Flash OOP for ActionScript 3.0 イベントレポート

~デビューから2年 AS3の今を語ろう~

書籍「Flash OOP for ActionScript 3.0」の出版を記念して、8月14日六本木スーパーデラックスにて「デビューから2年 AS3の今を語ろう」と題したイベントが開催されました。お盆休みの最中にもかかわらず、開場と同時に多数の参加者の皆さんで会場は埋め尽くされ、立ち見や急造の席が追加されるほどの盛況となりました。今回Edgeでは、当日の模様をイベントレポートの形でお届けします。ご参加いただけなかった皆さんに、当日の開場の熱気や貴重なプレゼン内容の数々をお伝えします。

第1部 実案件における ActionScript 3.0 の使われ方

岡崎氏写真

まずは、フリーのテクニカルディレクター、エンジニアであるdynalogue代表 岡崎 大典氏によるプレゼンテーション「5+1レイヤー構造の実案件使用例、その他」から第1部は始まりました。Flashのアプリケーション開発にMVCの概念を取り入れ、コードをModel、View、Controllerのそれぞれの役割に分割してプログラム設計する開発手法の紹介です。

岡崎氏によれば、Flash における MVC モデルの特徴として、View のボリュームが大きくなり、場合によっては Model を一切使わない場合もあるとのことです。岡崎氏の場合、実際のコーディングを行う前に、あらかじめコンテンツ内で起こるイベントを EventType として Class に列挙することから始め、Model に通知する必要のないユーザイベントは ViewHelper という別クラス内で処理を完結し、View と Controller のやりとりを簡略化するといった手法をとるそうです。これは、これまでアーキテクチャの概念を意識せずに開発を行ってきたような開発者の皆さんにとって、目から鱗の落ちるような大変参考になるコーディング手法ではないでしょうか。


また、岡崎氏の実際の開発経験から、なんでもかんでも MVC にする必要性はないことや、十分な設計期間とスケジュール管理、ドキュメントの作成が重要になってくる点を強調されていました。最後に、アーキテクチャの初級編として学ぶには最適な MVCモデルを、まずは自身のプロジェクトに導入し、様々な困難にも妥協せずに最後までやり通して欲しいとして氏のプレゼンは締められました。Flash における MVC モデルを利用したアプリケーション開発 Tips の実例としてなかなか目にすることができない大変貴重な機会ということで、岡崎氏の一言一句を聞き逃さないようにメモを取る来場者の皆さんが多数見られました。

次は、セトウ ナオ氏による東芝製液晶テレビのスペシャルサイト、Life Conscious REGZA Special Site | Another Room が実際のリリースを迎えるまでの経緯の解説です。氏自身もこのプロジェクトに携わるまでは PaperVision3Dを使ったことはなかったそうですが、初期のモックアップの段階から、テクスチャの切り替え、ライトと影の効果、パーティクルの飛散、被写界深度、カメラワークの設定、そしてマウスインタラクションの導入と、徐々に機能を追加し、最終的に PaperVision3D の機能をフルに活かしたサイトに仕上がるまでをそれぞれ紹介されました。

モックアップサンプルの紹介

また、オブジェクトが重なることによるポリゴン欠けが発生したような場合も、PaperVision3Dのライブラリを独自に書き換えることで回避できるなど、外部ライブラリのカスタマイズの容易さも紹介されていました。来場者の皆さんにとっても、PaperVision3Dの可能性を再認識することができたのではないでしょうか。

 

そして一部の最後を飾ったのは、赤いジャージ姿がトレードマークの株式会社ワン・トゥー・テン・デザイン長井 健一氏による ActionScript 3.0 を駆使したサイトの実例紹介と、長井氏のサイトでも使用されたProgression Frameworkの開発者、阿部貴弘氏によるプロジェクトの紹介です。題して、「表現も使いやすさも作りやすさも。フレームワークとチーム開発で加速するAS3の可能性」

長井氏と阿部氏
阿部氏(左)と長井氏(右)

長井氏は実際に作成されたサイトを紹介しながら、コマ落ちが減ったモーショントゥイーン、BGMに合わせたアニメーション、外部ライブラリのJPEGエンコーダによる画像書き出し、オリジナル画像フィルタの作成といったActionScript 3.0 による新たな可能性の数々を紹介されました。それぞれのサイトが紹介される度に、会場が笑いと驚きの声に包まれたのが印象的でした。以下のURLでも紹介されていますので、是非実際にご覧になってみて下さい。

