Adobe Media Player:コンテンツ配信のためのRSS構造を理解する
by Craig Syverson
今月号の記事
Adobe Media Player は次世代のデスクトップメディアプレーヤです。高度な映像再生環境を備えており、ストリーミング配信やダウンロード配信のほかにも、ユーザの PC に保存されている FLV コンテンツを再生することもできます。また、TV 番組やビデオコンテンツを定期購読する機能があり、定期購読したビデオコンテンツはバックグラウンドで自動的にダウンロードされ、オンライン時はもちろんオフライン時にも視聴できます。Adobe Media Player のアプリケーション画面は、一見複雑に感じるかもしれませんが、素晴らしいユーザインタフェースを実現しており、迷うことなく楽しみながら操作できます。
Adobe Media Player では、コンテンツ提供者やメディア企業が、ブランディングや広告収入に活かせるように、再生画面のスキンをカスタマイズできるようになっています。また、プレイリストを使えば、コンテンツの再生時に広告を入れ込むことも可能です。さらに、Adobe Flash Media Server 3 を組み合わせれば、コンテンツの配信・保護・統合をかなり高いレベルで実現することができます。
Adobe Media Player 向けのコンテンツ制作・配信に興味を持っている方も多いと思いますが、まずはAdobe Media Player のシステム構造を理解しておくことをお薦めします。そうすることで、コンテンツ制作・配信を戦略的に考えることができるからです。どのように Adobe Media Player のプラットフォームを活用したいのかにもよりますが、コンテンツ提供者は基本的にすべてのオプションを利用することができます。また、Adobe Flash Player 9 のコーデックをサポートしているので、既存のコンテンツを活用することも可能です。
図1は、Adobe Media Player の再生画面のメインコンポーネントです。その下ではこの記事で使用している用語を解説します。
図1. Adobe Media Player の再生画面でのブランディングや広告に関するコンポーネント
本記事で使われる用語の解説:
RSS フィード
標準的な XML ベースのファイルです。この XML ファイルは、ブログやニュースフィード、Podcast の要となる存在でもあります。ブログリーダーやメディアアグリゲーターは直接 RSS フィードを参照してコンテンツを表示しています。
ショー
1つの番組のことです(たとえば、「I Love Lucy」など)。
エピソード
番組を構成する各回ごとのストーリーのことです(たとえば、「Lucy does a commercial」は I Love Lucy の1つのエピソードになります)。
ブランディングと広告
ビジネス戦略的な観点からいえば、Adobe Media Player でコンテンツを配信する際に、どのようなブランディングや広告が可能なのかを把握しておくことは大切です。
コンテンツ提供者は、プレーヤのスキンにバナーや背景などの画像を埋め込むことができ、自由にブランディングを行えます。これらの画像は Adobe Media Player の独自 XML タグを使って、RSS フィード内で定義します。また、コンテンツの再生中にビデオセグメントやオーバーレイを挿入したり、バナーを切り替えたりして、ダイナミックに広告を表示することができます。またコンテンツ提供者は、効果測定の協力に同意したユーザから、視聴状況に関する詳細データも得られます。なお、広告を出す際はアドビ システムズ社と提携を結ぶ必要があり、広告収入の一部をアドビ システムズ社に支払うことになります。
RSS フィードでは、まず Adobe Media Player へ配信する全コンテンツの基本構造を記述します。その基本構造を元に、ブランディングを強化したければ独自の XML タグを使ってブランディング要素を追加し、広告を表示させたい場合には「Media Orchestration Documents (MODs)」というプレイリストを使います。MOD プレイリストとは、個々のエピソードに関するインストラクションのようなものです。
では、Adobe Media Player で MOD プレイリストがどのように機能するのかを説明しましょう。まずは、従来の RSS フィードと MOD プレイリストの違いから見ていきます。一般的なビデオキャストの RSS フィードの場合、1つのエピソードに該当するビデオプログラムは、1つのメディアファイルとして特定のタグで定義されます。図2 は、一般的な RSS フィードに含まれるショーやエピソードの情報です。
図2. 一般的な RSS フィードに含まれるショーやエピソードの情報
RSS フィードはもともとブログ記事やニュース向けに設計されているため、フィードの構造は逆年代順になっています。つまり、フィード内では上から順に最近の記事やニュースが並び、下に行くほど古くなります。たとえば、RSS アグリゲータで Podcast の RSS フィードを購読すると、通常は最新のエピソードからダウンロードしていきます。アグリゲータの中にはこのダウンロード順の設定を調整できるものもあり、Adobe Media Player でも設定変更が可能です。エピソードをどんどん追加していくと、RSS フィードの構造は図3のようになっていきます。
