Webと電話がリンクしたFlashサイト
ヘアシーダ直電LIVEの仕組みを探る
今月号の記事
ヘアシーダ 直電LIVE ディランに訊け! ー http://www.hairceda.jp/Webサイトにアクセスすると、ディランが登場。フリーダイヤルの番号とIDが表示される
電話をしてIDを伝えると、画面が即座に反応。音声認識と FMS の連携によって、電話と Web サイトがリンクされる。ディランに訊きたいキーワードとして電話口で「自転車」と言うと、このような画面になる
オグルヴィ・ワン・ジャパン株式会社 クリエイティブ・ディレクターの阿部晶人氏(左)とインタラクティブ・マネージャー 西垣宗一郎氏(右)
アデランスの新商品「ヘアシーダ」を PR するために設けられたスペシャルコンテンツ「ヘアシーダ 直電 LIVE ディランに訊け!」が、さまざまなところで注目を集めています。その理由は、非常にユニークな試みをネット上に展開し、技術面でもコンテンツ面でも大きな成果を上げているためです。そのユニークな試みとは、アクセスしたユーザが Web サイトを見ながら電話をかけ、電話でキーワードを話しかけるとそれに応じて PC の画面内のキャラクターが反応するというもの。Web と電話の音声認識を連携させた極めて珍しい取り組みを実現するために大きな役割を果たしているのが、Flash と Flash Media Server(FMS)なのです。
画面の中の「ディラン」が
ユーザの問いかけに反応
「ヘアシーダ 直電LIVE ディランに訊け!」へアクセスすると、そこに登場するのはお笑いタレントのなだぎ武さん(吉本興業)が扮する人気のキャラクター「ディラン」。画面にはまずフリーダイヤルの電話番号と、固有の ID 番号が表示されます。ユーザはフリーダイヤルに電話をかけ、表示されている ID を音声かプッシュで伝えれば、即座に画面内のディランは反応し、コンテンツがスタートします。
ユーザはディランに対して、画面に表示されるたくさんのキーワードの中から好きなものを選び、音声で問いかけることができます。例えば「自転車」というキーワードを問いかけると、ディランがいつも乗っている自転車についてトークを繰り広げます。また、現在公開中の第2弾では、タレントの友近さんが扮する「キャサリン」も登場、ユーザの問いかけに対するリアクションの「ネタ」も、幅が広がっています。
ひととおりディランやキャサリンのリアクションを楽しんだ後で「ヘアシーダ」について詳しく知りたい場合は、アデランスが「スペシャリスト」と呼ぶオペレータへと電話が転送されるという仕組みになっています。
ユーザとコミュニケーションし、
コールに直結させるために開発
「ヘアシーダ 直電LIVE ディランに訊け!」の制作を手がけたのは、オグルヴィ・メイザーグループの中で One to One マーケティングを得意とする、オグルヴィ・ワン・ジャパン株式会社です。同社のインタラクティブ・マネージャー 西垣宗一郎氏とクリエイティブ・ディレクターの阿部晶人氏は、今回の企画の経緯について次のように話します。
「コンペで与えられた課題が、Web だけではなくマスや PR 戦略も含めた、360°の展開を行うというものでした。クライアントであるアデランスさんは、電話を通じたダイレクト販売を得意とする会社で、電話番号を大きく告知する TVCM を流し、お客さまに電話してもらうという広告を常に展開してきました。そんなこともあり“Web を経由してお客さまに登録をしていただくと、(販売のためには)アデランス側からのアウトバウンド(電話発信業務)が必要になってしまう”という認識があったんです。それであれば、逆転の発想で "お客さまからのコール" に直結する、ダイレクトなレスポンスが得られる Web サイトを作ったらどうかと考えたのが、きっかけです。」(西垣氏)
「電話と Web サイトの連携という点については、以前に別の案件で電話の音声認識システムである“Vポータル”(NTT コミュニケーションズの音声認識システム)を使ったことがあり、そのときから大きな可能性を感じていました。アデランスはテレマーケティングの老舗でもあるので、この V ポータルを活用できるのではないかと考えたのです。」(阿部氏)
キャラクターになだぎ武さん扮する「ディラン」を起用した理由は「面白いコンテンツ見たさでサイトに訪れてもらうためです。YouTube でもディランの動画がかなり見られていたし、何より自分がすごく好きだったということも大きいですね(笑)。ユーザの問いかけに対してリアクションをするとき、予想不可能な面白いリアクションをしてくれることが、ユーザにとっての動機付けにもなるだろうと考えました」と西垣氏。どのようなシーン設定にするのか、なだぎさん本人もたいへんにこだわり、最終的には吉本興業の構成作家も加わり、徹底して作り込んだと言います。