阿部氏写真

続いて、Progression Frameworkの紹介です。開発者の阿部氏自らがマイクを手に解説を行うという、大変貴重な機会となりました。ActionScript 3.0 は高機能かつ処理速度が劇的に向上した反面、記述するコード量が多くなり1人ですべてを開発することが難しくなりました。そこで、画面遷移やディープリンクの設定、右クリックの処理等の頻繁に使用される機能をあらかじめフレームワークとして用意することで、一切のコード記述を行うことなく実装することが可能になります。また、フレームワークは汎用性を持たせる必要性からリソース部分が肥大化しがちですが、昨今のFlash Playerの処理速度の向上により無視することができるレベルになったとも紹介されていました。

既にProgression Frameworkは数多くの企業サイトでも採用されていて、着実にその実績を重ねています。まだご存知でない方は、開発プロジェクトのサイトをご覧頂き、その素晴らしさを実際に体験してみて下さい。


第2部 AS3を使った実験的コンテンツの紹介

休憩を挟み、いきなり会場にはリズミカルな音楽が流れ始め、Wiiリモコンをふりかざす株式会社サイバーエージェント浦野大輔氏のドラム演奏から2部は始まりました。

浦野氏によれば、これは既に公開されているライブラリ WiiFlash によって実現されていて、Bluetooth デバイスとして Will リモコンをPC側に認識させ、それを Socket通信サーバ 経由で Flash Player に信号を渡して音を鳴らしているとのことです。ActionScript 3.0 からバイナリ形式で Socket サーバとのやりとりが行えるようになり、このようなリアルタイムのデータ処理が十分可能になった好例です。

切通氏と浦野氏
プログラム担当切通氏(左)とFlash担当浦野氏(右)

WiiFlash は Willリモコンの他、バランスWii ボードのサポートも計画されているそうで、今後のさらなる可能性の広がりが期待されます。

その他、Nintendo DS 用のライブラリ ndsas を使用したサンプルとして、Nintendo DS の開閉を検知して音を鳴らす Flash コンテンツ「ニンテンドーDSでカスタネット」、iPhone 用のライブラリ iphoneas を使用したサンプルとして、iPhone のピンチ操作を検知してイメージの拡大縮小を行う「トラックパッド」が紹介されました。会場はそれぞれその斬新なアイデアに笑いと驚きの声が上がりました。

なお、浦野氏が当日使用されたプレゼンテーション資料が氏のブログで公開されています。そちらも併せてご覧下さい。

http://ameblo.jp/uranodai/entry-10129013188.html

 

原氏写真

次にツムジテクノロジー原弘樹氏が登場し、「ピンボールゲームが作りたかった」という経緯から始めた様々な物理演算ライブラリの紹介と開発時の注意点が紹介されました。既にFlashの物理演算ライブラリは以下のようなものがあり、その中から自分にあったものを選定するところからはじまりました。


この中から原氏は、使いやすく、更新が活発で、ライセンス上の縛りが少ないという理由から Box2DFlash AS3 を選んだとのことです。また、細かなバージョンが上がる事によって命令が変わってしまうなど、苦労された点や注意点等を紹介されていました。物理演算ライブラリを使ってみようと思っているユーザの皆さんにとって、大変有用な情報が多々紹介されたのではないかと思います。

原氏は Flash で作成されたプレゼンテーション資料を使っていたのですが、そのプレゼンテーションの締めくくりとして、すべての文字列が画面の上から順番に落ちてきて、画面の下側でバラバラになる…といったギミックを仕込んでいました。これには会場の皆さんも大喝采。さすがはクリエイターの方々、プレゼンの見せ方もクリエイティブ、オリジナリティに溢れています。

原氏プレゼンテーション資料は氏のブログにて公開されていますので、是非あわせてご参照下さい。

http://www.hara3.net/

第3部 Flex & Flash、共に歩んでより明るい未来を手に

第3部は、Flex User Group(FxUG)のみなさんによる Flex Builder の機能紹介です。FxUG は2005年12月に設立され、2,500名以上の登録数を誇るユーザーグループで、定期イベントも既に日本全国で47回を超えるという大変活発なコミュニティです。今回は代表して、フリーの Web デザイナー廣畑大雅氏、株式会社ニークシステムテクノロジー舩倉純氏、クラスメソッド株式会社杉浦篤史氏がそれぞれ解説を行いました。

