モバイル向けAdobe AIR発表!
日本発のPackager for iPhoneアプリも続々登場

昨年のAdobe MAX 2009ではモバイル向けのFlash Player 10.1が披露され、今月開催されたMobile World Congress 2010ではモバイル向けのAdobe AIRが披露されました。これらは、「様々なデバイスで一貫したランタイム環境を実現する」ことを目指したOpen Screen Projectにおける最初の取り組みであり、PC以外のデバイスでもPCと同じようなリッチなユーザー体験を提供することを可能にしてくれます。本記事では、デモ映像を交えながら、実際にどのようなユーザー体験が提供可能となるのかを紹介します。また、Adobe MAX 2009で大きな話題となったFlash Professional CS5の同梱ツール「Packager for iPhone」、実はこのツールを使ったiPhoneアプリが日本でも既に公開されているのです! 開発者の皆さんのコメントと共に紹介します。

着々と進展するOpen Screen Project

モバイル向けFlash Player 10.1のベータ版は2010年上半期に公開予定!

アドビ システムズが推進役を務めるOpen Screen Projectでは、様々な業界の大手企業約70社と協力しながら、PC/ネットブック/携帯電話/スマートフォン/タブレットといった消費者向けエレクトロニクスデバイスにおいて一貫したランタイム環境を実現できるように取り組んでいます。そして、そのランタイム環境となるのが、「Flash Player」と「Adobe AIR」です。

昨年ロサンゼルスにて開催されたAdobe MAX 2009で披露されたように、Flash Player 10.1にはモバイル環境をサポートするための機能が満載です。例えば、以下のような機能があります(詳細は、本誌2009年10月号「モバイル対応だけじゃない! Flash Player 10.1の特長を徹底紹介」をご覧ください)。

モバイル環境上でFlashコンテンツが快適に動作するように、そしてモバイル特有の機能や操作性を活かせるように設計されており、PCとモバイル機器を分け隔てることなくリッチなユーザー体験を提供することができ、かつモバイルならではのユーザー体験を提供することも可能となっています。

Flash Player 10.1はまだ開発段階ですが、今年1月初めに発表されたGoogleのスマートフォン「Nexus One」、先日発表されたHTCのスマートフォン「Desire」など、Flash Player 10.1へ対応するモバイル機器が既に登場してきています。こうしたAndroidプラットフォーム以外にも、BlackBerryプラットフォーム、Symbian OS、Palm webOS、Windows MobileといったモバイルプラットフォームがFlash Player 10.1に対応する予定です。2010年1月のStrategy Analytics社の分析によると、Flash Playerの完全版に対応するスマートフォンの台数は、2012年末までに2億5,000万台を上回ると予想されています。

現在、PCやネットブック向けのFlash Player 10.1ベータ版は一般公開されています。モバイル向けのFlash Player 10.1ベータ版は、2010年上半期に一般公開予定です。

モバイル向けAdobe AIRを発表! 

一方のAdobe AIRについては、Mobile World Congress 2010において、初めてモバイル向けAdobe AIRが披露され、Androidプラットフォームへの対応が発表されました。つまり、モバイル向けAdobe AIRを通じて、単体のアプリケーションをモバイルデバイスに提供できるようになります。このモバイル向けAdobe AIRでは、Flash Player 10.1のモバイル機能が活かされており、モバイル環境における動作の最適化、そしてマルチタッチ/ジェスチャー操作/加速度センサー/画面位置調整といったモバイル特有の機能や操作性をサポートしています。

実際、Flash Player 10.1とモバイル向けAdobe AIRによって、どのようなモバイルユーザー体験を提供することが可能となるのか。百聞は一見に如かずということで、Open Screen Projectパートナー企業の協力の下、Flash Player 10.1やモバイル向けAdobe AIRのベータ版を実装したモバイルデバイスでのデモ映像をご覧ください。

HTC HD2(Windows Mobile)やNexus One(Android)を使ったデモ

HTC HD2(Windows Mobile)やNexus One(Android)を使って、ヨーロッパの人気ニュースサイト「SKY NEWS」、動画サイト「blip.tv」、Flashゲームサイト「FLASHGAMES247.COM」を利用しています

モバイル向けAdobe AIRを搭載したモトローラのAndroid端末を使ったデモ

モバイル向けAdobe AIRを搭載したモトローラのAndroid端末を使って、Twitterクライアント「TweetCard」、South Parkのキャラクターカスタマイズアプリ、Acrobat Connect Proを利用しています

Flash Player 10.1やモバイル向けAdobe AIRを搭載したNVIDIAのTegra-powered tablet(Android)を使ったデモ

Flash Player 10.1やモバイル向けAdobe AIRを搭載したNVIDIAのTegra-powered tablet(Android)を使って、AIRアプリのWiredデジタル版を閲覧するなど、ブラウザー経由で動画サイト「blip.tv」を利用しています

その他のモバイルデバイスを使ったデモ映像は、下記サイトからご覧いただけます。
Flash Player 10.1 and AIR 2 mobile preview videos

日本発! Flash製iPhoneアプリ続々登場!

