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顧客は誰の管轄か。フォレスターのアナリストに聞く、新技術領域「デジタルエクスペリエンス プラットフォーム(DXP)」とは?

2016年07月21日

【POINT】
  • 新しいアーキテクチャーである技術領域「デジタルエクスペリエンスプラットフォーム(DXP)」への需要が高まっている
  • DXPは、顧客の「ライフサイクル」に主眼を当てたプラットフォームである
  • DXPの整備を進めていくにあたっては、まず「戦略」作りから始める

顧客接点の多様化、顧客が利用できる便利なアプリケーションの広がり、顧客と企業とのデジタルインタラクション(デジタルでの双方向コミュニケーション)といった企業を取り巻く変化は、留まることなく進展している。それが、新たな技術領域に対する企業の需要を生み出している。米調査会社であり中立的ITコンサルティングを提供しているフォレスター リサーチが「デジタルエクスペリエンス プラットフォーム(DXP)」と呼ぶこの新しいアーキテクチャーは、「The Forrester Wave: デジタルエクスペリエンス プラットフォーム」と題した同社から2015年第4四半期に発表されたレポートの中核をなしている。
 
副題を「検討すべき注目の10社と各社の比較」とした同レポートは、フォレスターのアナリストであるマーク グラナン氏、テッド
シャドラー氏、ステファン パワーズ氏によって執筆された。彼らはデジタルエクスペリエンス プラットフォーム(以下、DXP)を次のように定義している。
 
デジタルエクスペリエンス プラットフォーム(DXP)の定義:
「あらゆる顧客接点で一貫したエクスペリエンスを管理、提供、最適化するためのソフトウェア」
※ CMO.comの親会社であるアドビは、このレポートの中で、「マーケティング活動を支援する最高水準のテクノロジーを組み合わせたプラットフォーム」を確立した唯一の「リーダー」であるとフォレスターに評価されている
 
CMO.comでは過日、編集長ティム モランと、グラナン氏およびパワーズ氏による対談を行った。DXPという概念の詳細、また対外的なカスタマージャーニーと社内的なデジタル化という課題に直面するCMOにとって、DXPが何を意味するのか、2人に話を聞いた。(以下敬称略)

デジタルエクスペリエンス プラットフォーム(DXP)

 

 

CMO.com:フォレスターのレポートによると、DXPという概念は、コンテンツ、パーソナライゼーション、カスタマージャーニーといった点を網羅しており、CMS(コンテンツ管理システム)の増強版という印象を受けます。デジタルマーケティングプロセス全体の中で、このDXPのコンセプトをどう捉えているのかお聞かせください。また、マーケティングリーダーはこの技術領域にどのように向き合っていくべきなのでしょう?
 
グラナン:おっしゃる通り、特にデジタルマーケターの視点から見れば、DXPはパワーアップしたCMSと見ることができます。ただ、デジタルマーケターが留意すべき従来のシステムとの大きな違いもあります。
 
  • DXPは、より一貫性のある顧客体験を実現するためのデータ/システム/コンテンツの統合を前提としている
  • DXPは、顧客の「ライフサイクル」に主眼を当てたプラットフォームである
 
デジタルマーケターは、自社の多様な製品事業部門や間接部門を含むあらゆる部署と協力し、DXPの統合と投資から、顧客に最大限の恩恵がもたらされるようにしなければなりません。従って、マーケティング業務中心のメンタリティにとどまらないものなのです。
 
過去数年においても、大企業が自社ブランドのすべてにまたがるマーケティング事業を統合するために、その投資に注力する傾向が見られました。しかし、DXPの真のインパクトは、そのコンセプトがマーケティング以外の部署にも適用されるときに、はっきりと現れるでしょう。つまり、販売、サービス、新製品開発、アナリティクス、コンテクスト主導型デリバリー、さらにはカスタムコード管理といった分野でのデジタル統合です。
 
