化学工学を専攻していた工業高校を卒業後、何気なく受験した美術専門学校の試験が、海津さんの運命を変えました。ユニークな試験内容、そして30分近く話し込んでしまった面接が、グラフィック・デザイナーという仕事があることすら知らなかった海津さんに、デザインへの興味を抱かせてくれたのです。専門学校は、1学科100人ほどの学生が卒業時には30人程度になってしまうほど厳しい学校でした。卒業後は、パッケージデザインやCIを手がけるデザイン会社に勤務し、その後個人的に仕事を受けたり、嘱託社員として働くようになりました。
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アドビのソフトは、考えなくても自然と体が動くようなツール、ものを作ることに集中できるソフトなのです。
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ちょうどその頃、アメリカの最先端CG技術を紹介するセミナーに出席したところ、「将来は、他界した俳優もコンピュータ上で再現できる」という話を聞きました。自分が生きている間にそういう世界が来たらさぞ面白いだろうと思った海津さんは、早速コンピュータを購入。少しずつ仕事にも使うようになりましたが、当初は写植レイアウトのアタリに使う程度しか活用できませんでした。ところがそのうちに、デザインや印刷の世界で急速にデジタル化が進んでいったのです。
現在は印刷業界でも、Adobe IllustratorやAdobe Photoshopのデータでの入稿が当たり前になっています。ところがデジタル入稿への移行にともなって、カラーマネジメントの問題が出てきました。海津さんは色の問題について、よく講演や執筆を依頼されます。しかし、「コンピュータが無かった時代は、絵を描く時、イラストレーターもデザイナーも誰が光源を気にしたでしょうか。なぜコンピュータになると、外光を遮断して光源を調整して、フードで囲いまでして作業するのでしょうか」と海津さんは疑問を投げかけます。
イメージが湧く時というのは、周りにある何かが気になって連鎖的にイメージが湧いてくるもの。その発端になるものが全く見えない状態で、何ができるのでしょうか。油絵だって、寸分違わぬ色調で印刷するのは不可能です。そう考えると、極端に言えば色は多少狂ってもいい、というのが海津さんの持論です。
印刷で出ない色は使わないほうがいいと言われますが、海津さんは気にしません。「これはだめ、あれはだめとへんに制約してしまうと、やる気が無くなってしまうでしょう。オリジナルは、自分のコンピュータのモニターで見る画像だけ。でも、それでいいと思うのです」と海津さんは語ります。ソフトにしても同じです。問題は、道具ではないのです。まずは自分の作りたいものがあり、手段としてのソフトは本来何を使ってもいいはずなのです。
それでも、数あるソフトの中で、海津さんがアドビ製品を使い続けている理由は、インターフェイスに癖がなく使いやすい点。「個々の機能が良くても、全体で見るとわからない所だらけのソフトもあります。ノコギリで木を切るのに、マニュアルを見なければノコギリの使い方がわからないようでは、しかたないですよね。アドビのソフトは、考えなくても自然と体が動くようなツールに、非常に近くなっています。一言で言えば、ものを作ることに集中できるソフトなのです」。常に先を見据えて制作活動を続け、熱心な研究家でもある海津さん。これからも、 CGの世界、そしてアドビソフトウェアの新しい可能性を私たちに提供し続けてくれるでしょう。