その多彩なスタジオのクロスメディア・パブリッシングは復讐なのです元写真ジャーナリストであり、ベストセラーとなったデイ・イン・ザ・ライフ・シリーズの著者でもあるリック・スモーランがアゲンスト・オール・オッズ・プロダクションを1991年に設立したのは、紙、インタラクティブなCD-ROM、Webベースの技術を組み合わせた大型写真プロジェクトのデザイン・制作に特化して読み出したら止められない物語をつくるためでした。アゲンスト・オール・オッズはAdobe® Photoshop®、Adobe PageMaker®、Adobe Acrobat®、Adobe PageMill®、 Adobe Premiere®、そして Adobe After Effects®といったAdobeのツール群を縦横無尽に駆使してクロスメディア・パブリッシングを現実のものとしました。この会社の最初のデジタル出版物となったフロム・アリス・トゥ・オーシャンは、27歳のロビン・デヴィッドソンがオーストラリアの奥地を横断するというとてつもない冒険物語です。PageMakerでデザインされたこの受賞作にはスモーランの写真とロビンの旅紀行の抜粋がまとめられています。インタラクティブなCD-ROMにはさらに写真や音声、音楽、そしてロビンの話やアボリジニの話、オーストラリア奥地の話、動物の話などがおさめられました。多くの点で革新的な作品だったアリスは、人々に「自分がコンピュータの画面を眺めているということを忘れて没頭できる経験」を与えたはじめてのマルチメディア作品のひとつだったとスモーランは言います。
このスタジオの二番目のプロジェクトであるパッセージ・トゥ・ベトナムは70人という写真家のチームを展開して変貌しつつある国の本質をとらえようとしたものです。ゴージャスなベトナムの画像や事実のほかに、CD-ROM版では目玉としてインタラクティブなギャラリーを用意し、Adobe Premiereで編集したビデオクリップを再生できるようにしました。スモーランはこう言っています。「私たちは撮影した写真家をそのご自慢の写真のなかに違和感なくもぐりこませる方法を見つけました。そのおかげで写真家に写真のなかにもぐりこんで解説してもらえるようになったのです」当初は多数の出版社に断られたというパッセージのCD-ROMが続々と受賞した多様な賞のなかには、その年もっとも優れたマルチメディア作品に贈られるインヴィジョン&SPA賞などがあります。
1996年、アゲンスト・オール・オッズは24アワーズ・イン・サイバースペースでインターネットがいかに人々の生活を変化させているかについて報告しました。この会社は本やCD-ROMだけでなく、何百人もの写真家、学生、アマチュアにWebサイトで同じ日に出版する画像を送ってもらうという世界最大のオンラインイベントも指揮しました。写真家たちが一時間仕上げの現像室で現像してもらったフィルムをスキャナで取り込んだ画像ファイルを電子メールでミッション・コントロールの編集者に送ると、編集者がキャプションをつけ、レイアウトのテンプレートに流し込んでページを完成させていったのです。
1998年6月に書籍として、またWebサイトとして出版されたワン・デジタル・デイは人類社会に対するマイクロプロセッサやコンピュータ革命の衝撃をあきらかにするものです。「こういった技術がいかに生活のなかに織りこまれているかを知ったらみんな卒倒すると思うよ」とスモーランは言います。続いて登場したのはシックスティーン・イン・アメリカという千年期のおわりにティーンエージャーであるというのがどういうものかをつづった年代記の2000年卒業の部です。
スモーランは、Adobeのデジタルパブリッシングツールを使う最大の利点はその柔軟性にあると言います。「間違えてもかまわないし、こうしたらどうだろうという実験がとても安価にできるんだ」彼はまた時間を節約させる機能も評価しています。「この技術は人間をうんと創造的にさせてくれるものだと思う。雑用をしなくてすむようになるから大切な部分に集中できる時間が増えるんだ」アゲンスト・オール・オッズはさらに高度なデジタルパブリッシング技術を追い求め続けていますが、彼らは決してそれが目的――彼らの場合、物語をつむぐこと――を実現するための手段に過ぎないことを忘れてはいません。スモーランの結論はこうです。「私たちのプロジェクトがもっとも得意としているのは人々の心を動かすことです。それがなければ、こんなものはまったくの無意味ですから」