DEVIL(R)OBOTSがゲストと考えた「これからのクリエイター像」

最終回は「DEVIL(R)OBOTS×タナカカツキ」

デザイン集団「DEVILROBOTS」の中でも、普段はメディアに登場してこない3人のメンバー、サイトウケンジ氏・ヨシムラヨシゾー氏・イケガミタケシ氏の通称「DEVIL(R)OBOTS(汚物)」組が、4回にわたってお伝えしてきた連載記事、お楽しみいただいてますでしょうか。この連載も、今月で無事?最終回。ラストを飾るゲストは、Edge読者にはおなじみのマンガ家、タナカカツキ氏です。DEVIL(R)OBOTS自ら「美味しい最後っ屁」と言い放つ最終回、いったいどんな味が?臭いが……っとその前に、過去4回の見所もしっかり振り返っておきましょう。オブツオブツとウルサイようで、実はクリエイティブ・マインドを刺激し、未来の仕事へつなげるためのヒントがいっぱいです。

4月からスタートしたDEVILROBOTSの連載記事。タナカカツキ氏をゲストに迎えた最終回を読む前に、過去4回の見所をちょっと振り返ってみましょう。今回の連載のテーマに据えたのは「CSを使わない立場の人間から見るクリエイティブとは」というもの。「DEVIL(R)OBOTS(汚物)」組ことサイトウケンジ(ケンボー)氏・ヨシムラヨシゾー氏・イケガミタケシ氏の3人は、主にディレクションを手掛ける立場。そんな3人だからこそ見えてくるリアルな空気がそこにはありました。

第1回 DEVIL(R)OBOTS(汚物) presents クリエイティブ・ディレクション論 - VOL.1

第1回は、当事者3人の会談による「DEVIL(R)OBOTSが切るDEVILROBOTSという会社」。創業12年、平均年齢30代後半のデザイン会社、デビルロボッツ。ケンボーは、自分たちのことを「瀬戸際に来ている」と話します。

ケンボー:
オレがすごく思うのは、うちらみたいな規模の会社は瀬戸際にきてると思うねん。年齢的なことも含めて。今オレいろんな人と会ってるけど、みんな若いねんな。25~30ぐらい。Webの業界では若い子らがすごく元気がいい。まあ、オレらも若いときはそうやったなーと。でもそれだけで行くと、いつか壁にブチ当たると思うねん(笑)。40代以降この業界をどうやって生きていくか、悩まなアカンようになってしまう。

そんな壁を乗り越えていくには、何をしたらいいのか?
クライアントに「染み込んでいく」デビルロボッツの強みとは?
汚物組が考える、小さなデザイン会社の将来像とは!?

第1回はこちら

第2回 デビルオブツ×文原聡:「仕事どう? これから会社どうするの?」

第2回では、アニメ『The World of GOLDEN EGGS』の企画/監督/ストーリーすべて手掛けるstudio crocodile 文原聡氏に、DEVIL(R)OBOTSが切り込みます。「ライバルが多いから実写はやりたくない」と話す文原氏。そのように考えるに至った理由が印象的でした。

文原:
なんでオレがこういう考え方になったかって考えたことがあって、オレらの世代って第二次ベビーブームの人口がけっこうヤマのときで、受験戦争とか激しかったんですよ。オレは受験戦争負けた派だから、そうなるともう劣等感というか、競争に勝てない!みたいな精神が備わっちゃって。で、みんなががーっと行くところの端のほう端のほうを通ってきたから、今に至るみたいな(笑)。

そして対談の後半では、やはり「これからどうするの?」という話に。実際に手を動かす文原氏と、ディレクション色を強める汚物組ですが、小さなクリエイティブ集団にとって「何が幸せなのか」という点については、意見が一致しているようです。

第2回はこちら

第3回 デビルオブツ×針谷建二郎:“次”に何を生み出すのか

デザインカンパニー「ANSWR」、クリエイティブレーベル「PUBLIC/IMAGE.LABEL」を主宰し、グラフィックからWeb、映像、イベントまで手掛ける針谷建二郎氏を迎えての第3回。バックグラウンドから現在に至るまで、そして「会社」や「仕事」に対する考え方、今興味を持っているAR(拡張現実)など盛りだくさんの対談です。