デジタルマーケターが、これから対応していかなければならない課題が色々出てきます。例えば
 
  • データ管理:膨大なデータの中から、信頼できる「カスタマー像」を形成すること
  • コンテンツ制作:ターゲット顧客に訴求できるような有意義なコンテンツを開発して組み合わせること
  • ブランド戦略:他社と差別化された体験を構築して展開すること
 
こうした課題に対する備えがなければ、色々と障害にぶつかることになるでしょう。これらはすべて難しい取り組みなのですが、DXPの成功には不可欠です。長期的に見れば、こうしたマーケティング活動を展開し、全社的規模での企業の変革を先導していく必要があります。
 
CMO.com:ということは、ふたつのアングルがあるのですね。ひとつは、顧客体験とカスタマージャーニーを改善していくための外向きのプラットフォーム。もうひとつは、企業体制とマーケティングの役割をデジタルに対応させていく内部指向のプラットフォームという。
 
グラナン:そうです。優れたデジタル体験と優れたデジタル体制は、表裏一体を成すものです。企業のデジタル変革というパラダイムのなかで、このふたつは相互補完の関係にある、実に重要なコンポーネントなのです。
 
CMO.com:DXPという概念は、過去4~5年におけるテクノロジーやデジタル戦略の集大成になるということでしょうか?
 
グラナン:まさにその通りです。これは、モバイルの台頭など、カスタマー側からの需要によって推し進められた面もあれば、競争が熾烈化する市場で、ブランド企業がeコマースのような施策によって差別化を図る必要に迫られ発展してきた部分もあります。しかし今では企業にとって、デジタル化は必要経費と認識すべきものになりました。競合他社の規模やペースに遅れをとらないためには、企業プロセスのデジタル対応は必須なのです。
 
つまりDXPは、我々が歩んできた道から続く、当然の進路というわけです。フォレスターでは2010年に「マーケティングファネルの終焉」と題したレポートを書きました。それ以来、カスタマージャーニーという概念の進化について注目してきました。この概念のもとでは、あらゆる技術的な投資は顧客を中心に据えて行い、これを裏打ちする戦略を持つという考え方です。かなり前からこの路線を歩んできたわけですが、スタートアップや最先端を行く企業がこのプラットフォーム理念を実現したケースは見られても、多くの企業では、まだその段階に到達していません。
 
しかし、我々は今、重要な転換期を迎えていると思います。デジタル化のイニシアチブとテクノロジーへの投資は、単なる「webサイトにパーソナライズ機能を後乗せ」しただけのものとは根本的に異なる、より深い観点を必要としています。もはや後乗せで対応する段階は過ぎ、企業の屋台骨ともいうべき真の意味でのデジタルエクスペリエンス
プラットフォーム戦略を推進していくには、何が必要となるのか、市場の大部分では理解が進んでいます。
 
CMO.com:それでは、DXPというこのプラットフォームはどの部署が担当するのでしょう?
レポートを見る限り、非常にテクニカルな性質を備えているようですが、eコマースやカスタマーリレーションも取り込まれています。これはマーケティングの役割を広げる概念なのでしょうか?
 
パワーズ:マーケティング部門の役割以上のものですね。DXPはすべてマーケティングの機能であり、マーケティングとテクノロジーが協力してテクノロジー戦略を生み出すのだ、と言いたいところですが、現実的には、技術者/マーケティング/ビジネス/顧客サービス/営業の役割を合わせたものとなります。顧客体験とは何かを考えると、マーケティング=顧客体験ではありません。顧客体験とは、もっと大きなものを意味します。
 
CMO.com:それは、「顧客は誰の管轄なのか?」という、講演などで識者がよく問いかける質問ですね。ここでも関係がありますか?
 
