Flash を活用したソーシャルゲームが熱い!

日本の成功事例:Rekoo「サンシャイン牧場」

ここ数年の間に海外では「ソーシャルゲーム」と呼ばれるオンラインゲーム市場が急成長を遂げています。しかも、本誌9月号の記事で紹介したように、この不況の中でもその勢いは増しています。一方、日本ではというと、ようやく「ソーシャルゲーム」という言葉が使われ始めたという状況です。しかし、日本最大手 SNS の mixi が「mixi アプリ」サービスを開始したことで、ソーシャルゲームへの注目が高まり、これから急成長していくと思われます。実際、mixi アプリで公開されている Rekoo の「サンシャイン牧場」は短期間で300万人以上のユーザを獲得し、日本でもソーシャルゲームのニーズが高いことを実証しています。そこで、本記事では、日本の成功事例として Rekoo 「サンシャイン牧場」を紹介します。

ソーシャルゲームとは

ソーシャルゲームには、トランプゲームのような対戦型、動物を育てるといった育成型など、様々なジャンルのものがあります。一見すると従来のゲームと変わりがないように思えますが、ソーシャルゲームの特徴は「人と人とのコミュニケーションをより重視している」という点だと言えます。例えば、チャット機能、友達を手助けする機能、相手を評価する機能など、ユーザ 同士のコミュニケーションを促進する様々な機能を備えています。

ソーシャルゲームが急成長を遂げた大きな要因の1つとして、SNS との融合が挙げられます。SNS は人と人とを繋げる場であり、ソーシャルゲームとの相性が良いことは間違いありません。Facebook や MySpace などの大手 SNS がプラットフォームを開放し、次々と SNS の特性を取り入れたソーシャルゲームが登場して、一気にユーザを獲得しました。Business Week の記事「Social Gaming Scores in the Recession」によると、ソーシャルゲーム利用者数は、2008年に5000万人だったものが、2009年には2億5000万人に急増すると予測されています。

特にアメリカ、ロシア、中国では、ソーシャルゲームが大きな市場へと発展しています。一方、日本ではというと、ようやく「ソーシャルゲーム」という言葉が使われ始めたという状況です。しかし、日本最大手 SNS の mixi が「mixi アプリ」サービスを開始したことで、ソーシャルゲームへの注目が高まり、これから急成長していくと思われます。それを実証しているのが、mixi アプリで公開されている Rekoo の「サンシャイン牧場」です。

日本のソーシャルゲームを牽引する Rekoo/サンシャイン牧場

サンシャイン牧場 ゲーム画面

サンシャイン牧場は、ユーザが自分の牧場を持ち、野菜や果物を育てて収穫したり、動物を飼ったりする牧場経営ゲームです。マイミク達と畑や牧場のランキングを競ったり、マイミクの畑を世話したり、虫を入れてイタズラしたりと、mixi の機能を活かしたコミュニケーションが充実しています。公開してから、たった数ヵ月の間に300万人以上のユーザを獲得するほどの人気ぶりで(広告などのマーケティング活動は一切行わず、口コミだけでユーザ拡大)、先月発表された mixi 「ソーシャル アプリケーション アワード」ではグランプリ賞を受賞しています。

このサンシャイン牧場を制作・提供しているのが、中国のソーシャルゲーム会社「Rekoo」です。サンシャイン牧場は世界展開しており、中国では No.1、ロシアでもトップ5、Facebook でもトップ10に入るほどの人気ぶりです。Rekoo の CEO、Liu Patrick 氏によれば、その人気の理由は「フレンドリー」にあるようです。

「サンシャイン牧場では、友達を助けたり、ちょっとしたイタズラをしたりできるというフレンドリーな機能を持たせたことが、多くの方々に支持していただけることに繋がったのではないでしょうか。オンラインゲームでは “Virtual Emotion” を喚起することを目的にしていましたが、ソーシャルゲームでは “Social Emotion” を喚起することが大切だと思います」

Rekoo は、日本法人として Rekoo Japan株式会社(CEO 小野裕史)を立ち上げ、11月6日にモバイル版を提供開始しています。また、サンシャイン牧場に工場やペット犬の追加、新たなソーシャルゲームとして「サンシャインタウン(仮)」「サンシャイン深海(仮)」を予定しているなど、今後ますます日本でのソーシャルゲーム展開に力を入れていくようです。

サンシャイン牧場 今後の展開 今後のソーシャルゲーム

ソーシャルゲーム開発における Flash Platform の優位性

開発環境や利用環境の観点から、オンラインゲームと Flash Platform は非常に相性が良いと言えます。実際、サンシャイン牧場、そして海外で大成功を収めているソーシャルゲームの多くは、Flash Platform で作られています。

ソーシャルゲームを成功させるには、できるだけ多くのユーザ 環境に届けることが重要となります。特に若い層にリーチするにはモバイル展開が必須です。日本ではモバイル Flash の普及率が非常に高く、その点でみても Flash Platform はソーシャルゲームに最適なプラットフォームと言えます。