中でも印象的なのが、ヨシゾー氏が「(クライアントに対して)イメージだけで明らかに押し切れんようになってきてる」と話すのに対し、針谷氏が「考え抜くこと自体にはお金かからないから、死ぬほど突き詰めないとダメなんだなっていうのを最近思っていて」と返すところ。さらに次のように話します。

針谷:
俺フリーになって7年目なんですけど、すごい思ったのが、世の中、政治力で仕事が行き交ってる部分あるじゃないですか。例えば、こういうものをオプションとして持っています、代理店だったらこの枠持ってます、ココを押さえてますっていう。それって超強いじゃないですか。その強いものに個人が作ったレベルの中小企業が対抗するのってなかなか難しい。すごいそれで嫌になった時があるんですよ。でも、たぶん、考え抜いた完璧なロジックは通るんだなと。通ってないのは完璧じゃないんだな、っていうのは思っています。

規模は小さくても多彩な活動を見せる針谷氏ならではの話に、ついつい引き込まれてしまいます。

そんな第3回はこちら

第4回 音楽業界のマーケティング論からWeb論まで

第4回は音楽業界がテーマ。ゲストはEMIミュージックで新人からベテランまでプロモーションのプランニングを手掛ける梶望氏です。プロモーションとクリエイティブの関係について、梶氏が分かりやすく解説してくれています。

梶氏は、ヒットの方程式が崩れた現代は、逆にチャンスがあると話します。

梶:
だって可能性は無限大に広がってるわけじゃないですか。ほんとうにその方程式だけで売れるんだったらその方程式以外のことをやる必要がないわけで、パワーゲームだけで決まるところ以外でもチャンスが広がっていくというのは、いろんな人に平等にチャンスがある土壌ができたっていうことでもあるから、それはそれでおもしろい時代になってきたなと思ってて。

そして「最近アーティストのオフィシャルHPがどんどんおもしろくなくなってきてる」「お金を生むためのツールとしてっていう方向性には全然成長してない」と話すケンボーに対して、梶氏は「音楽を「コンテンツ」として扱うと、そのビジネスは絶対失敗する」「決定的に間違ってるのが、Webを一次的かつ受動的なメディアだと思ってる人がいるんですよ」「Webが無限の可能性を秘めたメディアであるとすれば、絶えず新しいことをやっていかないとみんな振り向いてくれない」という、3つのポイントを挙げています。

第4回はこちら

そしてついに最終回! デビルオブツ×タナカカツキ

そして今回のメインコンテンツ、いよいよ迎えた最終回。ゲストはあのタナカカツキ氏です。『バカドリル』についてのお話を伺いつつも「ActionScriptがどうのこうのって、たまに言うてはりません? 一体何をやってるんですか(笑)!」と突っ込みを入れるケンボー。しかし、技術の進化 はタナカカツキ氏にとって、大きなモチベーションのひとつとなっているのです。

業界のアラフォー世代を代表して?DEVIL(R)OBOTSがゲストの皆さんと考えた、クリエイターの未来。第1回でDEVIL(R)OBOTS自ら「瀬戸際」という表現を用いていましたが、全5回の対談記事を読めば「まだまだクリエイティブの世界も捨てたものじゃない」と思えるに違いありません。ほんの少しのきっかけや発想の転換で、まだまだいくらでも楽しくできる……そんなことを、ゲストの皆さんとDEVIL(R)OBOTSに教えられたような気がします。

それでは「デビルオブツ×タナカカツキ」の最終回をお楽しみください。


第5回 デビルオブツ×タナカカツキ:「道具に振り回されたい」

みなさん、新型インフル、ビーケアフル! 僕は通販で医療用のダースベイダー風マスクを3箱まとめ買いしました。一箱8千円!! さて、危機管理には敏感、だけど経営管理にはちょっぴり鈍感な(有)デビルオブツpresentsの本連載も、ついに最終回です! 最終回は、締めにふさわしいステキすぎるゲストを迎えることができました。タナカカツキさん。デビル立ち上げ当初から何かとつながりあったのですが、こんなにじっくり話したのは初めてという。いちバカドリルファンとして、実に楽しい時間をいただきました。ものづくりの魂とテクノロジーが絶妙なバランスでハイブリッドされたクリエイティブスタイルは、未来のクリエイター像を提示してくれています。オブツの美味しい最後っ屁を、食らえ!!

