※ここでは、Photoshop CS4を使用して解説しています。
バリアフリーという言葉が一般的になった現在、色弱者にとって暮らしやすい社会を目指す「色覚バリアフリー」の重要性も、カラーユニバーサルデザイン(Color Universal Design=CUD)を啓発・普及するCUDO(カラーユニバーサルデザイン機構)の活動により、急速に認知され始めています。
ここでは、カラーユニバーサルデザインの基礎と、Photoshop CS4によるカラーユニバーサルデザインの実践方法の一例をご紹介します。
- このコンテンツでは、書籍「カラーユニバーサルデザイン」(カラーユニバーサルデザイン機構、ハート出版)より、許可を得たうえで一部の内容を転載しています。
- 色覚シミュレーション画像は強度の色弱者の見え方を説明するもので、実際に見えている状態を再現したものではありません。色の見え方には個人差があります。
- 色覚タイプの呼称はCUDOが提唱する表現に沿っています。【C型】:正常色覚=一般色覚/【P型(1型)、D型(2型)】:色覚異常=色弱
Photoshop CS4には、CUDOが開発協力したCUDソフトプルーフ機能が標準で搭載されています。この機能を使用すれば、色弱者の色の見分けにくさを擬似変換で確認できます。これにより、制作したグラフィックが色弱者にはどのように見えるか、伝えたい情報を正しく伝達できているかを確認し、Photoshop上でカラーユニバーサルデザインに配慮したグラフィック制作が可能になりました。
「ビュー」>「構成設定」>「P型(1型)色覚」もしくは、「D型(2型)色覚」に設定しておけば、「ビュー」>「色の校正」を選択するだけで擬似変換結果の確認が可能です。Command(Ctrl)+Yがショートカットキーです。

P型とD型の2種類の色覚シミュレーションが可能
ひとの色の見え方は、一様に同じとはいえません。遺伝子タイプや目の疾患などにより、一般のひととは色の見え方が異なるひとが、日本に500万人以上います。その中で一番多いのが、いわゆる色弱者です。色弱者は、日本では男性の20人に1人、女性の500人に1人、全体では300万人以上おり、世界では2億人以上にもなります。カラーユニバーサルデザインとは、このようなさまざまなひとがもつ色覚を理解し、なるべくすべてのひとに正しく情報が伝わるよう配慮されたデザインのことをいいます。
色覚タイプの違いは、視細胞の性質の違いによるものです。ひとの視細胞は、暗いときにだけ働く杆体(かんたい)と、明るいときにだけ働く錐体(すいたい)の、2種類に分かれます。後者の錐体にはL(赤)、M(緑)、S(青)の3種類があり、それぞれ主に感じ取る光の波長(分光感度)が異なっています。この錐体の欠陥や性質の違いにより、見分けることが得意な色域に差異が生じます。

一般色覚者が見たTシャツの色

色弱者が見たTシャツの色
- C型色覚
- 3種類の錐体がすべて揃っているひとがC型(一般型=Common)の色覚で、日本人男性の約95%,女性の99%以上を占めます。
- P型色覚
- P型色覚(Protanope)のひとは、3種の錐体のうち赤い光を主に感じるL錐体(赤)がないP型強度と、L錐体(赤)の分光感度がずれてM錐体(緑)と似通ってしまうP型弱度の2タイプに分かれます。P型は赤を暗く感じ、また、赤と緑の色相差がわかりにくいという特性があります。
- D型色覚
- D型色覚(Deuteranope)には、緑の光を主に感じるM錐体(緑)がないD型強度と、M錐体(緑)の分光感度がずれてL錐体(赤)と似通ってしまうD型弱度の2タイプに分かれます。P型と同様に、赤と緑の区別が分かりにくいという特性があります。

一般色覚者(C型)には見分けることができても、色弱者(P型、D型)には見分けにくい色の組み合わせ
ほんの10年ほど前には、携帯電話の画面はモノクロでした。現在では、携帯電話やカーナビ、地図や案内表示など、あらゆるものがカラーであることが当たり前になっています。それゆえ現代社会には、以前に比べて、色によって情報を伝えようとするデザインが圧倒的に多くなっています。例えば、公共施設のサイン、印刷物、Webサイト、AV機器など、あらゆるものにおいて色が重要な役割を果たしています。しかし、それらは一般色覚者が見やすいようにデザインされているものが多く、色弱者にとっては情報が伝わりにくいだけでなく、意味が間違って伝わってしまうことがあります。結果的に、現代社会は色弱者にとって、昔よりむしろ暮らしにくくなっているといえます。

電化製品のLEDランプ。一般色覚者の見え方

色弱者にはランプの色の区別がつかない

急行、準急、各駅停車などが色分けされている

色弱者にはどれが急行で、どれが各駅停車か見分けづらい
このような背景から、情報伝達が正しく設計されたデザインによる、すべてのひとが暮らしやすい色彩環境の重要性が、改めて注目され始めています。これを実現しようとする試みが、カラーユニバーサルデザインの考え方です。カラーユニバーサルデザインに配慮することで、色を上手に使い、カラフルな美しさを保持しつつ、すべてのひとに情報を正しく伝えることが可能になります。
もちろん、カラーユニバーサルデザインは、決して一部の色弱者のためだけの特殊なデザインで、一般色覚者に見にくいものになるわけではありません。伝えたい情報の優先順位と、利用者が感じる印象や心理を考慮した、色だけでなく形やレイアウトを含めた、総合的なデザインを示すものです。それは、一般的なデザインにおける基本理念と全く変わりはありません。

以前の地下鉄案内を再現した画像

CUDに配慮され、色弱者だけでなく外国人にもわかりやすくなった