図3. 一般的な RSS フィードでのショーのデータ構造
以上が一般的な RSS フィードの構造です。さらに Adobe Media Player では、ブランディングを強くし意識するコンテンツ提供者のために、通常の RSS フィードに追加できるオプションが用意されています(図4)。
図4. ブランディングのために、一般的な RSS フィードに追加できるオプション(ハイライト部分)
オプション部分には、特別なタグやメディアファイルへのリンクを記述します。Storyline はオプションスキームで、これを使って配信するエピソードの順番(新しい順か古い順か)を設定することができます。特にシリーズもののショーや段階的なトレーニングなど、最初から終わりまで順を追って見てほしいコンテンツには最適なオプションです。
広告面のサポートとしては、ショーの情報内容は通常の RSS フィードと同じですが、エピソードの情報内容にある「MEDIA ENCLOSURE」項目に注目してください。一般的な RSS フィードではビデオファイルへのリンクを記述しますが、Adobe Media Player の RSS フィードでは MOD プレイリストへのリンクを記述することができます(図5)。

図5. ブランディングや広告用のオプションを追加したショーやエピソードの RSS 情報
MOD プレイリストは「Synchronized Multimedia Integration Language (SMIL) 2.1」をベースとしています。SMIL とは、複数のメディアファイルを連続的あるいは並行的にシンクロさせて表示できる言語です。図6は、2つのビデオファイルと1つの SWF ファイルを含む MOD プレイリストの例です。

図6. MOD プレイリストを含むフィード全体の構造
Adobe Media Player の機能を活用する上で MOD プレイリストは非常に重要な存在です。MOD プレイリストを使えば、コンテンツ提供者は以下のメリット享受できます。
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再生中に画面上のバナーエリアをダイナミックに更新可能
(たとえば、コンテンツのコンテキストに合わせた広告を表示することができます) -
1つのビデオファイルだけでなく、一連のビデオセグメントをビデオソースとして統合することが可能
(たとえば、エピソードコンテンツに広告映像を追加したりことができます) -
シークエンスにビデオやリッチメディアをオーバーレイさせたり、ユーザーがアクティブリンクをクリックした際に再生中のビデオを自動で一時停止させることも可能
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ビデオ表示領域の下にダイナミックにロゴを追加することが可能
(たとえば、放送局の ID を入れることができます) -
数々の効果測定やレポート作成が可能
MOD プレイリストでは、コマンドを使ってダイナミック要素の表示タイミングや時間をコントロールできるようになっています。たとえば、あるショーについて2分のエピソードがあり、2つの異なるバナー広告、映像前のプレロールビデオ広告、映像半ばのミッドロールビデオ広告、ブランディング用のロゴ、同じ放送局が提供している他のショーへと促すFlashアニメーションといった広告要素を表示したいとします。その場合の MOD プレイリストの構造は図7のようになります。
図7. 複数のダイナミック要素を組み込んだ際のMODプレイリスト
上記の MOD プレイリストでは、「BANNER」「VIDEO」「VIDEO OVERLAY」というセクションがあり、それらはすべて計120秒となっています。すべての要素の再生をうまく統合するには、同じ時間で終わるようにしておく必要があります。
このような時間ベースのメディアコントロール機能を「メディアクリッピングモジュール」と呼びます。このメディアクリッピングモジュールを使えば、異なるビデオソースをダイナミックに追加したり組み合わせたりできるので、いちいち時間割ごとに別々のメディア要素を作る必要はありません。たとえば、図7の例では、再生開始から10秒間はプレロールビデオ広告が流れ、そこから本編のエピソードが開始し、再生時間「1:00」の時点でエピソードは一時停止し、代わりにミッドロールビデオ広告が10秒間流れ、その後エピソードが再開します。
これらの設定で使用する XML タグのパラメータやシンタックスについては、Adobe Media Player Content Publishing Guide (英語)に詳しく記載されていますので参考にしてください。
以上で Adobe Media Player 向け RSS フィードの基本構造についての解説は終わりです。次に、Adobe Media Player がサポートしているメディアファイルの種類について解説します。FLV フォーマット