ヨシゾー:
最近mixi見てたら「バカドリル」が横のヘッドラインにガーンと出ますよね。

カツキ:
いちおう広告なんですよあれ。「バカドリル」を去年出したんやけど、本が今なかなか大変な話聞くでしょ。中でも一番難しいのは本の宣伝なんですよ。テレビ・ラジオ・新聞・バナー、去年全部試したんですよ。いろいろ試して結局mixiがいちばんよかった。mixiはニュースに出すと、その日のうちにAmazonとかのランキングが変わるんですよ。だから全部ほかの広告やめて、mixiにしか載せないというやり方にして。ただmixiは広告出してないんで、mixiコラムに隔週連載するというかたちをとってるんですよ。

ケンボー:
それって実売の数字も変わる?

カツキ:
全っ然変わります。その日に変わる。

ヨシゾー:
「バカドリル」は長年のファンもいますもんね。

カツキ:
でも若い世代、「バカドリル」を知らない人たちにむけてmixiでは連載してますね。天久くんの意向もあってね。

ケンボー:
持ってる率すごくない? みんな持ってるでしょなぜか。

カツキ:
でもそんな売れてないですよ。累計なんですよ。10年間本屋に置いていただいてるんで。本屋とか、1ヵ月で計算するじゃないですか。そうすると全然売れてないんで。いつも本屋では、引き上げよかな、でも、もうちょっと置いとこかな、そんなんがずーっと続いてる感じなんですよ。だからね、僕ら本屋にすごい営業してるんですよ。

ヨシゾー:
え? カツキさんが?

カツキ:
僕らが! サイン会はもちろん、トークイベントもやるんですよ。POPも書いて。トークイベントは本屋の店内の狭い場所でね、特別にイベントホールとか持ってるABCみたいな本屋って少ないんでしょ、どこでもやりますよ。去年は「バカドリルの読み聞かせ」ということで、本屋以外の場所でも、ライブハウスみたいな場所でも、映画館でもやったし、洒落たギャラリーでもやりました。箱であればどこでも出かけていって。本をスライドで見せながら、それをただ読むだけなんですけど(笑)。それで、物販のコーナーで平積みしといて、帰りは全員この本買ってねって、強制的に(笑)。

ヨシゾー:
作家本人がそれだけ現場に来てくれると、小売店の人も喜んでくれるでしょ?

カツキ:
うん。現場とやりとりするのは、自分の社会での立ち振る舞いのリハビリにもなりますからね。

ヨシゾー:
そういう現場第一でやってきて、一方でネットの使い方はどうですか?

カツキ:
それで言うと、昔から僕の作るものってアンダーグラウンドなので、はける数が決まってるんですよ。だからそれこそネットありき、ですよ。ようやくネット時代になってくれたっていう感じなんですね。昔から、インディーズというか、大きい出版社で物流が動いてるシステムとは違うところでやりたいなってずっと思ってたんで。昔は大変やったですよ。マンガ描くにしても、編集者がマンガ知らんかったり。百科事典を作りたかった人がマンガの部署に配属させられるとか。そんな人が担当になるじゃないですか。その人を納得させる4コマってなると、もう描けない。それでも描いてたんですよ。でもそうやってようやくお客さんに届いたときはもう「薄薄」なの。アイデアも編集者との折衷案になって、何の味もしないものになってる。だからすごい今はやりやすさを感じてますよね。

ヨシゾー:
ようやく自分が描きたいものがダイレクトに出せるようになってきたってことですか?

カツキ:
そうですねえ。かなり今はダイレクトですよね。昔は「トン子」みたいな作品を描きたいと思っても描けなかったんですよ。80年代の少女漫画のタッチでデブの女が主人公で、芸術と恋愛がテーマ。もう全然ダメなんですよ。ようやくそういうものが描ける時代になったなあという感じですよね。

ケンボー:
テキスタイルも作ってますよね(東京文様)。

カツキ:
あんなのも昔はできなかったですよね。(自分は)ヘンなことやりたい、やってきたんで。今は自分たちでできるっていう時代なんで、そういうサンプルを見せたいなあっていう気持ちがあるんですよ。

バカドリル

東京文様

ケンボー:
ActionScriptがどうのこうのって、たまに言うてはりません? 一体何をやってるんですか(笑)!

