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映像の未来革命のまっただなか、特殊効果の専門会社ビリーフは伝統をこよなく愛す

インスピレーションの源を求めて、電気掃除機のデザイナーを思い浮かべる人は、そう多くない。だが、ビリーフ社の場合は、ちょっと違う。サンタモニカを本拠とする放送用デザインスタジオであるこの会社にとって、アメリカの偉大なる工業デザイナー、ヘンリー・ドレイファスの存在は、アイドルも同然だ。「ドレイファスは、生涯を通じて電話やタイプライターをデザインしたんだよ。彼の作品はみんなの心を動かしたんだ」。そう説明してくれたのは、ビリーフの共同経営者スティーブ・カザンジアン。「放送デザインも同じようなものさ。自分の制作した映像が、何百万人という視聴者の目に無意識な状態で映るのだからね」。

ビリーフの2人の経営者カザンジアンとマイク・ゴーデックがデザインの歴史に対して並々ならぬ興味を寄せている事実は、いささか皮肉と言わずばなるまい。なにしろ、2人の会社は業界を一新する革命の渦中にあるのだから。Macintoshコンピュータ数台、After Effects1セットに膨大な種類のプラグイン――これらを武器にして、ビリーフは、規模も資材もたっぷり備えた大手スタジオの牙城に切り込んで、クライアントを奪い取ってきたのだ。


iMac1台とAfterEffectsさえあれば、子供だってモーショングラフィックスのデザインの基礎が身につけられるはずだ。

- スティーブ
カザンジアン


2人の出会いは5年前にさかのぼる。ビジネススクールをドロップアウトした後、ショウタイム社でアートディレクターの仕事を経験していたカザンジアンは当時、 フリーランスのビジネスを軌道に乗せ始めたところだった。ゴーデックは元々南カリフォルニア大学の映画学科の学生だったが、そのころ、ボイジャー社の“クライテリオン”プロジェクトの仕事を辞めたばかりで、やはりフリーランスのビジネスで忙しい毎日を過ごしていた。「僕らは2人とも、デスクトップコンピュータが放送デザインの世界を変革するという結論に達していたんですよ」と、カザンジアンは言う。共通の友人の紹介によって、2人はハリウッド大通りにあるハンバーガー ハムレットというレストランで初めて会うことになる。そもそもはトルティーヤとビール目当てでやって来た2人だったが、すぐさま意気投合し、テーブルが片づけられるころには、ビリーフの構想がしっかり出来上がっていたというわけだ。

“トルティーヤの出会い”から程なくして、ビリーフは急速な成長を遂げることになる。サウンドデザイナーのスコット・ラングを雇い入れたのを皮切りに、従業員は20人近くまで増えた。それとともに加わってきたのは、古びたブラウン管、電気掃除機、電気タイプライターといったコレクションだ。(そう、ゴーデックとカザンジアンがデザインの歴史をこよなく愛しているおかげで、社内は美術館同然の状態となっている。)ビリーフのクライアントは、テレビや映画会社など多岐にわたっている。たとえば、USAネットワーク、フードネットワーク、ユニバーサル ピクチャーズ、WBケーブルネットワーク、ディズニーチャンネル、グラミー賞などだ。

当然と言えば当然なのかもしれないが、ビリーフがインスピレーションの源を求めて、現代の放送デザイナーの作品に当たることはめったにない。「むしろ画家の作品を見ることのほうが多いですね」と、ゴーデックは言う。「たとえば、グラミー賞の仕事では、グスタフ・クリムトの、金箔を貼った絵からアイデアを思いついたんですよ。サンフランシスコで見た絵だったな」。

2人がともに何度も口にしたのは、放送デザインは今や新たなストーリーテリングの一種に移行しつつあるという見解だ。たとえば、カメラの上下移動(ティルティング)といった手法を見るとよいだろう。そして、これから業界内で才能ある人材がどんどん輩出されると、2人は予測している。「iMac1台とAfterEffectsさえあれば、子供だってモーショングラフィックスのデザインの基礎が身につけられるはずだ」と、カザンジアンは言う。「そうなれば、才能にあふれたたくさんの人間に大きく道を拓くことになる。昔は何百万ドルもしたシステムに手も出なかったような人間にチャンスがめぐってくるんだよ」。

言い換えれば、新たな時代がやってくるということだ。ビリーフは、来るべきそうした時代に影響を与え、方向を示したいと望んでいる――もちろん過去の世界もしっかりと手中に収めながら。ところでゴーデックによると、最近ビリーフにやってきたものといえば、スタートレック(クライアントとしてだ)と、きちんと動く手回し蓄音機だそうな。彼らがいちばん興奮したのは、はたして、どちらのほうだったのだろうか・・・。

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