様々なデバイスやプラットフォームにおいて、Flash Player 10.1やAdobe AIRのサポートは着々と進んでいるものの、残念ながらiPhoneとiPadはFlash PlayerやAdobe AIRをサポートしていません。しかし、Flash Professionalの次期バージョンCS5には「Packager for iPhone」というツールが同梱されており、ActionScriptを使ってiPhone/iPad向けアプリを開発することができます。そして、なんと既に! Flash Professional CS5のプレリリースプログラムに参加してくださっている有志の方々が制作したFlash製iPhoneアプリがiTunes Storeで公開されています。ぜひ、ダウンロードして、触ってみてください。

Simple Metronome

【制作者】
Takayuki Fukatsu a.k.a. fladdict
http://artandmobile.com/metronome/

【iPhoneアプリ名】
Simple Metronome

【iPhoneアプリ概要】
「Packager for iPhone」機能のアニメーション再生のテクニカルデモとして、正確な動作が要求されるメトロノームを作成。

【Packager for iPhoneの感想】
iPhoneアプリの制作を1年半ほどやってきましたが、簡単なアプリならば、Flashで気軽に作成できるのはかなり便利です。高度なアプリの場合でも、Flashでコンセプトの実証実験を行い、最終版はObjective-Cで実装するというプロトタイピング的な使い方もできるため、実制作で重宝しそうです。

SoftLanding Lite

【制作者】
林 拓也
http://www.haphands.com/

【iPhoneアプリ名】
SoftLanding Lite

【iPhoneアプリ概要】
左右の回転ボタンとジェット噴射ボタンで宇宙船を操作し、着陸ポイントに静かに着陸させるミニゲームです。

【Packager for iPhoneの感想】
私はiPhoneやiPodを使っていなかったのですが、1月下旬にiPhoneを購入し、手探りで開発を始めました。「デベロッパー登録~アプリリリースまでのフローを確認する」と「Windows環境ですべて完結させる」ことを主な目標としていましたが、これらは一応達成できました。今回のアプリには操作的にも機能的にも「iPhoneらしい」ものはないのですが、それでもFlashで普通に作ったコンテンツが実機上で動くのは新鮮でした。予備知識がなくてもFlash(ActionScript 3.0)が使えればiPhoneアプリを開発できる、という分かりやすい事例になったかと思っています。

MAEGAMI

【制作者】
中野紘子 
http://flak.jp/

【iPhoneアプリ名】
MAEGAMI

【iPhoneアプリ概要】
4人のかわいい女の子のまえがみをぱっつんするアプリ。あなたの指のドラッグどおりに、おでこでぱっつん、ななめにぱっつん。さあ思うがままに、ぱっつんしてみてください。

【Packager for iPhoneの感想】
「Packager for iPhone」機能を使用することで、普段FlashでWebサイトを制作するのと同じ感覚でiPhoneアプリを作ることができました。今回制作したアプリは、iPhone特有のコードというものは一切使用していませんので、書き出し方を変えればそのままWebでも公開できるようなものです。私はもともとこのアプリをObjective-Cで制作しようとして挫折した経緯があったので、iPhone上で動作させたときは「本当に動いた!」という驚きと同時に、感慨深いものがありました。同じような感覚を、Flashユーザーの皆さまにも感じて欲しいです。

モアイまわし

【制作者】
タカヒロウ 
http://www.skt-products.com/

【iPhoneアプリ名】
モアイまわし

【iPhoneアプリ概要】
画面をタッチして、すべてのモアイが正面を向く場所を探すゲームです。5年前に制作したWeb版をiPhone用に移植しました。縦画面、横画面どちらでも遊べ、いつでも変更することができます。

【Packager for iPhoneの感想】
ActionScript 3.0で制作したものであれば、ほとんどそのまま書き出せることに素直に驚きました。もちろん、公開するにあたっての手直しや工夫は必要ですが、アプリ制作の敷居は下がったと思います。最初に作ったのはiPhoneの向きに合わせてテキストが変わるだけのアプリでしたが、しばらく回して遊んでしまいました。

Korean Alphabet

【制作者】
川崎有亮(Kurukuru Stone)
http://www.kawa.net/

【iPhoneアプリ名】
Korean Alphabet

【iPhoneアプリ概要】
韓国語(ハングル)の読み方をローマ字にしてルビ表示してくれる、シンプルな言語学習系アプリです。韓国旅行のお伴にどうぞ。

【Packager for iPhoneの感想】
まず驚いたのがPackagerの実装。.swfをLLVM(Low Level Virtual Machine )経由でiPhoneネイティブのarmバイナリにコンパイルする仕組みには、漢(オトコ)を感じますよね? CPUが異なるので実行速度は違いますが、PCと同じFlashコンテンツがそのまま動きます。Objective-Cの敷居をまたがずに、iPhoneアプリ開発に取り組めるのはありがたい。Adobe AIRベースなので、PC向けFlashコンテンツよりもむしろ開発の自由度が高いです。今後アプリが増えるにつれて、型宣言が重要なコンパイル方式ならではの高速化手法や、cacheAsBitmap周りなど最適化ノウハウがたまってきそう。期待しています!


なお、Adobe Labsの「Packager for iPhone」コーナーでは、海外クリエイターによるFlash製iPhoneアプリを紹介しています。日本のiTunes Storeからも入手できます。

また、Adobe Digital Publishingサイトにある記事「Introducing a New Digital Magazine Experience」では、WiredがiPadなどのタブレットデバイス向けに開発した「電子雑誌の未来像」を紹介しています。ビデオや音声を取り入れたマルチメディアコンテンツ、タブレットインターフェイスに最適化されたナビゲーションなど、これまでの電子雑誌にはない要素が盛り込まれた新たな読書体験となっており、出版関係者でなくとも必見です。

Introducing a New Digital Magazine Experience

この電子雑誌はAdobe AIRで作られています。Packager for iPhoneを通して、こうしたAIRアプリもiPhoneやiPadに提供可能となる予定です

以上のように、デバイスやプラットフォームによって分け隔てることなく、素晴らしいユーザー体験を提供できる環境が整いつつあります。今後のOpen Screen Projectの活動にご期待ください。