カツキ:
Flash、ActionScriptがめちゃおもしろいんですよ。

ケンボー:
(伊藤)ガビンさんが、AS3のライブプログラミングのイベントとかやってはったでしょこの間。

カツキ:
やってましたよ。僕そのときガビンさんと司会やってました。

ケンボー:
それは、アドビが主催なんですか?

カツキ:
アドビはSpecial Thanksで協力していましたね。今FlashのActionScriptって、やれることはすごいたくさんあるんですよ。だけどちょっと専門分野なんで、(使うのが)まだマニアックな人たちなんです。「おもしろいから使えるよ」っていうようなところまで降りてないんですね。降りてないから、今アドビさんは力入れて、みんなに「おもしろいもの作って」と具体例を押してるような状況やと思うんですよね。

ケンボー:
3.0ですよね。僕は2.0を使って「3.0ムリ!」って思った人間なんですよ(笑)。

カツキ:
難しいですよね、3.0。関数になるとね、僕も分からないですよ。でも例えば物理シミュレーションとか、おもしろいじゃないですか。

物理シュミレーション サンプル:

ケンボー:
確かに数学的な考え方はおもしろいですけどね。

カツキ:
そのうち使いやすくなるんじゃないですか? 3.0をやりたいっていう若い人はいっぱいいて、でもどうやって表現したらいいか分からないとか、「キャラクターを動かしたいんだけどキャラクターは描けないよ」っていう人とかもいっぱいいるから、それこそ(誰かと)組んでやったらいいと思うんですよ。

ケンボー:
それはすごい思います。確かにプログラマーでもったいないなっていう人が、すごい埋もれてますからね。仕掛け的なものを与えてあげたら、というのは思いますね。

ヨシゾー:
カツキさんの中では、ネタと技術っていうのは、頭の中で同じラインでずっと考えてるんですか? 「このネタをこの技術で見せたら」とか「この技術にこのネタをくっつけたら」とか。

カツキ:
ネタ的にはそんなに変わらないですけれども、技術は日々変わるじゃないですか。それはやっぱりおもしろいですよね。

ケンボー:
でもその変化についていくのがしんどいお年頃じゃないですか、僕ら(笑)。

カツキ:
ついていくと考えると大変だけど、でも例えば今、DVDで普通のショートムービー作れと言われてもやる気せえへんやんもう。

ケンボー:
分かるような気がします。「もうそこええわ」みたいな。

カツキ:
いっぱいあるやんと。After Effectsでショートムービー作れと言われてもやる気出ないよね。After Effectsで動くグラフィックとかアニメ作るのは標準的なところまで降りてきましたからね。After Effectsの中でも新機能にしか興味ない。やっぱり道具が新しくないと。

ヨシゾー:
すごいですね。ある意味、技術の進化が今のカツキさんの大きなモチベーションの1つになってるんですか?

カツキ:
完全にそうでしょ。だって深いところの、モノを作る魂みたいな部分は変化しないですもん。それは自分がちっちゃい頃に体験したもの、公園とか森とかで遊んだ記憶とかね。そういったものでしょ、モノ作りの源泉なるものは。そんなんはもう大人になって進化しないじゃないですか。それがどう新しいツールで触発されるかというところじゃないですか。

ケンボー:
いいこと言いますねえ!

カツキ:
いいこと言うよお。大きい文字で書いといて。やっぱり、美しさは進化しないですからね。感動とかね。だからツールで影響されましょうよ、アウトプットの仕方も場所も日々変化するんやしね。よく「道具に振り回されるな」とか言われるけど、ぼくは道具に振り回されたいですよ、メチャクチャにしてほしい。

ヨシゾー:
ウチらが今の発言に感銘受けるっていうことは、逆に言うたらウチら全然そこはないっていうことやん。

ケンボー:
ない!

