アクセシビリティ

Adobe MAX 2010 RETWEET - 基調講演

Adobe MAX 2010 RETWEET基調講演

1 Adobe MAX 2010 Follow Up || マルチスクリーンの時代へ

アドビ システムズ 株式会社デベロッパーマーケティングスペシャリスト轟啓介
アドビ システムズ 株式会社 轟啓介

2010年11月25日、ベルサール汐留においてFlashやFlex、AIRなど主に開発者を対象としたイベント「Adobe MAX 2010 RETWEET」が開催された。開場には400名から500名の参加者が集い、開発のエキスパートやアドビ システムからの発表を聴講していた。FlashやAIRアプリが搭載されたスマートフォン、タブレットデバイス、セットトップボックスの実機展示もあり、セッションの合間も積極的に新デバイスを調査する参加者の様子が見られた。

日本で開催されたこのイベントは「Adobe MAX 2010 RETWEET」という言葉が示すとおり、2010年10月にカリフォルニア州ロサンゼルスで開催されたアドビ システムズ社最大のイベント「Adobe MAX 2010」の内容をリツィートするという内容になっている。Adobe MAX 2010のセッションは300を数えその内容は多種多様。そこから特にFlash Platformに関する内容を取り上げてもう一度紹介するという趣向だ。

イベントの冒頭、アドビ システムズ 株式会社デベロッパーマーケティングスペシャリスト轟啓介氏は、Adobe MAX 2010でアドビ システムズ社のCTO、Kevin Lynch氏がおこなった基調講演の内容を5分に要約して発表。Adobe MAX 2010における注目のポイントのひとつは「マルチスクリーン」であるとし、どういった点からマルチスクリーンに焦点が当てられたのかが紹介された。

2011年にはインターネットにアクセスするデバイスはPCよりもモバイルデバイスの方が多くなると推測されている。これまで以上に様々なサイズのスクリーン、様々な種類の解像度のデバイスから、今よりももっと様々なシーンにおいてインターネットへのアクセスが行われることになる。こうしたすべてのデバイスに対応するという意味の「マルチスクリーン」であり、現在同社がもっとも力を入れて開発しているホットスポットだ。

2 多種多様なデバイスで動作するFlashテクノロジー

アドビ システムズ 株式会社ソリューションアーキテクトAndy Hall
アドビ システムズ 株式会社Andy Hall

世界中のPCの98%にFlash Playerがインストールされている。そして今後はPCに限らず、様々なデバイスに対してFlashの技術が展開されていくことになる。アドビ システムズ 株式会社ソリューションアーキテクトAndy Hall氏は、そうしたデバイスの例として次の4つを紹介した。

  • AIR for TV - 現在開発が進められているセットトップボックス(ただし、Google TVと同じくこれをセットトップボックスと呼ぶべきか、ほかのプラットフォームと呼ぶべきはわからない。ここでは便宜上セットトップボックスと表現する)。Adobe AIRを活用して開発されたシステムで、テレビに対して様々なインタラクティブ機能やインターネットを通じた通信機能を提供。コンシューマ向けに直接販売するのではなく、メーカに対して提供することを目的としている。
  • Google TV - Googleが開発したセットトップボックス (AIR for TVと同じく、これをセットトップボックスと呼ぶべきかどうかは定かではない)。Androidをベースに開発されたシステムで、通常のテレビ視聴に加えて、アプリケーション使用やChromeブラウザを使ったWeb検索やWeb閲覧が可能。Chromeブラウザには、Flash Playerが搭載されており、Web上の様々なFlashコンテンツを閲覧できる。
  • GALAXY S - 最新のスマートフォンのひとつ。Android 2.2をベースにした高性能端末で、Flash Player 10.1を搭載。アメーバピグ for Androidもスムーズに動作。
  • GALAXY Tab - GALAXY Sと同じくAndroid 2.2を搭載したタブレットデバイス。7インチの液晶を備え、様々な操作が可能。Flash Player 10.1を搭載。

スマートフォン、タブレットデバイス、テレビとインターネットを融合するデバイス、そのどれにもFlashが搭載され、重要な技術として活用されている。多種多様なデバイス、多種多様なプラットフォームに対してFlash技術が有効に活用されているといえる。

3 Android携帯の取り組み - スマートフォンと「変化」

株式会社NTTドコモ 山下哲也氏
株式会社NTTドコモ 山下哲也氏

Adobe MAX 2010 RETWEETの基調講演では、株式会社ドコモ山下哲也氏を招いての講演が実施された。スマートフォンの出荷台数は400万台をこえ、スマートフォンの時代に突入しようとしている。山下氏はこの状況を「劇的な、今まで誰も経験したことのない革命」と表現し、産業革命以来の「変化」がやってくると説明した。

日本の携帯は他国の携帯に比べてハードウェアの面でかなりハイスペックだ。スマートフォンを凌駕するスペックの携帯も少なくない。そうなってくると日本の携帯とスマートフォンの違いはどこにあるのだろうか。日本の携帯と「スマートフォン」はいったい何が違うのかということについて、山下氏は、AppleのCEOであるSteve Jobs氏の「革新的なインターネットデバイス」という言葉を取り上げ、まさにこの言葉がスマートフォンを表現していると指摘。さらに携帯とスマートフォン、またはPCとスマートフォンには次のような決定的な違いがあると説明した。

