バスキュール × Flash モバイル:

モバイルコンテンツをフックにリアルな場でのコミュニケーション

今や Flash Lite を搭載したデバイスは、世界中で出荷台数8億台を突破し、日本でも最新携帯電話のほとんどが Flash Lite を搭載しています。Flash Lite 搭載、それが意味するところは単に「モバイル機器でも、Flash を使った PC サイトを見ることができる」ということではありません。モバイル機器には PC にはない機能があります。モバイル機器を常に携帯するのが当たり前のライフスタイルになっています。そうしたモバイル機器の特性を活かした新たな Flash クリエーションが可能になるということでもあるのです。Flash Lite の市場拡大と性能向上は、Flash クリエイターの新たな表現やビジネスチャンスに繋がると言えるでしょう。それを実証しているのが、話題の Web プロモーションを多数手掛けている株式会社バスキュールです。同社では、クライアントワークだけでなく、自社プロジェクトでも積極的にモバイル展開を行っています。その取り組みについて、同社プロデューサー/テクニカルディレクター・田中謙一郎さんとプロデューサー・白川英晃さんに伺いました。

Edge:バスキュールさんが最近手掛けたプロジェクトを見ると、モバイル展開まで含んだものが増えてきているようですが、「モバイル展開までしよう」というのはクライアント側からの提案なのでしょうか? それとも御社からの提案が多いのでしょうか? また、以前と比べて、クライアントのモバイル展開への関心は強くなってきていると感じますか?

田中:クライアントの課題解決への近道だということで、自然と提案の中にモバイルが組み込まれています。モバイル展開の有効性/必要性については、クライアントも弊社も感じていることであり、クライアントの意識として「モバイルをうまく利用していきたい」というのが強いと感じます。

Edge:最近のプロジェクトだと、ユニリーバ社のフレグランスボディスプレー「AXE」シリーズのプロモーションで積極的にモバイルを活用されていますね。

田中:そうですね。受託案件の中でモバイルに対して取り組みが多いのが、「AXE」です。AXE がターゲットとしているのは、10代後半から20代前半の人たちです。その層では、モバイルを利用することが一般化しており、携帯電話でのコミュニケーションをより大切にしています。

2007年春に AXE が日本上陸した頃からすでにモバイルサイトを公開し、フル Flash によるトップページの設置や謎のモテ現象を追った「AXE NEWS」の映像配信を行いました。その年の秋には、PC サイトの「AXEBUSTERS」(現在終了)内にあるゲームのモバイル版を Flash Lite で移植しました。2007年はモバイル単体でコミュニケーションするコンテンツを提供してきたのですが、2008年からは PC サイトとより連動した企画を実施しています。2008年1月から実施した「AXE WAKE-UP SERVICE」(現在終了)では、モバイルサイトで予約すれば、女性が携帯電話にモーニングコールをかけてくれるというサービスを提供しました。

QRコード図1 Edge 読者のために特別に発行された QR コードです。
500ポイントを1人1回だけ取得できます!

また、2008年9月より実施している「CHOCOMAN HUNTER」では、「チョコマンを見つけて AXE の売上げの1%をゲットしよう」というキャンペーンに携帯電話の QR コード撮影機能を利用しています。街中にあるポスターなどの広告媒体やイベントで登場するリアルチョコマンを見つけて、QR コードを撮影してポイントを稼ぎ、ポイント獲得上位10名で賞金を山分けします。モバイルサイトにもチョコマンがいるので、友達同士や恋人同士、合コンといったリアルな場で QR コードを撮影しあってポイントをゲットできます。「CHOCOMAN HUNTER」では、コミュニケーションのメインツールとして携帯電話を利用しています。

THE AXE EFFECT -CHOCOMAN HUNTER-
図2 THE AXE EFFECT -CHOCOMAN HUNTER-
http://www.axeeffect.jp/

 

Edge:クライアントワーク以外でも、御社自身で「Gyorol」というパイロットコンテンツを公開されています。そのサイトを見ると、「これまで PC オンリーだったものが、コンタクトポイントとしてモバイルが加わることで、コミュニケーションの形も変化していく」という考えのもと、1つの提案として Gyorol を開発されたようですが、モバイルが加わることによるコミュニケーション上最大の変化は何でしょうか? また、それを Gyorol ではどのように反映させたのでしょうか?

