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京極夏彦
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March 2003 取材時のムービーを見る (QuickTime:12.6MB/02:00) |

| 独自の世界観が繰り広げられる美しい描写に、緻密に積み上げられていく一見無関係なエピソード。そのすべてが集大成されて迎える衝撃の結末。かつてない斬新な小説『姑獲鳥の夏(うぶめのなつ)』で鮮烈なデビューを果たした京極夏彦。その後も、続編となる、京極堂(または妖怪)シリーズと呼ばれる連作や『嗤う伊右衛門(わらういえもん)』、『覘き小平次(のぞきこへいじ)』など多くのヒット作を世に送り出している。 これらの作品が読者の支持を得るのは、小説そのものの魅力はもちろん、それ以外の突出した特長にも訳がある。それは、紙面の文字組み、レイアウト、デザインに対するこだわりである。そのこだわりは、時に1冊で優に1,000ページを超える作品を生み出し、「絡新婦の理(じょろうぐものことわり)/文庫版」では1,400ページを突破した。 さぞ出版社・印刷会社を泣かせたに違いない、と思わずにはいられないが、絡新婦の理/文庫版では、これまでで最高のページ数にもかかわらず、Adobe® InDesign®が中核を担う新しいワークフローを導入したことで、作業効率が飛躍的に向上し、コスト削減まで実現したという。その新しいワークフローとは、作家と編集者間の校正作業も含む全制作過程をInDesignで対処し、InDesignから直接Adobe PDF(Portable Document Format)ファイルに出力して印刷所に渡す、という画期的なシステムだ。 京極夏彦は今のようにパソコンが台頭する以前、縦組でルビ(*)がつけられるソフトをワープロに独自に構築して使用していた。しかし、ワープロ専用機は次第にすたれ、パソコンへと移行せざるをえなくなった。そこで既存のレイアウトツールを使いはじめたものの、漢字やルビ、使用感など、非常に大きな障害にぶつかってしまった。 そこに登場したのがInDesignである。「僕がInDesignを使い始めたのは、『使える漢字の量を何とかしたい』という気持ちからですね。従来のデスクトップパブリッシング環境では、使える漢字が著しく少ない。漢字が少ないということは、表現力も低下してしまうということ」。 また、ルビについても「なぜ自分でルビまでつけるのか、とよく聞かれますが、逆に僕は『なぜつけないの?自分の作品の漢字をどう読ませるか、ルビをどこにいれるか、というのは誰の意志なの?』と思うわけですよ」。 この漢字やルビの問題は、彼の作品を語る上では欠かせない要素だ。というのは、彼の作品を開いて誰もがまず思うことは、「漢字が多い」であろう。しかも旧字体や当て字などが多用され、ルビがないと読めない字も多い。絡新婦の理、魍魎の匣(もうりょうのはこ)、鉄鼠の檻(てっそのおり)など、書名からもその特徴は見て取れる。 ワープロ専用機で作業していた頃、これらの必要な文字は彼自身の手で作成され、当然ながらそのデータはそのまま印刷所で使えるわけがなく、原稿のハードコピーを見ながら、印刷所で文字が作り直されていたという。 「InDesignであればOpenTypeで約2万字に対応できる、ということで採用することにしましたが、最も大切なのはデータとしての汎用性です。いくら何万字が使えようとも、そのデータを印刷会社に渡した時点で汎用性がなければ、ワープロで作字していた頃と何ら変わりがない」。重要なのは、彼の手もとを離れてもInDesignさえ持っていれば、データ自体を有効活用できることなのだ。 |
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