顧客サービス、およびオンライン顧客導線の分析だ。以前はECが中心だったが、吉屋氏の入社後に、デジタル関連はすべてデジタルマーケティング部門が集約した。その役割は、「データ/デジタル技術を駆使し、お客様へのコミュニケーション、サービス、接客を含むすべてのマーケティングとビジネス活動を最適化し、ムダを省き、新しい価値を生み出すこと」だ。ブランディングや広告出稿などは、並列のマーケティング部門が担い、両部門が歩調を合わせて顧客に向き合っていく。
 
ロクシタンにおけるデジタルマーケティングの位置づけ
 
■ロクシタンにおけるデジタルマーケティングの位置づけ
吉屋氏の入社後、デジタル関連はすべてデジタルマーケティング部門が集約
 
吉屋氏が率いるデジタルマーケティング部門は、店舗で顧客と直接対面せず、ホテルへのアメニティ提案など法人顧客と顔を合わせる機会も持たない。そのため、顧客のニーズは、データを分析することで探ることになる。同社にとってその軸になるツールが、Adobe Campaignだ。同社においてAdobe Campaignは、ECシステムやPOSシステムなどと連携し、顧客情報を一元管理するデータベースとして最大限に活用されている。
 
Adobe Campaignの位置づけ
 
■Adobe Campaignの位置づけ
 
 
吉屋氏は、データベースとしての活用について、次のように話す。
「弊社のAdobe Campaignにはすべての顧客データが入っていますから、まずはそれを使って実態把握をしようと考えました。データにもとづいた共通言語を使って、顧客についての共通の理解を持ち、正しく議論できるようにしようと考えたのです」。
 

ECが店舗への集客源として有効に機能しているという、意外な事実が明らかに

 
その顕著な例が、店舗とECの相乗効果に見られる。
 
同社の顧客IDは、店舗でもECでも使えるオムニチャネル型で提供されている。ロクシタンのAdobe Campaignが、ECシステムとPOSシステムのどちらにも連携しているのはそのためだ。顧客側から見れば、顧客は店舗で発行される「店舗カード」のIDを使ってECを利用できる。一方、EC利用者は、登録した電話番号を伝えれば、店舗を利用して共通ポイントを貯めることができる。
 
一般に、それぞれに売上げ目標を持つ店舗は、ECによって顧客を奪われるのではないかと警戒しがちだ。「同じものを買うなら自分の店で買ってほしい」と店舗スタッフが考えるのは当然のことだろう。確かに、小売店にとっては漠然とした不安かもしれない。
しかし、吉屋氏は「実際のところ、ブランドのファンは違う行動をするのではないか」と考えた。店舗でのショッピングも、体験のひとつだからだ。
 
吉屋氏のチームが調べたところ、過去1年以内に購入のあった顧客のうち、どちらのチャネルでも購入していた「オムニチャネル顧客」は10%に満たない。また、初回に店舗で購入した顧客が2度目にECで購入したケースより、逆の例(初回にEC、2度目に店舗)の方が、1.4倍程度多かった。
 
さらに深掘りすると、より店舗にとって魅力のある結果が明らかになった。初回に店舗で購入し、2度目にECを使った顧客の約8割は、3度目に店舗に戻ってくる。また、初回にEC、2度目に店舗を利用した顧客の約半数が、3度目にも店舗を利用した。EC利用者には、行動範囲に店舗がないなど地理的な制約を抱えている顧客も多く含まれていることから、ECが店舗への集客源として有効に機能していることが明らかになった。
 
チャネルを横断した、顧客の購買行動
 
■チャネルを横断した、顧客の購買行動
ロクシタンのECは、店舗への集客元として有効に機能していた
 
そればかりではない。オムニチャネル顧客の購買頻度は全顧客平均の2倍。購買金額は2.7倍を超えることもわかった。この結果から、仮に店舗での購入回数が下がっても、購入金額は変わらないという結論に至る。
 
吉屋氏は、これらの結果を踏まえて店舗と議論を重ねた。店舗がオムニチャネル顧客を産み出すことの重要性を理解してくれた結果は、店舗での積極的な顧客登録推進に結びつき、顧客登録率の対前年比約15%アップという数字として表面化した。
 

ファンを類型化し、それぞれに最適な提案を実施

 
吉屋氏は、顧客のブランド観についても考察を加えた。顧客は企業のメッセージを正しく受け取り、そのコンセプトを共有されることでファンになるとは限らない。たとえば、スポーツチームのファンには、出身地のチームを応援する人がいる。あるいは、ある選手個人を応援していて、自然にチームのファンになるのかもしれない。ユニフォームが好きという人もいるだろう。ファンがチームを好きなのは、チームの打ち出した方向性と一致しているため、と一概に言うことはできないのだ。
 
同様のことは、ブランドにとっても起こりうる。では、ロクシタンのファンは、どのような人たちで、ロクシタンにどのような体験を期待しているのだろう。吉屋氏のチームは、ロクシタンのファンが大きく8つの類型に分類できることを、店舗とECの購入データから導き出した。
 
8つの顧客類型を設定
 
■8つの顧客類型を設定
店舗とECの購入データから、ロクシタンのファンを8つの類型に分類
 
それと共に、同チームはECでの顧客動線を追跡した。複雑に入り組んだ導線を読み解き、コンバージョンの前に離脱した群と8つの類型を組み合わせてカスタマージャーニーにプロット、それぞれをセグメント化した。そして、それぞれのセグメントに対して、行動を促すためのキャンペーンを実行。最終的に、売上げの大幅な拡大に結びつけた。
 
「こうした分析は、Adobe Campaignなしでは成立しませんでした。分析から実行まで少人数で回せたのも、Adobe Campaignのおかげです」(吉屋氏)
 
キャンペーンは繰り返し実行されている。この方式でキャンペーンを実行して以来、EC単体での売上げは、2.5倍を超える規模へと拡大した。成果は、ファン層の固定に役立ち、店舗での売上げ増にも結びつく。
 

“理想の顧客行動”を体系化したい

 
吉屋氏は、「ルーティン(上位顧客の行動)をより深く分析し、複数のルーティンを発見したいのです」と今後を展望する。それが実現すれば、キャンペーンの対象群に、これまでに得た類型やセグメントに加え、ルーティンが加わることになる。
 
初回購入してくれた顧客に、リピート購入してもらうための施策は、すでに数多くのノウハウを蓄積している。3度目、4度目と購入してもらうためのキャンペーンも、顧客の類型化やセグメント化などによって整備が進んだ。ルーティンの発見は、さらなる価値をもたらす。まずは、顧客行動を詳細に分析し、「どのルーティンの上位顧客に導くか」を考察する。そして、そこへの道筋をつけるためのキャンペーンを、個別に展開できるようになるのだ。
 
ルーティンの発見と拡大
 
■ルーティンの発見と拡大
発見したルーティンを、新しい顧客へのリピート施策のノウハウとして活用できるようになる
 
「マーケティングにかかわる私たちの願いは、お客様にブランドのファンになってもらい、ファンであり続けていただくこと。ルーティンの共通項を発見できれば、そこを中心視してマーケティングやブランディングを展開するなどの施策に生かせます。デジタル起点でビジネスモデルを昇華させるために、これからもAdobe Campaignを最大限に活用していきます」。
 

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