FxUGのみなさん

挙手によるアンケートでは、来場者の皆さんのほとんどが Flash ユーザーで、FlexBuilder については馴染みのない方々が多いようでした。そんな方々にとっては、Flex のプログラマティックスキンや、CSS によるデザイン変更の容易さは目新しかったのではないでしょうか。その他、Flex Component Kit for Flash による Flash と Flex の連携方法の紹介や、コンテナムービークリップを使って Flash のムービークリップの中にFlexのコンポーネントを内包させる方法など、FlexとFlashのそれぞれのメリットを共有可能にする大変便利な機能も紹介されました。Flash と Flex は対立するものではなく、それぞれの利点を活かしつつ連携して使用するのが正しい姿だということを、Flex のエキスパートの皆さんの手による大変説得力に満ちたプレゼン内容でした。これがアドビからのセールストークではなく、ユーザーの皆さんからの生の声であることも重要な意味を持っていたのではないでしょうか。

なお、プレゼンテーション資料は廣畑氏のブログで公開されています。そちらも併せてご覧下さい。

http://blog.taiga.jp/archives/2008/08/20/013000/

第4部「AS3 をやるべきか?」AS3 のこれから

会を締めくくる第4部は、上野直彦氏、野中文雄氏、松村慎氏のActionScript エキスパートの方々と、アドビ Flex/AIRのデベロッパーマーケティングの轟 啓介を交え、Web にあらかじめ寄せられた質問や会場の皆さんからの質問に回答する時間となりました。

回答する野中氏

AS3 は今やった方が良いですか

野中氏によれば、「既にActionScript 2.0 をはじめているのであれば、ActionScript 3.0 の文法は注釈付きで大きな違いがない。是非、やるべき」との回答でした。 Flashの新機能はAS3でなければ利用できない可能性もあるので、それも見越して使った方が良いのではないかと付け加えられていました。

Flex は Java なのでしょうか

この件についてはJavaの開発経験もある轟が回答しました。Javaの開発者からすると、Flexから入った場合に ActionScript 3.0 は大変親和性が高く感じられるとのこと。是非Flashを使っている人も、Flex を使ってみて欲しいと結びました。

Flex と Flash の違い、それぞれの向き、不向きはあるのでしょうか

上野氏はそれぞれのユーザーグループに参加された経験から「Flex はスーツが多い、Flash はTシャツが多い」と回答され、ご自身はその間を取ってポロシャツを着て来られたそうです。しかし、その違いも回を重ねるごとに次第になくなり、「いずれを使っても楽しいアプリケーションも複雑なアプリケーションも作成することは可能。Flexが登場したことで、Flash単体では困難だったデータグリッドを多用するような業務アプリケーションの開発が行いやすくなり、開発の幅が広がった」と回答されていました。

デスクトップアプリケーションとしての AIR の魅力はなんでしょう

これには、AIRコンテストの審査員もつとめられた松村氏が「Flash がデスクトップの領域にまで広がり、新しいコミュニケーションの可能性に魅力を感じる」と回答されました。アプリケーションとしての機能的なメリットや凄さよりも、Flashならではの、リッチで新しい可能性を追求することで、他のアプリケーションとは違った新しい魅力があるとされていました。

その他にも、OSによるFlash Playerの動作違いをなくして欲しいというご要望、縦書きルビのサポートを実現して欲しいというご要望もあげられました。ご提案いただいたのは漫画サイトを作ってらっしゃる方だったのですが、日本語の縦書き、ルビ文化をFlash / Web文化にも広まれば更にクリエイティブの幅が広がるのではないか、とのことでした。会場の皆さんも頷いていらっしゃる方が多々見受けられたのですが、このようなご要望は是非弊社リクエストフォームをご利用頂き、直接生の声としてお届け頂ければ幸いです。

Adobe - 製品への要望 / 不具合報告 フォーム

イベントを終えて

ActionScript 3.0より外部ライブラリや独自のフレームワークが数々登場し、アドビ自体もオープンソース化やコミュニティのサポートを積極的に行ってきました。ActionScript 3.0の登場から2年を迎え、日本でも着実にユーザー主体によるコミュニティ活動が盛り上がっていることを実感できるイベントでした。このようなイベントに参加することももちろんですが、フォーラムへの投稿や閲覧の形でもこれらの活動に触れる場は既に開かれています。まずはコミュニティの戸を叩いてみて下さい。皆さんの参加を心よりお待ちしています。

関連情報

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写真提供 : クスール 撮影 : 清水康隆