カツキ:
そんなことないよ。だってそこから出てきたじゃないですか、デビルロボッツって。

ケンボー:
いやそんなの過去の話ですよ。僕ら30代半ばくらいまではいろいろ楽しいことに走っていって、でもこの歳になってきたら、スタッフみんなにヨメがいて、いろいろ背負うものも出てきて、経営的な側面も考えつつ、将来への不安もありつつ……。40代になってきて、今までみたいに20代の感覚で打合せに行ったりしても、クライアントひと回り下とか……。
「俺らどうしたらいいんやろ」みたいな話をアドビさんとしてて。他のいろんな人がどう考えているのかっていうのを聞くために、こういう対談をやらせてもらってるんです。

ヨシゾー:
僕はアドビさんにね、「僕が今何にいちばん興味あるかっていったら農業です」って言うたんですよ。自分が食うものをダイレクトに作る、そういう領域にこそ生きるためのモチベーションやクリエイティビティを感じるって話をしてたら、「それを言ってください」って(笑)。でも実際に僕がすぐに農業をするかといったら、すごい深いもんがあるし踏み切れないですけど。でもそういう生きるということの本質に関わっていきたいという話をしたら「これからのクリエイティブはそこですよ」という話になって。「そういうテクニカルな部分じゃないところで、アドビが商品を訴求していきたい若い人たちをインスパイアできる話をお願いします」と(笑)。気の利いた答えも見つけられへんまま、最終回ですけど(笑)。

カツキ:
なるほどなるほど。それで言うと、新しいテクノロジーが出てきたときに僕がおもしろいなと思うのは、感覚も変わることなんですよ。例えば今、テクノロジーといえば携帯電話がいちばん大きいじゃないですか。携帯電話を持たないで出かけると不安でしょ? それが新しいことじゃないですか。感覚が新しくなると、新しい物語ができるっちゅうことですよね。例えば僕らが農業したとしましょうよ。農業の歴史ってすごいあるやん? 農業の中から一篇の詩が出てきたでしょ、石川啄木とか。「じっと手を見て我をおもう」とか。そういうのは過去にめちゃくちゃあるわけですよ。じゃなくて、新しいテクノロジーに触れて、今までなかった交流の仕方が生まれる、そのときに感覚とか感性まで変わっていく。今までナシだったものが急にアリになったりして、名称未設定のジャンル、作品の種類が生まれることもあるしね。今この環境で、自分たちがしっくりくる表現っていうのをやってるほうが僕はいいなと思うんですよ。

ヨシゾー:
僕いろいろ仕事してる中で、クライアントからよく「ネットとかモバイルをうまく使ってください」とリクエストをされるんです。なんで彼らがそう言うかというと、もちろん便利やから、そこにアクセスが多いからですけど、僕はそこにめっちゃ不便なものを入れ込むことによって便利さが引き立つんちゃうかなと思ってて。例えばWebとモバイルを使ったプロモーションをやりましょうというアイデアの一方で、めちゃめちゃホコリっぽいプロモーションアイデアを入れるんです。僕はそれを、アイデアの中にライブ感を入れるっていう感覚で考えてるんですけど、ネットとモバイルのプロモーションが確立されてるのに、あえてポストカード作ってみたり、あえて手撒きのフライヤーを作るとか紙媒体にこだわってみたりとか。ネットとかモバイルは、こっちがしんどい思いせんでもある程度自動的に広がっていきますけど、フライヤーはちゃんと撒いたり、ここにあるよって発信したりしないと人の手に渡らないじゃないですか。フライヤーに魅力あるデザインが落とし込まれてないとみんな手にも取らないし。そういう不便さと便利さの組み合わせで、おもしろい世界観というか、体感できるアプローチができるんちゃうかなあと。

カツキ:
そうだね。なんかが起こるかもしれないよね。

ヨシゾー:
そうやってライブ感を入れることによってしっくりくる感覚っていうのが、どういうネーミングになるのか分からないですけど、僕はそこに可能性を感じたりするんですよね。

カツキ:
そういう意味じゃ、スタンプラリーってホントにいいよね。むっちゃやってるよ、子供たち。

ケンボー:
なんであんなにハマるんでしょうねー! でスタンプ押すのを待ってる間にニンテンドーDSをやってる、このデジタルとアナログの融合がまた、すごい象徴的や!と思ったわ。

