雑誌・書籍の制作からWeb、ゲーム開発など、様々なジャンルで活躍する大手制作プロダクション、株式会社ビーワークス。今度はデジタルマガジンの分野にチャレンジした。 スポーツの中でも繊細な動きの表現を求められる"ゴルフ"をテーマとし、これまで紙媒体では不可能だった"現場の臨場感"を再現した。 新たなるデバイスが持つ将来性と可能性に挑む。
株式会社ビーワークス
ムックや書籍などの企画・制作を請け負う編集プロダクション。近年では、Webやゲームと言ったデジタルコンテンツも多く手掛ける

株式会社ビーワークスは今年、創立10 周年を迎える大手制作プロダクションだ。近年では雑誌や書籍の制作だけではなく、Webやゲームの制作を手掛けるなど、幅広く事業を展開している。そのビーワークスがDigital Publishing Suiteを利用し、株式会社三栄書房から発行されているゴルフ専門誌「ゴルフトゥデイ」の電子化を手掛けることになった。
同社では以前よりゴルフトゥデイ誌の紙面デザインを担当していたが、iPadのメインユーザーとゴルフのプレイヤー層が重なることもあり、以前よりデジタルマガジンへのアプローチを考えていたビーワークスからの提案によって、今回の電子化へと結びついた。 企画、制作を担当した同社の出版サービス事業部長である丸田敏晴氏と実際に制作の作業を担当した長谷川美香氏、そしてゴルフトゥデイ誌編集長の築比地敬一氏にInDesignでの実作業を行ってみた際の感想と電子化におけるメリットをお伺いした。
人気アプリ第一位に輝く
人気プロゴルファーの石川遼選手のムービーで始まるゴルフトゥデイ電子版は、App Storeでリリースされるやいなや「スポーツ」ジャンルアプリの第一位に輝いた。もちろん石川選手のネームバリューも影響を与えているだろう。しかし、ゴルフファンにとっては待ち望んでいたコンテンツの一つではなかったか。
「以前よりゴルフトゥデイの紙面デザインを担当させていただいておりましたが、電子書籍、デジタルマガジンについても以前より注目していまして、事業化のタイミングを見計らっていた状況です。」と同社出版サービス事業部長である丸田敏晴氏は語る。
一方、三栄書房でも雑誌の電子化は以前より考えていたそうだが、今回Digital Publishing Suiteのベータ版がリリースされたことを契機として、今回のゴルフトゥデイ電子版発行に結びついた。
「以前にDigital Publishing Suiteを使って制作された米WIRED誌を見て、うちもいつかこんなデジタルマガジンを作りたいと思っていたところにビーワークスさんから電子化のお話をいただきました。その後の話は早かったですね。」とゴルフトゥデイ編集長の築比地敬一氏は語る。

雑誌版のゴルフトゥデイ誌。電子版は雑誌をそのまま電子化したものとは異なり、過去に発売した号から「飛ばし」をテーマにした企画を厳選し、インパクト時の打球音や動画、スイングの連続写真を盛り込むことで、雑誌をさらに進化させた内容になっている

ゴルフトゥデイ電子版の表紙。動きのあるオープニングが「動く!!音が出る」という、紙媒体では表現できなかったことを可能にしたと表明している。見る人の期待感をそそる仕組みだ

ゴルフファンとiPadのユーザー層が重なる部分が多かったことが今回の成功につながったのでは、と分析する丸田氏
新しい表現の確立を目指して
ゴルフをはじめとするスポーツ専門誌では、スイングの分解写真やインパクトの瞬間など、動きを解説するページが多い。デジタルマガジンであればムービーを掲載することも可能であるため、より臨場感のあるコンテンツを構成することができるのが魅力だ。
「ゴルフは物理です。究極的にはインパクトでクラブのフェース面とボールがどう接触するかで「飛び」の3要素が決定します。しかし、紙ではその瞬間を見ることは絶対にできません。この1万分の5秒の世界を画面を触ったり、サウンドを聴いたりすることで体感でき、自分の上達にすぐに役立つのがまさに今回のアプリです。」
紙面では分解写真として並べられていたスイング時のショットもiPadならば、画面をスライドさせてインパクトの瞬間を狙って画面を止めることも可能だ。 また、動きだけではない。ドライブヘッドがボールを叩くインパクトの瞬間を音に収め、タップすることで再生できるようにした。ユーザーは音の違いを聞き分けることができ、ドライブシャフトを選ぶ際の目安となる。
「これまでは、リッチコンテンツを含むデジタルマガジンを発行するにはアプリケーションとして開発する必要があり、ハードルが高かった。しかし、Digital Publishing Suiteのリリースによって、プログラマーではなくInDesignを使うことのできるデザイナーであればストレスなく制作することができます。」と丸田氏は語る。
また、今回の電子版のオーサリングを担当した長谷川美香氏は、実際に作業してみた感想を次のように語ってくれた。
「これまでの紙面制作とはワークフローが大きく変わりました。デザインの作業がメインだったところから動的な要素の見せ方やページ構成の提案など、コンテンツ制作により深く関わって編集部とやり取りを重ねました。今回の経験で今後ももっと魅力的な見せ方、提案ができると実感しました。」
雑誌をそのまま電子化するのではなく、iPadというデバイスに合わせたコンテンツを新たに作り上げるという作業は、ノウハウがない中での試行錯誤もあったようだが、編集・制作一丸となっての取り組みは結果に繋がった。

電子版の発行は以前から希望していたと語る築比地編集長。思っていた以上のものが出来上がったと語る