「今回は実質1ヶ月という非常に厳しいスケジュールでしたが、いちばん辛かったのは収録中ですよ。笑いを堪えるのが大変で」と阿部氏が語る様子からは、短い期間ながらも集中した制作風景が伺えます。
スムーズなインタラクションを支える
FMS と J ストリーム
西垣氏が「今回の企画が通って、真っ先に相談した」と話すのが、ストリーミング環境の構築に長けた株式会社 J ストリームでした。「スムーズなリアクションを可能にすることがマストでした。そのためには、ストリーミングや PIP(Person In Presentation)のノウハウが必要だったんです」と、西垣氏。
相談を受けたJストリームの伊東達夫氏は、今回の企画を実現するにあたり、FLV と FMS 以外に「選択肢はなかった」と言います。多くのユーザに品質の高いムービーを提供する必要があったこと、電話をかけてきたユーザが発した音声に対して、V ポータルを介して画面上でリアクションを返すという「対話」が、Flash 以外では不可能だというのがその理由です。
「対話」の仕組みについて、Jストリームの衛藤裕一氏は次のように話します。
「V ポータルでは、音声やプッシュした情報を VXML というフォーマットで出力することができます。しかし、あくまでも出力することしかできませんので、それを Flash で取り込める XML に変換するための PHP サーバを立てました。V ポータルの側からは一方的にポストされてくるだけですので、連続して処理を行うためにシステム専用の FMS を立て、PHP サーバに対してセッションを貼り続けているのが大きなポイントです。それと動画をストリーミング配信するための FMS があります。このふたつの FMS を同期させることで、多くのユーザに対してストレスのないリアクションを実現しています。この環境が実現できるのは、J ストリームだけでしょう。」(衛藤氏)
株式会社Jストリーム ストリーミング・インテグレーション部の伊東達夫氏とインタラクティブ・マーケティング推進部の衛藤裕一氏システムの手順としては、まず PHP サーバから一人一人の画面に固有 ID が発行され、ユーザがそれを電話で伝えます。これによって「電話をかけているユーザ」と「ユーザが見ている Web ブラウザのコンテンツ」がリンクされます。そして、電話を通じて話しかける情報はすべて VXML として出力され、それが XML へ変換されて、その XML データが即座に FMS で処理されることで必要なリアクションを返しているのです。
伊東氏は「技術的な裏付けはあっても、誰もやったことがないことなので想像がつかなかったのです。ところが、やってみると思った以上にスムーズに行きました。シーンとシーンの繋ぎ込みもスムーズで、これも Flash や FMS の性能によるものだと思っています。テスト環境で本当に動作したときは、大騒ぎでした」と語ります。
ビデオはダウンロードではなく、ストリーミング形式で配信されています。その理由について衛藤氏は「技術的にはダウンロードでも可能ですが、ムービーの尺が長いこともあり、ダウンロードだとネットワーク上で詰まってしまう可能性があります」と話します。西垣氏も「アクションに間があったりすると、それだけで冷めてしまう。面白くなくなってしまうのがいちばん怖い」と話します。まさに「LIVE」のような面白さを演出するためには、ストリーミング配信とすることが自然な選択でした。
ブログや SNS での話題がプロモーションを後押し
このようにして誕生した「ヘアシーダ 直電LIVE ディランに訊け!」の Webサイト。それまで誰もやったことがないような企画だったため、当初は「クライアントにイメージしてもらうのが難しかった」(西垣氏)という面もありましたが、ローンチ時にはアデランス社内でも好評で、当初のディラン1人のバージョンに続き、すぐに第2弾の話が浮上したと言います。
「ユーザの滞在時間が結構長いんです。Web サイトに来てくれて、さらに電話までかけてくれる。それは結構すごいことです。気軽にコールするための、ハードルを下げる役割を果たしていると思います。」(阿部氏)
「これまでのように、ただ Web サイトに商品の紹介を置いておくのとは違ったエンタメ性、話題性を提供することができました。また、なだぎ武さんがブログに書いてくださったり、SNS で話題になったことで、このサイトを通じてヘアシーダのオフィシャルサイトに誘導することもできました。オンラインで広がっていくことをアデランスさんも実感できていると思います。」(西垣氏)
ダイレクトセールスの老舗であるアデランス、One to One マーケティングのプロであるオグルヴィ・ワン・ジャパン、そして FMS のプロである Jストリームという3社の出会いが、Web と電話の融合という新しいプロモーションの形態を生み出しましたと言えるでしょう。
