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グラフィックアートと科学を結んで、不思議と美を追求

リー・シャーマン

ポストツールデザイン社のマルチメディア作品について言葉で語るのは、建築を表現するために踊るようなもの。要するに、うまくいかない。愛や痛みと同じように、経験することでしか分からないのだ。

たとえば、ボディショップのために作られたプロモーションCD-ROM 「Listen」では、わたしたちが毎日浴びている圧倒的な量の刺激の意味を、考えさせられる。20の違った言語で語られる5つの物語は、まるで底無しのような深いスクリーンの暗闇から聞こえてくる。その静けさの中でガイドとなるのはかすかな正弦曲線だけ、それにマウスで"チューンアップ"して、旅と意味の道しるべを得なければならない。 もたらされるのは孤独をめぐる独りごと、慰めへの誘い、瞑想についての瞑想――石鹸は影もたかちもない。


ぼくはメカニズムで情報を提供する小さなマシンを作ろうとしているんだ。

-デヴィッド・カラム


この仕事はポストツールの典型的な例だ。CD-ROM であろうと売店のディスプレイであろうと、あるいはオンラインの美術インスタレーションでも、ポストツールのデザインは見る人に参加すること、インタラクティブに関わること、究極的には、対話を、要求する。

ポストツールデザインは1993年、経営者のデヴィッド・カラムとジジ・ビーダーマンがカリフォルニア美術工芸大学(CCAC)の学生時代に、画素の可能性を拡げる、という共通の興味の対象を発見したときから、一貫して不思議と美を扱っている。ビーダーマンはファインアートの画家、カラムは元々音楽とコンピュータ科学の学生で、グラフィックデザインに目覚めていた。 「応用美術と純粋美術というのは別物として扱われている、どこのアートスクールでもそうなんだ」とカラムは語る、「彼女はぼくの知っている限りただ一人、その区別をしない人だ。彼女はぼくの妙ちきりんな絵を見て、気がついたんだ、コンピュータがタイピング以上のことができるってことを」

確かに。まず、コンピュータでは文字を動かすことができる。くるくる回る文字はポストツールのトレードマークであり、彼らは回る文字を制作するためのスターターキット「ウルトラタイプ」も発売している。ポストツールの文字トリックはインタラクティブテレビ局「Tele TV」のコーポレートIDのプロジェクトとして始まった。今やライト モチーフは、最近サンフランシスコ近代美術館所有となったオンライン アート インスタレーションである同社の「ボストTV」から、リム・ギャラリーとロラペルーザのための動画作品の中にまで、どこでも見られる。たんにスクリーンで文字をあちこち飛ばしたいというのじゃなく、それがどうしたら語りの一部になるかを考えるようにしている」とカラム。「ぼくらは活字に動きをもたせることで何かをコミュニケートできるかどうか、練習したんだ」

二人は米ワーナー・ブラザーズ社との契約でブレイクする。1993年、ワーナー初のインタラクティブな報道用資料の記録だ。このフロッピーディスクを用いたプレゼンテーションは、「Blender」のようなCD-ROM 雑誌の先駈けであり、ポストツールが動画の世界に躍進するきっかけとなった。 アーティストの経歴やサンプル曲、評論家や他のプレスのメンバーへの情報をフィーチャーしたインタラクティブな資料はたちまち、彼ら自身にとって、マルチメディアの起爆剤となった。「もともとデザインのためのデザインには興味がなくて」とカラムは回想する。「ぼくは人間とコンピュータとが相互作用する方法を探究したかったんだ」スクリーンの役目とは、また経験のための情報の関係は、といった基本的疑問に答え、探る、それがやがてポストツールの美学の基礎をつくった。

その他のポストツール初期のプロジェクトはこのテーマを継続し、形式の基本は物理的特性にもとづきながら、プレゼンテーションの中にヒューマン・マシンインタフェースの実験を盛り込んだ。その一つではビデオゲーム「Defender」にヒントを得、バーチャル空間がコンピュータスクリーンの境界を飛び 越えている。「ぼくらは自然をモデルにしていた」とカラムは言う。「こういう、フラフラするモノがあって、マウスでコントロールできる。そいつが壁にぶつかるとスクリーンがパンして、さらに情報が見られるんだ」

今日、ポストツールは、コンテンツでもフォームでも、その境界を押し広げ続けている。人のゴミはポストツールの芸術品だ。ヨーゼフボイスとマルセルデュシャンに影響を受けたカラムとビーダーマンは、自分達のデザインにファウンド アートの緊張を求めることを楽しんでいる。「流用アート、という考え方が好きなんだ、モダニストの思想とジャンクを結び、論理的な考えと空想を結ぶんだ」とカラムは語る。「ポスト ツール」という社名すら、"流用"だ。「引っ越して来たときビルの外にあって、それをいただいたんだ」とのこと。「媒体でもあり道具でもある、コンピュータを表す完璧な言葉だから」と彼は言う。

カラムは、自分がこれからも、e-コマースに対する過敏な意識と現実的な要求との折り合いをつけていかなくてはならないと考えている。解決策は? 彼はコンピュータ グラフィックスの境を押し続けること。「デザイナーはインタラクティブな媒体にすごく興味があると思う、それなのにプリントしたページを再生する人ばかり」とカラム。「ぼくはそのメカニズムを通して情報を送るようなマシンを作ろうと思う」

リーシャーマンはサンフランシスコ在住のテクノロジー ライター。

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