Adobe Media Player は FLV アーキテクチャをベースとしており、FLV コンテナ内のビデオファイルを再生することができます。2007年11月には、FLV 仕様として H.264 コーデックをサポートすることが発表されました。すでにネット上にあるビデオコンテンツの多くが、H.264 コーデックでエンコードされている状況を考えると、わざわざ Adobe Media Player 向けにビデオコンテンツをエンコードし直さなければならないケースはそれほど多くなさそうです。表1は、H.264 エンコードビデオをサポートしているファイルタイプのリストです。
表1. H.264 をサポートしているファイルタイプ
FLV コンテナ内のビデオファイルは、Flash でサポートされているコーデックでエンコードされていれば良いので、H.264 以外に On2 コーデックでも問題ありません。しかし、FLV コンテナ外のビデオファイルを再生させる場合は、必ず H.264 コーデックでエンコードされている必要があります。
プログレッシブダウンロードとストリーミング配信
Adobe Media Player では、プログレッシブダウンロード配信や(RTMP 経由の)ストリーミング配信におけるビデオコンテンツの管理/再生をサポートしています。オンライン時のエンドユーザーにとっては、配信方法による閲覧・操作体験の違いがほとんどないため、その差を気づかないかもしれませんが、Adobe Media Player は両方の配信方法をしっかりとサポートしています。ビデオコンテンツをストリーミング配信したい場合には、FLV コンテンツの適切な URL へ導くように、Flash Media Server 側での設定が必要となる場合があるので注意してください。
P2P のサポート
Adobe Media Player では、Akamai 社の Red Swoosh を使ったメディアファイルの P2P 配布をサポートしています。この P2P 機能を利用するには、ユーザは自分のマシンに Red Swoosh クライアントをインストールしておく必要があります。なお、P2P 機能を使って配布する場合でも、バックアップとして HTTP ベースのソースも用意しておくことをお薦めします。
オンライン/オフライン
Adobe Media Player では、オンライン/オフラインの両方の環境においてシームレスに動作するように設計されています。プログレッシブダウンロードで集めたコンテンツは、ユーザの PC 内にキャッシュされ、オフライン時でも再生することができます。なお、Adobe Media Player は、ユーザがオンラインかオフラインかを区別できるので、状況に応じて異なる再生体験を提供することも可能です。
対応しているアセットタイプ
前述したように、Adobe Media Player では FLV コンテナでサポートされているすべてのビデオコンテンツ、そして H.264 コーデックでエンコードされたビデオコンテンツに対応しています。その他にも各画面要素では、表2にあるファイルフォーマットに対応しています。
表2. 各画面要素ごとに対応しているファイルフォーマット
コンテンツ提供者がすべきこと
Adobe Media Player は、現在使用されている Web グラフィックスの標準技術に準拠するように設計されています。そのため、コンテンツ提供者はわざわざ Adobe Media Player 向けに新たに技術を取得したり、既存のコンテンツに手を加えたりする必要性はほとんどありません。コンテンツ提供者がすべきことは以下の5つです。
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ビデオコンテンツは、Flash Player 9に対応したフォーマットでエンコードする
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ユーザのマシン環境や性能を考慮したフレームサイズやデータレートにする
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ストリーミング配信を行う際は、Flash Media ServerがFLVコンテンツへの適切なURLを提供できるように設定しておく
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ブランディング機能を十分活用するにはアドビ独自のXMLタグを習得しておく
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広告機能を十分活用するにはMODプレイリストの構造をしっかりと理解しておく
以上がAdobe Media Playerについての解説となります。さらに情報を得たいという人は、 Adobe LabsのAdobe Media Player 情報ページをご覧ください。
Craig Syverson
出版会社「gruntmedia」のホスト兼プロデューサー。同社では、基本的な事柄を題材にしたシリーズもののビデオポッドキャストを配信中。たとえば、「videogrunt」ではデジタルビデオに関連した用語や技術について解説している。
