Flash 10 周年記念企画:Flash クリエイターに聞く

Flash にまつわる10 の質問

平野友康

平野友康
http://www.digitalstage.jp

株式会社デジタルステージ 代表取締役。ソフトウェア・アーキテクトとして、直感的な操作性を特長とする独自の発想のソフトウェアを創出。99年に日本初のVJソフト「motion dive」を発表、ほか代表作に写真を映画のように再生する「LiFE* with PhotoCinema」、Web制作ソフト「ID for WebLiFE*」がある。


" Flashくん、もういっぱしの大人になったわけだけど、嫌な大人にはくれぐれもならないでくれよ!"

ID for WebLIFE*

1. いつからFlash を使われていますか?

Flashの前身である「Future Splash」ベータ版からのユーザです。もう10年になるんですね。それなので、誕生直後からずっと見守ってきたことになります。今でも大事に当時のパッケージを会社の棚に飾ってあって「これ何ですか?」と聞かれることが多く、その度に「これはねぇ実は…」と昔話をしています。

2. Flash を使い始めたきっかけは?

当時は、国内ではまだ誰も知らなかったような時期なので、自力でネットサーフィンして見つけました。最初のうちは「珍しい技術」という点が先行していて、サンプルやWebの事例を見ても、デザイン的に優れたものがなかったことを思い出します。そんな中で「センス次第でいくらでも素晴らしいWebが作れる」という点と、「ナビゲーションが作れる」という点で、Flashは他のインターネットプラグインのように淘汰されることはないだろうし、なくなって欲しくないと思いました。だから、「開発者にセンスのいいものがつくれるってことを教えてあげたいな」って言いながら、仲間といじくり倒したのが使い始めたきっかけです。

3. 今まで、どのようなFlash 作品を手がけられましたか?

最初のFlash作品として手がけたのは、Future Splashが当時のマクロメディア社に買収された1997年。坂本龍一さんの「PLAYING THE ORCHESTRA 1997 "f"」というサイトです。Flashというと、カチッカチとしていたり、カクカクしていたり、あるいはアメリカやヨーロッパのいわゆるユルキャラっぽいアニメーションみたいなものが多かったので、他のFlashサイトにはない、まったく違う方向を見いだせて嬉しかったですし、自分にとって思い出深い作品です。次が同じく坂本龍一さんの「DISCORD」という作品です。

これ以降はWebの作品ではなく、ソフトウェア開発を始めたので、「motion dive」というVJソフトや「LiFE with PhotoCinema」という僕らのソフトで、内部的にFlashを使うようになりました。「motion dive」では、リアルタイムでタイポグラフィーを生成して映像と合成するというエンジン部分にFlashを利用しました。こういう使い方はこのソフトが初めてだったと思います。こうした「デザイナーがプログラミングまでできる」という点は、Flash以外では実現できない技です。

4. あなたのFlash 作品のうち、お気に入りの作品を教えてください。

2004年7月に「ID for WebLiFE*」という、Flashサイトを誰でも簡単につくれるオールインワンのソフトをつくりました。すでにこの頃には「Flash」という言葉がメジャーになりました。そうなると、素朴に「みんなFlashサイトつくりたいだろうなぁ」と思ったんです。なのに、相変わらず技術的なハードルが高い。だったら、Flashがなくてもすごく素敵なFlashサイトが誰でもできちゃうようにしちゃえ!と。Flashを使いたいけど使えない人たちにFlashの魅力を伝える、Flashと触れてもらえるのが、このソフトだと僕は思っています。

実際、このアイディーというソフトでコンテストをやったんですが、ああ、サイトって技術じゃなくて内容なんだなぁ、と当たり前のことを実感しました。このソフトをきっかけに本格的にFlashの勉強をはじめた人も多く、それが願いでもあったので、そういう話はすごく嬉しいです。

5. 今後作ってみたいFlash の作品は?

僕がこれからのFlashでやりたいことというのは、アプリケーションの分野です。低コストですごくデザイン性が高く、そして使いやすいいろいろなツールを作れるようになると思います。今の時代、デスクトップというのは毎日何時間も「滞在」する場所です。だから少なくともデスクトップにいる時間が、今のような世界で良いわけないと僕はすごく思ってます。使いにくいソフト、人に優しくないOS、訳の分からないウィザードとか、はっきり言って「暮らしにくい」。

でもデスクトップの世界の建築物としてのソフトウェアを個人レベルで開発できるようになれば、きっとすごくナイスなヤツやグループが、「個人の発想」とか「きめ細やかな心遣い」をもった素敵なソフトを作るかもしれない。僕もそういうヤツになりたくてがんばってるんですけど、Flashは本当にそういう「ガレージソフト」みたいなものを誕生させる可能性に満ちていると思います。きっとそのうち「OSに変わるモノ」まで作れるようになるでしょう。

