記事寄稿:リクルート メディアテクノロジーラボ 鈴木拓生氏
アメリカ、ロサンゼルスで10月4日から7日まで開催されていた、Adobe MAX 2009に参加してきました。

Adobe MAXは、毎年開催されている、Adobe社主催のカンファレンスで、このカンファレンスを通じて毎年新しい、開発ツール、サーバーサイド製品、そして、ランタイムの発表が行われます。
Adobe MAX 2009でも様々な開発ツールやランタイムの発表が基調講演や各セッションを通じて行われました。発表された内容が非常に多岐に渡っているので、今回のイベントレポートでは、
- Adobe MAX 2009で発表された各製品の特徴
- Flash Player 10.1が可能にしたデバイスをまたいだユーザビリティの統一
この2つのトピックに焦点に絞る事で、今回のカンファレンスを通じて見えて来た今後の、RIAを取り巻く環境についてレポートします。
Adobe MAX 2009で発表されたランタイムや各製品の特徴
様々な製品が発表された今回のAdobe MAX 2009を、デザイナーの視点でみた時に気になったプロダクトとして、Flash Player 10.1、AIR 2.0、Flash Professional CS5, Flash Catalystがあげられます。まずは、これらの製品の特徴をピックアップして紹介します。
Flash Player 10.1について
今回のAdobe Max 2009ではFlash Playerの次期バージョンFlash Player 10.1が発表になりました。

Flash Player 10.1は、スマートフォン対応、マルチタッチ、メモリー管理の強化、HTTPビデオストリーミング、コンテンツプロテクトの境界、Peerネットワークへの対応というような機能が追加されています。
上記のように、Flash Player 10.1では様々な機能が追加されましたが、この中で私が時に気になった機能は、Flash Player 10.1がマルチタッチにサポートした点です。
このマルチタッチの機能によって、Flash Player 10.1に対応するモバイル機器やPCでアプリケーションをフィンガージェスチャーで動かす事ができるようになります。今回のFlash Player 10.1はAdobeが2008年5月に発表したOpen Screen Projectにおいて初めての共通したランタイム環境になります。

上の図では、左からマルチタッチ機能を使って、アプリケーションをモバイル、PCで操作しています。また、一番右の図では、テレビでFlashを使ったインタラクティブなアプリケーションのデモを紹介しています。
上の図のように、Open Screen Projectは、スマートフォン、スマートブック、ネットブック、PC、テレビ、携帯電話など、さまざまなデバイスやOSでFlashコンテンツを利用できる環境を作るプロジェクトです。このプロジェクトには、現在50社が参加しており、今回のAdobe MAX 2009でも、Googleの参画も発表されAndroidにFlash Player 10.1が搭載される事が発表になりました。

Flash Player 10.1が搭載されたデバイスではフィンガージェスチャーを使って、同じUIを提供できることは、Open Screen Projectの初の一貫したランタイム環境、Flash Player 10.1の醍醐味ではないでしょうか。
AIR 2.0について

Flash Player 10.1の次に今回のAdobe Max 2009では、AIR 2.0のランタイムが発表されました。
AIR 2.0の大きな特徴として、
- USB Storage Detection
- パフォーマンスの向上
- Native Installer Support
- Launched and Interaction Apps
- Socket Server
- UDP サポート
- IPv6 サポート
- ローカルマイクAPI
- HTML5/CSS3のサポート
- 最大ウィンドウサイズの向上
等のこれまでのAIR 1.5には無かった機能が紹介されています。
AIR 2.0では、Flash Player 10.1をサポートするので、先ほど紹介したマルチタッチもサポートします。AIRの魅力の一つに、WebKitを標準で搭載している事で、Flash Playerではないアプリケーションを開発できる点があると思うのですが、このWebKitの方もSafari 4相当にアップグレードされています。
また、このWebKitで作られたAIRアプリケーションもマルチタッチに対応する予定だそうです。この場合のマルチタッチは、CSS3の <canvas> タグが利用され実現される予定です。
今回のAIR 2.0がSafari4相当のWebKitにアップグレードされたという事で、気になるのは、HTML5にも対応するのかという点です。HTML5のサポートに関しては、まだ最終的な仕様の確定が出来ていないものの、メインの機能については、対応予定だそうです。
AIR 2.0のロードマップ
10月4日にプレビュー紹介されたAIR 2.0の今後の開発ロードマップですが、2009年末までに、AIR 2.0のβランタイムとSDKがAdobe Labsで公開され、2010年の上半期には、一般リリースされる予定です。

