2009年11月26日、東京・大崎のゲートシティホールにおいて「Adobe AIR Day」と題したイベントが開催されました。 本イベントでは、2009年10月、米国ロサンゼルスで開催された Adobe MAX 2009で発表された Adobe Flash Platformの最新情報に加え、Adobe AIR 2.0 (2010年上半期にリリース予定) の新機能を中心に紹介しました。
記事:廣畑大雅氏
Adobe Flash Platform 最新情報
アドビ システムズ 株式会社 デベロッパーマーケティングスペシャリストの轟 啓介よりAdobe Flash Platform を紹介しました。
Flash Platform とは
Adobe Flash Platform とは、Flash Player や Adobe AIR などのランタイムをコアとした、関連ツールやサーバ製品にて構成される環境を指す総称です。デベロッパーやデザイナーは、Adobe Flash Platform を使うことによって、先進的かつ表現力豊かなアプリケーションやコンテンツ、動画の制作を実現することができます。

アドビ システムズ 株式会社
デベロッパーマーケティングスペシャリスト
轟 啓介

現在、Adobe Flash Platform は Web にさまざまな表現を提供し、新たな分野を Flash が切り開いています。たとえば、低解像度の動画は高解像度の動画へ、プログレッシブダウンロードはダイナミックストリーミングダウンロードへ、2D ゲームは 3D ゲームへと進化しています。

「今後は、ユーザーが使っている環境に応じて最適化されていくアプリケーション (Contextual Application) が世にでてくる。」と、この先のトレンドの予想を語りました。これらに対応するために提供されるのが本イベントのメインである Flash Player 10.1 と AIR 2.0 です。正式版は 2010 年の上半期を予定しています。
Flash Player 10.1

Flash Player 10.1 のテーマは、「モバイル対応」です。
今まで PC 上でしか動作しなかったフル Flash コンテンツは、今後 Palm webOS, MS Mobile 6.5, Android Éclair, Symbian S60 などの OS が搭載されているスマートフォンでも動作できるようになるので、これらのデバイスを使用しているユーザーに対してリーチが可能になるということが、大きな特徴です。

モバイルに対応するということは、モバイルに最適化するという意味でもあります。 そのため「パフォーマンス」と「デバイス機能の活用」という 2 つの軸で最適化を図っています。これらの内容は AIR ランタイムにも関わってきます。
Adobe Flash Platform Services
Adobe Flash Platform の収益化サービス "Shibuya" を紹介しました。

"Shibuya" は、AIR アプリケーションに課金モジュールを組み込み、アドビがホスティング、ライセンス管理、販売上状況レポートなど一連のサービスを提供するもので、現在アメリカ、カナダで実験的に行われています。

日本には Adobe AIR Gallery というサイトがありますが、アメリカには AIR Marketplace というサイトがあり、こちらで "Shibuya" を使用したアプリケーションを検索することができます。
AIR 2.0 beta
Adobe Labs にて SDK やランタイムが公開されていますが、他にも海外の開発者が開発したサンプルアプリケーションがソースコード付きで配布されています。本イベントにてスピーカーとして登壇した日本の開発者が手がけたアプリケーションに関しても、同様に公開されています。
AIR 2.0 のテーマは、「 OS との更なる連携」と、 Flash Player 10.1 のテーマでもある「モバイル対応」です。「 OS との更なる連携」に関して、3 つの代表的な新機能を紹介しました。

デジタルカメラや USB メモリなどのストレージデバイスが PC に接続されたことをAIR アプリケーションが検知できます。
この機能により、例えば撮影した画像や動画を、AIR アプリケーションを通して、予め設定しておいたフォルダやオンラインサービスなどに、自動的に送信することも可能になります。

「関連付いたアプリケーションでファイルを開く」
任意のファイルを OS で登録されているアプリケーションから開くことができます。
例えば、 AIR アプリケーションから .mp3 ファイルを開くときに、その OS に iTunesがインストールされており、.mp3 ファイルとの関連付けが設定されていれば、iTunes で再生することができます。
ただし、以下のファイルを開くことはできません。
- アプリケーションディレクトリ内のファイル
- セキュリティ上、開けないファイルタイプ ( .bat / .cmd / .exe / .reg / .sh / .vb / など )

