FITC Toronto 2010 レポート

4 月の 25 日から 27 日までの 3 日間、トロントで開催された FITC Toronto に行ってきました。実は海外で開催された FITC には今まで参加したことがなく、周りの人が行くたびにいいなーと羨ましがっていたのですが、念願かなってとうとう、しかも本家の FITC に参加することができました。ちょうどアイスランドの Eyjafjallajokull (誰か読めます??) 火山噴火の影響が出た後のタイミングだったため、ヨーロッパからの参加者には影響が出ていたようですが、それでも連日盛況で、何よりこれだけ Flash 界の有名人が集まっているという普通でない状況にいやがうえにも盛り上がった 3 日間でした。また、CS5 発表直後ということもあり、アドビからのセッションが充実していたのも印象的でした。そんな FITC Toronto の雰囲気を少しでも伝えられればと思い、レポートさせていただきます。

FITC Toronto について

FITC Toronto は、2002 年にカナダのインタラクションデザイン業界のコミュニティを立ち上げるべく開始され、今では世界各地で開催されるようになった (昨年東京でも開催されましたね) FITC イベントのフラッグシップと位置づけられているイベントです。本拠地のトロントでは毎年開催されていて、今年で 9 回目を迎えます。参加者数、セッション数、どちらをとっても FITC 中一番大きなイベントということになっています。

会場はここ数年の定番となっている Hilton ホテルの地下 1 階でした。近くを地下鉄が通っていて、セッション会場によってはときどき車両の通過する音が聞こえたりします。Hilton ホテルはトロントの中心エリアに位置する都会的な建物で、トロント自体が普通の北米の都市っぽさを持っていることもあり、カナダに来たっ!という感じがあまりしないのは残念でしたが、これはちょっと望み過ぎだったかもしれません。次回の FITC Tokyo はお寺でやるとかすれば海外からのお客さんは喜ぶかもしれない、と思ってみたり。

会場前の大通り
会場前の大通り。4 月末とはいえ最高気温は 12 ℃ とまだまだ寒かったです

20 以上の国から参加者が来ているとの話でしたが、やはりほとんどはアメリカとカナダの人たちでした (噴火の影響もあるかもですが)。話をしてみると学生だという人がかなり多かったのですが、これはいったん社会に出てからでも学校に戻って学位を取り直しては転職するという社会の慣習が大きく関係しているのではないかと思います。というのは、学生だと言った人みんながそれほど若いようには見えなかったので (失礼)。とはいえ、年齢にかかわらず積極的に新しいことに挑戦する姿勢に国の活力の源を見たようで少し羨ましくはありました。

アドビのセッション (基調講演その他)

それでは、本題のセッションレポートです。まずは、アドビ関連のセッションから。

基調講演を含め、Flash Platform に関連する全部で 6 つのセッションがありました。すべてのセッションに参加しましたが、なんといっても今回一番印象に残ったのは Flash Player 10.1 の改善されたメモリ管理機能です。リソースの少ないモバイルデバイスでも実用に足るように多くの改善が行われていて、その結果、ある Flex アプリケーションは Flash Player のバージョンを 10.1 に変えただけで使用するメモリ量が 3 分の 1 以下 (!) になったそうです。Flex SDK の DataGrid コンポーネント単体で計測した結果もサイズが半分以下になったとのことで、もしかして Flex アプリもデバイス上でそこそこ使えたりして?と思ってしまいました。描画機能の改善と併せてパフォーマンスの向上 にはずいぶん力を入れたリリースという印象です。それだけに iPhone の件はちょっと残念ですが、他のスマートフォンでは 「デスクトップと同じ」 Flash Player が順次使えるようになる予定で、Android に始まり Palm webOS、Symbian OS、RIM OS、Windows Phone 7 にも対応する予定が表明されていました。1 つの Fla ファイルから、デスクトップも含めこれだけのプラットフォームに向けてパブリッシュできるのはちょっと楽しみです。また、デバイスだけでなくデスクトップ上でも Flash Player 10.1 をインストールすることで、かなりのパフォーマンス向上が期待できそうです。こちらも楽しみ。

Flash Player 10.1 のリソース管理に関する改善点のリスト
Flash Player 10.1 のリソース管理に関する改善点のリスト

ツール関連のセッションでは、Flash Professional、Flash Builder、Flash Catalyst それぞれの新機能はもちろん、他のデザインツールとの統合も強調されていました。FITC で InDesign のデモがあったのは初めてではないかと思います。InDesign CS5 は、シンプルな電子出版であればスクリプトを 1 行も書かずにインタラクションを追加し SWF ファイルとしてパブリッシュできますし、複雑なインタラクションが必要であれば、素材をレイアウトそのままに Fla ファイルとして書き出すことができます。新しいテキストエンジンのおかげでテキストレイアウトもそのまま SWF 上で再現できるため、InDesign のスキルを Web にも活かすことができそうでした。このようにスイートとしてもより完成度の増した CS5 の出荷が待ち遠しいところです。

