映像作品の印象を決める要素として、音楽や効果音は欠かせません。まったく同じ映像でも、重い雰囲気の音楽を合わせるとシリアスな作品に見えたり、明るい音楽をつけると和やかな印象になったりと、作品意図の伝わり方にまで影響します。
しかし、イメージにピッタリだからといって気に入ったアーティストの曲や作曲家の演奏を手持ちのCDなどから利用したいのなら、注意が必要です。基本的にどんな楽曲も著作であるため、特に商用作品や公共の場での上映を行う作品への使用に際しては、使用権の扱いがどのようになっているのかを確認し、然るべき使用許諾を得る必要があります。
映像作品のBGMを使用する際、メジャーな楽曲であれば著作権管理団体との契約が必要であったり、個々に権利を定めたBGMクリエイターのCDなどを利用する、あるいは作曲を依頼するなど様々なケースがありますが、いずれもそれなりのコストがかかったり、権利の範囲が限られています。
そこで、予算規模が大きくない作品などで便利に利用されているのが、いわゆる著作権フリーの音源素材集です。このタイプの音源や楽曲の多くは、購入した段階で販売元の定める範囲での自由な使用が許諾されており、ソフトウェアパッケージのコストだけで済み、量販店やネット販売などを通じて手軽に手に入れることができます。また、既製の曲であるため、手軽である反面、尺や雰囲気が丁度よいものを探すには多くのサンプルを試聴し、いくつかの候補曲を実際に合わせてみて、波形編集などで小節を増やしたり、タイミングに合わせたフェードアウトなどの処理をしたりといった作業の必要があります。
一方、マルチトラック編集などオーディオ制作のための様々なツールを搭載したAdobe Audition 3に代表される「ループシーケンサー」機能を持ったアプリケーションを使用すると、楽器の組み合わせやフレーズの長さを好みに調節し、作曲の知識がない方でも比較的わかりやすい操作でカスタムメイドのBGMを作り出すことができます。
しかし、この方法では完全にオリジナルのBGMを作曲できる反面、すべての曲を一から作る必要があります。作品に複数のBGMが必要な場合は作曲の時間もそれだけかかりますし、多くの作業を一人でこなさなければならない現場などでは敷居が高いかもしれません。
そこで、音楽に詳しくないデザイナーやエディターのための機能・操作性を重視したAdobe Soundbooth CS3には、素材集の手軽さとビデオ作品の内容によって抑揚や尺などをアレンジできるカスタマイズ性を兼ね備えた「オートコンポーザ」機能が搭載されています。
Soundbooth CS3は単体販売されているほか、Production Premium CS3にも搭載されています。
Soundbooth CS3のライブラリには、予め楽曲として構成された「スコア」というファイルが用意されており、Adobe Bridge CS3上でジャンルを選んで試聴しながら楽曲の素材集と同じようにスコア(曲)を選びます。長さなどは気にせず、雰囲気がマッチするかどうかだけを基準に選べばよく、素材集よりも手軽に選曲を行うことが可能です。
加えて、スコアファイルは楽器ごとに「イントロ」「Aメロ」「Bメロ」「フィル」などのパート分けされたパーツで構成されており、オートコンポーザ機能でアンサンブルの構成やメロディラインの強弱などを変更することで、ループシーケンサーで作曲をするように、映像作品に違和感なくジャストフィットする完成されたBGMにアレンジすることができます。この操作はごく簡単なもので、時間や人手の限られた現場でもスピーディーに行えます。
また、QuickTimeがインストールされた環境では、Soundbooth CS3はQuickTimeムービーをリファレンスとして使用できますので、Final Cut Studioの使い慣れたツール群で作成されたムービーにも最適な形でBGMを追加することができます。
では、Final Cut Studioで作成されたムービーにSoundbooth CS3でBGMを適用する方法をご紹介します。