Flash Professional CS5
ここまでは、Flash Player 10.1とAIR 2.0というランタイムについての発表に関してまとめてきましたが、これからは、そのランタイム上で動作するアプリケーションを作成するツールについて紹介して行きます。
まず、Flash Player 10.1のランタイム上で動くアプリケーション開発環境として、今回のカンファレンスでは、Flash Professional CS5についてのプレビューが行われました。Flash Proの主なアップデートとして、
- iPhone書出し
- 物理演算
- AS3スニペット(コードを書かなくてもドラッグ&ドロップでAS3追加可能)
- InDesignと同じようなレイアウト機能
- テキスト周りの拡充(TLF)
- Flash Builderとの連携強化(BuilderからFlaプロジェクトが立上可能)
が上げられます。
Flash Professionalの一番驚いた点として、Flash Apps for iPhoneという、名称で、Flash Professionalで作成したFlash プロジェクトをiPhoneアプリとして、書き出せる事になった点です。

このFlash Apps for iPhoneに関しては、私の所属するリクルートメディアテクノロジーラボのブログの方でもまとめましたが、Flash ProfessionalからiPhoneのネイティブアプリを書き出す事が可能になり、そのアプリをiTunes経由で配布出来る事が発表されました。

こちらが、実際にFlashのアプリケーションをiPhoneアプリとして書き出しているデモの様子ですが、書き出しのオプションの所で、「iPhoneへ書き出し」を選択し、パブリッシュするだけで、iPhoneアプリが作成できるようになっています。
iPhoneアプリをFlash から書き出せる事だけでも大きなニュースなのですが、作成したアプリケーションをキチンと配信する仕組みまで提供しています。
Flash Catalystについて

Flash Professional CS5は、これまでのFlash製品のアップグレードとして捉える事ができるので、これまでのFlashユーザーからすると、どんな新機能が追加されたのかのイメージが湧きやすかったと思うのですが、最後に今回β版が公開されるまで、どんなツールなのかなかなかイメージが湧き辛かったFlash Catalystについてまとめてみます。
まず、基調講演の時にPublic Beta2が公開されたFlash Catalyst。このツールは、主にインフォメーションアーキテクトやデザイナーが簡単にFlashのアプリケーションを作るためのEclipseベースのIDE(統合開発環境)です。
また、Flash Catalystがデザイナー向けIDEと先ほど書いた通り、Flash Catalystでは、Photoshopやイラストレーターで作成した、データがそのまま、インポートする事ができます。また、Flash Catalystには、WireFrameコンポーネントというのが存在しており、このWireFrameコンポーネントを使う事で、サイトのWireFrameを作る事ができます。このWireFrameコンポーネントとインポートしてPSDデータを統合する事で、PhotoshopやIllustratorで作成したデザインを動かす事ができます。
このFlash Catalystは、Flexと統合する事でより良いアプリケーションが作れるようになっており、Flash Catalystでデザインしたアプリケーションを、Flash Builderでより深いレベルまで開発をするというワークフローが実現されるようになっています。Flash Catalystの登場で、アプリケーション開発の選択肢が、Flash Catalyst + Flash Builder か、Flash CS5+ Flash Builderの組み合わせに選択肢に増えました。