  • 携帯電話は電話をベースに機能拡張を繰り返してきたデバイス。出荷した段階でその進化は停止。スマートフォンは出荷されてからもアプリケーションのインストールやOSのアップグレードなどでさらに進化し続ける。
  • PCと異なり、24時間常にネットワークに繋がっている。GPSや6軸加速度センサーなど高度なセンサーを備えている。
  • 直感的に扱える卓越した操作性を備えている。

家電をネットワークに接続し家電ネットワークを構築するというようなコンセプトはこれまで何度も発表されてきたが、身の回りの家電製品はそうはなっていない。これが今、本当に、そして簡単に、実現できる環境になってきていると山下氏は指摘する。マスメディアも大きく変わろうとしているうえ、テレビ、電子書籍/書籍、音楽など様々なものが「変化」をむかえているという。

こうした「ルール」そのものが変化する世界において新しいビジネスを生み出す方法として、山下氏は次のキーワードを紹介。

  • 新しい環境に適応した「構造」
  • コンテキストに応じた「最適化」
  • 魂を震わせる「感動的な価値・経験」

グローバルな時代では、「変化」に対して「守りを固めてやり過ごす」といった戦略は使えないと説明。ルールそのものが変わろうとしているため、積極的にそのルールに臨んでいくことが必要になるという。山下氏はルール変更のいくつかを、仕様書の不在、自らの創造、関係づくりの重要性、アプリもマーケットも手段にすぎない、といった例で説明した。仕様書の不在というのは開発構造を変える象徴といえるかもしれない。これまで仕様書を作成して開発を実施していたものが、これからはソースコードをそのまま使うというOSSの流れになってきているという。ソースコードを直接やりとりした方が間違いが少ないというわけだ。

個人が創りだした価値を組み合わせる、開発できない部分はほかのサービスで補うといったことがおこなわれるようになるため、「関係づくり」も今よりも重要になると指摘。また、アプリケーションやマーケットそのものが最終目的というわけではなく、そこはただの「手段」に過ぎず、そこを通じて便利であったり、感動的な経験を提供していくことが重要だと説明があった。

4 Adobeが送り出す新製品、さらにその先の新機能

Adobe MAX 2010ではアドビ システムズ社の提供する新製品や開発中の製品の発表が相次いだ。轟氏とHall氏はその中から、特にFlashやAIR技術に関連したプロダクトの新機能や、さらに先のリリースでの取り込みが予定されている機能を紹介した。特に興味深い内容をまとめると次のとおり。

  • Flash Player 10.x - ハードウェアアクセラレーションを利用した新しい3D APIの導入。現在のソフトウェアレンダリングからH/Wを利用したレンダリングへ移行し、レンダリング時におけるCPU負荷を限りなく0%に近づける。Androidにおいても同様にハードウェアレンダリングの活用を進める。
  • Adobe AIR 2.5 - Android 2.2、Android Gingerbread(次期Android OSのコードネーム)、Blackberry Tablet OS、スマートTVに対応し、AIRの動作するプラットフォームを大幅に増やしたバージョン。モバイルデバイス向けではGPS、加速度センサー、カメラ、ビデオ、画面表示方向、画面消灯制御、仮想キーボード、マルチタッチ、ジェスチャーに対応。スマートTVではリモコン、2Dハードウェアレンダリング、Flash Access(DRM)などに対応。
  • Adobe InMarket - AIRアプリケーションを販売するための新しいマーケットサービス。既存のマーケットプレースへの出店はその契約作業がかなり煩雑で手間が掛かり、複数のマーケットプレースと契約したいアプリケーション公開者にとっては大変面倒。Adobe InMarketはこうした負荷を軽減することを目指す。AIRアプリにInMarket SDKを組み込んだら、InMarketポータルにアプリを登録。あとは自動的に選択したマーケットプレースでアプリケーションが公開され、決済も自動的に実施される。現在日本における対応ベンダは限られるが、交渉を進めており今後増える見通し。
  • Flex SDK "Hero" - マルチスクリーンに対応する鍵となる次期Flexフレームワーク。Flexフレームワークを使うと、Webアプリケーション(Flash)、Desktopアプリケーション(AIR)、Mobileアプリケーション(AIR)が開発可能になる。現在開発段階にある。
  • Flash Builder "Burrito" - Flash Builderの次期バージョン。マルチスクリーン対応、コーディング作業の高速化、ワークフロー改善、Catalystとの強化、パフォーマンス向上などが実現されている。

それぞれのプロダクトで実現されることになる機能の詳細に関しては、基調講演のあとに実施されたエキスパート達が講演するそれぞれのセッションで発表があった。

5 スマートフォンからTVまで、世界を広げるFlash技術

Adobe MAX 2010のもっとも注目されるコンセプトのひとつが「マルチスクリーン」であることからもわかるように、Flash技術で今もっとも力を入れて開発が進められている部分が、多種多様な解像度/サイズのスクリーン、ひいてはそうした多種多様なデバイスに対応することにある。

こうした様々なデバイスに対して、それぞれにネイティブアプリケーションを開発するというのはあまり現実的な選択肢ではない。1ピクセルの違いがアプリケーション開発に負荷を強いるような状況において、Flash技術はまさにその不可能を現実可能にするための手段といえる。

日本においてもiPhoneに加え、Androidを搭載したスマートフォンの台頭がはじまっている。スマートフォンの普及は今後も増加することが予測されている。多種多様なスマートフォンが登場する中、ひとつの開発ツールからこうした様々なデバイスに対応するアプリケーションを提供できるAIRやFlashの技術は、ビジネスを進展させるうえで重要なキーワードになってくるといえる。