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ネットを利用して誰でも気軽に本を作れたら…。カリスマデザイナー、松本弦人氏のふとした思い付きからスタートした企画が、いま業界で注目を 浴びている。ネット上といえども、本の体裁を持つからにはデザイン面でもクオリティの高い本を作りたい。プロのデザイナーとしての強いこだわりが、ネットと紙媒体との融合をみごとに実現させた。


株式会社BCCKS(ブックス)が、誰でも簡単にWebサイトへ書籍を展開できるサービス「BCCKS」を開始した。これまで難しいとされてきた本とネットを共存させた、新しいタイプの一般参加型のメディアサービスだ。
こうしたリッチコンテンツでは、Adobe® Flash®を利用していると思われがちだが、意外なことにBCCKSはInDesignの技術を応用して作られている。
BCCKSを仕掛けたのは、アートディレクターの松本弦人氏だ。これまでにもデジタル・ポップアップ絵本やジャングルパーク、動物番長といったゲームデザインを手がけ、常に新しいメディアとともに斬新なアイデアを盛り込んだコンテンツを配信しつづけ、デザイナー界のカリスマとも言える存在として知られている。
その松本弦人氏がWeb2.0時代にふさわしい新たなコンテンツを仕掛けてきたのだから、面白くないはずがない。
紙とデジタルという相反するメディアを、どのようにして融合したのか。松本弦人氏とBCCKSの開発スタッフの方にお話を伺った。
書籍のリアル感をWeb上で再現したい
BCCKSは2008年2月末にオープンテストが開始された。登録が無料ということもあって、サービス開始当初からユーザー数が増え続け、現在では個性豊かなデジタル書籍(ブック)がサイトの画面いっぱいに表示されている状況だ。
ユーザーはまず、本のベースとなるフォーマットを選択し、あとはパーツを組み合わせながら、テキストや画像を配置していくと仮想の書籍ができあがるという仕組みだ。仕上がったデジタル書籍(ブック)には表紙はもちろんのこと、裏表紙と奥付までそろっているというこだわりようだ。
Web上に本を展開させるというアイデア自体はそう目新しいものではないかもしれない。これまでにも本の体裁を模したWebコンテンツはいくつか存在していた。しかし、それらは「本のようなもの」であって、本ではなかった。
BCCKSがこれまでのWebマガジンと大きく違う点は、あくまでも「本」のテイストにこだわった部分にある。
「Flashはとてもよいアプリケーションですが、Flashを使うと変換されたものになってしまうんですね。本のリアル感がなくなってしまう感じがします。BCCKSのコンセプトとして、印刷物のリアル感をとても大切にしていますから、InDesignで組んだ状態を再現することにこだわりました。」
BCCKSでは、何よりも本の印刷感を大切にしたかったと松本氏は語る。
書き手の情熱を損なわずに読みやすさを追求
そもそも、BCCKSのアイデアが生まれた背景には松本氏が既存のCGM(Consumer Generated Media)に疑問を呈したことが発端だった。
あるとき、SNSのリニューアルデザインの依頼を受けた松本氏が、ブログや他のCGMを見て回った結果、内容が面白いものが多く存在するにもかかわらず、読みやすさを考慮していない点をとても残念に感じたそうだ。
「ブログというのは、書き手にはとても便利な仕組みで作られていますが、読み手のことを考えていない作りなんです。たとえば、ラーメンに詳しい人が書いたブログがあるとします。ブログの場合、時系列順に並べられているわけですが、基本的には日記の作りなので合間にラーメン以外のネタが入ることもあるんです。そうすると読む側としては混乱しますよね。」
その人にしか持ち得ない貴重な情報やセンスを損なわず、読み手にも魅力のあるものを誰でも簡単に作れるシステムができないだろうかと考えた結果、BCCKSのアイデアができあがったそうだ。
「最適なキャプションの文字数が80文字であるように、本文にも読みやすい文字数の決まりがあります。デザイン上の適切なセオリーにしたがってレイアウトされているという点が重要なんです。」
デザイン上のセオリーを徹底させるためにも、基本フォーマットはInDesignでしっかりと作成したものを用意しなければならない。と松本氏は語ってくれた。
株式会社BCCKS
BCCKSを主体としたコンテンツの企画、制作、運営を行う。アートディレクターの松本弦人氏がコンセプトプランニングを担当し、商業メディアとのコラボレーションなどの企画を実現している。

印刷物のリアル感をかもし出すことで、感覚的な部分を大切にしますよね。デザインされることで、著者にも良い影響を与えると語る、チーフクリエイティブオフィサーの松本弦人氏
BCCKSのトップページ。日を増すごとに、書籍の数が増え続けている。有名無名を問わず、多岐にわたる内容の書籍が取りそろった様は、まるで書籍のECサイトのようだ
InDesign CS3上で作成された奥付のデザインテンプレート。紙の質感もさることながら、奥付が入ることで、書籍としての体裁をよりリアルなものにしている
InDesign上で作成中のテンプレート。テキストボックスにInDesignの“スクリプトラベル”機能でラベルが付けられている。このラベルを元にJavaScriptによって、テキストファイルが抽出される