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Jun. 2004

円谷プロ


プロジェクトを短縮化させるAfter Effectsワーク

早川氏によると、平成3部作のころは、2週間で2話分のペース(2ブロック単位で制作されている)でCG制作が行われていたが、今回の「ネクサス」では、合成カットは増える一方で、さらにそこに求められる技術的な要求度も極めて高度なものになっているにも係わらず、もっとタイトなスケジュールが要求されているという。それがCG班の最大の悩みのようだ。「ネクサス」を見たことがある方なら、「子供向けの番組でここまでやるか!」ときっと思うだろう。かつてのシリーズでは単純な合成やエフェクトで済んでいたのが3Dを多用したカットが格段に増えており、あきらかにデジタルワークの完成度は高いものになっている。確かにハードウェアの処理能力は年々大幅に高くなっており、クオリティもスピードも加速しているが、人間の処理能力には限界がある。

そんな状況下で施策されたのがAfter Effectsのプロジェクトファイルの共有化による遠隔ワークへの取り組みだ。先にも紹介したように、「ネクサス」のワークでは「円谷本社編集室」、「日本エフェクトセンター」、「円谷CGIルーム」の3カ所による連携作業で、この過密なスケジュールに対応しているわけだが、普通にやっていたのではデータの受け渡しや共同作業のレスポンスの部分で、ずいぶん無駄な手間がかかってしまうことになる。そこで、「ネクサス」のプロジェクトでは、ワーク素材をデータサーバで集中管理することで、各チーム内の作業はもちろん、遠隔地同士の共同作業の作業効率を高めるトライアルがなされている。CGのエレメント担当、エフェクト担当、マット合成担当、といったように作業が分業化されていても、マスターワークの鍵はすべて「After Effects」が握っているために、「After Effects」のプロジェクトファイルを共有化して作業することで多くの問題が解決できることになる。

ここで重要な役割を果たしているのがAfter Effectsの「ファイルを収集」という機能だ。プロジェクトによっては、非常に多くの素材が組み込まれているものもあり、作り込んでいく中では、素材を入れ替えたり、新しい素材を加えたりといったこともしばし発生するわけだが、そんな状況下では、プロジェクトを別の個所(環境)で受け取った時に、素材のパスが切れてしまい見つからないといった可能性も多分にある。そこで、今回のワークでは、作業が終わった時点でAfter Effectsの「ファイルを収集」を使い、プロジェクトを構成するすべてのファイルを一個所に集めることで、素材の分散を回避し、明瞭かつ安全なファイル管理を行っている。つまり、ベースとなるプロジェクトを共有化しておけば、必要に応じて内包されているエレメント(素材)を置き換えたり、合成の具合を変更したりといった作業が、各所で見通せるばかりか、キャッチボールをするために、いちいちレンダリングしてテープに落とし相手に渡すといったような無駄な作業も省けることになり、ワークフローの短縮が実現できるという仕組みだ。

「例えば、円谷本社編集室で、あるシーンの合成作業をAfter Effectsで行っているとします。そのプロジェクトデータを編集室から円谷CGIルームに"こんな風に直したから"というメッセージとともに送られてきて、"わかりました。それではこうします"といった感じで、やり取りをする際に、ベースは同じ素材を使っているのでAfter Effectsのプロジェクトファイルを渡すだけで済みます」「日本エフェクトセンターとのやりとりでは、光線作画と3DCGが絡む複雑なレイヤー構造の合成カットなどは、こちらでまず本編・特撮の実写素材に3DCGの飛行機やキャラクターを仮合成したプロジェクトデータをシーンごと「ファイル収集」してサーバー経由で渡し、先方で光線の作画を合成してフィニッシュしてもらったりしています。それ以外にもプロジェクトデータだけの場合やエフェクトテンプレートなどもやりとりして、作業の効率化を図っています。」(早川氏)

数多くの素材を使った作業になると、スタンドアローンなワークフローであっても、データ管理が散漫になってしまうと、よく「あれ? このデータはどこに行ったんだ?」というようなシーンに遭遇することがあるが、作業中に限らず、作業が終了した時点でバックアップをとるときに役に立つ機能だ。また、「ネクサス」のワークにおいては、撮影現場での仮合成にもAfter Effectsが使われている。助監督が撮影現場にPCを持ち込み、収録VTRのスレーブから映像を取り込んでAfter Effectsで、その場で背景素材と仮合成してみることで「こんな感じになるのかな?」というイメージングを掴みながら撮影が進められている。また、後の「合成打ち合わせ」の段階でも、それが、より具体的なラフイメージとして共有されることで、作業効率やチームコンセンサスの部分でもよりよい環境が構築されている。

デジタルツールがウルトラマンの世界を支える

板野氏は、アニメーション畑だけあって、1シーンの効果に大変なこだわりと執着をもったアプローチでシーンを描き出している。映画『ULTRAMAN』では、実写の中でジャパニメーション独特のスピード感を表現するために、わずか数秒や数フレームといった緻密さの中で極端なブラー感を表現しているという。「最終的な仕上げでは、何フレームかは、あえてPhotoshopに持ち込んで、1枚1枚レタッチをかけてからAfter Effectsに戻すということもやっています。ウルトラマンのスピード感を、プラグインで均等にかけるのではなく、隠し味として書き込んでいきます」と板野氏は語る。

ちなみに、ウルトラマンシリーズでは『ウルトラマンティガ』の制作から、After Effectsが導入されたという。早川氏によると「その頃は、まだAfter Effectsのバージョンはたしか3.0ぐらいだったと思います」とのことだ。「強くてたくましい正義の味方」、そんなイメージを常に大切にしているウルトラマンの映像世界は、特撮をこよなく愛するスタッフたちと、PhotoshopやAfter Effectsといったクリエイティブツールによって描き出されている。
円谷CGIルームのワークサーバ
円谷CGIルームのワークサーバ

ウルトラマンネクサス

ウルトラマンネクサス
毎週土曜日7:30AM/CBS/TBS系全国28局ネット放送中、円谷オフィシャルサイト

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