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海外の小売企業のマーケティング事例に学ぶ、最適な顧客体験とは?

2016年05月17日

【POINT】

  • 顧客の購買行動が複雑化し、企業との接点が増えている。顧客にブランドを認知してもらい、選んでもらうために重要なキーワードが「顧客体験(カスタマーエクスペリエンス=CX)」だ
  • 小売業や消費財メーカーには、「スピード」「複雑性の解消」「ロイヤルティの獲得」「ROI(投資対効果)」「パーソナライゼーション」というマーケティング上の課題がある
  • 適切な人に、適切なチャネルで、適切なタイミングで届けるために、データとコンテンツを活用するIT基盤を整備し、顧客体験を最適化していくことが重要だ

Webやスマホの普及により、消費者の購買行動や、消費者と企業間のコミュニケーション形態が変化している。たとえば自動車業界における消費者行動として、あるコンサルティング会社によれば、顧客が自動車を買う際にディーラに足を運ぶ回数は、以前は平均7回だったが、今はなんと1.5回にも減っている。この顧客の店舗への来訪回数減を補っているのがWebだ。今や消費者は複数のデバイスを持ち、さまざまな情報を検索して商品を比較検討し、口コミサイトを参照し、ときには情報をシェアしながら、来店前に既に候補の商品を絞り込んでいる。つまりオンラインのタッチポイントの影響力が増しているのだ。
 
こうした顧客の購買行動の変化に対し、企業はどのようにコミュニケーションしたらよいだろうか。今までは、年齢、性別といった大まかな属性情報をもとにコミュニケーションを設計すればよかった。しかし、上述のように、顧客が購買に至るまでにたどる行動(カスタマージャーニー)が複雑になり、企業と顧客のオンライン上での接触が増える中で、企業は顧客にブランドを認知してもらい、選んでもらう取り組みをしなければならない。
 
そのためのキーワードが「顧客体験(カスタマーエクスペリエンス=CX)」だ。
 
わかりやすい例を挙げてみよう。たとえば、コーヒーを豆単体で販売した場合の価格は0.5ドルだが、それにお湯を注ぎ、カップに入れて販売すると1ドルで売ることができる。それが、信頼あるブランドのしゃれたロゴがプリントされたフタ付きのカップであれば、価格は3ドルになる。さらに、落ち着いた雰囲気のカフェで、店員がサーブし、顧客にコーヒーを楽しむ空間(体験)を提供すると10ドルになる。これが、企業が「顧客体験」に投資する理由となる。
 
身近な例だと、全国にチェーンを広げているコメダコーヒーでは、店員がそれぞれ50人の顧客の顔と好みのオーダーを暗記しているという。そして、顧客が来店した時に、注文しなくても「いつものメニュー」が提供される。こうした対応が、顧客の「期待値」を超えたサービス(すなわち、よい顧客体験)となり、ブランドに対する安心や満足につながっているのだ。
このように、「顧客体験の最適化」は、商品の付加価値を高め、顧客の再購入を促していくために必要な取り組みだということがわかる。
 
 

小売業や消費財メーカーが直面している5つのマーケティング課題

 
顧客体験を提供することの重要性は認識されていながらも、その1歩をなかなか進められない企業は多い。例えば小売業や消費財メーカーが、オンライン/オフライン問わず顧客購買行動に対応する「オムニチャネル」を進め、顧客体験を高めていくにあたり、直面するマーケティング上の課題は大きく5つある。
 
1つ目はスピード。
アドビが米国の小売業界のCEOにアンケートを実施したところ、90%が他社との激しい競争を懸念しており、競争力を維持するためにリアルタイムでのマーケティングが求められている。
 
2つ目は複雑性の解消。
消費者の95%がオムニチャネルで購入し、75%は複数の端末を使い分けている。これに伴いマーケティングのデータは膨大になり、顧客と企業を結ぶチャネルはますます増えていく。
 
3つ目はロイヤルティの獲得。顧客に購買の主導権が移り、注目対象が分散し、既存の顧客であってもすぐにブランドから離脱する可能性がある。既存顧客の50%が新商品を試し、31%多く支出する可能性があるといわれる。
 
