世界初、Flash Player10採用の大規模キャンペーン
「TOYOTA iQ」サイト
今月号の記事
2008年10月に発表、11月20日に国内発売されたトヨタ自動車の新世代マイクロプレミアムカー「iQ」(アイキュー)は、既成概念にとらわれない、まったく新しい発想から生まれています。前置きエンジンの普通自動車としては異例の全長3m未満というコンパクトな車体ながら、大人3人と子ども1人が乗車できる車室空間を備え、国内外に強いインパクトを与えました。登場直後から数々の賞を受賞しているこのiQは、PRに関しても大胆な取り組みが行なわれています。そのひとつが、Flash Player 10の機能をいち早く盛り込んだ、スペシャルサイト「NEW WAY iQ World」です。Webサイト制作の舞台裏について、株式会社電通アベニューAレイザーフィッシュ(以下「電通AARF」)、そして株式会社ベースメントファクトリープロダクションに伺いました。
2007年9月にドイツのフランクフルトショーで姿を現した「iQコンセプト」。前後が極端に短く、それでいて幅広い車体は多くの視線を集めました。それから1年余、ついに市販車として登場したのが「iQ」です。発表直後から大きな話題となったiQは、グッドデザイン賞の最高位である「グッドデザイン大賞」を受賞。さらには、発売前であるにも関わらず「2008-2009日本カー・オブ・ザ・イヤー」を受賞しました。
メディアではエコなコンパクトカーといった取り上げかたも目立つiQ。しかし、それだけではありません。クルマの既成概念、今まで誰もが常識だと思っていたことにとらわれないチャレンジングなクルマ作りが行なわれているのです。その力強い姿勢は、iQのプロモーション、そして「NEW WAY iQ World」にも大いに反映されています。「NEW WAY iQ World」は、トヨタが世界で初めてメジャーブランドとしてFlash Player 10を採用し大規模キャンペーンを展開した事例となりました。

「NEW WAY iQ World」のオープニング画面。iQが見えそうで見えない演出
デザインコンセプトは「異次元的で不思議な空間」
「NEW WAY iQ World」のコンセプトについて、電通AARFの松井浩太郎氏は、次のように説明します。
「iQというクルマは、そのキャッチフレーズ“NEW WAY”が表すとおり、今までの既成概念にとらわれることなく新しい価値観を提示する意気込みにあふれたプロダクトです。広告に関しても、“個性クリエイト層”と呼ばれる、自己のクリエイティビティを大事にし、常識にとらわれないものづくりの視点に興味を持ってくださる方々にも共感してもらい、コミュニケーションできる世界観を目指しています。
スペシャルサイトでは、見る人に視点の転換を楽しんでもらおうと考えました。クルマのサイトなのに、すぐにクルマは出てきません。さまざまなシルエットが浮かぶ不思議な空間に、やはりシルエットでとけ込んでいるiQを、マウスで触れて見つけ出しながら、ものの見方を変えることで見つかる楽しさを伝えたいと思っています。」
サイト内の随所にトリックアートをモチーフとした表現があるのも、やはりコンセプトに基づいてのことです。サイトのデザインを統括したベースメントファクトリープロダクションのCCO石谷亮氏は、次のように話します。
「デザインコンセプトは、異次元的で不思議な空間。2D表現と3D表現、イラストと実写といった、異なる表現を同一空間上にコラージュしていくことで、不思議な空間感を創りだし、iQのもつ未来的かつ有機的であり、先進的であるイメージとのマッチングを試みました。コンテンツはDESIGN/INNOVATION/SAFETY/PERFORMANCE/ECOLOGYという5つの訴求ポイントをカテゴリーに分け、それぞれの扉にトリックアートをモチーフにしたムービーを配置しました。その先には詳細情報を用意することでiQの特長を分かりやすく説明しています。」
例えば、テーブルだと思っていた絵が、実は2人の向かい合った顔だった??という表現は、iQが人間2人の吐く息と同じ程度のCO2しか排出しないことを表しています。

それぞれの扉ではトリックアートをモチーフにしたムービーが配置されている
また、このサイトには制作スタッフたちが「下の世界」と呼ぶメニュー画面があるのが特徴です。
「スペシャル内メインコンテンツと、フォローコンテンツであるNews、ADギャラリー、リンクなどとを、上部、下部という完全に分離された世界にそれぞれ配置することで、ナビゲーションの妙さとダイナミックな画面遷移による面白さ、コンテンツの明確な切り分け、不思議な空間感の醸成を図っています。」(石谷氏)
各コンテンツのメニューや、上の世界と下の世界の存在は、とくに説明的なものがあるわけではなく、ユーザが自然と触れるようになっているのが特徴です。ベースメントファクトリープロダクションの代表取締役・北村健氏は「最初のデザインコンセプトの説明にもあったように、世界観、空間の雰囲気を感じさせることを大事にしています。下の世界についても、とくに目立つメニューがあるわけではなく、説明なしで直感的に分かるようなインターフェイスとして成り立たせています」と話します。
世界観を表現するために細部でFlash Player 10の機能を使用
「NEW WAY iQ World」では、Flash Player 10の新機能をいち早く採用し、独自の世界観を構築することに活用しています。ベースメントファクトリープロダクションのチーフFlashオーサーである本田篤史氏は、Flash Player 10の機能を使用したポイントについて、次のように解説します。
「“上の世界”では、DESIGN/INNOVATION/SAFETY/PERFORMANCE/ECOLOGYの各コンテンツの中に入るとムービーが流れますが、静止後にクルマが床面に映り込んでいるシーンや、テキストのモーションなどにもPixel Benderを使用しました。DESIGNコンテンツでは、ローカルファイルアクセス機能を使って、好きな角度に動かしたクルマの画面を、ユーザの解像度に従って、JPG画像の壁紙としてデスクトップに保存できるようにしました。またトップ画面では、シルエットが浮かぶ空間の中を飛んでいる蝶に3Dエフェクトを使用しています。」