6. Flash を通してあなたが考える” Web” とは?

僕はFlashとWebの関係って、そのまま個人の表現だと思ってます。その昔、どこの企業もFlashなんて風変わりな技術は使わない時代があったことを忘れないでほしい。その頃はまだWebデザイナーなんて言葉もなくて、みんな自分の部屋の小さくて遅いPCで夢と希望を持って「自分の作品」をつくり、発表していた。そこでセンスが磨かれて、企業サイトのデザインをまかされるようになったケースを星の数ほど知っています。

でも企業サイトを作った人が偉くて、個人で作品を発表する人が偉くないなんて絶対にないわけで、最近はむしろビジネス寄りのFlashユーザが増えていることが個人的にちょっと悲しい。現状のWebの世界を見回して、Flash以外で「夢のある表現ツール」はないと思っています。だからWeb 2.0やASPもいいけど、ブラウザの向こう側にある「新しい場所」を個人レベルでもつくれる技術がFlashだし、そういうのが僕にとってのWebだと思います。

7. お気に入りのFlash 機能を教えてください。

僕らデジタルステージは、Flashの技術の可能性を広げることと、デザインに生かすことに興味があります。なぜFlashかというと、シンプルに「すごくいい技術」だからです。「仲良くなれない技術」というものもあるんです。でもFlashは「こいつ、いいヤツだなぁ〜」っていつも思いますね。ちょっと変なクセがあったり、「お前、そっちに進学するのか?」と心配をさせる時もこの10年間であったけど、基本的にスクスク育ってる「良い子」。学級委員長にはなれないけど、クラスの人気者、みたいなところが好きです。くれぐれもガチガチのエリートにはならないで欲しい。だから一番のお気に入りの機能は「性格の良さ」。ごめんなさい、ふざけた答えで。でも、Flash Videoとかも好きです。

8. あなたのクリエイティビティーを触発させるモノ、ヒト、環境は?

モノは、テクノロジー、雑貨、ご当地の食べ物、マンガ。マンガは尋常じゃない数読んでます。自分でもどうかと思うくらいです。ヒトは、一緒に働く仲間、その家族、そしてクリエイティブに興味を持つすべての人。一緒に何かを探し続けることが楽しいし、何かを見つけて変化する人と一緒にいるのが本当に楽しいし、誰かの変化を感じたとき、感動します。変化がない人間関係なんて、全然面白くないです。

環境は、「正直に話せる雰囲気」が大事。守りに入らず、かつ間違っていることは間違っているとお互いに認められる環境。出世争いとかに巻き込まれたら多分気絶しちゃうし、ギスギスした環境は本当にイヤ。自分でも気づかないうちにウソをついたり、本当は思っていないことを主張してしまったりする環境を減らしたい。なんでも正直にやり合える環境がいいと思うんです。そうすれば問題の本質が見えて解決するし、気分的にもスッキリ。個人的にはカフェ的な環境が大好き。将来の夢は喫茶店のマスターで、みんなの問題を美味しいコーヒーとアドバイスで解決してあげるような人になりたい。ほんとに。

9. いまからFlash を始める方にTips、アドバイスをお願いします

大事なことは技術じゃないです。技術なんて覚えればいいし、よほどFlashとの相性が悪くない限り、覚えられます。それよりも、なぜFlashを使いたいのかを考えたほうが良い。単に「楽しそう!」っていうなら、とにかくいろいろ試してみればいい。実際、面白いし。

手に職を付けたいというなら、師匠が必要です。それが尊敬するWebサイトならば、それを師匠と思って徹底的に研究すべし。就職のためならば、Flashデザイナーになりたいのか、Flashプログラマーになりたいのか、あるいはその両方なのかをはっきりすべし。それによってやるべきことは変わってくる。その場合も大事なのは技術じゃなくて「考え方」「ポイントの押さえ方」。技術だけ分かっている人はいっぱいいるけど、それだけじゃダメなんだということをできるだけ早く気づけたら素敵。

Flashを始めたばかりの人へのTipsとしては、「Flashの構造を理解しよう」。「使い方」じゃなくて「仕組み」がイメージできれば自己流でもどんどん使いこなせるようになる。試験前日に歴史の教科書を丸暗記するよりも、歴史の繋がりとか、事件が起こった背景とかを知っていると、いろいろな出来事が繋がって、すごく立体的に歴史を見ることができるようになるのは、ソフトの操作も同じです。一番大事なことは、Flashを楽しむことなのは言うまでもありません。良いヤツなんで、仲良くしてください。

10. ズバリ、あなたにとってFlash とは?

モニタの向こう側の世界を広げていきたい個人やグループのためのツール。ブラウザの向こう側を支えているテクノロジー。それにしてもFlashくん、10年もの長い間、よくぞグレずにスクスク成長したもんだ。生まれたときから知っている者として、最後にこれだけは言わせてくれ。もういっぱしの大人になったわけだけど、嫌な大人にはくれぐれもならないでくれよ!

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