パワーズ:企業の中で、顧客は自分たちの管轄だと言う単一の部署や単一のグループがあるでしょうか?そんなことはないでしょう。
 
フォレスターでは、今は「顧客の時代」であり、カスタマージャーニーにおける最良の顧客体験を提供する企業が生き残る時代である、という論を展開してきました。顧客体験の専門家の意見に耳を傾けると、企業組織の全体において、顧客体験を重視する文化を行き渡らせる必要があるとわかります。「顧客関係はあの部署の担当だから(自分は関係ない)」というような考えがまかり通る会社は、「顧客の時代」に成功することはないでしょう。企業の全員が顧客第一の精神を持たなければならないのです。
 
グラナン:大局的な視点から言えば、まったくその通りです。しかし特定の施策において、「顧客は誰の管轄か」という点は、企業によって異なります(特にデジタルでは)。製品ラインをメインにしている企業ならば、製品ラインの管轄ということになるでしょう。しかし、より従来的な、サービス主体のビジネスであれば、マーケティングまたは営業、あるいは両者の組み合わせということになります。「顧客の財布の紐に影響するのはデジタル体験のどの部分だ?」と自問した場合、答えは企業によって異なるでしょう。しかし、究極的には、会社全体で共有する責任ということになります。
 
CMO.com:多くの企業では、デジタルはマーケティングの一部門ではなく、マーケティング全体の役割だとやっと気づきつつあります。それにしても、このDXPという概念には、まだついていけない企業もあるのではないでしょうか。将来的な成功のためにどんなビジネステクノロジーが重要なのか、大部分のCMOたちには、どのように伝わっていくと思いますか?
 
グラナン:DXPがこれからどう進化していくか、企業はどう対応していくべきか、理解を助けていくのがフォレスターの役割だと思っています。ときには、フォレスターの顧客がまだ完全に理解できない「ビジョン」を描いてみせるのも我々の仕事です。しかし、DXPは避けようのない未来であり、少なくとも我々は将来的なビジョンとして今後も強調していきます。企業がデジタルマーケティングに関する自社ならではのビジョンを成熟させていくにつれ、マーケティングの進化を成功させるには、ビジネスにおける他の領域でも歩調を合わせた進化が必要になるとわかるでしょう。確かに我々のビジョンはやや先行しすぎているかもしれませんが、必要なスタンスだと思っています。
 
CMO.com:レポートの中には、非常にテクニカルな用語が出てきます。「フロントエンドのコード」とか「共有データモデル」とか。「昔ながらの」CMOが率いるチームでは、こうした概念はどのように受け取られるのでしょうか。
 
パワーズ:その疑問に答えるには、マーケティング部門がすべてのテクノロジーを担当するという考えは、いささか認識が甘いという点に言及しなければなりません。これは、マーケティング部門がテクノロジーにおいて、大きな役割を果たさないという意味ではもちろんありません。マーケティング部門がポイントソリューションを選ぶ際、中央のIT部門の助けが不要なケースがあることは明らかです。しかし、DXPの選択は簡単ではありません。箱から出してすぐ使えるというソリューションではありませんから。また、単一のベンダーだけで供給できるものでもありませんので、複数のベンダーのソリューションを自分たちで統合していくことになるでしょう。マーケターにこの仕事を期待するのは現実的ではありません。彼らの得意分野ではないのですから。
 
CMO.com:それでは、マーケターはどのように参画していくべきなのでしょう?
 
パワーズ:ベンダー選定に加わり、マーケティング実務の現場でどのような要件が必要かを説明すべきでしょう。技術を選択するにあたり、マーケティングの視点や専門知識を提供していくわけですが、すべての技術を統合していくには、やはり中心となるテクノロジー部門の協力が必要です。技術者は、相互に連携するさまざまなアプリケーションをつなぎ合わせ、多様な場所から上がってくるデータを集めて、マーケターにコンテクストを提供し、パーソナライズされた体験の構築をサポートしていきます。つまり、チームワークによる共同作業というわけです。我々のレポートの中でテクニカルな用語が使われているのは、チームワークの一要員としてIT部門が含まれているからです。
 
CMO.com:マーケティングは、CIOのチームと仕事をするようになるということでしょうか?それとも、新しいチームが生成されていくのでしょうか。
 
パワーズ:それは企業によって異なります。「これはCIOの仕事」という会社もあれば、「CIOにはこれまで通りバックエンドアプリケーションに注力してほしい」「CRMに集中してほしい」「eメールとERPに専念してほしい」という会社もあるでしょう。会社によっては、顧客接点を包括的に担当する新しいチームを作るかもしれません。
 