カツキ:
あとディズニーランドとかもけっこうアナログ体験じゃない。僕らの子供のときってディズニーランドってハイテクの見本市だったよね。でも今は、めっちゃアナログな場所なんですよ。チケット並んで、花火見てパレード見て、でも並んでるときみんなDSやってる。昔はただ並んでたやん。今はただ並んでないんですよ。ずーっとなんかやってんの。俺もiPhone触ったりしてるし。あれがおもしろいすね。2時間ぐらい並ぶやん。ずっとネットワーク対戦してるんよね。ほんで順番来たら、みんなでアトラクションに乗って、バンバン撃ったりする。すごいおもしろい場所になってる。

ヨシゾー:
仮面ライダーのスタンプラリーも、12の駅を回ってスタンプをコンプリートしたらライダーベルトとか抽選でもらえるんですけど、別に12回らんでも、5つでとりあえず何かもらえるんですよ。で何がもらえるかいうたら、「ガンバライド」っていう仮面ライダー同士が戦うゲームのカードなんですよ。僕らが昔仮面ライダーカード集めてた感覚と一緒で。あの紙切れ1枚をゲットするために子供が電車乗りまくってダッシュでスタンプラリーを回るっていう。「なんやろこの普遍的な、昭和の感じは」と。

カツキ:
普遍やねー。

ALTOVISION

ハイヴィジョンをみる図

ヨシゾー:
天久さんとは相変わらず一緒に?

カツキ:
やってます。天久くんとはずっと一緒に。「バカドリル」も最初にやりはじめたのが20代前半。今、お互い40代に突入して、十何年ぶりにこの間新しいのが出たんだけど、その間なんにもしてないわけじゃなくて、ずっとこつこつやってますね。

ヨシゾー:
「ガラスの仮面」みたいですね(笑)。

ケンボー:
Eコマースでは、何をメインで販売してるんですか?

カツキ:
売れる物は全部そこで売りたいんですよ。今は布とTシャツなんですけど、1点ものの美術作品も売ろうと思ってます、ガビンさんの作品とか。僕も1点ものとかいっぱいあるんで。今、ギャラリーで展覧会やることもあるんですけど、ギャラリーもネット販売やってるんですよね。絵をネットで買う人がいる。なのでこれも自分たちでやろうよと。ただEコマースって、好きな人しか来ないじゃないですか。でも本屋には、好きじゃない人が手に取るおもしろさがありますよね。そっちはそっちでおもしろいので、Eコマースサイトである程度数字を出したものに関しては、一般流通させたいですね。一般流通だけを目標に物を作るのには自分は向いてないんですね。

ヨシゾー:
基本的には自分で流通も販売も全部やってしまおうという精神ですか?

カツキ:
やりたくないんですよ、ホントは。やりたくないんだけど、一般流通でできるものとできないものがあるんですよ。「バカドリル」「トン子ちゃん」は、今は一般流通なんだけど、「トン子」も最初はアジールで出したんですよ。インディーズなんですね。ある程度数字の予想ができたんで、扶桑社が買ってくれたわけなんですよね。今までは、一般流通で通用しないものは描けなかったんだけど、Eコマースがあると、3,000部売れたらいいなっていう本も作れる。本以外にもそういう企画、いっぱいあるんですよ。そういうためのサイトなんです。でも基本は仕方ないからですよ。すぐに売れないからですよ。大手も一般も、売れる売れないに関してはすごいせっかちなんで、10年かかって売れる本は相手にしてくれないです。すぐに絶版にしちゃう。もちろん3,000部が目標ではなくて、商品の性質上時間がかかるってことなんです。

ケンボー:
でもカツキさんは、自分の居心地のいいポジション作りがすごいうまいですよね。

ヨシゾー:
僕らからしたら、タナカカツキっていうジャンルができあがってるように見えますよ。

ケンボー:
独特のポジションを確立してるように見えます。なんか、謎が多いじゃないですか。

カツキ:
僕ね、自分の名前を出してない仕事もたくさんあるんですよ。テレビ番組も作ってるけど、全然出してないもん、名前。テロップにも出ないからね。

ヨシゾー:
作るって何を作るんですか? 放送作家みたいなもんですか?

