現在、日本のデジタル映像技術は世界でもトップレベルと 言っても過言ではないだろう。その中でも“精鋭”と呼ばれる 映像クリエイター集団がある。それが株式会社 白組だ。 今ではTV番組からCM、映画、ビデオゲームと、あらゆる 映像メディアの中に白組の作品を見ることができる。 最先端のデジタル映像を制作する現場で、CS4がどのよう に役立っているのか、また白組では技術を次の世代へと 受け継がせるためにどのような取り組みを行っているのか を探った。
64bit環境へのシフトを加速
白組ではCS4のリリースを機会にAdobe Creative Suite 4 Production Premiumのライセンスを大量導入している。その背景には、社内のシステムを64bit環境へ移行させる目的があったという。
「これまで、高い処理能力が求められる3Dのプロジェクトには64bit環境を割り当て、比較的パフォーマンスが要求されない2Dの仕事では32bit環境を利用するというように、プロジェクトごとにマシン環境を使い分けていました。しかし、CS4のリリースを機会に社内の制作環境を64bit環境へとシフトさせ、作業効率の向上を計ることにしました。」
複雑なVFXが必要とされるプロジェクトでは、AfterEffectsのレイヤーが100を超えるケースも少なくないという。したがって、アプリケーションの安定性やパフォーマンスを重視するならば、64bit環境へのシフトは必然と言えるだろう。
「現在、64bit環境におけるプラグインとの相性やパフォーマンスの検証を行っている最中です。評価が固まり次第、順次新しいプロジェクトへ導入して行きたいと思っています。」
映画やゲームなどのプロジェクトでは、制作期間が2~3年に及ぶことも珍しくはない。その間にマシンの環境を変えてしまうと仕上がりに影響が出る可能性があるため、すべてのマシン環境を一斉に変えることはないという。また、今回のライセンス導入では、1バージョン前へのダウングレードにも対応するアドビのライセンスプログラム“CLP”が選択されており、このような段階的なシステムのアップグレードに対応できるという点も、導入に当たっての重要なポイントとなっている。
「同じプラグインを使っていてもAfter Effectsのバージョンが変わるだけで、仕上がりの色が変わってしまったりすることもあるんです。また、外部スタッフと環境の足並みを揃える必要もあります。なので、タイミングを見計らいながら、徐々にシステムのアップグレードを進めていくつもりです。」と、システムマネージャーの八木大輔氏は語る。

株式会社 白組
三軒茶屋スタジオ システム部
システムマネージャー
八木 大輔氏

システムマネージャーの八木氏は、作業効率とさらなるクオリティの向上には制作システムの64bit化が不可欠であると語ってくれた
事例PDF:画面表示用 (PDF: 542K)
事例PDF:印刷用 (PDF: 611K)
映像編集にPremiere Proが活躍
2Dのアニメーションから3Dのデジタルアニメーションまで、幅広いジャンルで活躍する白組では、IllustratorからFlashに至るまで、CS4のアプリケーションを余すことなく活用している。映像編集の作業では、After Effectsはもちろんのこと、Premiere Proも大いに活用しているという。
「Premiere Proは主にプレビュー用として利用しています。やはり、モニター上での動きとスクリーンで見たときの動きとではまるで違いますから、実際にHDの画像をスクリーン上で確認し、“ここからここまでの動きを200インチくらいで見たときには、このくらいの動きになるよね”などと話し合いながら調整を繰り返しています。」
そのために三軒茶屋スタジオでは、各マシンにBlackmagic Design社のDeckLinkカードを搭載し、HD-SDIの端子から出力された映像を会議室のプロジェクターで見られるようセッティングされているのだそうだ。
「映画等の作品で監督に来ていただいて、Premiere Proから再生されたHD映像をご覧いただいたこともありますよ。」
映像にあわせる為の音声収録等も社内でPremiere Proを使って行い、音声を含めた状態でプレビューを確認するという。そのためにPremiere Proのボイスオーバー機能がとても役に立っていると語ってくれた。
次世代の人材を育てることの大切さ
白組は現在、都内の各所に5つのスタジオを運営している。青山スタジオはCMをはじめ、3Dだけでなく2Dアニメーションのプロジェクトを担当し、三軒茶屋スタジオでは映画やテレビ、ゲームで使われる最新のデジタル映像を担当するというように、それぞれのスタジオがプロジェクトの内容に特化されている。
白組では4年前より、教育事業を行うヒューマンアカデミーと提携し、映像クリエイターを目指す学生のためのスクールを開設している。それが白組ヒューマンスタジオ(S.H.S.)だ。S.H.S.では、作業を手伝う形で現場にふれ、学生たちが実践に近い形で映像技術を学ぶことができる環境が用意されている。2009年秋に公開予定の劇場用映画もS.H.S.の卒業生が参加して制作されたのだそうだ。映像クリエイターを目指す学生にとって、まさに画期的なプロジェクトと言えよう。
白組は、最先端のデジタル技術を使う一方で昔ながらの映像職人であることを忘れてはいない。自分達が作り上げた技術を次世代に繋ぐ試みは、まさに職人の世界に通じるものがある。将来、このS.H.S.スタジオから、次世代の映像業界を背負って立つ映像クリエイターが生まれるかもしれない。大いに期待されるところだ。