静止後にクルマが床面に映り込んでいるシーンでPixel Benderを使用

ローカルファイルアクセス機能を使って、好きな角度に動かしたクルマの画面をJPG画像の壁紙としてデスクトップに保存
もちろん「下の世界」でもFlash Player 10の新機能は使用されています。
「インデックスパネルをFlash Player 10の3Dエフェクトで表現しています。マウスに追従して角度を変えられるパネル内のテキストや動画は、三次元表現にうまく同化させることができました。以前のFlash Player 9版では、Papervision3Dで表現したパネル内のテキストや動画は自然にパースがかからず表示が美しくなかったために、今回は空間になじませることに成功したと言えます。また、NEWSのタイトルや画像のモーションにもPixel Benderを使用しました。」(本田氏)

インデックスパネルをFlash Player 10の3Dエフェクトで表現している
サイト全体に漂う浮遊感を第一に考え世界観を壊さないようにするという前提があったため、サイト内に出てくる文字だけがシャープに横から飛び出してくる……といったことは、演出上考えなかったと言います。コンセプトに忠実であるために、Flash Player 10の新機能が使われているのです。本田氏は「今回は、クルマを見せることだけではなく、世界観の表現が大事でした。そのため、Flash Player 10の様々な新機能をテストして多くの表現を開発しました。その中から世界観をキープできるような表現やエフェクトを厳選し実装していきました。そのような難しさはあったものの、結果的にFlash Player 10の新機能を効果的に表現することができました」と振り返ります。
Flash Player 10の新機能以外でも、世界観を実現するためにベースメントファクトリープロダクションがこだわっているポイントはいくつもあります。例えば、クルマの質感を表現したいときには「CGよりも実写素材の表現を重視しています」と北村氏。つまりCG表現を用いるにしても、クルマの質感を表現する重要なカットでは、必ずスチールや実写映像の撮影素材を使用しているのです。「CGソフト上でシミュレーションしたカメラのモーションデータを高速で動くリアルタイムモーションコントロールカメラに組み込み、撮影時にはそのモーションを元に実写を撮影することで、実写とCGをシームレスに置き換えるのです」と北村氏は話します。

TOYOTA iQの撮影現場。リアルタイムモーションコントロールカメラを使用
また、本田氏は、メインのステージ上の3D空間では、マウスに追従してオブジェクトが回転しますが、クルマの画像がどのような位置になっても、オブジェクトの影に隠れて少しだけ「ちら見え」になるよう配置されています。その繊細な配置を実現するために、専用のツールを開発したと言います。「ツールを開発しない場合は、何度もスクリプトの数値を修正してプレビューする作業を繰り返す事になります。ツールを開発した事で、3D空間上のオブジェクトの座標やスケール、カメラの焦点距離や視野角の調整を、スライダーを操作する事で直感的に調整できます。また、デザインの修正等にも柔軟に対応することができました」と、本田氏は言います。

専用ツールの画面
さて、サイト制作を総指揮する立場として北村氏は、今回の「NEW WAY iQ World」でFlash Player 10の機能を使用した感想について次のように話します。
「便利ツールになったと思います。イコール、様々な面で効率が上がり、制作者にとって非常に有意義であると思います。ただし表現としては、時間さえあれば(今まででも)できるものかもしれませんね。ツールが便利になるということは、あくまでも制作サイドの話であって、ユーザにとっては関係のないこと。私たちが大事にしたいのは、新しい表現により、よりよい形でユーザに伝えることです。その点でいうと、個人的には今後の進化に期待を寄せています。今後制作するものに関しては、Flash Player 10用に思い切ったサイトをやっても良いのではないかとは、思います。」
トヨタのマイクロプレミアムカー「iQ」のプロモーションでは、「NEW WAY iQ World」の他、今後もさまざまな仕掛けが行なわれる予定だと言います。
「NEW WAY iQ World」でFlash Player 10の機能が効果的に活用され素晴らしいユーザ体験が提供されましたが、今後の「iQ」プロモーションのさまざまな展開においても、ユーザはどんな体験を得ることができるのか期待が高まります。
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
松井浩太郎氏 |
北村健氏 |
本田篤史氏 |
石谷亮氏 |