カツキ:
そうじゃなくて、企画、コンセプトデザイナーみたいな。全仕事を見ると、まったく何者か分からないですよ。でも、昔のマンガ家のまねをしてるだけなんだけどね。

ケンボー:
何屋か分からないのって、すごくいいことやなって思う。

カツキ:
僕もそういう人に憧れたんですよね。小説家か司会者か分からないいとうせいこうさんとか、マンガ家か役者か分からない田口トモロヲさんとか、現代美術作家か編集者か分からない伊藤ガビンさんとか。

ケンボー:
僕らから見たらカツキさんもそこにいますよ。

ヨシゾー:
ウチらも根本の部分は同じやん? 「なんかいろいろやりたいな」っていうのはあるやん。おもろいことを。

カツキ:
でもなんやろ、今ね、美大生とかで、将来クリエイターと呼ばれる人になりたいとするじゃないですか。どうしていいか分からないと思うんですよ。ホントに意味分からんような気がする。「どうやってなるの?」みたいな。

ヨシゾー:
そういう意味では僕、最近特に大好きな人が富野(由悠季)さんなんですけど、あの方はそのへんシビアに「クリエイターとして食っていきたいならこうしろ」って若い子らに言ってはって。「スタジオワークやれ」と。「1人ではお前らの才能なんてしれてるけど、3人おったらおもろいことできるで、飯食えるで」と言うてはるんですけど、どうやるか分からんていう若い子がいるとしたら、1人でやるよりも、仲のいい友達と組んでやってみたら?っていうのはあるなあと。でもそのときに、カツキさんも言うてはりましたけど、絵を描くやつがいて、技術的におもしろくメディア化できるやつがいる、みたい組み合わせになればベストですよね。

カツキ:
僕も複数人でやるのはいいなと思いますよ。1人じゃできないことはいっぱいありますからね。

ケンボー:
すぐ限界見えますもんね、1人って。

オッス!トン子ちゃん

ケンボー:
トン子ちゃんもFlashで動かしたりしてるんですか?

カツキ:
やってますよ。でもそれは物語のおもしろさじゃなくて、キャラクターとして、イラストをFlash納品したらおもしろいなと思って。Webのイラストの注文来たりしたときにね。ぺたーんってあるだけじゃ、しょうがないじゃないですか。なんかマウスイベントあったらおもしろいなあと思うんで。スクリプトも一緒に送るんですよ。そしたら向こうがびっくりして。「ええ~!」とか言うて。「JPEGにしてください」とか言われるんだけど。

ケンボー:
FLAファイルで納品ですか(笑)?

カツキ:
で、もう説得説得。「特にPVを争ってるところのサイトのイラストなんだから、ただのイラストならワンクリックじゃん。マウスイベントつけたらそれで稼げるでしょ?」言うて説得するの。

ケンボー:
すごい大サービスですよねえ。

カツキ:
そうやって組む方が向こうもいいじゃん。いっぱいクリックさせたらええやん。そこでどんどん数字上がるよ、ってこっちもプレゼンするの。そしたら生き残っていくやん、その会社も、僕も。

ケンボー:
なるほどねえ~。

ヨシゾー:
ウチらもプレゼンのとき、PDFじゃなくてFLAファイルにしよか(笑)。

カツキ:
そのサイトの特性を見て。クリックを稼ぐような依頼だったら、そういうふうにしてあげたらいいんですよ。

ケンボー:
ひたすらページをリロードするスクリプト組み込んで(笑)。

カツキ:
そうそうそう(笑)。ほんならもう、他に発注しなくなるから。「もうデビルさんにお願いします」って。

ケンボー:
僕がイラスト発注してFLAファイル送られてきたとしたら、テンション上がりますよ! マウスイベント付きで。

カツキ:
上がるでしょ? で、仕事楽しくなるじゃないですか。他との差もできるじゃないですか。そういう姑息な手段を使って、この苦しい時代を生き残りましょうよ。

一同:
(笑)

ケンボー:
すっごいうれしそうな顔して納品データ作ってそうですよね。

カツキ:
ニヤニヤしながら。「これでもくらえ!」みたいな(笑)。

ケンボー:
分かりますわ、その気持ち。(Flashは)独学ですか?