4つ目は、ROI(投資対効果)。米国の小売業界のデジタル広告費は、2018年までに174億ドルにまで達すると見られる。新規顧客の獲得に投資するか、既存顧客を囲い込み、再購入の促進に投資するか、マーケティング施策の投資対効果がより問われるようになる。
 
5つ目が、パーソナライゼーション。消費者の70%が、パーソナライズされた(自分に最適化された)ショッピング体験を望むといわれる。全ての顧客との接点において、企業はその顧客にとって一貫性のある購買体験を提供する必要がある。
 
これらの課題を解決するための基礎をなすのが「データとコンテンツの活用」だ。顧客理解(インサイト)、デジタルチャネルの活用、マーケティングデータの分析など、システム(マーケティングツール)を連携させ、データとコンテンツを活用するIT基盤を整備することが重要だ。
 
 

海外のマーケティング事例に見る、顧客体験の最適化

 
それでは、海外企業の先進的なマーケティング事例を、いくつかケーススタディとして紹介しよう。
 
宅配ピザにおけるデジタル活用
 
1つ目は、とある宅配ピザの取り組みだ。顧客の家に、冷蔵庫に貼るタイプのマグネット式のデバイスを配布している。デバイスはネットに接続する機能を有し、顧客が情報を登録すると、マグネットのボタンを押すだけで、好きなときにデバイス経由で宅配ピザの注文ができるようになっている。
 
デバイスはいたってシンプルだが、裏側を支えるシステムは、顧客が登録したデータから、どんな家族構成で、好みは何で、どんなサイクルでピザを購入しているかというマーケティングデータを、企業側が把握、活用できるように設計されている。
 
2つ目は、酒造メーカーのジョニーウォーカーの施策だ。ウイスキー瓶のラベルの裏にNFC(近距離無線通信)のタグが埋め込まれている。顧客がスマホアプリをウイスキー瓶のラベルに近づけると、ラベルに埋め込まれたタグが反応し、クーポンなどのお得な情報がスマホに配信される仕組みだ。
 
この施策のユニークな点は、「どこでラベルにタッチしたか」によって情報を出し分けている点だ。たとえば、顧客が店頭でタッチした場合は、おすすめ商品やキャンペーン商品、ギフトの情報など、これから購入する際に便利な情報が配信される。一方、顧客がウイスキーを購入し、自宅で開封した後にスマホでタッチすると、タグが「ラベルが開封されたこと」を検知して、レシピ情報など、ウイスキーを楽しむための情報が配信される。
 
スマホアプリと商品とを組み合わせることで、顧客がどこで、どういう飲み方をしているかを追跡することができる。また場所やシチュエーションに応じて顧客にとって最適な情報を配信し、顧客との関係性を強化しようという取り組みだ。
 
3つ目は、小売業の事例だ。英国のArgos(アルゴス)という通販ブランドは、ユニークなリアル店舗の運営形態で知られる。店舗はデパートや駅、ショッピングモールなど様々な場所にあるが、店内には商品サンプルが置かれているのみだ。
 
その代わり、顧客は商品サンプルやカタログを見て、購入したいときには店頭に置かれたタブレット端末を使い、オンラインでの注文が可能になっている。
 
いわば、カタログ通販のリアル店舗版ともいえるが、アルゴスは、リアル店舗を新規顧客との接点、見込客へのリーチ拡大のチャネルと捉え、ECサイトを既存顧客の再購入を促すためのチャネルとして活用している。こうした取り組みも、オムニチャネルの一つの方向性として参考にして欲しい。
 
 

適切な人に、適切なチャネルで、適切なタイミングで届けるために

 
紹介した事例は、あくまで海外のものだが、日本の小売業、消費財メーカーにおいても、優れた顧客体験という視点を積極的に取り入れてみるとよいだろう。適切なコンテンツを、適切な人に、適切なチャネルで、適切なタイミングで届ければ、一人ひとりにとっての体験はより驚きや好感を生み、購買を後押しするような興味関心を高めることにつながる。
 
そのためには、まず、データとコンテンツを活用するIT基盤を整備し、顧客体験を最適なものにチューニングする体制を整えることが重要だろう。

 

 

小売業のパーソナライゼーションにおける企業の現状と消費者との間にある「ギャップ」について、詳しい解説はこちら

 

 

 


 

 

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