こちらの図は、Flash Catalystをインタラクションデザイナーが活用し、それをもとに、デベロッパーが、Flash Builderを用いて開発を進めるというワークスタイルが提案されています。
ただ、この図だけですと、まだFlash Catalystの使われ方のイメージが湧きにくいと思いますので、Flash Catalystの使い方を実際に、Ryan Stewart(http://blog.digitalbackcountry.com/)氏とセッション後にディスカッションしてみました。 1)クライアント向けプレゼンツール。
1)クライアント向けプレゼンツール
短時間で、実際に動くモックを作成する事ができるので、クライアントに対してのプレゼンテーションツールという使い方が可能になります。デザイナーがCatalystでパーツ作成、複雑な動きの場合はFlashでアニメーション作成、最後にコーダーがFlash Builder(http://labs.adobe.com/technologies/flashbuilder4/)で統合というワークフローが今後出てきそうです。
2)大規模開発におけるワイヤーフレームとして
Flash Catalystの魅力の一つにデザイナーと連携した、ワイヤーフレームの作成機能が充実している点があげられます。この機能を利用する事で、Flash Catalystを中心に、PhotoshopやIllustratorを使うデザイナーの方々、そして、Flash Builderを利用開発者の方に対してマスターのワイヤーフレームを提供する事が可能です。
3)教育の現場で
インタラクティブデザインをこれから学ぼうとしている学生にとっては、Flash Proでは、AS3.0の言語の習得をする必要があり学習コストが高くなってしまいます。インタラクティブデザインの面白さを伝える学生向けツールとして、Flash Catalystを利用するのも非常に有効だと思います。この例で面白かったのが、Flash Proで機能がどんどん追加されているのをスイスアーミーナイフと例えて、あえてFlash Catalystは、デザイン部分やワイヤーフレーム作成部分に機能を特化して、開発しているという説明が印象的でした。
Flash Player 10.1が可能にしたデバイスをまたいだユーザビリティの統一
ここまで、Adobe Max 2009で発表された、製品を中心にレポートをまとめてきましたが、ここからは、Flash Platformについて紹介します。
Flash Platformの魅力の一つを上げるとするならば、Flash Player 10.1が可能にしたデバイスをまたいだユーザビリティの統合、ではないでしょうか?
今回の基調講演で、Open Screen Projectで各種スマートフォンにFlash Player 10.1が搭載可能になる事が発表されました。
この発表の意味する事として、ひとつのアプリケーションをFlash Player 10.1で作成した場合に、それをPC、各種スマートフォンやiPhone等のモバイル端末にも書き出せるようになった事で、同じユーザビリティを一つのFlash アプリケーションを作成するだけで、個々のユーザーに提供できるようになったのが大きな点だと思います。
そして、この各種アプリケーションをトラッキングする仕組みとして,、MAXに先立ち発表されたFlash Platform Services のDistribution ManagerやOmnitureのSite Catalystの製品ラインナップが加わった事で、デバイスをまたいで作成したアプリケーションがどのように、利用されているかを解析する事が可能になり、そして、その解析結果を元に、アプリケーションを最適化する事が実現できるようになりました。
今回のAdobe MAX 2009はこのように、デバイスをまたいだRIAのプラットフォームを提供する事で、よりユーザーにとって利便性の高いサイトやアプリケーションが、今後どんどん創出されていく可能性を体験できたカンファレンスでした。

鈴木 拓生氏
株式会社リクルート メディアテクノロジーラボ
1979年11月千葉県生まれ
2004年3月 慶応義塾大学院 政策•メディア研究科卒業
デザイン会社、フリーランスを経て2007年株式会社リクルートメディアコミュニケーションズ入社
現在、株式会社リクルートの実証・研究機関であるメディアテクノロジーラボにて研究員として活動中。
メディアテクノロジーラボでは主にDESIGN SHOWCASE マッシュアップアワードの運営等を担当。