Soundbooth CS3では1曲ずつスコアをアレンジしますので、予めシーンごとにムービーを分けておきます。
Final Cut Pro 6からムービーを書き出す場合、レンダリング時間とディスク容量の節約のために参照ムービーを書き出します。
ひとつのシーケンスで作品を仕上げているなら、完成したシーケンスをネストし、ブラウザ上でシーケンスを一括選択してバッチ書き出しを行うと効率が良いでしょう。

ムービーのファイル名は、シーンや順番などがわかるようにしておきます。
また、それぞれのファイル名に拡張子「.mov」がついていなければ、追加しておきます。
※Finder上でファイルを選択して、「ファイル」メニューの「情報を見る」でファイル名と拡張子の有無を確認できます。

Soundboothのプロジェクトには複数のムービーを読み込むことができますので、使用するすべてのムービーをインポートしておきます。





Adobe Bridge CS3が起動してスコアのディレクトリーが開きますので、使いたいジャンルのフォルダを開き、スコアファイルを選択して試聴します。なお、スコアファイルは「SBST」というアイコン、拡張子のついたファイルです。
※「Adobe Soundbooth Scores」フォルダをデフォルトの場所以外にインストールしている場合は、初回のみ「Adobe Soundbooth Scores」フォルダの場所を聞かれますので手動で設定してください。
また、「assets」フォルダの中には各スコアを構成するパーツのオーディオファイルが収められています。


※この例では「Yellow Bird.sbst」を選択しています。
エディタの「スコア」のエリアに「Intro」「Part1」「Part2」といったパートで構成されたスコアが読み込まれているのを確認します。
※この構成はスコアによって異なります。
時間インジケータ(再生ヘッド)やトランスポートコントロール(操作ボタン)、キーボードショートカットを使用して、スコアの再生を行うことができます。



ムービーとスコアの長さが大きく異なる場合は「ナビゲータ」で表示範囲を調節します。
スコアの右端をムービーと合うようにドラッグすると、各パートの長さが自動的に変更されます。

ナビゲータでムービーの最後の部分を拡大して、スコアの終端の位置を微調整しましょう。

なお、曲の長さをムービーに合うようにするには、「フェードアウト」のチェックを入れておきます。

「強さ」で楽器の数を調節します。1はリズム楽器のみで、5ではすべての楽器の音が鳴ります。
「Flute」では、フルートのレベルを変更できます。
「Vocal」では、ボーカルのレベルを変更できます。
「リファレンスボリューム」ではムービーの音量を調節できます。
「スコアボリューム」では、スコアの音量を調節できます。
※この項目はスコアによって異なり、「Melody」などスコアごとの構成パートの内容が表示されます。
それぞれのパラメーターを変えて再生してみて、聞こえ方がどのように変化するかを確認します。

キーフレームモードではスコアのアレンジ項目にキーフレームを適用できます。

キーフレームモードではスコアのアレンジ項目にキーフレームを適用できます。
キーフレームを設定するには、希望の場所に時間インジケータを移動し、キーフレームボタンを押します。

キーフレームを上下にドラッグすると値が、左右にドラッグするとタイミングを変更できます。

変化させたい部分の2カ所にキーフレームを打って上下にドラッグすることで、たとえば導入部分ではすべてを最大にして、本編や台詞、コメントの入る部分では強さやVocalやメロディ系の強さ、スコアのボリュームを下げるといったように、ビデオの内容に合わせた最適なアレンジを行うことができます。




エディタの表示内容を別の開かれたファイルに切り替えるには、エディタタブのポップアップをクリックします。
なお、Soundbooth CS3の「リソースセンター」パネルを開くと、更に別のSoundboothスコアの試聴・追加購入や、多数の効果音を無償でダウンロードして制作に役立てることができます。


Soundbooth CS3にはこのオートコンポーザ機能のほか、スペクトル表示で簡単に携帯電話着信音などのノイズを除去するといった強力な波形編集、さらにFlashキューポイントを簡単に作成するといった豊富な機能が搭載されています。まずは体験版でお試しください。