「Flash は覚えるのが簡単かつ開発効率が良いので、モバイルゲームに携わるデベロッパーには最適なツールです。これからのモバイルゲームは、Flash Player がマルチ・プラットフォーム上で利用できるようになるので、より迅速に開発できるようになるでしょう。デベロッパーはプラットフォームを意識せずにゲームそのものに集中できるようになり 、他のツールで悩んだり足止めを食らっ たりしていた問題を考えずに済むようになります。また、Flash はベクターグラフィックを扱えるので、ゲームをより魅力的に面白く、表現力豊かに制作することが可能です。Flash 開発については Adobe がすばらしいデバッガを提供しているので、デベロッパーはスムーズに開発に専念できます。Flash は我々 Rekoo にとって非常に重要なツールです」
(Rekoo CEO、Liu Patrick 氏)

タカギズム&岡田昇三の中国開発滞在秘話

11月6日に提供開始したモバイル版サンシャイン牧場。その開発を手伝うべく、日本から訪中したタカギズムの高木敏光さんと hi-posi Inc. の岡田昇三さんに、Rekoo 北京本社の開発現場について伺いました。

モバイル版サンシャイン牧場

―― 今回、どのような目的(役割)で北京に行かれたのでしょうか。

高木

正直、わけが分からないうちに北京行きが決まったという感じです。mixi アプリのうち、私が一番ハマったのがサンシャイン牧場でした。グラフィックしかり、少々奇妙な日本語しかり、サン牧だけが持つプリミティブさに惹かれました。自分でもソーシャルゲームのプランを持ちながら、今の日本では現実的に開発不可能だなと、少々悶々とした気持ちを抱きながら、連日、牧場の世話をしていました。そんなある日、アドビ社の太田さんと久々にお会いする機会があり、酒を飲みながら、サン牧について熱く語りました。

《事件》が起きたのは、その5日後でした。

なんと、サン牧を作っている Rekoo 社と深い関係にあるというインフィニティ・ベンチャーズの小野さん(現 Rekoo Japan株式会社 社長)を紹介されたのです。その日の別れ際に「一度、北京で制作現場をご覧になりませんか」と言われ、「それは素敵ですね」と別れたのですが、その夜のうちに小野さんから電話があり、「来週北京に行きましょう。ともあれ、パスポート番号を教えて下さい」と言われたのです。旅立つまでの間、Skype でチャットミーティングを行い、サンシャイン牧場のモバイル版のリリースを急いでいることをなんとなく知りました。

岡田

「モバイル版を作る」ということを聞いていたので、日本特有の制限などを説明するという役割で参加しました。後で話しますが、今回この役割は必要ありませんでした。

私の方も北京に行くことになった経緯が、高木さんと似ています。Twitter上でサンシャイン牧場についてポストしまくっていたのです。例えば、収穫時間に合わせて起床したり。それが届いたのか届いていないのか、アドビ社の太田さんに声を掛けていただき、小野さんをご紹介していただきました。モバイル版の話をお伺いし、アドバイスが欲しいとオファーをいただき、翌週には北京に行くことに……。

驚くべきスピードです。思えばこのスピード感こそ、この旅のベースとなるスピードであるということを、後に知ることになります。

―― 北京の制作現場で、「これは日本と違う」と感じたことはありますか。

高木

日本のどんなプロダクションよりも、ハングリーな環境だと思いました。オフィスがあるビルは、北京市内では、推測ですが平均以上なのでしょう。しかし、「片付けるヒマも惜しい」と言わんばかりに雑然としていました。スタッフは皆、相当に若く、25歳前後と見えました。日本ではおなじみのスターバックスのカフェオレなどはなく、常温の水をめいめいのコップに注いで飲んでいました。「なるほど、制作にコーヒーやおやつが必須なわけではないよな」と、思いを新たにしました。

Rekoo の社員は60名ほどとのことですが、誰もが自分のマシンにかじりついて必死、という印象を受けました。ランチタイムらしきものは実感できず、会議室に運ばれてきたケータリングの料理を、入れ替わり立ち替わりつまんでいるといった様子。もちろん私もその一人になりました。これは楽しいものでした。

Rekoo のランチライム

岡田

「ベンチャースピリットが溢れている」と感じました。オフィスの入り口付近に世界地図が貼ってあり、世界中のどの SNS に提供しているかがすぐ分かるようになっています。中国の SNS(51.com や開心網)はもちろん、Facebook、ロシアの SNS にも提供しており、mixi は非常に重要なポジションであると説明を受けました。このように目標と現状が分かりやすく提示されていれば、モチベーションを保ちやすいと思いました。

モバイル版は11月6日(金)20時にローンチしました。実際、金曜日の20時近くになっても、まだ作業中でした。通常だと、もう少し早い段階で「もう金曜はやめておいて、来週にリスケしよう」という判断になることが多いと思います。しかし、皆ギリギリまであきらめず、なんと19時59分にローンチできました。その瞬間、社内に歓声と拍手が湧き上がりました。

