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金融機関は「デジタル変革」で何を成しえるのか

2016年05月31日

【POINT】

  • 金融機関のリテール事業を取り巻く環境は常に変化しており、「顧客行動のデータ化と分析」「パーソナライズ」「一貫した方法でタイムリーなコンテンツの提供」への対応が必要
  • 一人ひとりの顧客の好みに応じた適切なコンテンツを、適切なチャネルで、適切なタイミングで届けることにより、金融機関への好感度は高まり、優れた顧客体験は売上向上や既存顧客の維持に寄与する
  • そのために、データ分析の高度化と高速化、コンテンツ活用の省力化と高速化を実現する基盤を整備し、顧客体験最適化のためのPDCAサイクルを高速で回すことが欠かせない

金融機関を取り巻く三つの重点課題

 
金融機関のリテール事業は、その性質上、消費者の生活に直結しており、消費者の環境変化がビジネスの変革に直結する。インターネットの発達とモバイルの普及により消費者のライフスタイルは多様化し、デジタル化が急速に浸透している。消費者はいつでもどこでも好きなタイミングで得られるサービスに慣れており、店舗だけの接客を中心としたサービスは通用しなくなりつつある。
 
また、ライフスタイルの変化に伴って消費者の好みも多様化している。金融機関から見ると、誰にでも通用する「共通解」となるようなサービスやコミュニケーション方法は存在しなくなりつつある。一人ひとりを識別したうえで、その人の興味関心や行動に基づいて、その人が求めている内容でコミュニケーションすることが求められる。つまり、個客理解に基づくone to one パーソナライズである。
 
金融機関を取り巻く環境に目を向ければ、多様な金融商品が市場にあふれ、提供形態の選択肢が増え、最先端テクノロジーを背景にしたFinTech(金融分野におけるイノベーション創出)による異業種参入が活発化するなど、変化が著しい。従来とは異なる競合企業が画期的なサービスの展開を始めたときに対策をするのでは後手に留まってしまう。これからも顧客満足度を高めていくには、消費者の求めるサービスをすばやく先取りして展開しなければならない。
 
こうした三つの課題に対して、顧客に選ばれ続けるために金融機関がとるべきアプローチには、「顧客行動のデータ化と分析」を行い、「分析結果をもとにしたパーソナライズ」したうえで、「パーソナライズされた情報やコンテンツを一貫した方法で、タイムリーに提供する」ことが挙げられる。つまり、現代の消費者の期待に合わせて顧客体験を最適化することだ。
 
しかし、この状況を理解できていても、具体的にどのような姿を目指し、どのようにして自らを変革してゆけばよいのか、ビジョンを思い描くことが難しいと感じるかもしれない。まずは、いくつかの金融機関の事例を紹介したい。
 
 

顧客体験最適化の取り組みに共通する「スピード化」というキーワード

 
1つ目の事例は、オーストラリア最大の金融機関のひとつであるNational Australia Bank(NAB)だ。彼らは、従来のマスに向けた大規模キャンペーンから、個客レベルのきめ細かいキャンペーンに転換し、ブランドのエンゲージメントを高めて、売上向上や顧客との関係強化を実現したいと考えていた。
 
  • デジタル上のチャネルにおける顧客体験 を改善し、売上を向上させたい
  • 顧客に対する関連性の高いコンテンツをパーソナライズして提供したい
  • 素早くコンテンツを提供する仕組みがほしい
 
上記のような課題に対し、デジタルチャネルにおける顧客の動きを把握し、的確にターゲティングするための分析基盤や、高速にテストを実施できる運営基盤、そして、チャネル横断的にキャンペーンを実施できるキャンペーン基盤を整備した。
 
これにより、従来の5倍の量のコンテンツの制作、展開、管理が行えるようになり、従来と比べ、コンバージョン率が45%向上した。また、企画から展開まで数カ月かかっていたキャンペーンをわずか2週間で実施可能になり、スピードアップ化に成功。テストと改善を高速で繰り返すことで、Webページ経由で3,000件以上の成約向上を実現した。
 
 
2つ目の事例は、The Royal Bank of Scotland plc(RBS)だ。彼らは、顧客接点が増えたため、システムが分断し、それぞれの接点で顧客がどう動いたか一貫して把握することが難しいという課題を抱えていた。そこで、メディアやデバイスをまたいだ「カスタマージャーニー」を再設計し、顧客体験を最適化したいと考えた。
 
  • デジタル時代に対応するため、データドリブン型の文化を育てたい
  • 様々なシステム上に分断しているデータを活用したい
  • デジタルの顧客体験をすぐに改善できるようにしたい
 