マーケティング部門の中に、技術開発リソースが常駐することもあるでしょう。フロントエンド担当の開発リソース、つまり、デザイナーと一緒に表現の構築に関わる技術者などです。こうしたリソースはマーケティングに所属するかもしれません。あるいは、CIOの配下、チーフ マーケティング
テクノロジー オフィサー(CMTO)という新たな役割のトップの配下かもしれません。いずれにおいても、CMOと技術チームとの協力は必須です。
 
グラナン:これは本質的に、複数の専門知識を総合するチームワークなのです。四方を壁に囲まれた中で自分の専門だけに集中するという働き方は終わりつつあり、サービスパートナーとの協業が増えています。技術的な要素が多く、戦略を必要とする取り組みは、どんなものであれパートナーの専門的なスキルが不可欠になります。パートナーの客観的な視点も、マーケターが社内で遭遇する障害を打ち破る上で役に立ちます。
 
CMO.com:どの会社でも、デジタル化を目指す独自の動機とビジネスケースがあると思います。DXPの整備を進めていくにあたり、CMOは何から取りかかったらよいのでしょう?
 
パワーズ:テクノロジー系の人間がこんなことを言うのは稀なのですが、「技術から取りかかる」のではいけません。まずは戦略です。戦略からビジネスインパクトを導き出し、そこからロードマップを作るのです。では、戦略はどこから始めればよいか?
ジャーニーマップが答えです。ジャーニーマップが、今後の技術投資の指針となります。
 
CMO.com:すべてはカスタマージャーニーマップから始まると?
 
パワーズ:そうです。なぜなら「まずは技術」のアプローチで問題となるのは、開発作業が底なしに時間を食いつぶすという点です。こと技術に関しては、資金がいくらあっても十分ということはないですよね?
そこで、何かを選ばなければならなくなる。ジャーニーマップは、どの顧客接点が一番重要で、どの技術から投資すべきか優先度付けをする上で役にたちます。
 
これはいつも我々がテクノロジー系のクライアントに言っていることです。同じことは、技術のカスタマイズについてもいえます。アプリケーションやプラットフォームをカスタマイズするにしても、際限なくカスタマイズを行うわけにはいきません。初期開発でも、保守でも同様です。「カスタマージャーニーで最もインパクトが大きい部分でカスタマイズを行う」という主張が大切です。ジャーニーマップを活用して自社のブランド確立に向けたビジネス目標を決め、最も重要な顧客接点を特定し、どこから投資するかを優先度付けし、そこから着手します。それでこそ戦略というものです。
 
戦略を考えていくと、ビジネスインパクトがどこにあるか、どこに投資すべきかがいやでもわかるようになります。これは、CMOだろうとCIOだろうと、単独で資金を動かすわけにはいかない領域です。多年度に渡る中長期的投資なので、CFOの承認が必要となります。その額は200万ドルかもしれないし、2000万ドルかもしれません。予算が承認された後は、自社のデジタル変革を進めていくために必要な予算を継続して確保できるよう、マイルストーンが達成できていることをCFOに証明していきます。ここからロードマップが生まれ、再び、DXPのどこに最も大きなビジネスインパクトがあるか、という点に基づき、ロードマップでの優先度づけを行います。
 
グラナン:くどいようですが、顧客が最優先という大前提を忘れてはいけません。テクノロジーやプロセスの実装に熱心になるあまり、この点を見失っては困ります。注力すべき領域を見失いそうになったら、ジャーニーマップを見るのです。自社のウィークポイントがどこなのか、ジャーニーマップを見ればわかるはずです。そこから明らかになるビジネス優先度と、投資すべき領域を関連づけていきます。ビジネス優先度が高い場所とは、当然ながら、顧客がいる場所ということになるのです。
 

 

 

どのような規模の企業でも、あらゆる顧客接点で最適なエクスペリエンスを提供するために。アドビは企業の持つマーケティングアセットを最適に管理することのできる基盤を提供しています。
 

 

 


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