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京極夏彦
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  March 2003

  絡新婦の理 - InDesignデータ

  「また、印刷会社も対応してくれるようになった。僕の仕事で初めて使ったというところも多いですが、先の可能性を見越してInDesignを導入してくれる出版社も何社かでてきている。となると仕事として使えるようになるわけですよ。そこへ行くまでが大変だったんですけどね(笑)」。

こうしてInDesignの導入により、制作のワークフローが非常にシンプルなものとなった。「僕のところで出来上がったInDesignのデータを、出版社と僕の間で校正を何度か重ねます。完成したデータは、PDFが一番印刷しやすい、ということだったので、各社のスタイルにあわせたPDFにして印刷所に渡しています」。

ワークフロー比較図
従来のワークフローでは、最初に作家から編集者にデータが渡された後、印刷会社を加えた三者の間でデータやゲラが何度も行き来せざるを得なかった。しかし、作家がInDesignで執筆を行い、編集者がInDesign上で編集作業を行うなら、この過程で印刷会社を巻き込む必要はない
 
文庫版絡新婦の理
文庫版絡新婦の理。1,400ページを超えるこの大作は全ページInDesignで組版された



  「本来であればテキストデータを入稿して、それが出版社を経由し、印刷所から1つの製品としてあがってくるものを校正します。しかし、僕の手もとで製品ができるわけですから、今では入稿という概念がなくなってしまいましたね」。

作家と編集者間で校正作業を終えて、印刷会社にそのデータを送って印刷する。このワークフローでは、作家は自分の思った通りのレイアウトや表記を紙面に反映できて、編集者はより多くの時間を編集作業に割くことができる。また、印刷会社はコストや納期を大幅に短縮できる。

また、1,000ページを超える小説の執筆を、InDesignを使ってどのように作業しているのかも聞いてみた。「InDesignでインライン入力してます。パフォーマンスもInDesignは10,000ページに対応すると謳われてますから、僕の作品ではまだまだ足りないぐらい。もちろん使いこんでいけば問題点や改善して欲しい点もありますが、それを見込んで作業しても、最終的には他の方法で進めるより、クオリティも効率も非常に良い、という判断ですね」。

最後に、InDesignに望むこととして、京極夏彦は、さらなる出版業界への浸透を挙げる。「システムの移行というか、構造改革のようなものが出版社の中で行われなければならない。印刷会社ももちろんですが、編集者がもっとInDesignを使うべきですね。編集者がInDesignを理解すれば、どの部分が省略、効率化されるかが見えてきます。そうなれば作業時間も縮小できるし、人件費も削減できる。彼らに浸透してこそ、末端であるライターや作家が使いはじめる基盤ができあがるわけですよ。そうすれば次世代のスダンダードになり得るものだと思いますよ」。
 
覘き小平次
京極夏彦の作品で特筆すべき点のひとつに、「美しい紙面デザイン」がある。文章がページをまたぐことはなく、一行だけが章の最終ページにぽつんと追いやられていることもない。空行や空ページに明確な意図を込めたりと、小説だけではなく同じくらいレイアウトデザインも重視されている


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