こうした課題に対し、デジタルチャネルでの顧客の行動を可視化し、情報、コンテンツを顧客ごとにパーソナライズして提供する仕組みを構築した。あわせて、Webサイト、Webページ、コンテンツなどを一元的に管理する運営基盤を整備した。
 
これにより、例えば「モバイルに親和性の高い人」などのように、特定のセグメントに対し、最適なチャネルで、パーソナライズされたコンテンツが提供できるようになった。顧客体験が高まり、モバイル経由のローンの申込みを20%向上させることに成功した。
 
また、顧客体験を向上させる各種テストを、3ヵ月で100回実施できる環境が整備され、日々の改善、最適化のスピード化にも寄与している。
 
 
これらの事例に共通する重要なキーワードが、「スピード化」だ。金融機関の中には、データに基づく顧客行動の分析やパーソナライズにすでに取り組んでいるところも多いだろう。
しかし、顧客の好みが多様化し、競合との競争が激化する環境下で、分析やパーソナライズ、効果測定と改善を繰り返していくサイクルを、今まで以上に短期間で行わなければならなくなっているのだ。なぜなら、キャンペーンを企画し、リリースしたときにはトレンドを逸しており、機会損失につながってしまうという可能性があるからだ。
 
 

「データ分析の高度化と高速化」「アウトプットの省力化と高速化」のプロセスを連環させることが大事

 
あなたが金融機関のマーケティング担当者ならば、たとえば、以下のような状況や課題に直面したことはないだろうか。
 
  • 「データ収集/分析に時間がかかって、最適なタイミングを逸している」
  • 「データ収集/分析にリソースを要し、それ以降のアクションにまで手が回らなかった」
  • 「データ収集/分析の作業が、いつの間にか目的化してしまった」
 
こうした課題を解決するためにも、スピード化の実現は不可欠だ。スピード化を実現するためには2つのポイントがある。
  1. データ分析の高度化と高速化…「データ収集」「分析」「顧客把握」のプロセス
  2. アウトプットの省力化と高速化…「パーソナライズ」「顧客体験」のプロセス
これらのプロセスをいかに高速に連環させるかがカギを握る。(1)においては、「どれだけ多くの顧客接点から、一貫性を伴う情報を収集できるか」「収集したデータを、いかに素早く分析できるか」「共通化された指標を用い、分析結果をすぐにアクションに結びつけられるか」ということが求められる。
 
(2)においては、「ビジネス要件に合わせて細分化された多数のセグメントに対し、コンテンツを素早く制作できるか」「顧客にとってベストなタイミングで、最適なコンテンツが提供できるか」「どの顧客接点でも一貫性のある顧客体験を提供できるか」というポイントが問われてくる。
 
 

「分析」を「アクション」につなげるためには

 
では、マーケターはなぜ、データの収集や加工などの作業に多くの時間と手間を取られてしまうのか。その原因の一つに、ツールの継ぎ足しなどで拡張してきた「部分最適」のシステムが挙げられる。データの連結や準備にリソースを取られ、本来のマーケティング業務である分析に注力できないのだ。
 
データは「マーケティング資産」であり、資産管理の視点からシステムを整備する必要がある。すなわち、マーケターが中長期的な戦略に立ち、マーケティングチャネル全体の顧客行動に対するインサイト(アクションにつながる分析)を得られるような、一貫性のある統合型マーケティング基盤だ。
 
分析結果に基づき、コンテンツをたえずスピード感を持って制作し、広告、メール、SNS、モバイルアプリなどチャネルごとに最適化し配信していく仕組みを整備することが求められている。
 
 

まとめ

 
金融機関を取り巻く環境変化に対応するために、「顧客行動のデータ化と分析」「分析結果をもとにしたパーソナライズ」「パーソナライズされた情報やコンテンツを一貫した方法で、タイムリーに提供すること」の必要性がますます高まっている。
 
一人ひとりの顧客の好みに応じた適切なコンテンツを、適切なチャネルで、適切なタイミングで届けることにより、金融機関に対するブランド好感度は高まり、優れた顧客体験は売上向上や既存顧客の維持につながっていく。
 
そうした状況を確立するためには、データ分析の高度化と高速化、アウトプット(コンテンツ活用)の省力化と高速化を実現する基盤を整備し、顧客体験最適化のためのPDCAサイクルを高速で回していくことが重要となってくるだろう。
 

(アドビ マーケットディベロップメントエンジニア 熊村剛輔氏の講演より、UNITE編集部が書き起こし)

 

 

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