カツキ:
独学ですね。だから限界ありますよ。

ケンボー:
3.0からですか?

カツキ:
やりやすかったですよ、前のバージョンの記憶ってそんなにないんで。

ケンボー:
iPhone用のアプリはどうですか? 伸びますかね?

カツキ:
例えばGoogleケータイとか、今後のケータイってアプリになるじゃないですか。だからまったくムダにはならないと思うんですよ、アプリという考え方は。

ケンボー:
互換性あるんですかね?

カツキ:
ないんですけど、一から作るよりは組み替える方がいいし。待ち受け画面とか着せ替えも作ったけどね。

ケンボー:
着せ替え、やろかなと思ってますよ、僕も。

カツキ:
かと言ってねえ、着せ替えも今いろいろあるじゃないですか、サイズとか。だからリサイズがねえ、もうアホほどめんどくさいですよ。

ヨシゾー:
カツキさんは自分でデザインもして、自分でリサイズまでやったりするわけですか。

カツキ:
そういう場合もあります。リサイズまで請け負った方が、グロスでもらえるから。

ヨシゾー:
これぞ未来のクリエイター像じゃないですか!

カツキ:
ビジネスモデルまで考えましょうよ。ホンマにね、僕ビジネスモデルを確立したいんですよ。全部ね、知り合い同士、小さい会社で生き残るっていうのがね。

ケンボー:
いっこええビル借りてみんなでそこで集まるとか。

カツキ:
そうそう、それがいいんですよ。でみんな出たり入ったりしてる、常に流動。

ケンボー:
「これ5万で」とかすぐ隣に言えて(笑)。ええなあ。


DEVIL(R)OBOTS(汚物) ロゴ
DEVIL(R)OBOTS(デビルオブツ)

サイトウケンジサイトウケンジ(ケンボー:39歳)

メインで使用しているソフトは弥生会計。え? クリエーター? いえ、違います。
副業として、Web関連や色々なメディア制作のディレクションなどをしています。
特技は予算交渉とリスケです。

ヨシムラヨシゾーヨシムラヨシゾー(40歳)

汚物長老。趣味はMRIとCT。仕事に年の功を発揮できていないことが日々の悩み。
プランニング、コピーライティング、音楽制作が意外とできます。
今は営業力向上のためにスマイル修行中。GOOD & EVIL MUSICの倉庫番。

イケガミタケシイケガミタケシ(30歳)

アートディレクター、デザイナー。
アニメーションからデザインまで幅広くこなすが、イラストが全く描けない。
トーフ親子を描いてくださいと言われるたび「描けないんです…ハハハハ… 」と謝り、相手に残念な顔をされる機会多数。
現在のメインクライアントはアパレルブランドのOLIVEdesOLIVE。
キャラクター業界とは全く違う道に侵入中。

DEVILROBOTS(デビルロボッツ)
DEVILROBOTS(デビルロボッツ)

1997年設立。れっきとしたデザイン会社として登記。平均年齢36歳。精神年齢17歳。キタイシンイチロウ:キャラクターデザイナー・アートディレクター、サイトウケンジ:クリエイティブディレクター、ヨシムラヨシゾー:クリエイティブディレクター・音楽制作、イケガミタケシ:アートディレクター、ニシヤマコトヒロ:トランスレーター の5人から成る。グラフィック、キャラ、ロゴ、広告、カタログ、パッケージ、Webサイト、ムービー、プロダクト、音楽の企画・制作を手掛ける。クライアントはトイメーカーからレコード会社、菓子店、教育、アイドル、社団法人、友達まで。音楽レーベルGOOD & EVIL MUSIC主宰。

HP http://www.dvrb.jp/w/
CONTACT thedevilrobots@dvrb.jp



タナカカツキ氏 写真
タナカカツキ(マンガ家)

1966年大阪生まれ。
1985年マンガ家としてデビュー。
著書には『バカドリル』『オッス!トン子ちゃん』(扶桑社)など。