私は2000年くらいにベンチャーで働いていた経験があるのですが、その当時の気持ちを久しぶりに感じました。ビジネス一色ではなく、世界を変えてやろう。そんな熱い想いからか、久しぶりに感じた一体感、これはエキサイティングな経験となりました。

―― 中国のクリエイターと一緒に仕事をして、驚いたこと、刺激を受けたことはありますか。

高木

姿勢はとてもひたむきです。日本でもこれほどのものは見たことがない。ほとんどのスタッフが、日本語はもちろん、英語もほぼ通じませんから、意志の疎通はホワイトボードに描いた図や、筆談になります。ただ、学ぶ姿勢がかなり強く、少し仲良くなった後では、にっこりとした笑顔とともに、「ちょっと質問していいですか?」ということが増えていきました。

年長者を敬うお国柄なのか、私がよほど怖いオーラを発していたのか、若いスタッフはみな丁寧でした。ともあれ、一つのアドバイスや指摘に対して、ものすごく反応が速い。言葉による意志の疎通を、コンテンツクリエイションで補うといった印象です。

ある課題が残っている場合、担当者は帰りません。実際のところ、私たちが先にオフィスを出るので夜中はどうなるかと思っていたのですが、後から聞いたところによると、少なくとも Rekoo社は不夜城で24時間体制、警備会社ともそういう契約になっているそうです。

速度、成功、激情、自信

岡田

日本の携帯 Flash は非常に特殊です。そこを説明しようと意気揚々としていたのですが、仕様に関してよく勉強されていて、ほとんど何もアドバイスすることはありませんでした。例えば、iモードブラウザ 2.0 に対応したオートロードバージョンと 1.1 をベースとしたバージョンを出し分けまでしていました。日本語のページを見て研究したらしいのです。ですので、アドバイスできたのは、操作系の調整だけでした。なるべく日本のユーザ に合うように調整をしてもらいました。

通常日本では、携帯 Flash アプリや Web サイトを作る場合、開発の方と密な打ち合わせをし、設計をかなり細かい所まで決めてから作り始めるのですが、Rekoo では Flash の機能だけで何とかしようとしている印象を受けました。ここは改良の余地があり、モバイル版はさらなるバージョンアップを期待しています。

―― 日本の制作現場・クリエイターも取り入れた方がいい、見習った方がいいということはありましたか。

高木

日本では就業率の低下が言われていますが、中国でも事態は同様、あるいはもっと悪いようです。そんなこともあってか、首都北京で仕事をできることのありがたさを、若い人は実感しているかのように思いました。しかし、もう一歩掘り下げると、「何かを作ることの楽しさ」に取り憑かれているとしか思えない情熱でした。日本の制作現場は、納期だとかコストだとかにこだわりすぎているように思われました。もちろんそれらは、仕事の上では重要事項ですが、北京の若いクリエイターは、そんなものは眼中にないようでした。

言い換えると、上に立つ人はクリエイターにそのことを感じさせないような環境を作り、クリエイターは目先の成功などにこだわらないでただひたすら作ることが大事なのかなと思いました。私にも、20年代後半(約20年前になりますが)、家に帰る時間も惜しく、ただひたすらモノ作りが楽しかったことがあります。もし、日本の若いクリエイターがそこまで夢中になる何かがないのなら、それは上に立つ人の責任だと思います。北京の若いクリエイターたちは、売上額や会員数や PV などといったデータには、いい意味で無関心でした。これは実は大切なことで、自分の過去を思い出しても、無欲で作ったモノにこそ、制作の達成感があったと感じます。

岡田

ハングリーとスピードという2点が自分にとって一番の収穫でした。Rekoo 社はサン牧をはじめ、たくさんのユーザ を抱えるソーシャルゲームを多数提供していますが、制作体制は優秀な人間をリクルートしてきて、少人数で驚くほどのスピードで開発を行っています。モバイル制作時には、私を含め皆で会議室にカンヅメで作業していました。それぞれ PC を持ち込み、横でどんどん改善されていきます。質問もどんどんされ、アドバイスを受ければすぐに改善を行います。このスピード感には圧倒されました。

他には言葉の問題があると思います。ソーシャルアプリは来年にかけて、日本国内では mixi アプリ以外にも増えていくと思います。少し乱暴に言うと、アプリを運用フェーズで持っていければ、日本語だけでサービスするのはもったいない。きっと海外へ向けて挑戦したくなると思います。ただ、通常のゲームと違い、ソーシャルアプリの場合は感覚が違う場合も多々ありますので、「複数の言語でコミュニケーションしていく」ということは、制作上でもビジネス上でも重要になってくると思います。

髙木氏、岡田氏写真
左:高木敏光さん、右:岡田昇三さん