小野田智の「世界の制作会社からコンニチハ!」

トルコ:Navistd.

第5回目は、トルコ最大の都市、イスタンブールからお送りします。取材先は、FWAのSite of the Dayなどの賞を受賞している「Navistd.」です。ナンバーワンを目指すなど目標高く、熱い話が聞けました。

トルコ/イスタンブール雑感

ヨーロッパとアジアの中間点、ボスポラス海峡にまたがるイスタンブールは、古くから政治的な要所として知られ、現在も人口1,200 万人を誇るこの一帯で最大の都市圏を形成しています。

エジプトからヨルダン、シリア、レバノンと旅をしてきた僕にとっては、今までの中東諸国とは明らかに違うヨーロッパの雰囲気に驚きを覚えました。近代的なビルが立ち並び、商店には物が溢れかえっています。残念ながら豚肉を食せるところはまだ少ないですが、アルコール類はどこでも入手できますし、道行く人の服装もヨーロッパの他の都市とそれほど変わりないように見えます。

イスタンブール新市街のメインストリート
イスタンブール新市街のメインストリート、イスティクラ通り。平日の夜でもこの人の量です

対してヨーロッパから入って来た旅人は、口を揃えて「ここは既にヨーロッパではない」と言います。街にあふれるモスク、露店、水煙草を吸いバックギャモンに興じる人々。若干観光地化されている感は否めませんが、グランドバザールやエジプシャンバザールなどはこの中東諸国の巨大なスーク(商店街)そのものです。中東とヨーロッパ、さらにはシルクロードから伝わったアジア文化も相まって、観光客が訪れる土地としては、一粒で何度も美味しい街になりそうです。

中東のスークの雰囲気を色濃く残すグランドバザール
中東のスークの雰囲気を色濃く残すグランドバザール。何か掘り出し物が見つかるかも

ちなみに、ネットコネクションはかなり快適。安宿のADSLに繋がっている共有Wi-Fiですら数百kbps出ていますので日常の使用には特に問題ないかと。特にこれまでの中東地域では、ネットワークに接続することから一苦労だったのを思い出すと、ここはまるで天国のようです。携帯電話に関しては、最近ようやく3Gが普及し出したとのことで、それに伴い徐々にモバイルインターネットも広がりつつあるそうです。また、iPhoneをはじめとするスマートフォンも市場に存在はしていますが、所有している人はまだごく一部のようですね。

名所のガラタ橋
名所のガラタ橋。昼間には橋の上で釣りをしている人たちで賑わいます。下のレストランのシーフードもなかなか

インタビュー:Navistd.

今回は、イスタンブールのアジア側にある閑静な住宅街にオフィスを構える「Navistd.」にお邪魔して、マネージャーのKerem Kandıralıさんにお話を伺ってきました。

対応してくれたKeremさん
対応してくれたKeremさん。なんとまだ26歳とのこと

Navistd.
Navistd.

小野田:Navistd.について紹介してください。

Kerem:Navistd.は、僕Kerem Kandıralıが2008年に始めたクリエイティブスタジオです。僕自身はそれまでイスタンブールのいくつかの制作会社で働いていたのですが、この土地の制作の風習とソリが合わないことに気づき独立を決意しました。その後、手掛けたサイトがFWAのSite of the Dayなど様々な賞を受賞したおかげで、多くの大手クライアントが僕らの仕事を認めてくれ、今では映画の配給会社や、ファッションブランド、写真家、建築家など国内外に多くのクライアントを抱えるまでに成長することができました。ちなみにトルコでは現時点で一番多くFWAを持っている会社のはずです。

小野田:ソリが合わなかったと言いますと?

Kerem:あまりいい表現ではないのですが、一般的にトルコの制作会社は拝金主義のところが多いんですよね。クライアントの要求してきたことができたらそこでおしまい、という仕事のやり方が多いです。特に代理店が絡むとこの傾向が強く、とにかく早く終わらせて請求することがすべてになってしまいます。確かに、それでもクライアントは一応満足しますが、僕はもっともっと作りこみたかった。わが子同然のサイトたちを中途半端な状態で完成としてしまうのはどうしても忍びなかったんです。僕らはこの分野のプロフェッショナルなのですから、クライアントのアイデアを膨らませて、さらに良いソリューションを提案するべきでしょう? それにお金を追いかけるのではなくクオリティを追いかければ、自然とお金もついてきますしね。

オフィスの入り口には楽器が何台も
オフィスの入り口には楽器が何台も。個人的な見解ですが、音楽ができる人たちはトゥイーンのリズム取りもウマい

小野田:手掛けたサイトをいくつか紹介していただけますか。

Egofoto

http://www.egofoto.de/

2008年とローンチは少し昔のサイトなのですが、僕らにとってはとても重要なサイトなので、初めに紹介させてください。ドイツ在住のトルコ人写真家のポートフォリオページです。このサイトはNavistd.が、そしてイスタンブールの制作会社が初めてFWAのSite of the Dayを獲得したサイトです。世界的に見ればごくありふれた表現しか使っていなかったのですが、当時トルコではこのようなサイトはほとんどなく、これがNavistd.の代名詞のようなものになりました。

