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新潮社
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  シミュレーション段階で決定したデザインは、開発作業に移される。イラストレーターが描き上げた原稿に対して、Photoshopを使って色調整や階調補正などが行われ、Illustratorで作成したタイトル文字にぼかし効果をかけるなど、書籍イメージのクオリティづくりが着々と進行していく。  
相棒に気を付けろ(逢坂剛著)/京都発見(梅原猛著)
一見アナログ風に見えるがデジタルデータ化されたイラストレーションが使用されている/相棒に気を付けろ(逢坂剛著)。背景画像に古い襖絵をデジタル加工し、深みのある味わいを作り出している/京都発見(梅原猛著)
     
 
作業風景
新潮社で出版される月60作品もの書籍は、約9割以上が社内装幀室で装幀されている。デザイナーの黒田氏によれば「Photoshopが無いとできない作品が多い」とのこと
 
     
  「最近では、著者自身が直接アートディレクションに参加されるということがありました。その時は、スキャナで取り込んだイラスト原画をPhotoshop上でパーツごとに何枚もレイヤーに分けて、著者と一緒にレイアウトを検討しました。小説の世界観がブックデザインでより豊かに再現されるよう、帯のデザインとの関係性も考え、試行錯誤しながらの作業でした」とデザイナーの黒田氏。

Illustrator上にまとめられた最終的なレイアウトは、版下としてAIファイルで保存され、印刷所に送られる。色校正の段階でイメージ通りの色が出ていない場合、デジタル化する以前は色校正を印刷所と往復させ、何度も色調整しなければならなかったが、今はデザイナー自身がPhotoshopで色の調整などができるので、ワークフローがかなり効率化したと黒田氏は言う。

「Photoshopがあるおかげで、最初から最後まで、自分のイメージ通りの装幀デザインが行えるようになりました」。
 
       
  「たとえばこれも、Photoshopがなければ完成できなかった作品です」と言って、高橋氏が一冊の書籍を取り出した。河野多恵子著『秘事』。表紙デザインの中央に、立体的にあしらわれているのは、アールヌーボー時代の美しいブローチだ。

「このブローチを素材として使うことになった時、残念なことに、写真の入手には時間がかかりすぎ、納期には間に合わないことがわかりました。そこで発想を変えて取り掛かったのが、ブローチの写真が掲載されている印刷物からのスキャニングです。 Photoshopを活用して、ブローチ写真の印刷の網点が判別できなくなるまで、フィルタをかけたり、レタッチを何度も繰り返し行いました。これはそんな苦労の末できあがった労作です」。

写真などのポジフィルムと異なり、印刷物は細かい点の集積で構成されているので、それを直原稿として用いるのは、仕上がりの面から見てかなりリスキーな行為だ。しかしそんな難易度の高い作業もPhotoshopでなら実現できる、と高橋氏は語る。実際この本を手にして、そのデザイン素材が印刷物スキャンから作られたものだと見抜ける人は、まずいないだろう。それほど精度が高いのだ。

「手作業でのデザインワークが中心だった時代から、合成や加工などのデザインアイデアはいろいろ持っていましたが、技術的なことやコストの問題などから、やりたいと思うものがなかなか実現できなかった。ところがPhotoshopを利用するようになって、自分が思ったものが、必ず実現できるようになりました」。

本の顔であり、活字文化の樹に咲いた花ともいえる、装幀デザイン。アドビ製品はこれからも新潮社において、デザイナーのイメージを具現化する基本ツールとして活用され、創造性に溢れるデザインを形にしつづけるだろう。
 
「秘事」(河野多恵子著)
「秘事」(河野多恵子著)タイトル下の美しいブローチは、フィルムが入手できなかったため、印刷物をベースに徹底的なレタッチが施されている。ブルーの枠に絡めているのは、古い簪(かんざし)の画像を加工したもの
 
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