セッション 「Cool Japanese Hour!」 with Takayuki (fladdict) Fukatsu & Yoshihiro (BeInteractive!) Shindo

講演前の緊張した(?) 深津さん (左) と新藤さん (右)
講演前の緊張した(?) 深津さん (左) と新藤さん (右)

最近は FITC の定番になってきた日本の Flash シーンを紹介するセッション。今回は、Art & Mobile の深津さんと BeInteractive! の新藤さんが登場です。深夜ですがストリーミング中継されていたので日本でも見た方はいるのではないでしょうか? 深津さんは最近の iPhone 関連のお仕事の紹介と、その経験をベースにしたデバイス向けアプリケーションの開発時の注意点について説明をされていました。新藤さんは Spark Project の説明と、最近関わったプロジェクトのご紹介です。

ToyCamera を使った作品 開発中の携帯待ち受け画面
ToyCamera を使った作品 (左) と 開発中の携帯待ち受け画面 (右)

セッション終了後に何人もの参加者が 2 人と話をするため前に集まったのが、日本ではあまり見られない光景で印象的でした。話を聞いてみると 「こんなカメラアプリケーションを探していたんだ」「BetweenAS3 って本当に速いねえ」 とかなり興味を持っていたようです。こうやって日本の Flash の状況が広まる機会が続いていくと良いなと思いました。この夏の FITC San Francisco にも Japanese Flash のセッションがあることを期待しましょう。

お二人とも、ほとんど他のセッションには参加せず部屋にこもって準備をしていたとのことです。本当にお疲れ様でした。

 

Takayuki FukatsuTakayuki Fukatsu
fladdict.net
artandmobile.com

セッションの感想

Flashとスマートフォンの話ということで、食いついてもらえるかどきどきでしたが、みなさんそれなりに興味を持ってもらえたようでした。プレゼンの内容も英語力もよりブラッシュアップできるように頑張りたいと思います。

FITCの感想

今回はあまりセッションに参加できなかったのですが、やはり海外で活躍している人々に直接会えると刺激になります。

今後の予定

今後Flashの主戦場はPCのWeb広告から、スマートフォンに移行していくと思います。しばらくはこちらの分野でノウハウを模索していきたいと思います。

 

Yoshihiro ShindoYoshihiro Shindo
www.libspark.org
www.be-interactive.org

セッションの感想

二度目とはいえ、異国でのプレゼンはなかなか緊張しましたが、笑ってくれたり、驚いてくれたり、きちんと伝わっていたようで安心しました。去年もそうでしたが、セッション後に気さくに声をかけてくれて、感想などを言ってくださる方が多いのが嬉しかったです。

FITCの感想

今回、自分のプレゼンの準備のため、FITC期間中ほとんどホテルにこもりきりの生活でしたが、いくつかセッションやパーティーに参加しただけでも、非常にたくさんの刺激をもらえました。そもそも、世界の著名 Flash クリエーターがあれだけ集まっているという異次元空間からして尋常ではないです。ほんとお祭り騒ぎです。

今後の予定

今回、喋りたくても喋れなかった仕事のプロジェクトなどがあるので、機会があればそれらについてもプレゼンしたいですね。前回よりは英語でのコミュニケーションが取れた気がしますが、なかなかついていけず悔しい思いを毎度しているので、次までにはもっと話せるようになりたいです。

セッション 「Multiuser Application Development with Union」 with Colin Moock

Colin のセッションは、最近彼が力を入れている Union プラットフォームの解説です。このセッションには日本からの参加者として上野さんが登壇しています。以下、上野さん本人からのご紹介です(写真提供は Colin)。

プレゼン中の Colin Moock
プレゼン中の Colin Moock

今年の FITC では、Colin Moock の Multiuser Application Development with Union というプレゼンに参加して来ました。
このセッションでは、Union Platform というマルチユーザーアプリケーション開発用プラットフォームの現状について語られました。大まかな内容は次のとおりです。

  1. Union Platform の無料ライセンス範囲の発表
  2. クライアント側の技術を使ったアプリのデモ by 上野 (ゲスト)
  3. Alpha 7 までに追加された機能の紹介
  4. サーバー側プログラムの作り方の紹介 by Derek, Thijs (ゲスト)
  5. MegaPhone の実績とデベロッパープログラムの紹介

大きなアナウンスとしては、まず無料ライセンスが 1,000 人同時接続まで商用/非商用を問わず適用されるということです。ほとんどのシンプルなアプリはこの範囲に収まると思われますので、これは Union Platform を使用する大きな動機となるのではないかと思います。