Egofoto

Caime & Friends

http://www.caime-friends.de/

ドイツのデザイン会社のサイトです。制作途中の段階ではクライアントの代表と表現手法について少し揉めたりもしましたが、最終的なアウトプットに関してはかなり気に入ってもらっています。Navistd.ではクライアントの満足度が最重要項目なので、こちらとしてもうれしい限りです。

Caime & Friends

Arıza

http://www.ariza.com.tr/

トルコの大手写真スタジオのサイトです。他のサイトでもそうなのですが、Navistd.の基本的な制作スタイルはシンプルなデザインと小気味よいアニメーションです。このサイトでは特にトランジションに力を入れて制作を行っていますので、サイトを訪れた際にはその辺りにも注目してもらいたいですね。

Arıza

Kerem:他にもトルコ最大手の映画製作会社やトルコ国内外の才能あふれる多くの会社のサイトを手掛けてきました。

ちなみに、これらクライアントの多くは前のクライアントからの紹介で獲得しています。もしくは、アワードのサイトを見て連絡をしてくるとか。こちらの営業の手間も省けますし、先方も既にNavistd.のスタイルを知った上で依頼してくるのでスムーズに制作が進んでいいですね。

小野田:何かインスピレーションのもととなるようなものってありますか?

Kerem:特別なことは何もないですよ。オフィスの近くにある小さな森を散歩したり、静かな時間を過ごしたりすることでしょうか。あとは、僕の個人的な野望といいますか、とにかくNavistd.をナンバーワンのエージェンシーにしたいんですよ。その野望が僕らをさらに上のステージへ引き上げてくれると信じています。ちなみに、僕自身はWebサイトというテクノロジーの塊を扱う仕事をしていますが、それ以外の最新の話題にはあまり興味がないんですね。携帯電話もシンプルなものを使っていますし、Facebookもやっていません。もちろん使い方次第だとは思うのですが、そういったことに時間を使う のならば、少しでも制作に集中したいと考えています。

小野田:注目している制作会社などはありますか?

Kerem:Group94Big Spaceshipなどはやはり気になりますね。あとはトルコ国内ならC-Sectionとか……。でも他の会社の作品にあまり影響を受け過ぎず、自分たちの考えるクリエイティビティを追求した方がいいサイトを作れると思いますけどね。

小野田:ちなみにアドビ製品ってどのくらい使われてますか?

Kerem:もちろん、毎日ですよ。毎時間と言ってもいいです。主に使うのはFlashとPhotoshopですね。それと、DreamweaverとIllustratorもかな。すべてがNavistd.の仕事には欠かせないツールです。

リラックスした感じのミーティングルーム
リラックスした感じのミーティングルーム

小野田:Navistd.が求めている人材像について教えてください。

Kerem:僕らと価値観を共有できる人ですね。先ほどもお話ししたように僕たちは自分たちの作るサイトを子供同然に愛し、最高のサイトになるようにクオリティを追求していきます。そしてその分、ものすごく働きますよ。この価値観をしっかり共有できる人材はかなり貴重です。

小野田:将来に向けてのプランやプロジェクトなどがありましたら教えてください。

Kerem:今の状態にはある程度満足していますので、急激な拡大のようなことは特に考えていません。ただ、将来的には海外進出などもできたらいいなと考えています。

イスタンブールの夕焼け
イスタンブールの夕焼け。大きなモスクが市内のいたるところに点在しています

インタビューを終えて

Keremさんと話していて感じたのは、自分たちがトルコでナンバーワンであるという圧倒的な自負とそれを裏付けるだけの仕事量です。100%では足りない、クライアントの要求に120%応えるのだというスタンスは、確かに自分がクライアントサイドであればこういうところに仕事を頼みたくなりますね。

そして、このクオリティの話は実は、FITC AmsterdamでNorth KingdomのCED、Davidが話していた内容と全く同じなのだということに後々気が付きました。理想論として片づけてしまえばそれで終わりですが、その理想を突き詰めて成功している人たちがいるというのはかなり励みになりそうです。

次回予告

次回はイスラエル、もしくは西側ヨーロッパのどこかからお送りしたいと考えています。これからの夏場はデザインの本場ヨーロッパを100日以上かけて電車で周遊する予定で、今からとても楽しみです。


小野田智氏写真小野田智
(おのださとし)

オーストラリアへの語学留学などを挟みながら東京でWebデザイナー/Flashクリエイターとして働くこと数年。2009年末より、長年温めていた世界一周旅行計画をついに実行に移し、現在も旅行中。
twitter : @satoshionoda
blog: ファーストクラス バックパッカー