白川:コミュニケーションを「コンテンツとの対話」と捉えると、PC や屋外ビジョンなどと連動することで、モバイルを利用したインタラクティブな体験を提供できるようになったことが大きな変化だと思います。

Gyorol では、モバイルが釣り竿になるというキャッチーな体験をフックに、魚がかかってモバイルがバイブする感覚や、魚がモバイルへリアルタイムに飛び込んでくる感覚などを、弊社で開発した PC とモバイルの連動サーバを利用して Flash Lite 上で表現しています。また、釣った魚を待ち受け画面として保存できるなどの仕組みも用意することで、コンテンツ上での体験結果をそのまま持ち帰るなどの、継続したコミュニケーションのフォローもしています。

GYOROL
図3 Gyorol
http://gyorol.bascule.co.jp/

Gyorol はマルチユーザコンテンツとなっているため、PC ディスプレイや屋外のビジョンで1つのコンテンツに対して、複数人で参加することができます。Gyorol を通して個別にインタラクティブな体験を隣にいる人とリアルに共有し、参加者同士がコミュニケーションを促進させることができるのも、大きなポイントだと考えています。

Edge:御社のモバイル案件の多くでは、Flash Lite テクノロジーを利用されていると思います。PC 向けの Flash のノウハウがあれば、Flash Lite への取り組みもスムーズに行えるものでしょうか? 「モバイル展開」を考えている読者のみなさんに、技術面あるいは思考面でのアドバイスをお願いします。

白川:弊社でも、長年 PC 向け Flash を開発していた者が、現在 Flash Lite の開発を行っていますが、予想していたよりスムーズに開発することができています。容量やメモリの制限など厳しい部分はありますが、その制限に逆に燃えてくれています。昔の PC 向け Flash を思い出すようですね(笑)。

現在のクライアント案件では、大半の端末をカバーするため Flash Lite 1.1 に対応しないといけません。PC 向けのノウハウをすぐに活かすのは難しいのですが、これから Flash Lite 2 以上を搭載した端末が普及していくことを考えると、ActionScript 2.0 も使えますし、より PC の Flash のノウハウを活かせると思います。

アドバイスですか。それは難しいですね(笑)。まだまだモバイルについて試行錯誤している状態なので、逆にアドバイスをいただきたいというのが正直なところです。

アドバイスというほどのものではないのですが、弊社のモバイルコンテンツの特長は、モバイルを単体で捉えてその中だけで楽しむというよりも、モバイルを使っていかに外の世界と繋がって、楽しい体験を提供できるかを重視しているところだと思っています。モバイル単体の表現力ではユーザに提供できる体験も限られていますが、前述した「Gyorol」のように PC と繋がる入出力デバイスとしてモバイルを位置付けると、新しいインタラクティブ体験を提供することができます。モバイル単体で終わらず、いかに他へ繋げていくかを考えると、モバイルコンテンツの可能性も一気に広がって、「モバイル展開」もより楽しく行えるのではないでしょうか。

Edge:今後、「モバイル展開」への需要は高まっていくと思いますか? また、御社としては、より一層モバイル展開へ力を入れていく、それに向けて体制を強化していくといった予定はありますか?

白川:間違いなく需要は高まっていくと思います。PC に比べてユーザの接触機会が圧倒的に多いですし、モバイルの表現力もこれからどんどん向上していきますからね。また、「Gyorol」のような PC とモバイルの連動までコンテンツが広がりをみせれば、さらにモバイルが果たす役割は高まっていくと信じています。

もちろん弊社としてもより一層モバイル展開へ力を入れていく予定です。モバイルコンテンツで新しいことに挑戦したいという開発者の方がいれば、是非ご一緒させていただきたいと思っています!


田中氏イメージ株式会社バスキュール
プロデューサー/テクニカルディレクター
田中謙一郎

2000年よりテクニカルディレクターとしてバスキュールに勤務。「ナイキ部」「ポケモンだいすきクラブ」などのデータベースと連動した Web コンテンツの案件を担当してきた。現在はプロデューサー兼テクニカルディレクターとして「AXE」をメインで担当中。
白川氏イメージ株式会社バスキュール
プロデューサー
白川英晃

学生時にバスキュール立ち上げに携わる。野村総合研究所を経て、「モバイルの可能性」を探るべく2007年バスキュールに復帰。モバイルをメインに、「Gyorol」「helmets」などのモバイル・PC 連動コンテンツの案件を担当。