次に、MegaPhone のベータ開発者登録ページが紹介されました。
MegaPhone は、携帯電話から発信してサーバーに接続し、キーパッドを押すことによってアプリをコントロールできる仕組みで、開発は Union Platform を使って行えます。このページは日本から登録できるだけでなく、日本の電話番号を使って開発することも可能だそうです。Flash アプリケーションの幅が大きく広がりますので、ぜひ登録してみてはいかがでしょうか。

最後に私自身が行ったことの紹介になりますが、私の制作した TypeShootを、Union Platform を使用したゲームとしてデモさせていただきました。

 

Kenichi UenoKenichi Ueno
http://keno.serio.jp
http://twitter.com/keno42

経緯としては、去年の FITC 以来の個人的活動として、Union Platform の Flash用ライブラリのドキュメント和訳、TypeShoot の開発と、その Union Alpha の各バージョンに対応したアップデートとフィードバック、それに Spark Project 勉強会における Union Platform 紹介などを通して、開発者の2人 (Colin と Derek) とたびたび連絡をとっていたことから、今回の機会をいただきました。

前回 FITC に初参加して以来、いつか自分の制作物を発表することでイベントの一部を担いたいと思っていましたので、今回のような経験ができたことをとても嬉しく思います。また、プレゼンターや来場者との出会いが、様々な出来事を引き起こすものだという実感も得られました。
皆さんもぜひ、FITC のような巨大なイベントに参加して、他の参加者と交流してみてはいかがでしょうか (単にパーティーを楽しむくらいの気持ちでもOKです!)。

セッション 「Large, Physical, Flash」 with Thomas Wester

数メートル単位の大きさを持つテーブル上にどうやってインタラクティブコンテンツを開発するかというセッションで、昨年の Adobe MAX でエンターテイメント部門のファイナリストに選ばれたグラミー博物館の事例などを参照しながら説明が進められました。大きな表示領域を使って複数の人間が触ったり覗いたりするため、通常の Web コンテンツにはない様々な点を考慮する必要があること (例えば大きくて高解像度の文字が要る)、使用するデバイスの機能上の制限や設置される環境による影響など、物理的な要素の設計スキルが求められることについての説明がされました。 最後に、各種の技術的制限に対してどんなときに Flash を使うべきか (使わないべきか) という話がありました。結論としては、ほとんどのプロジェクトで Flash を使用している。ただし Flash のみで完結しているプロジェクトは少ない、ということです。

テーブルの上に表示された Flash コンテンツを操作するところ
テーブルの上に表示された Flash コンテンツを操作するところ

Thomas の勤務する Second Story は Flash 5 の時代からこのようなコンテンツに取り組んでいるとのことで、Flash の機能強化によって彼らの作品も進化してきたこと、これからは AIR を活用したいと思っていることを嬉しそうに話していました。セッション会場は立ち見がでる盛況で、参加者のデバイスに対する関心の高さを示していたように思います。

なじみのセッション

以下は、昨年の FITC Tokyo 2009 や今年 3 月の Flash Camp など、ここ 1~2 年以内に日本で公演した Big Spaceship や North Kingdom 等おなじみの面々のセッションです。この面子が揃うという豪華さも FITC ならではという感じです。

事前に話をしたときには、どれも日本でのセッションからあまり内容は変わってないよということだったのですが、それでもちょっとだけと思って見始めるといつの間にか引き込まれてしまうのはさすがといったところです。Mario と Ralph のセッションなんて 1 ヵ月前に見たばかりだったのですが。彼らが何回も呼ばれるのが分かりますね。FITC Amsterdam から小野田さんが紹介されていた Peter Nistch のセッションもリピートされていました。

アフターパーティー

FITC といえば夜のパーティーは欠かせません。今回もセッション後には、クラブ貸し切りのパーティーなど毎晩イベントが行われました。色々な人と仲良くなれる、これも大事な時間です。特に、最後の夜はオンタリオ湖を船でクルーズするというちょっと豪華なものだったのですが、寒かったのがなんとも。来年行く人は防寒着をお忘れなく。

FITC San Francisco 2010 そして FITC Tokyo 2010

1 ヵ月前に東京で Flash Camp に参加したばかりで、しかも Flash Camp のクオリティが半端なく高かったにもかかわらず、トロントでも初日から高いテンションになってしまったのは、インタラクションデザインに関わる人たちの層の厚さとイベントとしての重さによるものだと思います。いろんな刺激を受けて、自分ももっと人に何かを伝えられるような仕事をしていきたいと改めて思った 3 日間でした。

今年の 8 月にはサンフランシスコで 3 日間にわたり FITC San Francisco が開催されます。ちょうど夏休みの時期ですし、暑い日本を離れて涼しい夏を過ごしてきてはいかがでしょうか。そして、年末には東京でも開催予定とのこと。詳細は未定ですが、誰が来るのか今から楽しみですね。