「ネイティブプロセスの起動と相互通信」
ローカルアプリケーションを起動したり、コミュニケーションしたりすることができます。
たとえば、Mac のスクリーンキャプチャ機能を AIR アプリケーションから呼び出して、キャプチャした画像を指定のフォルダに保存します。その後、保存した画像を Photoshop で開くといった処理も可能になります。
AIR 2.0 は、ネットワーク機能も強化され、AIR 1.5.x 以前のバージョンでは実現できなかったことも実現できるようになりました。

「サーバソケット」
AIR 1.5.x 以前のバージョンでは、クライアントソケットとしてのみ機能しましたが、AIR 2.0 からは、サーバソケットとしても機能するようになりました。
この機能により、AIR アプリケーション間で P2P 通信が可能になります。

「データグラムソケット」
リアルタイム通信に適した UDP をサポートしました。
この機能により、オンラインのマルチプレイヤーゲームや音声チャットなど、リアルタイム性を求められるアプリケーションを作ることが可能になります。

「その他のネットワーク機能」
サーバソケットやデータグラムソケット以外にも、ネットワーク機能がいくつか用意されています。たとえば、「セキュアソケット」は、TLS/SSL など暗号化されたソケット通信をサポートするので、プライバシーに関わる情報や、クレジットカード番号、企業秘密などを安全に送受信するようなアプリケーションを作ることができます。
これらの機能の他にも、モバイル器機やスマートフォン対応の準備として用意されたマルチタッチ / ジェスチャー機能や、アップデートされた Webkit についてなど、新機能を紹介しました。

「マルチタッチとジェスチャー」
モバイル機器だけでなく、デスクトップに対して革新性と最適化をもたらしました。たとえば、タッチスクリーンを搭載した機器向けには、マルチタッチ ポイントやジェスチャーを使った、まったく新しいタイプのアプリケーションの導入と利用が可能になりました。これによりユーザーはマウスを使わず、画面に触れるだけでコンテンツやアプリケーションを操作することができます。

「Webkit のアップデート」
Webkit を Safari 4.0.3 ブランチと同等なものにアップデートしたことで、HTML5 の特徴であるブラウザ上でのドラッグ&ドロップや作画などの処理を、AIR アプリ上で実現できるようになりました。

「その他の新機能 1」
紹介された機能以外にも新機能はいくつもあります。
たとえば、マイクロフォン API では、マイクで入力したデータに、ダイレクトにアクセスできるようなりました。データを扱えるようになるので、マイクから入力された音の波形を表示したり、録音したりといった音声を扱うアプリケーションを作ることができます。

「その他の新機能 2」
他には、「ネイティブウィンドウの最大値の拡張」が挙げられます。
今まで最大値 2880x2880 だった解像度が 4095x4095 まで拡張されました。これにより、巨大なディスプレイにアプリケーションを映し出すなど、デジタルサイネージ用途に活かすことができます。

「その他の新機能 3」
まとめ
最後に轟 啓介は、以下のようにまとめました。
- さまざまな状況 ( ブラウザや OS、デバイス、通信状態 ) に応じて最適なユーザー体験を提供する「 Contextual Application 」が求められ始めている
- Adobe Flash Platform は「 Contextual Application 」開発をサポート
- 収益化サービス "Shibuya" が AIR 開発者に夢を
- Adobe AIR 2.0 の新機能によるメリット
- 開発者は、OS との連携が強化され、制約のないアプリケーション開発が可能に
(OS ファイル検索機能の呼び出しや、DLL の利用など ) - ユーザーは、強化されたネットワーク機能により、今までになかったようなコミュニケーションツールを期待できる
( 友人同士で楽しむオンラインゲームや音声チャットなど ) - ユーザーは、マルチタッチやジェスチャー機能により、スクリーンに直接タッチして操作する新しい体験を期待できる
( 写真プリントサービス端末で直感的な画像サイズ調整など ) - ランタイムのパフォーマンス向上により、今までの AIR アプリケーションも恩恵を受けることが可能
- 開発者は、OS との連携が強化され、制約のないアプリケーション開発が可能に
